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弁護士足立が振り込め詐欺事件で執行猶予付き判決を獲得

2019-06-16

弁護士足立が振り込め詐欺事件で執行猶予付き判決を獲得

・事件の概要

ご依頼者様は、ご子息が詐欺事件で逮捕されたと知り、まず弊所の初回接見サービスへお申し込みされました。
ご依頼者様は遠方にお住まいであったため、ご子息様が容疑をかけられている詐欺事件について何も知らず、さらに警察からも詐欺事件の詳細を聞くことができず、逮捕されたというご子息様のことを非常に心配されていました。
初回接見サービスのご依頼を受けた弁護士が警察署でご子息様を接見をしたところ、ご子息様は振り込め詐欺の受け子をしたという容疑で逮捕されていたことが判明しました。
振り込め詐欺事件では、余罪が多数に及ぶことが多く、そうした場合、身体拘束が長期化する可能性、被害額によっては実刑判決を受ける可能性が高くなることが考えられます。
本件でもそれらのリスクがあり、捜査の初期段階から慎重な弁護活動を行う必要がありました。
初回接見サービス後の報告の際、ご依頼者様へは事件の概要や今後の手続きの見通し、行うべき弁護活動等について弁護士よりお話いたしました。
その後、正式に弁護活動のご依頼をいただき、弁護活動を開始することとなりました。

・捜査段階の弁護活動

~取調べへの対応~
逮捕後からご子息様に対しては複数回の取調べが行われていたため、捜査機関の取調べにどのように対応すべきかを決めなければなりませんでした。
特に、振り込め詐欺事件では、捜査機関も余罪の有無を徹底的に捜査するため、ともすれば、本当は関わっていない事件について関与を疑われるおそれがあります。
そこで、複数回の接見の上、ご子息様から自分の関与した事件とそうでない事件を聞き取り、取調べの前に弁護士と打ち合わせを行いました。

取調べ前の打合せでは、警察からの取調べに対してどのように答えるべきなのか、一つ一つ弁護士と確認をして実際の取調べに臨み、取調べの後には再び弁護士と接見し、どのようなことを聞かれたのか聴取し、次回の取調べに対する打合せの課題としました。
その結果、ご子息様が関わったとされる事件についてのみ起訴がなされ、手続きの間延びによる身体拘束の無用な延長や、被害額の拡大を避けることが出来ました。

~示談交渉~
振り込め詐欺事件は被害者のいる犯罪です。
本件では、裁判が始まる前から被害者の方と連絡を取り始め、示談交渉に着手することができました。
ご子息様の反省の状況を踏まえて、弁護士が誠意をもって対応し、謝罪と被害の弁償を行いました。
被害者の方々からは「社会の中で更生してほしい」とのありがたいお言葉と、加害者であるご子息様を許すとの一筆を頂けました。
被害者の方の中には、ご子息様の反省状況や置かれた状況等を考慮して、被害額の約3分の2程度の弁償額で許していただけた方もいました。
これらの示談交渉の経緯は、裁判の場でも証拠を提出して主張、立証を行いました。

・起訴後の弁護活動(公判弁護活動)

~裁判までの打合せ~
ご子息様の振り込め詐欺事件が起訴された後も、引き続き公判弁護活動を行っていきました。
裁判の場では、ご子息様が今回の事件について関わってしまった経緯や今後の社会内での生活を行う環境について、同情すべき点があった点を明らかにすることを弁護側の目標としました。
そこで、本件に関与し始めたときの状況を、裁判官にしっかりとアピールできるよう、弁護士とご子息様とで打合せを行いました。
また、裁判の場では検察官から反対尋問がなされますが、そこで動揺してしまうことのないように対策を重ねました。

~裁判当日~
裁判当日には、ご依頼者様とご子息様に法廷に立ってお話しいただきました。
当日は、お二人とも緊張のためか、お話しに詰まる部分もありましたが、事前に打ち合わせに基づいて弁護士からも助け船を出すことで、ご自身の主張を過不足なく裁判所に対して伝えることが出来ました。

~判決~
本件については被害額267万5千円の詐欺、窃盗事件として有罪の判決が言い渡されましたが、懲役3年執行猶予5年という判決を得られました。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、こうした振り込め詐欺事件のご相談も受け付けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

なお、本件につきましては弊所東京支部のホームページにも詳細を記載しております。

転売目的でのチケット購入と電子計算機使用詐欺罪

2019-06-12

転売目的でのチケット購入と電子計算機使用詐欺罪

大阪市淀川区に住むAさんは,転売目的で,チケット販売サイト(チケットエージェンシー)からラグビーの観戦チケットを入手したとして,大阪府東淀川警察署電子計算機使用詐欺罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの母親は,Aさん逮捕の知らせを聞いて,弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです。)

~ 転売目的でのチケット入手 ~

人気のコンサートや舞台,スポーツイベントなどのチケットを,業者や個人が買い占め,オークションやチケット転売サイトなどで定価を大幅に上回る価格で販売する「高額転売」が社会問題となっています。
このような不当な転売により,チケットを本当に求めている人にとって入手しづらい状況が続いています。
しかし,転売目的でのチケット入手は犯罪です。
どのような罪に問われるのか解説いたします。

~ 電子計算機使用詐欺罪 ~

電子計算機使用詐欺罪は刑法246条の2に規定されています。
詐欺罪(刑法246条)は,本来,「人を欺いた場合」に適用される犯罪ですが,事例のように欺く対象が「人以外(コンピューターなどの電子機器など)」の場合は詐欺罪を適用することができません。

そこで,そのようなこの不都合を解消するために作られたのが電子計算機使用詐欺罪です。
つまり,電子計算機使用詐欺罪詐欺罪の補充規定ということになります。
罰則は,通常の詐欺罪と同様「10年以下の懲役」です。

* 事例紹介 *
平成29年9月22日,神戸地方裁判所で,人気アーティストのライブの電子チケットを転売目的で取得し電子計算機使用詐欺罪に問われた被告人に対し,「懲役2年6月 執行猶予4年」の有罪判決が言渡されています。

~ どんな行為をしたら処罰されるの? ~

電子計算機使用詐欺罪は,「電子計算機を欺く行為(規定には「電子計算機に虚偽の情報若しくは不正の指令を与えて」などと書かれています)」を処罰する罪です。
つまり,転売目的でチケットを購入しようとする者が,その目的を隠してチケットエージェンシーに対してチケットの購入を申込み,その結果,転売目的の購入ではないとチケットエージェンシーを誤信させ,チケットエージェンシーにチケットを送付させたという行為が電子計算機使用詐欺罪に当たるのであって,転売行為そのものを処罰するものではありません。

* 転売行為も禁止 *
しかし,6月14日から施行されるチケット転売防止法(正式名称,特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)では,「チケットの不正転売」を禁止しており,違反者に対し,「1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金,又は併科」を科す旨定めています。
転売目的でチケットを購入し,さらにそのチケットを転売した場合には,電子計算機使用詐欺罪のほか,チケット転売防止法違反にも問われることになります。

~ 買った側の処罰は? ~

これまでご紹介してきたのは,「チケットを転売目的で購入し,それを売った側」の罪でしたが,それを「買った側(譲り受けた側)」は処罰されるのでしょうか?
この点,先ほどご紹介したチケット転売防止法では,「転売目的での譲り受け」を禁止しており,違反者に「1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金,又は併科」を科す旨定めています。
また,転売目的で入手したチケットであることを知りつつチケットを購入した場合は,たとえ転売目的がなくても「盗品等有償譲受罪(刑法256条2項,「10年以下の懲役及び50万円以下の罰金」)」に問われる可能性もあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件少年事件を専門に扱う法律事務所です。
チケット転売に関する詐欺事件のご相談も,刑事事件専門だからこそ安心してお任せいただけます。
刑事事件少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。
無料法律相談,初回接見サービスをのご予約を24時間受け付けております。

埼玉県所沢市のプリペイド改ざん詐欺事件

2019-06-08

埼玉県所沢市のプリペイド改ざん詐欺事件

~ケース~

埼玉県所沢市在住のAさんはインターネットで「これを使えばプリペイドカードが使い放題!」と銘打たれた機器を購入した。
説明書によると,磁気情報によるプリペイドカードの磁気情報を書き換えることによって使用されていない状態にできるというものであった。
Aさんは半信半疑で埼玉県所沢市内のスーパーVで使用可能なチャージ式ではないプリペイドカードで試してみたところ,磁気情報を未使用の磁気情報に書き換えることができた。
AさんはVで書き換えたプリペイドカードを使用してみたところ,新品同様の使用が可能であった。
ところで,Aさんが使用したプリぺイドカードは表面の模様が剥がれており,スーパーVのレジ担当であるXは何となくその事に気づいていた。
そして,XはAさんが常に同じプリペイドカードを使用しているにも関わらず残高が戻っていることに気づき店長Yに報告した。
その後,Yが埼玉県所沢警察署に相談したことで,Aは事情を聞かれることになり,家宅捜索の結果,上記機器が発見され,Aさんは電子計算機使用詐欺罪の疑いで逮捕された。
(フィクションです)

~電子計算機使用詐欺罪~

刑法246条の定める詐欺罪は「人を欺いて財物を交付させたものは,10年以下の懲役に処する。」と規定されています。
詐欺罪で欺かれる対象は「人」となっていますので機械を誤作動させた場合には詐欺罪が成立しないことになるでしょう。
そのため,刑法246条の2は「前条に規定するもののほか,人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて…(略)…財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた者は,10年以下の懲役に処する。」と規定しています(電子計算機使用詐欺罪)。

今回のケースで,Aさんは磁気情報を書き換えたプリペイドカードを使用して,レジ等の電子計算機(法律ではコンピューターはこのように呼ばれます)に虚偽の情報を与えたといえるでしょう。
そしてそれによって代金を支払うことなく買い物ができたのですから財産法上不法の利益を得たともいえるでしょう。
したがって,Aさんには電子計算機使用詐欺罪が成立すると考えられるのです。

~手続の流れ~

詐欺事件で起訴されると,詐欺罪には罰金刑が定められていないので刑事裁判を受けることになります。
詐欺事件の場合,詐欺の手口,被害者の数,被害金額,被害弁償の有無などによって検察官は起訴するかどうかを判断します。
法務省の犯罪白書によると,詐欺事件は6割弱が起訴されています。

刑事事件では,逮捕されると48時間以内に検察官に事件が送致され,検察官は24時間以内に被疑者を勾留するか釈放するかもしくは起訴するかを決定します。
勾留請求が認められると原則として10日間身柄を拘束されます。
事件によってはさらに被疑者の身柄拘束が必要であると判断された場合,最長で10日間の延長がされる場合もあります。
したがって,逮捕されてしまった場合には最長で23日間身柄を拘束されることになります。

また,検察官は勾留が認められた場合には,原則として勾留満期までに被疑者を起訴するかどうかを決定しなければなりません。
そのため,身柄拘束の必要がない場合や逮捕を含めた最大23日間で起訴する証拠を収集するのが困難である場合などにはあえて勾留しない場合もあります。

逮捕されなかった場合や,逮捕されても勾留されず釈放された場合は在宅での捜査となります。
この場合は起訴するまでの期間の制限はありませんので,捜査が比較的ゆっくり進むことが多いでしょう。

~弁護活動~

詐欺罪などの財産犯では,被害弁償をしているかが検察官が起訴するかどうかの判断や裁判官の量刑の判断に大きく影響します。
また,示談の際に「加害者を許す,処罰は求めない」という宥恕条項があれば事件の内容にもよりますが,起訴猶予となる可能性もあります。
しかし,詐欺事件の被害者の方にとって,加害者を許すという内容を示談の内容に盛り込むことは簡単なことではありませんから,この宥恕条項については盛り込まない,という示談も多いです。
それでも,被害弁償をしているという点で起訴猶予となる場合や,執行猶予付きの判決となる場合もあります。
逆に,被害弁償などを一切していない場合にはよほど軽微な事件でなければ起訴され,場合によっては実刑判決となってしまう可能性もあります。
そのため,詐欺事件などの財産犯では被害者の方に被害弁償をすることは非常に重要になります。
効果的な示談交渉をしたいとお考えの方は,まずは刑事事件に強い弁護士ご相談されることをお勧めいたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
詐欺事件をはじめとする財産犯事件も数多く取り扱っています。
フリーダイアル0120-631-881にて初回接見サービス・無料法律相談のご予約を24時間受け付けております。

横浜市緑区の出資法違反・詐欺事件

2019-06-04

横浜市緑区の出資法違反・詐欺事件

~ケース~
横浜市緑区在住のAはクレジットカードを利用した副業ビジネスと称するスキームを経営していた。
Aのスキームとしては以下のとおりであった。

①利用者がクレジットカード等で商品を購入する
②商品がAの下に届く
③Aが商品を海外に輸出し,購入代金以上の金額を得る
④購入代金に一定のマージンを上乗せした金額を利用者の口座に振り込む
また,ビジネスの参加者からは保証金の名目で参加費を徴収していた。

実際には商品はAの下に届くものではなく,クレジットカードの購入金額のみがAの手元に入るスキームとなっていた。
Aは保証金や購入代金④を振り込んでいたたが,途中から④の振込をしなくなった。
利用者の1人であるVが神奈川県緑警察署に相談したところ,Aは出資法違反および詐欺罪の疑いで家宅捜索を受けた。
(実際にあった事件を基にしたフィクションです)

~出資法~

今回のケースは,いわゆる「西山ファーム事件」と呼ばれる事件を基にケースを設定しています。
西山ファーム事件では実際に海外に商品の輸出していたかどうかは定かではありませんが,今回のケースでは海外への輸出などはなかったとしました。
なお,西山ファーム事件では出資法違反の疑いで家宅捜索をされています。

出資法は正式名称を「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」といい,西山ファーム事件では保証金が預り金であるとして出資法違反であるとされたと考えられます。
出資法第2条は業として預り金を受け入れることを禁止しており,預り金とは「不特定かつ多数の者からの金銭の受け入れであって」「預金,貯金又は定期積金の受け入れ」およびそれと同様の経済的性質を有するもので,「社債,借入金その他いかなる名義をもってするかを問わない」とされています。
また,金融庁のガイドラインでは預り金とは以下の4要件に該当するものとされています。

①不特定かつ多数の者が相手であること。
②金銭の受け入れであること。
③元本の返還が約されていること。
④主として預け主の便宜のために金銭の価額を保管することを目的とするものであること。

投資スキームなどでの保証金は元本の返還が保証されている場合には預り金として出資法違反となるでしょう。

~ポンジ・スキーム~

今回のケースのようなスキームはポンジ・スキームと呼ばれるもので「出資金詐欺」とも呼ばれます。
このスキームでは出資された金銭を運用しているようにみせかけ配当を分配しますが実際には運用しておらず,負債が増え続ける仕組みになっています。
しかしながら,早期の出資者には配当が分配される場合が多く,それによって信用を得て,出資者の増加や配当を得た出資者からのさらなる出資が見込まれます。
そのため,出資された金銭の総額は膨らんでいくことになります。
しかし,出資された金銭は別の用途に費消されてしまうなどで目減りし,配当を分配する以上,必ずいつか破たんする仕組みになっています。
早期に出資した方は利益を得られる場合もありますが,後半で出資した方は配当を受けるどころか,出資金がまるまる消えてしまうということもあります。

~逮捕されたら~

詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役となっています(刑法246条)。
詐欺罪は事案によっては執行猶予判決が付く場合もありますが,今回のケースは手口が悪質であり,被害人数が多く,被害額も高額となりますので実刑判決となってしまう可能性が高いでしょう。
しかし,被害者に可能な限り被害弁償,示談をすることによって裁判で有利な情状となり量刑に影響する場合もあります。

ただし,詐欺事件の場合,被害者と直接示談交渉をする,出資金を返すというのはあまり現実的ではありません。
というのも,一度詐欺の被害に遭っているのですから示談交渉などを装った詐欺ではないかと疑われる可能性があったり,被害感情が大きく直接連絡をしたくないという場合があったりするからです。
弁護士が相手であれば,被害に遭われた方にも安心して示談交渉に応じて頂ける可能性があります。
また,効果的な示談書の作成なども専門家である弁護士であれば可能ですのでまずは弁護士に相談されることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
詐欺事件を起こしてしまった場合には0120-631-881までお気軽にご相談ください。
初回接見サービス・事務所での無料法律相談のご予約を24時間受け付けています。

特殊詐欺とだまされたふり作戦

2019-05-31

特殊詐欺とだまされたふり作戦

東京都多摩市に住むAさんは、SNSで知り合った氏名・職業不詳のBさんから、東京都多摩市内の指定する場所に現金を受け取りにいって欲しいと頼まれました。
Aさんは、おそらく詐欺の受け子の仕事だろうとは思いながらも、Bさんから「成功すれば、1回、1万円」と言われたことから、「おいしい話だ」と思い、仕事を引受けました。
ところが、指定された場所で、Vさんから封筒(中身は模造紙幣)を受け取ったAさんは、現場で待機していた警視庁多摩中央警察署の警察官に詐欺未遂罪(共犯)で逮捕されてしまいました。
実は、この事件、Aさんが指定された場所に行く前、Bさんから電話を受けたVさんが特殊詐欺であることを見抜き、警視庁多摩中央警察署に相談したところ、「だまされたふり作戦」を実行することとされていたのです。
(フィクションです。)

~ そもそも詐欺罪とはどんな罪? ~

詐欺罪は刑法246条1項、2項に規定されていますが、今回は、2項は関係がないので説明を省略いたします。
詐欺罪の規定をみてみると、

刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

たったこれだけの規定です。
殺人罪(刑法199条)の「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する」の規定と同じくらい短い規定です。
しかし、この規定の中には、詐欺罪が成立するための様々な要素が含まれています。

つまり、詐欺罪は、

客観的には、①欺罔行為(騙す行為)→②錯誤(被害者が騙されること=被害者の認識が客観的事実と一致しない状態)→③処分行為による財物の移転(被害者が現金を手渡すことなど)→④財産上の損害、の一連の流れがあり、主観的には,犯人の①~④までの故意(認識)

があってはじめて成立する犯罪です。
①~④の要素がそろえば詐欺既遂罪、①に留まった場合(つまり、本件のように被害者が相手の嘘を見抜いて「錯誤」に陥らなかった場合)などは詐欺未遂罪に問われることになります。

~ なぜ、Aさん(受け子)が詐欺未遂罪? ~

今回、Aさんが担った役割は、上の①から④でいえば③の財物の移転、つまり、被害者から封筒を受け取る行為のみであり、①欺罔行為、つまり騙す行為は行っていません。
つまり、詐欺罪の成立要素を満たしていないのだから、Aさんに詐欺未遂罪を問うことはできないのではないかとの疑問も生じるところです。

しかし、刑事実務では、「共犯者が作出した状態(騙した状態)を利用して犯行を実現した」といえる場合は、罪に問えるとしています。
これを講学上は、承継的共同正犯とか共謀共同正犯とかいいますが、名称はどうでもいいことで、つまりは情状の差こそされ、AさんもBさんと同様の罪に問われるということになります。

~ だまされたふり作戦とは? ~

だまされたふり作戦とは、オレオレ詐欺などの特殊詐欺のケースで、被害者が詐欺にあっていることに気づいた後も、警察の指示によって、だまされたふりをして、犯人をおびき出し逮捕につなげる作戦です。
だまされたふり作戦のよくあるパターンとしては、被害者がかけ子の指示に従って、模造紙幣が入った紙袋を受け子に手渡し、その直後に警察が受け子を取り囲んで逮捕するというものです。
警察としては、受け子の逮捕をきっかけに突き上げ捜査を行って、特殊詐欺組織の撲滅を図る狙いです。

~ 受け子がだまされたふり作戦に気づいていない場合 ~

Aさんのように、受け子がだまされたふり作戦に気づいていない場合、詐欺未遂罪に問うことはできるのでしょうか?
なぜ、このような疑問点、問題点が生じるのかというと、

だまされたふり作戦の場合、上記②で詐欺被害の危険は寸断されているのだから、それ以降の犯行に加担したとしても詐欺の犯罪実現は不可能で、犯罪は成立しない

という考え方があるからです。
過去には、この点を重視して無罪判決を出した裁判例(平成28年9月 福岡高裁)もありましたが、その後、最高裁判所により、

被害者を騙す行為と被害者から現金などを受けとる行為が一体のものであると考え、そのような一体性を有する行為の一部に関与した受け子は、関与前のかけ子の騙し行為についても責任を負う

とし、詐欺未遂罪の成立を認めています。

この判決以降、同様の詐欺事件において、無罪主張をすることが難しくなっています。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺罪をはじめとする刑事事件少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。
警視庁多摩中央警察署までの初回接見費用:37,200円)

訪問販売と詐欺罪

2019-05-27

訪問販売と詐欺罪

布団の訪問販売員であるAさんは、東京都北区に住む高齢のVさんが特殊詐欺の被害にあったとの情報を入手し、Vさん宅を訪問することに決めました。
AさんはVさん宅を訪ね、玄関ベルを鳴らしました。
Aさんは、玄関先まで出てきたVさんに「布団の販売で訪ねさせていただきました。布団を見せてくれませんか。」と言いました。
すると、Aさんは、Vさんから「うちには腐るほど布団があるから結構です。」と断られましたが、強引にVさん宅へ上がり、「うちのより、品が悪いですね。」「汚れているし取り替えた方がいいですよ。」「本来なら40万のところ、特別に10万で売ります(本来は10万円の価値しかない)。」と言いました。
そうしたところ、Vさんは「そんなに安くなるんだったら買います。」と言ってAさんに10万円を渡しました。
ところが、後日、Vさんはある情報番組を見て、Aさんの話が嘘だったことに気づき、警視庁赤羽警察署詐欺罪の被害届を提出しました。
そして、Aさんは、警視庁赤羽警察署に住居侵入罪・詐欺罪で逮捕されてしまいました。
(実際にあった事例を基に作成したフィクションです)

~ 訪問販売 ~

訪問販売とは、特定商取引法という法律の2条で「販売業者または役務提供事業者(※)が、営業所等以外の場所(例えば、被害者の自宅)で契約して行う商品、特定権利の販売または役務の提供等のことをいう」とされています。
最も一般的な訪問販売は、消費者の住居をセールスマンが訪問して契約を行うなどの販売方法です。
そのほか、喫茶店や路上での販売、またホテルや公民館を一時的に借りるなどして行われる展示販売のうち、期間、施設等からみて、店舗に類似するものとは認められないものも「訪問販売」に該当するとされています。

~ 様々な法規制 ~

訪問犯罪をするにあたっては様々な法規制がありますが、刑事事件としては次の罪に当たり得ることから注意が必要です。

= 詐欺罪(刑法246条) =

詐欺罪は人を欺いて、人から財物の交付を受けた場合い成立する犯罪です。
法定刑は「10年以下の懲役」です。
本件の場合、10万円の価値のある布団を10万円で売っているので、Aさんの行為が「欺く行為」に当たるか否かが問題となります。
この点、「欺く行為」とは人を錯誤(誤った判断、間違った判断)に陥れる行為をいうとされており、「被害者が本当のことを知っていたならば、財物を交付しなかったであろう」という場合に被害者を錯誤に陥れる行為、つまり、「欺く行為」と認めることができるとされています。
本件のVさんは「40万円の価値のある布団を10万円で買える」、「お得だ!」と思ったからこそ、Aさんに10万円を手渡したわけです。
つまり、10万円の価値しかないと知っていたならば、Aさんに10万円を手渡さなかったであろうという関係が認められますから、Aさんの行為は「欺く行為」に当たる可能性が高いでしょう。

= 不実の告知の罪(特定商取引法6条1項2号) =

特定商取引法6条1項2号では、訪問販売の売買締結等の勧誘をする際、訪問販売の売買締結等の申込みの撤回又は解除を妨げるため、「商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価につき、不実のことを告げる行為」をしてはならないとしています。
これに違反した場合は「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(又はこれを併科)」に処せられる可能性があります。
「不実のことを告げる行為」とは、虚偽の説明を行うこと、すなわち事実と異なることを告げる行為のことをいいます。
商品の販売価格について不実のことを告げる行為とは、まさに本件のように、実際には40万円もしない商品をあたかも40万円であるかのようなことを告げる行為をいいます。

= 住居侵入罪(刑法130条前段) =

訪問販売であるからとって、勝手に他人の敷地内や家の中へ上がりこんではいけません。
合理的な理由があって、家人の了解があったと誤信していた場合は別として、そうでない場合、勝手に他人の敷地内へ入ったり、家の中へ上がりこんだ場合は住居侵入罪に問われることもあります。
本罪の法定刑は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。

= 不退去罪(130条後段) =

仮に、敷地内や家の中へ入ることを許されたとしても、相手方から「うちは結構です。」「早く帰ってください。」と立ち退きを求められた場合はすぐに退去しましょう。
そのままそこに居座り続けると、不退去罪に問われる可能性があるからです。
不退去罪の成立要件は「要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった」場合とされています。
確かに、要求を受け、一定時間で退去しないと本罪が成立してしまいますから注意が必要です。

~ おわりに ~

訪問販売をするにあたっては、様々な取り決めがあることかと思います。
そうした取り決めと守るとともに、もし、違反した場合には上記の罪に問われ得ることをしっかりと頭に刻み込んでおきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件少年事件でお困りの方は、まずは、お気軽に0120-631-881までお電話ください。
無料法律相談、初回接見サービスのお問い合わせを24時間受け付けております。
警視庁赤羽警察署までの初回接見費用:36,400円)

特殊詐欺とオレオレ詐欺

2019-05-23

特殊詐欺とオレオレ詐欺

福岡県行橋市に住むAさんは、同じく福岡県行橋市に住む高齢の女性Vさん(80歳)宅に「ばあちゃん、オレだよ。」「風邪をこじらせてしまって声が変わっているかもしれない。」「実は、会社から預かっていた100万円を電車に置き忘れてみつからないんだ。」「このことが会社にばれたら会社をクビになってしまう。」「今すぐオレの口座に100万円振り込んでくれないかな。」などと電話をかけ、Vさんに現金100万円を振り込ませました。
その後、Vさんが親族に相談したところ詐欺であることが発覚。
被害届を受けた福岡県行橋警察署の捜査により、Aさんは詐欺罪で逮捕されました。
(フィクションです)

~ 特殊詐欺とは ~

特殊詐欺という犯罪名はありません。
特殊詐欺とは、不特定の方に対して、対面することなく、電話、はがき、FAX、メール等を使って行う詐欺のことで、「振り込め詐欺」と「振り込め類似詐欺」に分けられます。

振り込め詐欺」は、

・オレオレ詐欺
・還付金詐欺
・架空請求詐欺
・融資保証金詐欺

に分類されます。
「振り込め類似詐欺」は

・金融商品等取引名目の詐欺
・ギャンブル必勝法情報提供名目の詐欺
・異性との交際あっせん名目の詐欺
・その他の特殊詐欺

に分類されます。

* 呼称の変遷 *
2000年前半は「オレオレ詐欺」と呼ばれていましたが、その後詐欺の手口が多様化し、実態と合わなくなったことから2004年12月に警視庁により、オレオレ詐欺を含めた上記4つの詐欺を総称して「振り込め詐欺」と名付けられました。
さらに、2011年4月には「振り込め詐欺」と「振り込め類似詐欺」とを総称して「特殊詐欺」と名付けられ、その後、2013年5月には「振り込め詐欺」に変わる呼称として「母ちゃん助けて詐欺」が発表されました。
しかし、現在のところ「母ちゃん助けて詐欺」は広く定着していないようで、以前として、「オレオレ詐欺」や「振り込め詐欺」などの呼称が使われています。

~ オレオレ詐欺と件数 ~

オレオレ詐欺とは、「電話を利用して親族、会社の上司、警察官、弁護士等を装い、会社での横領、トラブルや交通事故の示談金名目で、現金を預金口座等に振り込ませたり、宅急便や郵送などで送金させるなどの方法によりだまし取る詐欺」のことをいい、次の3つに分類されると言われています。

① 振込み型
ATMから指定した口座に現金を振り込ませる方法

② キャッシュカード受領型
被害者から直接キャッシュカードを受領する方法。警察官役の者が「キャッシュカードが犯罪に使われていた」「口座凍結したいのでキャッシュカードを渡して暗証 番号を教えて欲しい」などと電話をかけ、被害者方に向かわせた者にキャッシュカードを渡し、暗証番号を教えさせる方法

③ 現金受取型
被害者から直接現金を受け取る方法です。受け取る役は「受け子」と呼ばれています。

~ オレオレ詐欺は増加傾向 ~

特殊詐欺の方法が多様化し、オレオレ詐欺の存在が薄れてきたかのように思われがちですが、実は警察におけるオレオレ詐欺の認知件数は近年増加傾向にあります。

警察庁の発表によれば、特殊詐欺の認知件数は平成22年以降平成29年まで増加傾向にあったものの、平成30年は減少に転じています(平成29年の認知件数は1万8212件、平成30年は1万6490件)。
また、被害額も平成29年は394.7億円だったのに対し、平成30年は356.8億円と減少しています。
しかし、オレオレ詐欺の認知件数は、平成29年は8496件だったのに対し平成30年は9134件と増加しており、近年と比べても極めて高い数字で、年々増加傾向にあるといえます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺罪などの刑事事件少年事件を専門の法律事務所です。
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詐欺の受け子に関する判例②

2019-05-19

詐欺の受け子に関する判例②

Aさんは,特殊詐欺グループの一員でした。
Aさんは,詐欺グループの指示役から電話で「おばあちゃんからお金を受け取ってこい。刑事役って設定で金を取りに行ってくれ。」などと言われ,電車及びタクシーを乗り継いで京都府福知山市にある被害者方に向かいました。
しかし,Aさんは,被害者方に着く前に,付近で警戒していた京都府福知山警察署の警察官に,詐欺未遂罪(の共犯)で逮捕されてしまいました。
(平成30年3月22日付最高裁判例の事例をベースに作成したフィクションです)

~ 基となった事件の概要 ~

被害者は69歳の女性でした。
被害者は,本件の前日,おいと名乗る氏名不詳者から電話を受け,仕事の関係で現金を至急必要としているとうそを言われて騙され,おいの系列会社の社員と名乗る男に現金100万円を渡しました。
さらに,被害者はその翌日,警察官をの名乗る氏名不詳者から電話を受け,「昨日,駅の前のところで不審な男を捕まえたんですが,その男があなたの名前を言っています。」「昨日,詐欺の被害に遭っていないですか?口座にはまだいくら残っているのですか?銀行に今すぐ行って全部下ろしたほうがいいですよ。」「前日の100万円を取り返すので協力して欲しい。」「僕,向かいますから。2時間前には到着できるように僕の方で態勢整えますので。」などと言われました。
被害者は金融機関に行って預金口座から現金を払い戻しましたが,自分が騙されているのではないかと気づき,警察署に電話を入れ相談したところ,被害者は警察官から説諭され,自分が騙されていることにはじめて気づいたのです。

~ 前回のおさらい ~

前回は,詐欺既遂罪が①欺罔行為→②相手方の錯誤(騙された)→③錯誤に基づく処分行為(財物の交付)→④財物の移転(受領)という流れ,詐欺未遂罪は①の欺罔行為までにとどまる場合に成立することなどをご説明いたしました。
そして,高裁では,氏名不詳者が被害者に言った文言(①欺罔行為)は,詐欺被害の現実的・具体的危険を発生させる行為とは認めず詐欺未遂罪は成立しないとし,被告人(Aさん)を無罪としたこともご説明しました。

~ 最高裁の結論 ~

最高裁は詐欺未遂罪の成立を認め,被告人(Aさん)を有罪としました。
そして,裁判官の補足意見では次のように述べられています。

まず,補足引意見では,「犯罪の実行行為自体ではなくとも,実行行為に「密接」であって,被害を生じさせる客観的な危険性が認められる行為に着手することによっても未遂罪は成立しうる。」としています。
つまり,詐欺罪の欺罔行為としての「自己に現金を交付するよう要求する行為」(実行行為)がなくても詐欺未遂罪が成立することを認めているのです。

この点,本件では,被害者宅を訪問した被告人(Aさん)が現金を交付させることが計画され,その時点で「人を欺く行為(欺罔行為)」が予定されており,警察官の訪問を予告する2回目の電話(「前日の100万円を取り返すので協力して欲しい。」「僕,向かいますから。2時間前には到着できるように僕の方で態勢整えますので。」と言った電話)はその行為に「密接」なものとしています。
そして,1回目の電話(「昨日,駅の前のところで不審な男を捕まえたんですが,その男があなたの名前を言っています。」「昨日,詐欺の被害に遭っていないですか?口座にはまだいくら残っているのですか?銀行に今すぐ行って全部下ろしたほうがいいですよ。」と言った電話)と一連のものとして行われた2回目の電話の時点で,被害者が一連の嘘により欺かれて現金を交付する危険性が著しく高まったといえるから,2回目の電話によって,詐欺未遂罪の成立が肯定できる,としています。
つまり,2回目の電話を詐欺罪の①欺罔行為(実行行為)として認めているのです。

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詐欺の受け子に関する判例①

2019-05-15

詐欺の受け子に関する判例①

Aさんは,特殊詐欺グループの一員でした。
Aさんは,詐欺グループの指示役から電話で「京都府福知山市に住んでいるおばあちゃんからお金を受け取ってこい。刑事役って設定で金を取りに行ってくれ。」などと言われ,電車及びタクシーを乗り継いで京都府福知山市にある被害者方に向かいました。
しかし,Aさんは,被害者方に着く前に,付近で警戒していた京都府福知山警察署の警察官に,詐欺未遂罪(の共犯)で逮捕されてしまいました。
(平成30年3月22日付最高裁判例の事例をベースに作成したフィクションです)

~ 基となった事件の概要 ~

被害者は69歳の女性でした。
被害者は,本件の前日,おいと名乗る氏名不詳者から電話を受け,仕事の関係で現金を至急必要としているとうそを言われて騙され,おいの系列会社の社員と名乗る男に現金100万円を渡しました。
さらに,被害者はその翌日,警察官をの名乗る氏名不詳者から電話を受け,「昨日,駅の前のところで不審な男を捕まえたんですが,その男があなたの名前を言っています。」「昨日,詐欺の被害に遭っていないですか?口座にはまだいくら残っているのですか?銀行に今すぐ行って全部下ろしたほうがいいですよ。」「前日の100万円を取り返すので協力して欲しい。」「僕,向かいますから。2時間前には到着できるように僕の方で態勢整えますので。」などと言われました。
被害者は金融機関に行って預金口座から現金を払い戻しましたが,自分が騙されているのではないかと気づき,警察署に電話を入れ相談したところ,被害者は警察官から説諭され,自分が騙されていることにはじめて気づいたのです。

~ 事件の問題点 ~

詐欺既遂罪は,①欺罔行為→②相手方の錯誤(騙された)→③錯誤に基づく処分行為(財物の交付)→④財物の移転(受領)という一連の流れがあってはじめて成立する犯罪です。
また,詐欺未遂罪は,①欺罔行為が行われたものの(なお,相手方が騙されたかどうかは関係ない),何らかの事情によって③相手方が処分行為を行わなかった場合に成立する犯罪です。
本件では,この①欺罔行為の有無(実行の着手の有無)が問題となった事案でした。

本来,欺罔行為とは,行為者(犯人)が財物の交付に向けて人を錯誤に陥らせる行為と言われ,詐欺被害の結果を発生させる現実的・具体的な危険を孕んでいるものでなければなりません。
例えば,夫が海外出張中である妻に,「昨日,夫が日本国内で事故を起こしたから示談金として何円振り込んでください。」と言っても,それは欺罔行為には当たらないわけです。

本件でも,警察官を名乗る氏名不詳者は「前日の100万円を取り返すので協力して欲しい。」とだけしか言っておらず,自己に現金を交付するよう要求しているわけではありません。
したがって,本件では,詐欺罪の①欺罔行為の有無が問題となるわけです。

仮に,詐欺罪の①欺罔行為がないと判断されれば,特殊詐欺に協力したAさんも無罪となります。

~ 高裁が出した結論 ~

基となった事件の第一審では有罪判決が出されました。
そして,弁護人が量刑不当で控訴したところ,高裁(第二審:平成29年2月2日)は,「被害者に対し警察官を装って預金を現金化するよう説得する行為(「昨日,詐欺の被害に遭っていないですか?口座にはまだいくら残っているのですか?銀行に今すぐ行って全部下ろしたほうがいいですよ。」「前日の100万円を取り返すので協力して欲しい。」と言う行為)は,氏名不詳者にとっては財物の交付へ向けた準備行為を促す行為であるものの,それにとどまるのであって,詐欺被害の現実的・具体的危険を発生させる行為とは認められない」などと判示し,被告人を無罪としました。

これに対し,検察側が上告しました。
最高裁がどのような結論を出したかについては次回ご説明いたします。

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神戸市兵庫区の新紙幣詐欺事件

2019-05-11

神戸市兵庫区の新紙幣詐欺事件

神戸市兵庫区在住の公務員Aさんは数年後に新紙幣が発行されることに目を付け,高齢者を対象に「新紙幣詐欺」を考え付いた。
手口は一人暮らしの高齢者に電話をかけ,市役所地域課の職員であると言い,「新紙幣が発行されると現在の紙幣は使えなくなる。ご家庭でタンス預金などで保管してる現金はないですか。」と呼びかけ,高齢者の代わりに銀行口座に預けるという名目で現金を騙し取るものであった。
高齢で一人暮らしであり,体が不自由な神戸市兵庫区在住のVさんはAさんから電話を受け,Aさんを信用し,自宅のタンスに保管してあった現金200万円とキャッシュカードをAさんに手渡した。
Aさんはそのまま現金200万円およびキャッシュカードを持ち去った。
Aさんが同様の手口で電話をかけていたところ,電話を受けたV2さんが不審に思い兵庫県兵庫警察署に通報し,現金を受け取りに来たAさんは待機していた兵庫県兵庫警察署の警察官によって詐欺未遂罪の疑いで逮捕された。
(フィクションです)

~新紙幣~

今年の4月9日に2024年上半期を目途に紙幣を刷新することが発表され,肖像は1万円札が渋沢栄一,5千円札が津田梅子,1千円札が北里柴三郎となりました。
2千円札については流通が少ないため刷新が見送られました。
政府および日本銀行は偽造防止の観点から約20年ごとに紙幣を刷新しており,前回の刷新は2004年でした。

なお,通貨偽造および偽造通貨行使の罪は刑法148条に規定されており,法定刑は3年以上または無期懲役と非常に重いものとなっています。
また,偽造通貨を利用した取引は詐欺罪を構成しますが,不可罰的事後行為として偽造通貨行使罪に吸収されます(大判明治45年6月30日)。
ただし,偽造通貨ではなく,偽造された有価証券の場合には通常の詐欺罪が成立します。

~新紙幣詐欺~

政府は今後,今回のケースのような古い紙幣が使えなくなるといった新紙幣詐欺のような手口の詐欺に注意するように呼び掛けています。
これまで日本銀行は53種類の紙幣を発行していますが,関東大震災の際の焼失兌換券の整理,終戦直後のインフレ阻止のための新券切替え,額面1円の少額の整理といった特別な措置によって通用力を失った31種類を除き,一度発行された紙幣は通用力を失いません。
そのため,現在は22種類の紙幣が有効となっており,新紙幣詐欺で用いられる文言のように現在通用している紙幣や硬貨が使えなくなる,ということは基本的にはないと思われます。

~弁護活動~

詐欺罪10年以下の懲役刑のみが規定されており,起訴されてしまった場合には刑事裁判を受けることになります。
また,詐欺罪で逮捕されてしまった場合には多くの場合,検察官によって勾留請求がなされ,最長で20日間身柄を拘束されてしまいます。
その後,起訴されてしまった場合には被疑者としての勾留に引続き,被告人として勾留されてしまうことになります。
そうなれば被告人は,被疑者段階から合わせてさらに長期の身体拘束を受けることになるのです。

そのため,弁護士は被疑者・被告人の身柄解放に向けた活動をします。
具体的には,検察官に勾留請求をしないように意見書を提出したり勾留決定に対する準抗告を提出します。
起訴されてしまい,被告人として勾留されてしまった場合には保釈請求をします。
これらの請求が認められれば,身柄解放されることになります。

また,弁護士は多くの場合,被害者の方と被害弁償を含めた示談交渉を行います。
被害者の方の中には加害者の処罰はもちろんですが,ご自身の被害弁償を求める場合もあります。
弁護士は弁護活動の一環として被害者の方への被害弁償を行うことにより,被害者の方の救済という役割も担っています。

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新紙幣詐欺等の詐欺事件を起こしてしまいお困り・お悩みの方は0120-631-881までお気軽にご相談ください。
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兵庫県兵庫警察署での初回接見費用:35,100円)

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