詐欺の受け子に関する判例①

詐欺の受け子に関する判例①

Aさんは,特殊詐欺グループの一員でした。
Aさんは,詐欺グループの指示役から電話で「京都府福知山市に住んでいるおばあちゃんからお金を受け取ってこい。刑事役って設定で金を取りに行ってくれ。」などと言われ,電車及びタクシーを乗り継いで京都府福知山市にある被害者方に向かいました。
しかし,Aさんは,被害者方に着く前に,付近で警戒していた京都府福知山警察署の警察官に,詐欺未遂罪(の共犯)で逮捕されてしまいました。
(平成30年3月22日付最高裁判例の事例をベースに作成したフィクションです)

~ 基となった事件の概要 ~

被害者は69歳の女性でした。
被害者は,本件の前日,おいと名乗る氏名不詳者から電話を受け,仕事の関係で現金を至急必要としているとうそを言われて騙され,おいの系列会社の社員と名乗る男に現金100万円を渡しました。
さらに,被害者はその翌日,警察官をの名乗る氏名不詳者から電話を受け,「昨日,駅の前のところで不審な男を捕まえたんですが,その男があなたの名前を言っています。」「昨日,詐欺の被害に遭っていないですか?口座にはまだいくら残っているのですか?銀行に今すぐ行って全部下ろしたほうがいいですよ。」「前日の100万円を取り返すので協力して欲しい。」「僕,向かいますから。2時間前には到着できるように僕の方で態勢整えますので。」などと言われました。
被害者は金融機関に行って預金口座から現金を払い戻しましたが,自分が騙されているのではないかと気づき,警察署に電話を入れ相談したところ,被害者は警察官から説諭され,自分が騙されていることにはじめて気づいたのです。

~ 事件の問題点 ~

詐欺既遂罪は,①欺罔行為→②相手方の錯誤(騙された)→③錯誤に基づく処分行為(財物の交付)→④財物の移転(受領)という一連の流れがあってはじめて成立する犯罪です。
また,詐欺未遂罪は,①欺罔行為が行われたものの(なお,相手方が騙されたかどうかは関係ない),何らかの事情によって③相手方が処分行為を行わなかった場合に成立する犯罪です。
本件では,この①欺罔行為の有無(実行の着手の有無)が問題となった事案でした。

本来,欺罔行為とは,行為者(犯人)が財物の交付に向けて人を錯誤に陥らせる行為と言われ,詐欺被害の結果を発生させる現実的・具体的な危険を孕んでいるものでなければなりません。
例えば,夫が海外出張中である妻に,「昨日,夫が日本国内で事故を起こしたから示談金として何円振り込んでください。」と言っても,それは欺罔行為には当たらないわけです。

本件でも,警察官を名乗る氏名不詳者は「前日の100万円を取り返すので協力して欲しい。」とだけしか言っておらず,自己に現金を交付するよう要求しているわけではありません。
したがって,本件では,詐欺罪の①欺罔行為の有無が問題となるわけです。

仮に,詐欺罪の①欺罔行為がないと判断されれば,特殊詐欺に協力したAさんも無罪となります。

~ 高裁が出した結論 ~

基となった事件の第一審では有罪判決が出されました。
そして,弁護人が量刑不当で控訴したところ,高裁(第二審:平成29年2月2日)は,「被害者に対し警察官を装って預金を現金化するよう説得する行為(「昨日,詐欺の被害に遭っていないですか?口座にはまだいくら残っているのですか?銀行に今すぐ行って全部下ろしたほうがいいですよ。」「前日の100万円を取り返すので協力して欲しい。」と言う行為)は,氏名不詳者にとっては財物の交付へ向けた準備行為を促す行為であるものの,それにとどまるのであって,詐欺被害の現実的・具体的危険を発生させる行為とは認められない」などと判示し,被告人を無罪としました。

これに対し,検察側が上告しました。
最高裁がどのような結論を出したかについては次回ご説明いたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,詐欺罪をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
詐欺罪での刑事事件少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。
無料法律相談,初回接見サービスを24時間受け付けております。
京都府福知山警察署までの初回接見費用:上記フリーダイヤルにてご案内いたします)

 

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー