その他の詐欺罪、消費者保護のための規定

詐欺破産罪・出資法・宅地建物取引業法(宅建業法)・特定商取引に関する法律(特商法)

1.詐欺破産罪

 破産法 第265条

(第1項) 
破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(相続財産の破産にあっては相続財産、信託財産の破産にあっては信託財産。次項において同じ。)について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第四号に掲げる行為の相手方となった者も、破産手続開始の決定が確定したときは、同様とする。

  1. 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産、信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し、又は損壊する行為
  2. 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
  3. 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
  4. 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為

(第2項)
前項に規定するもののほか、債務者について破産手続開始の決定がされ、又は保全管理命令が発せられたことを認識しながら、債権者を害する目的で、破産管財人の承諾その他の正当な理由がなく、その債務者の財産を取得し、又は第三者に取得させた者も、同項と同様とする。

詐欺破産罪とは、詐欺的行為によって、破産債権者に配当すべき財産を隠匿・損壊したり、債務を仮装したりする行為を罰する破産犯罪です。

どうせ自己破産して財産が没収されるなら、破産手続開始決定前に不動産を妻にプレゼントしようと思い、譲渡する場合があります。しかし、このような行為をすれば、詐欺破産罪が成立する可能性があり、最大で10年以下の懲役や1000万円以下の罰金が科せられます。

また、詐欺破産罪の有罪が確定すると、免責(借金がなくなること)確定後でも免責決定が取消される可能性があります(そもそも、詐欺破産罪に該当する行為が判明すれば免責決定すらされません)。

つまり、借金は残ったままとなり借金を返済し続ける必要が出てきます。破産手続は、 債権者からすれば、完全な債権の回収を図れなくなるという非常に不利益な手続です。ただでさえ債権者にとっては不利益なのにもかかわらず、借金を背負っている人が故意に自分の財産を処分した場合には債権者を著しく不利益に扱うこととなります。

そこで、債権者を不利益にする行為の中でも特に悪質な行為、すなわち、破産手続を詐欺的に利用しようとする行為を処罰し、そのような行為を抑制しようとするのが、この詐欺破産罪です。もっとも、これらのいずれの行為についても「債権者を害する目的」がなければ犯罪としては成立しません。

たとえば、不注意であやまって債務者の財産を紛失・滅失等してしまったというような場合等であれば、詐欺破産罪として処罰されません。

 

2.その他の破産に関する犯罪(破産犯罪)

破産者は、裁判所や裁判所が任命した破産管財人に対して、説明責任や情報開示の責任があります。これらの責任を果たさなかったり、妨害すると処罰される可能性があります。

  • 破産管財人等の特別背任罪
    10年以下の懲役か1,000万円以下の罰金または併科
  • 債務者による説明及び検査の拒絶等の罪
    3年以下の懲役か300万円以下の罰金または併科
  • 債務者による重要財産開示拒絶等の罪
    3年以下の懲役か300万円以下の罰金または併科
  • 債務者による業務及び財産の状況に関する物件の隠滅等の罪
    3年以下の懲役か300万円以下の罰金または併科
  • 債務者による審尋における説明拒絶等の罪
    3年以下の懲役か300万円以下の罰金または併科
  • 債務者による破産管財人等に対する職務妨害の罪
    3年以下の懲役か300万円以下の罰金または併科

 

3. 出資法違反

出資法 第5条【高金利の処罰】

(第1項)
金銭の貸付けを行う者が、年109.5パーセント(2月29日を含む1年については年109.8パーセントとし、1日当たりについては0.3パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

(第2項)
前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年20パーセントを超える割合による利息の契約をしたときは、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

(第3項)
前2項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年109.5パーセント(2月29日を含む1年については年109.8パーセントとし、1日当たりについては0.3パーセントとする。)を超える割合による利息の契約をしたときは、10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

出資法の正式名称は「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」と呼びます。出資法5条では、高金利での貸付けを処罰する規定を設けています。グレーゾーン金利の撤廃に加え、闇金対策のための規定でもあります。

金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合に金利が20%を超えていると出資法違反で刑事罰が課せられます。つまり、貸金業者は利息制限法に基づき、貸付額に応じて15~20%の上限金利での貸付けを行わなければなりません。

 

4.宅地建物取引業法違反(宅建業法違反)

不動産の売買をする場合、大金が動きます。特に素人である消費者が不動産取引をするのは1生に1回あるかないかの方も少なくありません。

一方で、業者は不動産取引のプロです。そこで、プロの業者に素人の消費者が食い物にされないように宅地建物取引業法(宅建業法)では、プロの業者が行き過ぎた行為をした場合にはペナルティを課しています。

 

【1年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又はこの併科となる行為】

  • 故意に重要事項を告げず、又は不実のことを告げる行為(宅建業法80条・47条1号)
  • 不当に高額の報酬を要求する行為(同法同条2号)

 

【6月以下の懲役若しくは20万円以下の罰金又はこの併科となる行為】

  • 誇大広告(宅建業法81条・同法32条)
  • 宅地建物の登記若しくは引渡、又は取引の対価支払の不当な遅延行為(同法81条・44条)
  • 手付についての貸付その他信用の供与をすることにより契約の締結を誘因する行為(同法81条・47条3号)
    例えば、宅建業者が売主となって売買契約を締結するにあたり、手付金を後日支払うという取決めをすることはできません。

 

5.特定商取引に関する法律(「特商法」)

特定商取引(訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売に係る取引、連鎖販売取引、特定継続的役務提供に係る取引、業務提供誘引販売取引並びに訪問購入に係る取引をいう)を公正にし、及び購入者等が受けることのある損害の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護し、あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的として制定されました。

特定商取引に関する法律では禁止行為を規定し、違反業者には重い罰則が課されます。主な罰則としては下記が挙げられます。また、両罰規定(※)も設けられています。

(※)法人などの事業主体の代表者や従業者などが、業務に関して違反行為をした場合に、直接の違反者を罰するほか、その事業主体をも罰することを認めている規定のこと。

 

不実告知、事実不告知、威迫困惑行為

個人:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
法人:1億円以下の罰金

 

目的隠匿型誘引行為

事業者が、勧誘目的を告げずに、路上等で呼び止めて同行させ、または電話等で呼び出した消費者に対し、公衆の出入りする場所以外の場所において、その契約の締結について勧誘をする行為のことです。

個人:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
法人:1億円以下の罰金

 

書面不交付等

個人:6月以下の懲役又は100万円以下の罰金
法人:100万円以下の罰金

 

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