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自動車保険金詐欺で詐欺未遂罪と傷害罪

2019-08-07

自動車保険金詐欺で詐欺未遂罪と傷害罪

東京都調布市に住むAさんは、お金に困っていたことから自己名義の自動車にかけていた任意保険会社から保険金をだまし取ろうと考えました。
そこで、Aさんは、同じくお金に困っていた知人Bさんに、「保険金詐欺しないか?」「具体的には、オレが車を運転するからお前は家の前の道路に立っていてくれ。」「そして、オレが車を運転して家の駐車場から出たところで、オレの家を訪ねてきたお前とぶつかってしまった、とうい風に見せかけるのだ。」といい、Bさんから承諾を得ました。
そして、Aさんは車を運転し、家の駐車場から車を右折させて道路に出たところ、右端に立っていたBさんに車を衝突させ、Bさんに加療約1か月の骨折の怪我を負わせてしまいました。
その後、Aさんは任意保険会社に保険金を請求しました。
ところが、保険会社の事故調査から本件事故が保険金を目的とした偽造事故ではないかとの疑いがもたれ、結局、保険金が支払われることはありませんでした。
そして、Aさんは詐欺未遂罪の共犯、Bさんに対する傷害罪警視庁調布警察署に逮捕されてしまいました(Bさんも詐欺未遂罪の共犯で逮捕)。
(フィクションです。)

~ 保険金詐欺 ~

保険金詐欺(ほけんきんさぎ)とは、被保険者(保険の対象になる人)が病気・ケガ・死亡したと見せかけ保険会社から保険金を不正に請求する行為をいいます。
保険金詐欺の種類としては、

・被保険者が死亡していないのに死亡したかのように装う、あるいは、被保険者を殺害し自殺に見せかけ生命保険金を騙し取る生命保険金詐欺
・非保険建物を放火させ焼損させたのに、あたかも偶然の火災であったかのように装って火災保険金を騙し取る火災保険金詐欺
・相手方と通謀して偶然の交通事故のように装い任意保険金を騙し取る自動車保険金詐欺

などがあり、本件は最後の自動車保険金詐欺に当たります。
Aさんは詐欺未遂罪傷害罪の疑いがかけられています。

~ 詐欺罪 ~

詐欺罪は刑法246条に規定されています。

刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

詐欺罪が成立するためには、①人を欺く行為(=欺罔行為)、②人の錯誤(簡単にいえば勘違い)を引き起こし、③処分権限ある人に財物を移転させ、④その相手方に財産的損害を与えたこと、が必要となります。

保険金詐欺でいう「人」とは、実際に保険金支払いを担当した任意保険会社の担当者ということになるでしょう。
「欺罔行為」は要するに、偶然の交通事故だ、と装う行為ということになるでしょう。
保険金請求関係の書類にその旨記載する行為が一番に考えられます。交通事故である旨の記載をされた書類を受け取った保険会社の担当者とすれば、それが故意ではなく偶然(過失)による交通事故と考えるのが通常でしょう。
つまり、「錯誤」が認められることになります。

なお、詐欺未遂罪が成立するには①の欺罔行為(詐欺の実行行為)が必要とされています。
ただし、②までは必要ありません。
つまり、相手方が錯誤に陥ったかどうかは関係なく、欺罔行為があれば詐欺未遂罪が成立してしまう可能性があります。

~ 傷害罪 ~

傷害罪は刑法204条に規定されています。

刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

本罪は、相手に怪我をさせようと思って暴行を加えた場合のほか怪我させるつもりはなく暴行を加えた場合でも成立しうる罪ですが、本件の場合は前者の場合に該当します。
また、暴行時に相手方が怪我をするかどうか、どんな怪我をどの程度するかの認識は不要とされています。
暴行と結果(怪我=傷害)との間に因果関係が認められれば足ります。
本件の暴行とは、もちろん、Aさんが車を運転してBさんに車を衝突させる行為です。

なお、BさんがAさんの暴行につき承諾をしており、Aさんの行為の違法性が阻却される(違法ではない)かどうかが問題となりえますが、判例(昭和55年11月13日)は、「被害者が身体の承諾をした場合に傷害罪が成立するかどうかは、単に承諾が存在するという事実だけではなく、承諾を得た動機、目的、身体傷害の手段、方法、損傷の部位、程度などの諸般の事情を照らし合わせて決すべきである」として、「Aさんの行為の違法性は阻却されない(つまり違法である)」としました。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。
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専門のスタッフが24時間体制で、初回接見サービス、無料法律相談の予約を受け付けております。

特殊詐欺グループがだまされたふり作戦??

2019-08-03

特殊詐欺グループがだまされたふり作戦??

東京都新宿区に住む大学生のAさん(21歳)は特殊詐欺グループに所属し、高齢者などに嘘の電話をかける「かけ子」役として働いていました。
Aさんは、ある日、東京都新宿区に住む高齢者Vさんに目をつけ、電話帳からVさんの電話番号を探し出し、Vさんに電話をしました。
そして、Aさんは電話に出たVさんに、「私は警視庁牛込警察署の刑事二課に所属するAです。」「最近、お住いの地域で弁護士を名乗る男から電話がかかってきて現金をだまし取られるという被害が相次いでいます。」「注意喚起のために電話させていただきました。」と言いました。
すると、AさんはVさんから「そういえば弁護士から「孫が交通事故を起こした件で示談金を受け取りに行く。」などという電話がありました。」「本日の午後3時に弁護士が自宅に来る予定です。」と言われました。
そこで、Aさんは「それは弁護士の名をかたる詐欺かもしれません。」「今から捜査員をご自宅に向かわせます。」「我々は弁護士の後を追って詐欺グループ全員を検挙したいので、Vさんはあくまで弁護士に「だまされたふり」をしてください。」「ただ、示談金はこちらで用意するわけにはいきませんので、申し訳ありませんがVさんで用意してください。」と言いました。
すると、AさんはVさんから「分かりました。」と言われたことから、特殊詐欺グループに所属する受け子役の3名にのうち2名に捜査員の役を、1名に弁護士の役を担わせてVさん宅へ向かわせ、Vさんから現金100万円を受け取らせました。
しかし、その後、Vさんから被害届を受けた警視庁牛込警察署の捜査により、Aさん他、特殊詐欺グループのメンバーは全員逮捕されてしまいました。
逮捕の通知を受けたAさんの母親は驚き、刑事事件専門の弁護士に接見を依頼しました。
(実際にあった事例を基に作成したフィクションです。)

~ だまされたふり作戦とは? ~

だまされたふり作戦とは、詐欺の電話をかけた際、被害者がかけた相手に話を合わせ、情報を聞き出したり、警察に通報して、現金を取りに来た犯人などを検挙する捜査手法のことをいいます。
だまされたふり作戦では、場合によっては、現金を受け取りに来た受け子役を泳がせ(その場で逮捕せず)、特殊詐欺グループのアジトを特定した上で当該詐欺にかかわった特殊詐欺グループ全員を検挙することで組織の壊滅につなげるということも行われているようです。
このだまされたふり作戦によって、特殊詐欺グループの撲滅に一定の効果はあげられているようです。

~ だまされたふり作戦を逆手にとる詐欺 ~

ところが、このだまされたふり作戦を逆手に取って高齢者などから現金をだまし取る詐欺が横行しているようです。
上記の事例はまさにこの一場面を記載しています。
弁護士役の者も、警察官役の者もすべて特殊詐欺グループの一員で、特殊詐欺グループの者をだまされたふり作戦で検挙するという話は「嘘」なのです。
まず、弁護士役の者があらかじめ高齢者Vさんに「孫が交通事故を起こした」「その件の示談交渉を担当している弁護士」「示談が成立したので示談金を受け取りに行く」などという嘘を言います。
そして、Aさんのようなかけ子役が上記のような嘘の話をし、話を信じ切ったVさんから現金をだまし取るのです。

なお、警察のホームページなどでは、

・事前に警察が電話でだまされたふり作戦への協力要請をすることはない(被害者から相談等を受け付けてはじめて協力を依頼する場合がある)
・犯人に渡す現金は模造品のため、被害者が直接容易する必要はない

などと注意喚起されています。

~ お子様が特殊詐欺で逮捕されたら? ~

まず、逮捕直後の弁護人以外の者との面会はほぼ不可能です(法的には認められていません)。
逮捕されると釈放されることはほぼありえず、勾留という長期間の身柄拘束を受けることになります。
その後、起訴されれば、保釈釈放されない限り、さらに拘束期間は長くなることでしょう。
余罪が判明、立件されれば、再び、再逮捕され、上記の経過を辿ることになれば拘束期間はさらに伸びます。
また、特殊詐欺は組織的に行われることから、弁護人以外の者との接見を禁じる接見禁止決定を出されることが多いかと思います。
そうすると、勾留後でもご家族等の面会は禁じられてしまいます。

この点、弁護士であれば起訴前には一定の制約はあるものの、基本的に、制限なく面会することができます。
また、勾留に対する不服申し立てや保釈請求などによって早期の釈放を実現することが可能ですし、接見禁止決定が出た場合はその全部、あるいは一部の解除に努めることも可能です。

お子様が特殊詐欺で逮捕された場合は、ぜひ弁護士に接見や弁護活動を依頼することをお勧めいたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、特殊詐欺をはじめとする刑事事件少年事件専門の法律事務所です。
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模造通貨を使って詐欺

2019-07-30

模造通貨を使って詐欺

福岡県豊前市に住むAさんは、お金に困っていたため、現金を騙し取る方法をインターネットで調べた結果、模造通貨を使って現金を騙し取ろうと考えました。
そこで、Aさんは、インターネットで「百万円札メモ帳」というおもちゃの紙幣を購入し、それをコピーして表、裏を張り合わせて偽の1万円札を作り出しました。
そして、Aさんは、予め目を付けていた高齢者Vさん(82歳)が営んでいるたばこ店へ行きました。
Aさんは、同たばこ店で、Vさんに偽の1万円札を見せ、「おばあちゃん、これと千円札10枚と両替してくれない?」などと言って1万円札をVさんに手渡し、Vさんから千円札10枚を受け取りました。
その後、偽紙幣に「壱万円」ではなく「百万円」と書かれていることに気づいたVさんは福岡県豊前警察署に通報し、被害届を提出しました。
Aさんは福岡県豊前警察署詐欺罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)

~ 通貨偽造・同行使罪では処罰されないの? ~

通用する通貨を偽造した場合は刑法148条1項で、それを行使した場合は同条2項が適用され処罰される可能性があります。

刑法148条1項
行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。

刑法148条2項
偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使のも目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項(刑法148条1項)と同様とする。

行使」とは、偽造・変造した通貨を真正な通貨として(本物の通貨として)流通に置くことをいいます。
また、通貨発行権者(政府・日本銀行)でない者が、真正の通貨の外観を有するものを作ること、「変造」とは、通貨発行権者でない者が、真正な通貨に加工して、別個の、真正な通貨と紛らわしい外観を有する物を作ることをいいます。

ところで、通貨偽造・同行使罪で処罰することによって守られるべき法益は、「通貨に対する一般人の信用」とされています。
日常生活で使われる貨幣や紙幣が本物かどうか、取り引きのたびに毎回、怪しまなければいけないような事態となれば、経済活動は大混乱となります。
そこで、そのような事態が起きないよう、刑法は、通貨偽造等の行為を厳しく処罰することとしているのです。
通貨偽造・同行使罪の保護法益が「通貨に対する一般人の信用」であることから、その通貨が誰の目から見ても偽造通貨ではないと分かるようであれば経済活動が混乱することはなく、通貨偽造・同行使罪で保護する必要はありません。
そこで、「偽造」というためには、「一般人が通常の注意力で真正の通貨と誤認する程度に作り出されたもの」でなければならないとされています。

本件通貨は、単に、表には「百万円」と書かれている「百万円札メモ帳」というおもちゃの紙幣をコピーしてその表、裏を張り付けただけの稚拙な紙幣でした。
そうであれば、一般人の通常の注意力をもってすれば、真正な通貨ではないことは見抜けるはずです。
そこで、本件では、通貨偽造罪は適用されなかったものと考えられます。

~ 通貨及証券模造取締法で処罰される可能性も ~

なお、「偽造」までには至らない外観を有する通貨等を製造、販売した場合は、明治28年に制定された通貨及証券模造取締法という法律で処罰される可能性があります。

第1条 貨幣、政府発行紙幣、銀行紙幣、兌換銀行券、国債証券及地方債証券ニ紛ハシキ外観ヲ有スルモノヲ製造シ又ハ販売スルコトヲ得ス
第2条 前条ニ違犯シタル者ハ1月以上3年以下ノ重禁錮ニ処シ5円以上50円以下ノ罰金ヲ附加ス

「紛ハシキ外観」は偽造の程度より広く解されますので、たとえ一見すれば本物とは違うと分かる程度であってもよいとされています。
また、本罪は、通貨偽造罪と異なり、「行使の目的」が必要とされていません。
したがって、何ら目的もなく単に製造、販売した場合でも処罰されるおそれがあります。

~ 詐欺罪との関係 ~

仮に、通貨偽造行使罪が成立した場合は、詐欺罪は成立しません。
偽造通貨を行使する際には一般的に欺罔行為(騙す行為)を伴い、偽造通貨行使罪は詐欺罪を当然に予定していると考えられているからです。
なお、通貨及証券模造取締法は製造・販売行為を処罰する法律で、詐欺罪の騙す行為とは別個の行為と考えられますから、通貨及証券模造取締法で処罰される場合は詐欺罪でも処罰される可能性があります。

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特殊詐欺と勾留

2019-07-26

特殊詐欺と勾留

京都市西京区に住むAさん(19歳)は、特殊詐欺の件で京都府西京警察署に逮捕され、その後勾留されてしまいました。
逮捕の通知を受けたAさんの母親は、早期に釈放してもらうべく、弁護士に弁護活動を依頼しました。
(フィクションです)

~ はじめに ~

刑事事件において勾留という言葉を聴かれることは多いかと思います。
特に、近年、マスコミ等で取り上げられることの多い特殊詐欺は、多くの者が役割を分担して行われることから、逮捕されると釈放されずに勾留されることが多いと思われます。
そこで、今回は、この勾留に関する基本的知識についてご紹介したいと思います。

~ 勾留 ~

勾留」とは、被疑者または被告人の身体の自由を拘束する裁判及び執行のことをいいます。
勾留は、起訴される前の被疑者勾留と起訴された後の被告人勾留に分けられますから、以下では、それぞれ分けてご紹介いたします。

~ 被疑者勾留 ~

被疑者勾留は起訴される前の勾留をいいます。
起訴される前は、捜査機関(警察、検察)が起訴に向けて様々な証拠を集める期間です。
そこで、勾留は、事件の全容を把握している「検察官の請求」を前提とします。
そして、請求を受けた裁判官が勾留の許否を判断します。

* 勾留期間 *
勾留期間は、検察官の請求のあった日から数えて10日間です。
例えば、令和元年6月19日に勾留請求があった場合の勾留満了日(勾留が終わる日)は同月28日です。
ただし、検察官が勾留期間を延長することにつき「やむを得ない事情」があると判断した場合は、勾留期間の延長を請求されることがあります。
請求期間の上限は10日間で、請求を受けた裁判官は独自の裁量で延長期間を決めることができます(例えば、検察官が10日間の延長請求しても、裁判官の判断で8日間に短縮されることがあります)。

特殊詐欺の場合、多くは勾留期間が延長されることと思います。

* 接見指定 *
接見指定とは、弁護士が身体の拘束を受けた方と接見するに当たり、捜査機関側から接見の日時、場所、時間を指定されることをいいます。

捜査機関側の捜査の必要性に配慮して、起訴前に限り認められています。
接見交通権は重要な権利であるため、指定はかなり限定的な場合のみ認められると解されています。

~ 被告人勾留 ~

被告人勾留は起訴された後の勾留をいいます。
起訴されたというわけですから、証拠はそろっており、したがって起訴前に比べ捜査の必要性は減退しています。
被疑者勾留されている場合は、起訴があったと同時に被告人勾留に切り替わります。

* 勾留期間 *
勾留期間は、公訴の提起があった日から2か月です。
その後は、特に継続の必要がある場合に、決定をもって1か月ごとに更新されます。

* 接見指定 *
起訴後の弁護士に対する接見指定は違法です(できません)。

~ 勾留と釈放 ~

勾留を解く(釈放する)ために、様々な対抗手段を講じることが必要です。

ここでも、被疑者勾留と被告人勾留の場合にわけてご紹介いたします。

= 被疑者勾留 =
被疑者勾留の場合、まず、検察官に勾留請求しないよう働きかけたり、裁判官に勾留の決定を出さないよう働きかけることができます。
ただし、これは法的な手段ではありません。
法的な手段としては、勾留決定が出た後に勾留裁判に対する不服申し立て(準抗告)をすることが考えられます。
なお、被疑者勾留の場合、被告人勾留と比べ身柄拘束期間が短いことから保釈請求は認められていません。

= 被告人勾留 =
被告人勾留の場合の主な対抗手段としては保釈請求でしょう。
その他、勾留更新決定に対する準抗告、抗告の手段なども考えられます。

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無賃乗車で逮捕(早期釈放)

2019-07-22

無賃乗車で逮捕(早期釈放)

◇事件◇

会社員のAさんは、週末の金曜日に職場の同僚と共に、神戸市長田区の繁華街でお酒を飲みました。
居酒屋やバーをはしご酒したAさんが、同僚と別れて帰宅しようとしたのは深夜0時を過ぎており、既に終電はなく、財布の中にも数百円しか残っていませんでした。
普段であれば、奥さんに車で迎えに来てもらうのですが、今日は、実家に帰省しており奥さんに連絡をする事ができないAさんは、仕方なく、自宅に向けて歩き始めました。
しかし自宅まで10キロ以上もあり、途中で疲れてしまったAさんは、たまたま通りかかったタクシーに乗車して自宅近くの住所を目的地に告げました。
そして、目的地の近くにあるコンビニに差し掛かった際に、Aさんは「トイレをするからコンビニに止めてくれ。」と運転手に告げてタクシーを停止させました。
Aさんはタクシーから降りるとすぐに走って逃げようとしましたが、追いかけてきた運転手に捕まってしまい、兵庫県長田警察署に通報されてしまいました。
Aさんは兵庫県長田警察署に連行されて取調べの後に留置場に収容されています。
(フィクションです)

◇詐欺罪◇

詐欺罪(刑法第246条)
1 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。(刑法抜粋)

~欺罔行為~

上記の条文を呼んでいただければ分かるように、詐欺罪が成立するには「人を騙す」という行為が絶対的に必要となります。
これを法律的には「欺罔行為」といいますが、欺罔行為の手段や方法に制限はなく、言語・文書・動作を問いません。
一般的には、欺罔行為は作為によって行われることがほとんどですが、不作為による欺罔行為であっても詐欺罪は成立します。
また、詐欺罪が成立するには「欺罔行為」によって、相手が錯誤に陥る(騙される)必要があります。

~Aさんの欺罔行為~

タクシーに乗車して目的地まで行けば料金が発生する事は、常識として知られていることですので、お金がないのにタクシーに乗車して目撃地を告げる行為が、最初の欺罔行為に当たるでしょう。
当然、タクシーの運転手は、タクシーに乗車したお客さんから目的地を告げられれば、そこまでの乗車料金を支払ってもらえると信じて、タクシーを走らせているでしょうから、被害者が錯誤に陥っていることも間違いないでしょう。
仮にAさんが、タクシーに乗車した際に、タクシー代金を所持していた場合は、タクシーに乗車しただけで、欺罔行為を立証するのは難しいでしょう。
その場合は、運転手に「トイレをする」等と言ってタクシーを降りた行為が、料金の支払いから免れるための欺罔行為に該当するでしょう。

◇今回の事件を検討◇

タクシーに乗車して運転手に行き先を告げる行為は、そもそも料金を支払うという暗黙の意思表示を含む行為であるから、料金を支払う意思や能力のないAさんが、タクシーに乗車して行き先を告げた行為は、運転手に、財産的処分行為をなさしめるための欺罔行為に該当します。
そして運転手が、Aさんの告げた目的地に向けてタクシーを走らせる行為は、詐欺罪の構成要件要素にあたる財産的処分行為となります。
そしてAさんは、タクシーの運転手に目的地まで搬送してもらうという、財産上の利益を得ているので、まさにAさんの行為は、2項詐欺罪が成立するでしょう。

◇早期釈放◇

今回の事件で逮捕されたAさんの奥さんは、Aさんの逮捕を知ってすぐに、刑事事件に強い弁護士にAさんの弁護活動を依頼しました。
その結果、Aさんは逮捕された次の日には釈放され、週明けからは通常通り会社に出勤することができました。(フィクションです。)

タクシーの無賃乗車は、詐欺罪の中でも比較的軽微な犯罪として扱われています。
運転手が警察に通報したとしても、料金が高額に及ぶ場合で、支払いの目途が立たなかったり、身分が明らかでない場合、前科、前歴がある場合でなければ、基本的に、その場で家族や知人に連絡されて、運転手に料金を支払ってしまえば刑事事件化されることなく手続きが終了することも考えられます。
しかしAさんのように逃走した場合などは、逮捕されるリスクもあり、逮捕されてしまうと身体拘束を受けることになります。

~早期釈放のために~

逮捕された方を早期釈放したいのであれば、まず刑事事件に強い弁護士に弁護活動を依頼することから始めましょう。
逮捕後48時間以内は、警察の捜査が続きます。
無賃乗車で逮捕された場合ですと、この間に被害者に被害弁償できれば、その後に勾留を請求されることなく釈放されるでしょうから、弁護士は、すぐに被害者と示談交渉を開始し、被害弁償を行います。
仮に被害者との交渉が難航し、勾留請求までに示談を締結することができなかっとしても、示談交渉の経過や、弁償の意思を書類に記載して、検察官や、裁判官に提出することによって勾留を阻止できる可能性があります。

神戸市長田区無賃乗車をしてしまった方、またご家族、ご友人が無賃乗車兵庫県長田警察署逮捕されてしまった方は、詐欺事件等の刑事事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料法律相談、初回接見サービスをご利用ください。
無料法律相談、初回接見サービスのご予約はフリーダイヤル0120-631-881で24時間承っておりますので、お気軽にお電話ください。

主婦の通帳詐欺

2019-07-18

主婦の通帳詐欺

大阪府泉佐野市に住む主婦のAさんは、浪費家で、複数の闇金業者から合計数百万円の借金をしており、返済も滞りがちでした。
ある日、Aさんは、男から非通知で、「銀行通帳と口座の暗証番号を書いた紙を送ってくれないか。」「1口座につき1万円で買い取る。」との電話を受けました。
Aさんは、違法だとは分かりつつも、お金に困っていたことからこれに応じることにしました。
Aさんは、まず、V銀行へ行き、窓口で行員に対し、真実は預金通帳等を第三者に譲渡する意思であるのにこれを告げず、また、契約申し込み書の「用途欄」の「生活費のため」に丸を付けるなどしてV口座を開設し、行員から同口座に係る預金通帳とキャッシュカードの交付を受けました。
そして、その2時間後、Aさんは予め購入していたレターパックに預金通帳とキャッシュカードを入れ、それを男に指定された住所宛に送りました。
後日、Aさん名義の銀行口座に1万円が振り込まれていました。
ところが、Aさんは、大阪府泉佐野警察署から詐欺罪犯罪収益移転防止法違反の疑いで呼び出しを受けてしまいました。
(フィクションです。)

~ 詐欺罪とは ~

詐欺罪は刑法246条に規定されています。

刑法246条
1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人に得させた者も、同項と同様とする。

本件のような通帳詐欺で適用されるのは専ら「1項」です。

1項を分かりやすくすると、詐欺罪は、客観的には、①欺罔行為(騙す行為)→②錯誤(被害者が騙されること=被害者の認識が客観的事実と一致しない状態)→③処分行為による財物の移転(交付行為=被害者が現金等を郵送するなど)→④財産上の損害、の一連の流れがあり、主観的には、犯人の①~④までの「故意(認識)」が必要ということになります。

~ かつては詐欺罪の成否が争われた ~

かつては、事例のAさんの行員に対する行為は詐欺罪の欺罔行為に当たらない、預金通帳に財物性が認められない、などと主張して詐欺罪の成否が争われていました。
しかし、現在では、前者については、銀行の各種規定により口座名義人による預金通帳等の譲渡行為等が禁止されているから、この意思があることを秘して口座開設を申し込む行為は詐欺罪の欺罔行為に当たる、後者については、預金通帳は、これを使って預金の預け入れ、払い戻しを受けられるなどの財産的価値を有するものとして議論に決着が付けられています。
判例(平成19年7月17日、平成14年10月21日)も同様の立場です。

~ 詐欺の意思(故意)は口座開設時に必要 ~

ただし、行員を騙す意思、すなわち、預金通帳等を第三者に譲渡する意思(=預金通帳等を自ら利用つまりがない意思)は口座開設時に存在することが必要です。
つまり、始めは自分で使うつもりが気が変わって他人に譲渡した場合、犯収法(犯罪収益移転防止法)に問われるは別として詐欺罪に問われることはありません。
例えば、休眠口座に係る預金通帳等がこれに当たるでしょう。

しかし、「自分で使うつもりだった」という理屈が全て通るわけでもありません。

・短期間に複数の銀行口座を開設していること
・複数の預金通帳を所持していること
・口座開設後、短期間で他人に譲渡等していること
・生活口座として利用した形跡が認められないこと

などの事情があれば、口座開設時に、預金通帳等を第三者に譲渡する意思(=預金通帳等を自ら利用つまりがない意思)があったのではないかと疑われてしまいます。

~ 犯収法 ~

先ほど少し触れましたが、口座開設時に自分で使用する意思で作った預金通帳でも、その後、第三者に譲渡等してしまえば、犯収法に問われる可能性があります。
この点は、犯収法28条1項に規定されています。
なお、預金通帳等を無償で譲渡等した場合、行為者において、「相手方(本件の男)が他人になりすまして銀行との間における預貯金契約のサービスを受けること又は第三者にさせる目的があること」の認識が必要ですが、有償でした場合は、その認識は不要とされています。

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通帳詐欺事件などの刑事事件少年事件でお困りの方は、フリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。
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出会い系サイトでのポイント獲得で詐欺

2019-07-14

出会い系サイトでのポイント獲得で詐欺

埼玉県新座市に住むAさんは、出会い系サイトを利用する際に必要とされるポイント(電子マネー)を不正に取得しようと考え、パソコンで、クレジット決済代行業者のコンピュータに窃取したBさんの名義のクレジットカード情報(名義、カード番号、有効期限)を送信し、12万円相当のポイントを取得しました。
そうしたところ、Aさんは、埼玉県新座警察署の警察官により、電子計算機使用詐欺罪で逮捕されてしまいました。
Aさんが今後どのような処分を受けることになるのか見通しを知りたいと考えたAさんの家族は、刑事事件に強い弁護士初回接見サービスを依頼することにしました。
(フィクションです。)

~ 電子計算機使用詐欺罪 ~

電子計算機使用詐欺罪は刑法246条の2に規定されています。

刑法246条の2
前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。

ずいぶんと長い規定ですが、電子計算機使用詐欺罪は、

①人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作ること
②財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供する

という2つのパターンがあります(本件は①のパターンに当たります)。

電子計算機使用詐欺罪は、大雑把に、人ではなく機械を騙す犯罪と考えておけばいいでしょう。

~ 「虚偽の情報」の意義 ~

「虚偽の情報」とは、当該システムで予定されている事務処理の目的に照らし、その内容が真実に反する情報をいうとされています。
信用金庫の支店長が、振込入金等の事実がないのに、部下に命じてオンラインシステムの端末機を操作させて、自己名義等の当座預金口座に振込入金等があったとする電子計算機処理をさせた事案において、裁判所は、「虚偽の情報」とは、電子計算機を使用する当該事務処理システムにおいて予定されている事務処理の目的に照らし、その内容が真実に反する情報をいう」としています。

本件では、確かに、Aさんが送信した情報(Bさんのクレジットカード情報)自体は虚偽ではありません。
しかし、クレジットカードはたとえインターネット取引であっても、原則として名義人自らが取引に使用することが想定されており、カード名義人(Bさん)の氏名等の入力情報はポイントの購入を申し込んだ者を示す情報であると解釈されることになりますから、Aさんの送信行為は「虚偽の情報」を与えたことになります。

~ 「財産上不法の利益を得」の意義 ~

「財産上不法の利益を得」るとは、得た利益が不法という意味ではなく、財物以外の財産上の利益を不法に得ること、つまり「手段の不法」をいいます。事実上財産を自由に処分できるという利益を得ることや、債権者の追及が事実上不可能に近い状態を作出するなど、必ずしも権利又は義務の得喪、変更という法律上の効果を発生させることを要しないとされています。

~ 弁護士との早めの接見を! ~

逮捕された場合、逮捕期間とこれに続く勾留機関と併せて最大23日間の身体拘束を受けることがあります。
仮に、この期間に接見禁止が付いた場合には、逮捕された人の友人はもちろん、家族であっても面会することができなくなるため、どのような事件で逮捕されたのかということすら知ることができないという場合もあります。
もっとも、接見禁止が付いた場合でも、弁護士であれば面会することは可能です。
法律の専門家であり、刑事事件に強い弁護士が接見することにより、法的観点から整理された事件の概要を知ることができ、今後の処分の見通しを立てることにも繋がります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件少年事件でお悩みの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
専門のスタッフが、24時間体制で、無料法律相談、初回接見サービスを受け付けております。
電子計算機使用詐欺事件の逮捕にお困りの際は、お気軽にご連絡ください。

神奈川県大和市の架空請求詐欺事件

2019-07-10

神奈川県大和市の架空請求詐欺事件

~ケース~
神奈川県大和市在住のXは不特定多数の人に対し「未払いのサイト利用料に付き横浜地方裁判所に料金請求訴訟が提起されました。・・・略・・・。訴訟の取り下げをご希望の方は電話番号000-000-000までお電話下さい」という文面のハガキを送付していた。
そしてXは電話をしてきた人に対し,和解金として30万円用意するように伝えていた。
大学の3年生であるAさんは市内の居酒屋でXと知り合い,Xから「割の良いバイトがあるがやらないか。」と誘われた。
内容としては指定箇所で荷物を受け取るというものであったが,上記の30万円のいわゆる「受け子」であった。
AさんはXが架空請求詐欺をしているとは知らなかったが,何か怪しいお金でないかとXに聞いたところ,受け取る現金は会社の売掛金等であると言われていた。
ある日,AさんがXに頼まれ指定された喫茶店に行き,Vから現金30万円を受け取ったところ,客を装い両隣のテーブルに座っていた神奈川県大和警察署の警察官らにAさんは取り押さえられた。
そして,Aさんは詐欺罪の疑いで神奈川県大和警察署へ連行されてしまった。
(フィクションです)

~架空請求詐欺~

今回Xが行った手口はいわゆる架空請求詐欺と呼ばれるものです。
架空請求の手口としてはハガキやダイレクトメール,Eメールなどでサイト利用料などと銘打って料金を請求することが多いようです。

また,今回のケースのように民事訴訟を提起したと偽り,和解金という名目で金銭を要求する手口もあるようです。
なお,実際に民事訴訟が提起された場合には裁判所から当別送達という方法で訴状が届きますので,ハガキや封書など普通郵便で届くことは絶対にありません。
架空請求詐欺はその名称の通り詐欺罪(刑法246条)となり,法定刑は10年以下の懲役となっています。

~Aさんの罪~

今回のケースでAさんはXの行った詐欺行為に金銭を受け取ることで協力している形になります。
したがって,AさんはXの詐欺罪の共犯となる可能性が高いでしょう。
共犯にはいくつか種類がありますが,今回Aさんは詐欺罪の幇助犯もしくは共同正犯ということになります。

◇共同正犯◇
共同正犯は,「二人以上共同して犯罪を実行した」場合に成立します(刑法60条)。
共同正犯は構成要件該当事実を共同の意思に基づいて惹起させた場合に成立します。
詐欺罪の場合(特に特殊詐欺事件の場合),組織的に役割分担をしていることが多く,関係者が共同正犯として立件されることが多いようです。

◇幇助犯◇
刑法62条1項は「正犯を幇助した者は,従犯とする。」と規定しており,刑法63条は「従犯の刑は,正犯の刑を減軽する。」と規定されてます。
幇助とは実行行為以外の行為によって正犯の実行行為を容易にうる行為一般をいいます。
今回のような詐欺事件の場合で言えば,詐欺行為をしやすくする,財産の交付を容易にするといった手助けをした場合に,幇助犯とされる可能性が出てきます。

~弁護活動~

今回Aさんは,Xから受け取るお金は売掛金等であると聞いており,詐欺の片棒を担いでいるという認識はありませんでした。
犯罪の成立には故意が必要であり(刑法38条),故意とは罪を犯す意思をいい,これは犯罪事実の認識・予見のことをいいます。
したがって,今回のAさんは故意が欠けるとして詐欺罪(および幇助)は成立しない可能性が出てきます。

もっとも,Aさんは何か怪しいお金ではないかとXに聞いていることから,Aさん自身に詐欺などではないかという認識があったとされる可能性もあります。
そうなった場合には,「詐欺かもしれない」と思いながらあえて行っているということから故意を認定され,詐欺罪が成立してしまう可能性もあるのです。

今回のようなケースでは,弁護士はAさんには詐欺罪の故意がないため詐欺罪が成立しないことを主張していくことが考えられます。
しかし,Aさんが受け取っていた報酬額や具体的な指示内容,取調べに対する供述などによっては故意がなかったと認められない場合もあります。
一方,適切な取調べ対応,弁護士による適切な主張によっては詐欺罪の故意が欠けるとして無罪となる可能性もあります。
こうした詐欺事件では,詳細な事情を考慮しなければ方針を決定することは難しいため,まずは刑事弁護に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
知らず知らずのうちに詐欺罪の受け子をしてしまったという場合には0120-631-881までお気軽にご相談ください。
初回接見サービス・事務所での無料法律相談のご予約を24時間受け付けています。

譲渡する目的で銀行口座を作る詐欺事件

2019-07-06

譲渡する目的で銀行口座を作る詐欺事件

東京都立川市に住むAさんは、高校時代の不良仲間Bさんから、振り込め詐欺を一緒にやらないかと誘われました。
最近は真面目に生活していたAさんは断りました。
しかし、なおもBさんから、「銀行口座を作るだけでいいから手伝ってくれないか。お礼もするから」と言われました。
Aさんは、「それくらいならいいか」と思い、自己名義で銀行口座を作った上で通帳とキャッシュカードをBさんに渡しました。
後日、Bさんが逮捕されたことをきっかけとして、Aさんも警視庁立川警察署で取調べを受けることになりました。
今後Aさんはどうなるのでしょうか。
(フィクションです)

~譲渡目的での口座開設には詐欺罪が成立~

Aさんは銀行口座を作ってBさんに譲り渡しただけで、銀行に損害が生じたわけではないとも思えますが、Aさんの個の行為には詐欺罪が成立する可能性があります。

刑法第246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

銀行口座が犯罪に利用されないよう、金融機関は口座開設時に本人確認することが義務付けられており、名義人本人が口座を利用することが前提とされています。
したがって、他人に譲渡することを隠して口座を開設すること自体が、名義人本人が利用するかのように「人を欺いて」、通帳やキャッシュカードといった「財物を交付させた」として、詐欺罪が成立する可能性があるわけです。

なお、こうした口座開設の場合、刑法上の詐欺罪だけでなく、いわゆる「犯罪収益移転防止法」にも違反する可能性が出てくることにも注意が必要です。
さらに、警察から捜査を受ける際には、口座開設を手伝っただけではなく、振り込め詐欺自体に直接かかわっていないか疑われることもありうるので、そちらに対しても注意が必要です。

~今後の刑事手続きの流れと弁護活動~

取調べのために呼び出されたAさんですが、このまま逮捕されないで捜査を受けることになる場合、何度か警察署や検察庁に呼び出されて取調べを受けることになると思われます。
その後、検察官がAさんを刑事裁判にかけると判断すれば(起訴)、刑事裁判がスタートし、自宅から裁判所に行って裁判を受けるという流れになるでしょう。

一方、悪質な事案と判断されると、逮捕されることも否定できません。
その場合、まずは最大3日間の身体拘束がなされます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして、検察官が勾留(こうりゅう)を請求し、裁判官が許可すれば、さらに最大20日間の身体拘束がされる可能性があります。
その後、検察官が起訴すれば、刑事裁判がスタートし、保釈が認められない限り、身体拘束が続く可能性があります。
そして裁判で無罪や執行猶予とならない限り、刑罰を受けることになります。

これらの手続に関し、弁護士は以下のような弁護活動を行うことが考えられます。

まず、逮捕されても、検察官が勾留請求しなければ、あるいは裁判官が勾留を許可しなければ、最初の3日間で釈放されます。
そこで検察官や裁判官に対し、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことなどを具体的事情に基づいて主張し、勾留を防ぎます。

また、逮捕されているかいないかにかかわらず、検察官が起訴しないという判断(不起訴処分)をすれば、刑事手続はそこで終わり、前科も付きません。
そこで、ご家族の監督が見込めることや本人が反省していること、前科がないこと、主犯格とまではいえないこと等々、有利な事情があれば出来る限り主張して、不起訴処分にするよう検察官に要請していきます。

そして起訴された場合も、本人に有利な事情を主張し、執行猶予などの軽い判決で済むよう弁護していくことになるでしょう。

~弁護士に相談を~

犯罪をしたとして捜査を受けると、本当に犯罪が成立するのか、刑事手続はどのように進んでいくのか等々、不安点が多いと思います。
また、取調べにはどう受け答えしたらいいのか、という点も不安かもしれません。
本当にやったことについては正直に述べて反省することが必要ですが、かかわっていない部分がある場合には、はっきりと否定することが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする弁護士事務所です。
事務所での法律相談は初回無料で行っております。
また、逮捕されている場合は、ご家族などからご依頼いただければ、拘束されている警察署等にすみやかに接見に伺います。
法律相談や接見では、上記の不安点などにお答えいたします。

詐欺などで捜査を受けた、逮捕されたといった場合には、ぜひ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士にご相談ください。

口座残高不正変更で詐欺事件

2019-07-02

口座残高不正変更で詐欺事件

東京都江戸川区にある銀行の銀行員であるAさんは,預金・為替業務を担当していました。
Aさんは,自身が勤務する銀行のオンラインシステムにアクセスし,実際には振替入金の事実がないにもかかわらず,Aさんの口座に50万円の振替入金があったとする情報を入力しました。
この不正入力によって,磁気ディスクに記録されていたAさんの預金残高が書き換えられました。
味を占めたAさんはその後も同様の不正入力を繰り返しました。
後日,Aさんの羽振りが急に良くなったことに疑念を抱いた同僚から報告を受けた上司が秘密裏に調査を行い,Aさんの不正入力が発覚しました。
その後,通報により警視庁小松川警察署が捜査を始め,Aさんは電子計算機使用詐欺罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

【電子計算機使用詐欺罪】

電子計算機使用詐欺罪は(刑法第246条の2),人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り,又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた場合に成立する犯罪です。
電子計算機使用詐欺罪の法定刑は,10年以下の懲役です。

人を騙して財産あるいは財産上の利益を得た場合,詐欺罪(刑法第246条)によって処罰されます。
しかし,騙す相手が人ではなくコンピュータ(機械)であった場合は不可罰とされていました。
それは,詐欺罪が「人を欺」くことを要件としているためです。
今回の事件のように口座残高を増額する記録を作出することによって財産上の利益を得た場合,実際に誰かがお金を奪われた訳ではないため,財物を奪うことを要件としている窃盗罪(刑法第235条)によって処罰することもできません。
そこで,コンピュータ犯罪への対応を図った1987(昭和62)年の刑法一部改正によって新設された犯罪の一つが,電子計算機使用詐欺罪です。

電子計算機使用詐欺罪の条文にある電子計算機とは,いわゆるコンピュータのことを意味します。
電磁的記録とは,電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によって認識することができない方式で作られる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるもの(刑法第7条の2)をいいます。

電子計算機使用詐欺罪の成立のために要求される行為は,

①人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産上の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作ること
②財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供すること

以上の二つのいずれかの方法によって,財産上不法の利益を得,または得させることです。

今回の事件では,Aさんは振替入金の事実がないにもかかわらず,自身の口座に50万円の振込があったとする情報をオンラインシステムに入力しました。
事実に基づかない50万円の振込情報は,虚偽の情報ということができます。
よって,Aさんはオンラインシステム(コンピュータ)に虚偽の情報を与えたことになります。
この虚偽の情報を与えられたことによって,オンラインシステムは磁気ディスクに記録されているAさんの口座残高を書き換えています。
磁気ディスクの記録情報は人間の知覚によって認識することができない方式で作られる記録であって,電磁的記録にあたるといえます。
したがって,Aさんは先ほどの①の方法によって50万円の財産上の不法の利益を得たものと評価することができ,もし捜査を受け起訴されれば,電子計算機使用詐欺罪の成立が認められる可能性は非常に高いといえます。

【弁護活動の方針】

今回のようなケースでは,Aさんが費消した銀行の被害金額相当分について弁償するなど,銀行に対して謝罪と反省の姿勢を示して示談を成立させることにより,不起訴処分や執行猶予を得られるように活動することが基本方針となるでしょう。
起訴されてしまった場合でも,もしAさんに前科がなければ,その事実を示すことで情状ありと裁判所に認めてもらいやすくなります。
こうした活動は刑事事件に精通した弁護士のサポートを受けて行うことが望ましいでしょう。

電子計算機使用詐欺罪の被疑者となってしまって困っている方は,刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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