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組織的詐欺罪で逮捕
組織的詐欺罪で逮捕
組織的詐欺罪の逮捕について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
Aらは,無料で日用品がもらえるなどとの謳い文句を掲げ,東京都清瀬市に住む高齢者Vらを店舗に集め,嘘を教えて高額な商品を売りつけるという行為を行っていた。
Aも,この行為を行ったグループの一員として,詐欺行為に関与していたことが疑われている。
被害に気づいたVらから相談を受けた警視庁東村山警察署の警察官は,Aらを組織的詐欺罪の容疑で逮捕した。
Aの家族は,詐欺事件に強い刑事事件専門の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)
~刑法上の詐欺罪以外の組織的詐欺罪?~
まず,Aらの行為は,「人を欺いて財物を交付させた」といえることから,刑法上の詐欺罪(刑法246条1項・60条)として共犯関係が認められることは比較的明らかといえます。
そして,刑法上の詐欺罪の法定刑(個々の法律に定められている刑罰のことです。)は「10年以下の懲役」と,刑法246条において規定されています。
「10年以下の懲役」と聞くと重い罪と感じるかもしれませんが,この法定刑を法的に解きほぐすと「1月以上10年以下の懲役」(刑法12条1項参照)とかなり幅のある法定刑が導き出され,理論的にはかなり短い刑を科すことも可能なのです(さらにこれに減刑事由なども考慮される可能性がありますが,ここでは省略いたします。)。
もっとも,組織的な犯罪に関して適用される特別法として「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(以下,「組織的犯罪処罰法」と略します。)という法律が存在することに注意が必要です。
この組織的犯罪処罰法の3条1項では,
・「次の各号に掲げる罪に当たる行為が,団体の活動(団体の意思決定に基づく行為であって,その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう。以下同じ。)として,当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときは,その罪を犯した者は,当該各号に定める刑に処する」(1項柱書)
・「刑法第246条(詐欺)の罪」→「1年以上の有期懲役」(同項13号)
との規定があり,組織的な詐欺行為について,通常の刑法上の詐欺罪に比べて重い法定刑を科しています。
ここにいう「1年以上の有期懲役」とは,「1年以上20年以下の懲役」を指し,上述した刑法上の詐欺罪と比べても,法定刑が明らかに重くなっていることが分かるでしょう。
~組織的犯罪における弁護士の活動~
組織的詐欺罪というくらいですから,通常の詐欺の共犯事件に比べても関与者が多いことが予想され,事件としては通常の詐欺罪の共犯事件よりもさらに複雑なものとなる可能性があります。
したがって,組織的詐欺に関与し,逮捕等されてしまった場合には,専門性を有した弁護士によるサポートが必要不可欠なものとなるといえます。
また,組織的詐欺罪は故意犯であることから,組織的に行われた詐欺行為を組織的犯罪処罰法によって刑法犯より重く処罰するためには,当該詐欺行為が組織・団体によって行われていることの認識が必要になってきます。
末端の構成員ほど,こういった認識は薄くなると考えられることから,逮捕されてしまった当該被疑者が,どのような態様の関与を行っていたか等を詳しく本人などから聞き取る必要があります。
そのために,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,初回接見サービスなど逮捕された直後から弁護士によるサポートを得ることのできるサービスも提供しています。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,組織的な詐欺を含む詐欺事件を多数扱う刑事事件専門の法律事務所です。
通常の法律事務所では民事事件を中心に扱うことが多いですが,弊所は刑事事件のみを担当するプロフェッショナルである弁護士を集めた法律事務所です。
組織的詐欺事件で逮捕された方のご家族・お知り合い等は,年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)まで,早急にお問い合わせください。
2項詐欺罪・他人名義のクレジットカード詐欺
2項詐欺罪・他人名義のクレジットカード詐欺
2項詐欺・他人名義のクレジットカード詐欺について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aは,宿泊施設において,東京都豊島区在住のVという他人名義のクレジットカードを使って,当該施設に宿泊した。
Vが利用した覚えのない宿泊施設の利用料をクレジットカード会社から請求されたのに気づいたことをきっかけに警視庁巣鴨警察署に相談。
後日,捜査を行った警視庁巣鴨警察署の警察官は,Aを詐欺罪の疑いで任意で取調べ・事情聴取を行った。
そこでAは,詐欺事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実をもとにしたフィクションです。)
~他人名義のクレジットカードの使用と詐欺罪~
本件では, Aは他人名義のクレジットカードを使って宿泊施設を利用しています。
このような場合,具体的にはどのような犯罪が成立するのでしょうか。
クレジットカードの入手方法によっては,窃盗罪や占有離脱物横領罪の成否も問題になりますが,本稿ではまずは宿泊行為を中心に解説することとします。
まず,刑法は246条において詐欺罪についての規定を置いています。
同条1項は,「人を欺いて財物を交付させた者」を詐欺罪にする旨定めています(いわゆる1項詐欺)。
さらに同条2項により,「人を欺いて」「財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者」も詐欺罪に問われることになります(いわゆる2項詐欺)。
本件においてAが,「人を欺いて」詐取したといえるのは,具体的な金銭等の「財物」ではなく,宿泊サービスという「財産上…の利益」であり,本件では2項詐欺の成否が問題となります(もっとも,1項詐欺と2項詐欺で法定刑などに違いはありません。)。
そして,一般にクレジットカード加盟店は,クレジットカードの使用の際に本人確認義務を負うこととされており,この本人確認に対して本人と偽りクレジットカードを使用する行為は,「人を欺いて」「財産上…の利益を得」たものとして2項詐欺が成立する可能性があるのです。
なお,Aが宿泊する際に,伝票等に名義を偽り署名した場合(Aがクレジットカード名義人を装って署名した場合など)は,私文書偽造及び同行使罪(刑法159条1項・161条1項)が成立しうることにも注意が必要です。
~2項詐欺罪における弁護活動~
この点,弁護士としては,まずは当該クレジットカードの入手経路を確認する必要があります。
判例(最高裁平成16年2月9日決定)は,他人名義のクレジットカードを使用していたとしても,これが近親者等の同意に基づくものであった場合には,詐欺罪が成立しない余地を認めているとも考えられるためです。
したがって,そのようなケースと認められる場合には,Aに詐欺罪等は成立しない旨を主張していく可能性が考えられます。
もっとも,このようなケースが刑事事件として捜査の対象になるのは稀であると考えられ,別の可能性にも十分に留意する必要があります。
たとえば,仮にクレジットカードを窃盗罪等の犯罪行為によって取得していた場合には,この前提行為も捜査対象となりうることから,弁護士との十分な話し合いが重要となってきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,詐欺事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
詐欺罪(刑法246条)は,「10年以下の懲役に処する」と懲役刑のみを定めており,他の犯罪との関係や前科・前歴等から最悪の場合には懲役刑の実刑判決を受けてしまう可能性があります(すでに執行猶予付判決を受けているか否かも極めて重要です。)。
また,場合によっては,警察が逮捕に踏み切る可能性も否定できません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には,詐欺罪などの財産犯の弁護活動を多く経験した弁護士が多数所属しております。
詐欺事件で取調べ・事情聴取等を受けた方は,365日年中無休の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)まで,お早めのお電話をおすすめいたします。
刑事事件専門の弁護士による初回無料相談サービス等をご用意しておりますので,まずは上記フリーダイヤルまでお問合せください。
特殊詐欺(現金等送付型)における受け子の罪②
特殊詐欺(現金等送付型)における受け子の罪②
福岡県朝倉市の大学に通うA君(21歳)は、あるバンドグループに所属していました。
バンドグループにはAさんの他に、大学のOBであるB(30歳)、同じくOBのC(25歳)と同級生のD、Eが所属していました。
A君は学業やアルバイト、就職活動などでしばらくバンド活動に参加していませんでしたが、アルバイトの休みが取れたので久しぶりにバンド活動を再開することにしました。
すると、Aさんは年長のBさんから「久しぶり!元気だったかい?」「実は、A君がいない間、俺たち4人で新しい活動を始めることにしてさ。」「活動で得た金はバンド活動の費用に充てようと思っているんだけど参加してみない?」などと言われました。
A君は、バンド活動のためならと思いこれを承諾したところ、Bさんから「では、福岡県朝倉市の部屋に荷物が送られてくるので受け取ってくれ。」と言われ、部屋の鍵を渡されました。
A君は、鍵を開け荷物が届くのを待っていると部屋のベルが鳴りました。
A君は玄関ドアを開けるやいなや、対面した男性から「福岡県朝倉警察署だ。詐欺未遂罪で逮捕する。手を前に出して。」などと言われました。
そしてA君は何が何だか分からないまま福岡県朝倉警察署に連行されてしまいました(この後、バンドグループはある詐欺組織から委託を受けて詐欺活動(Bさん、Cさんはかけ子、Dさん、Eさんは受け子)をしていたことが判明し、全員が逮捕されました。)。
(フィクションです。)
~特殊詐欺と承継的共同正犯~
前回の「特殊詐欺(現金等送付型)における受け子①」では、特殊詐欺の「現金等送付型」において、「受け子」が詐欺罪の一部しか加担していない(つまり、現金等の受領行為しか担当していない)のに、なぜ、(かけ子らと同様に)詐欺未遂罪に問われるのか?という問題提起に対し、「承継的共同正犯」という理論を用いて解説しました。
今回は、この点に関する参考となる最高裁判所の決定(平成29年12月11日)がありますから以下でご紹介します。
事例の概要は以下のとおりです。
「平成27年2月下旬頃、特殊詐欺グループのBが会社員のふりをして被害者Vに電話をかけ、必ず当たるロト6に当選したこと、特別抽選にはX銀行の審査が必要であることを告げました。
また、同じグループのCがX銀行の審査員のふりをしてVに電話をかけ、住宅ローンや定期預金の有無を尋ねた上、後日、審査に通った旨をVに告げました。
その上で、3月下旬頃、Vから電話を受けたBは、Vに特別抽選に参加するにはX銀行にお金を払わなければならない旨を言い、Vに指定した先に現金合計150万円を送付させました。
そして、Bは、3月16日、再びVに電話し、150万円のうち100万円は銀行への振り込みが間に合わなかったこと、その100万円はBが立て替えたこと、今回は特別抽選には参加できず、今度の特別抽選に参加するためひとまず150万円が必要なこと、を言いました(本件欺罔行為)。
これを聞いたVは息子に相談したところ、「詐欺の被害に遭っている。」と言われ警察にも相談したところ、3月23日、Bらの話が嘘だったことが判
明しだまされたことに気づきました。Vは、警察から「だまされたふり作戦」に協力してほしいなどと言われました。
3月24日午前10時3分頃、BはVに電話しました。その際、VはだまされたふりをしてBに現金を準備した旨を言いました。
同日午前10時35分頃、BはVに電話で現金の送付先や宛名を伝え、現金を入れた荷物を配達時間を指定して宅配便で送るよう指示しました。
これを受けてVは、同日午後0時40分頃、コンビニから不要な本を詰めた荷物を指定された場所宛に送りました。
その一方で、A(本件被告人)は、3月24日、知人からの紹介で本件荷物の受け取り依頼があったのでこれを承諾し引き受けました。
実は、Aは、これまでにも氏名不詳者から指示のあった場所・時間に他人の名前を使って荷物を受け取り、受け取った荷物を知人に渡すことで1回、5000円から1万円の報酬を受け取る仕事を数回引き受けていました。
Aは、3月25日、指定された場所で待機し、他人の名前を使って荷物を受け取ると、配達員を装った警察官に詐欺未遂罪の現行犯で逮捕されました。」
~最高裁は「承継的共同正犯」を採用したか?~
最高裁は職権で次のように判示しています。
「A本件詐欺につき、共犯者による本件詐欺行為がされた後、だまされたふり作戦が開始されたことを認識せずに、共犯者らと共謀の上、本件詐欺を完遂する上で本件詐欺行為と一体のものとして予定されていた本件受領行為に関与している。
そうすると、だまされたふり作戦の開始いかんにかからわず、Aは、その加行前の本件詐欺行為の点も含めた本件詐欺につき、詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当である。」
したがって、「本件につき、Aが共犯者らと共謀の上被害者から現金をだまし取ろうとしたとして、共犯者による欺罔行為の点も含めて詐欺未遂罪の共同正犯の成立を認めた原判決(高裁判決)は、正当」である、としました。
以上からすると、最高裁が承継的共同正犯の理論を採用したのかどうかはっきりとは分かりませんが、「本件詐欺につき、共犯者による本件詐欺行為がされた後、だまされたふり作戦が開始されたことを認識せずに、共犯者らと共謀の上、本件詐欺を完遂する上で本件詐欺行為と一体のものとして予定されていた本件受領行為に関与している。そうすると、だまされたふり作戦の開始いかんにかからわず、Aは、その加行前の本件詐欺行為の点も含めた本件詐欺につき、詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負う」と判示していることからすると、詐欺罪の承継的共同正犯の成立自体は認めているものと思われます。
なお、この決定の後、被告人に対する有罪判決(懲役3年、執行猶予5年)が確定しています(地裁では無罪、高裁で有罪)。
こういった法律の専門知識を基に刑事事件の見通しや手続きを考えることは、一般の方のみでは難しいことも多いです。
遠慮なく弁護士の相談を利用して、今後の活動にいかしましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,特殊詐欺事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。
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特殊詐欺(現金等送付型)における受け子の罪①
特殊詐欺(現金等送付型)における受け子の罪①
福岡県朝倉市の大学に通うA君(21歳)は、あるバンドグループに所属していました。
バンドグループにはAさんの他に、大学のOBであるB(30歳)、同じくOBのC(25歳)と同級生のD、Eが所属していました。
A君は学業やアルバイト、就職活動などでしばらくバンド活動に参加していませんでしたが、アルバイトの休みが取れたので久しぶりにバンド活動を再開することにしました。
すると、Aさんは年長のBさんから「久しぶり!元気だったかい?」「実は、A君がいない間、俺たち4人で新しい活動を始めることにしてさ。」「活動で得た金はバンド活動の費用に充てようと思っているんだけど参加してみない?」などと言われました。
A君は、バンド活動のためならと思いこれを承諾したところ、Bさんから「では、福岡県朝倉市の部屋に荷物が送られてくるので受け取ってくれ。」と言われ、部屋の鍵を渡されました。
A君は、鍵を開け荷物が届くのを待っていると部屋のベルが鳴りました。
A君は玄関ドアを開けるやいなや、対面した男性から「福岡県朝倉警察署だ。詐欺未遂罪で逮捕する。手を前に出して。」などと言われました。
そしてA君は何が何だか分からないまま福岡県朝倉警察署に連行されてしまいました(この後、バンドグループはある詐欺組織から委託を受けて詐欺活動(Bさん、Cさんはかけ子、Dさん、Eさんは受け子)をしていたことが判明し、全員が逮捕されました。)。
(フィクションです。)
~現金等送付型の特殊詐欺と受け子~
オレオレ詐欺をはじめとする特殊詐欺では、巧妙な事件ほど主犯格のメンバーは表に出てきません。
したがって、逮捕される者の多くは、犯行の矢面に立たされた「受け子(特殊詐欺などで現金などを受け取る役割の者)」です。
しかし、その「受け子」はときに、詳細を聞かされないまま犯行に加担させられることがあります。
特殊詐欺においては、かつては現金を銀行口座に振り込ませる「振込型」が一般的でした。
しかし、最近では、金融機関による防止策が講じられたことなどもあり、
・被害者から直接現金等を受け取る「現金等手交型」
・被害者に宅配便やレターパックなどを利用して現金等を送付させる「現金等送付型」
の手口が多いと言われており、「受け子」の多くもこの手口に加担させられています。
本件のA君は、このうち「現金等送付型」に加担し逮捕されたようです。
~詐欺罪の成立要件~
ところで、特殊詐欺で適用される詐欺罪は刑法246条に規定されています。
刑法246条
1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人に得させた者も、同項と同様とする。
特殊詐欺で適用されるのは専ら「1項」です。
1項を分かりやすくすると、詐欺罪は、客観的には、①欺罔行為(騙す行為)→②錯誤(被害者が騙されること=被害者の認識が客観的事実と一致しない状態)→③処分行為による財物の移転(交付行為=被害者が現金等を郵送するなど)→④財産上の損害という一連の流れが認められ、主観的には、①~④までの「故意(認識)」が存在してはじめて成立する罪です。
~現金等手交型、現金等送付型の受け子と詐欺罪~
このうち、現金等手交型の受け子については被害者と直接対面していることから、比較的容易に①の欺罔行為を認定されてしまいます。
他方で、現金等送付型の場合、受け子は宅配便等の受領行為に関与しているのみで、それだけでは①の欺罔行為を認定することが困難です。
そこで、なぜ、受領行為しか行っていないAさんが詐欺(未遂罪)で逮捕されたのかという疑問が生じます(なお、受領行為を①の欺罔行為の一部、とする考え方もありますが、この考え方に基づいてもやはり同様の疑問が生じます)。
~承継的共同正犯という理論~
承継的共同正犯は「共同正犯(刑法60条)」の仲間です。
たとえば、AさんがVさんをナイフで脅し財布を奪い取った(強盗罪(刑法236条1項))とします。
そして、それを見ていたBさんがAさんから財布を受け取ったという場合、Bさんは強盗罪の「暴行」は行っていませんが、Aさんと同様、強盗罪に問われます。
このように、先行者(Aさん)が実行行為(強盗罪における「暴行」)に着手し、いまだその行為の全部が終了しない段階で、後行者(Bさん)が先行者との間で意思を通じ、それ以後は共同して犯罪を実現する場合を「承継的共同正犯」といいます。
確かに、本件のA君も、詐欺の一部にしか加担していませんが、この「承継的共同正犯」の理論によって詐欺未遂罪の被疑者として逮捕されているのです。
特殊詐欺事件では、こういった複雑な法的理論を含めて検討しなければいけない場面も登場することが考えられます。
弁護士であれば、こういった専門的な理論や知識を熟知していますから、まずは相談してみましょう。
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すり替え詐欺事件における詐欺罪と窃盗罪
すり替え詐欺事件における詐欺罪と窃盗罪
架け子であるXらは、警察官になりすまし,不正使用の疑いがあるためキャッシュカードを確認する必要があるなどと,虚偽の電話をかけ、京都府舞鶴市にあるV宅を訪問する旨の約束を取りつけた。
Xらと共謀した受け子であるAは,予定どおり警察官になりすまし,Vに封筒にキャッシュカードを入れさせた。
Vは玄関先に封筒を置き,その場を一旦離れたが,Aはそのままキャッシュカードの入った封筒を持ち去った。
Vから通報を受けた京都府舞鶴警察署の警察官は,Aを詐欺罪の容疑で逮捕した。
Aの家族は,詐欺事件に強いと評判の弁護士に逮捕されたAとの接見を依頼し,Aは接見に来た弁護士に,Aの事件では詐欺罪ではなく窃盗罪が成立する可能性があるという話を聞いた。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)
~詐欺罪と窃盗罪の交錯~
本件では,Aはいわゆるすり替え詐欺行為を行ったことにより,詐欺罪の容疑で逮捕されています。
もっとも,本件の事例のような場合,Aに接見した弁護士が話しているように,事実認定によっては詐欺罪ではなく窃盗罪が成立し得るケースであると考えられます。
詐欺罪には罰金刑が存在しませんが,窃盗罪には罰金が存在し,弁護活動の方針にも一定の影響を与えることになると思われます。
したがって以下,詐欺罪と窃盗罪がどのように区別されるかについて解説します。
刑法246条1項は「人を欺いて財物を交付させた者」を詐欺罪とし,金銭のような「財物」をだまし取った場合に成立する犯罪として規定されています。
つまり詐欺罪の成立にはだますことが必要であり,あくまで被害者の意思に基づいて財物が交付されたことを必要とする犯罪なのです。
これに対し,窃盗罪は被害者の意思に反して財物を奪う犯罪であり,万引きや自転車窃盗等の典型的な窃盗行為を想定すれば,このことはすぐに理解することができると思います。
刑法235条は,「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪」にするとし,条文上も被害者の意思による交付などを想定していないことは明らかです。
したがって,本件のような事例では,Vが玄関先に置いた封筒をAが自由に支配し受領できる状況に置くという意思があったかどうかが問題となり,Vにそのような意思がなくAが隙を見て持ち去ったというような場合は詐欺罪ではなく窃盗罪が成立すると考えられます。
~弁護士との相談の重要性~
仮に詐欺罪の容疑で逮捕されたとしても,検察官には起訴裁量があることから,窃盗罪によって起訴されることもありえます。
どの財産犯が成立するかについては,検察官のような訴追権を独占する権限を持つ立場の人間にとっても必ずしも自明とはいえません。
したがって,事前にあらゆる可能性を検討し,様々な犯罪の成否について検討することが重要になってきます。
例えば,上述したように詐欺罪には罰金刑が存在しませんが,窃盗罪には罰金刑が存在します。
こういった法定刑一つとっても,成立しうる犯罪によって異なることから,専門性を持った弁護士に相談することが重要になってくるのです。
刑事事件専門の弁護士に相談することによって,事前にどのような弁護活動を行うことが可能であり,どのように事件が展開していくかについての見通しを持つことができます。
これは逮捕等されてしまった本人のみならず,そのご家族にとっても大きなメリットとなります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,詐欺事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
特殊詐欺においては,受け子として受動的な立場で犯罪に関与してしまうというケースも少なくありません。
詐欺罪あるいは窃盗罪の容疑で逮捕された方のご家族は,年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)までお電話ください。
刑事事件専門の弁護士による「初回無料法律相談サービス」や,弁護士が警察署等に直接出向く「初回接見サービス」など各種サービスをニーズに合わせてご案内差し上げます。
出産育児一時金の不正取得で詐欺罪
出産育児一時金の不正取得で詐欺罪
お金に困っていた神戸市須磨区に住むAさんは、海外で子どもを産んだことにして、日本で出産育児一時金を騙し取ろう取ろうと考えました。
そこで、Aさんは、偽造した外国の公印や病院名が入った印鑑を使用して偽の出生証明書、出産費用の領収書を作成し、これらの書類などを役所に提出するなどして役所から出生育児一時金として合計126万円を受け取りました。
そうしたところ、これら一連の行為が兵庫県須磨警察署に発覚し、Aさんは詐欺罪で逮捕されてしまいました。
兵庫県須磨警察署は、Aさんが他にも同様の手口で詐欺行為を繰り返したとみて、Aさんの余罪につき捜査しています。
(フィクションです。)
~ はじめに ~
上記事例は、国民健康保険の出産育児一時金をだまし取ったとして、今年8月、神奈川と千葉の両県警がボリビア国籍の会社役員男性を詐欺罪と詐欺未遂罪の疑いで再逮捕した事案をモデルにしています。
報道によれば、被疑者は、2017年5月、協力関係にある別の被疑者が作成した偽の出産証明書などを自治体に提出し、翌月、出産育児一時金約121万円をだまし取った疑いほか(詐欺罪)、また、同年6月、同様の手口で、先ほどとは他の県の自治体から約121万円をだまし取ろうとした疑い(詐欺未遂罪)が持たれています。
被疑者はほかにも、関東や東海、関西地方でも約40件、同様の詐欺行為を行ったとみられており、今後余罪についても追及されそうです。
~ 出産育児一時金 ~
出産育児一時金は、公的医療保険(国民健康保険、協会健保、共済組合)の加入者が出産した場合に子ども一人あたり原則42万円を支給する制度です。
外国人も加入していれば対象となるようで、一時帰国した母国で出産した場合などは、現地で発行された出生証明書、出産費用の領収書などを提出すれば出産育児一時金を受け取ることができます。
今回は、この手口を悪用した犯罪です。
東京のある区では、国民健康保険の窓口で支払われた一時金のうち、海外の出産が40%を超えた自治体もあるようです。
こうした実態を受けて、厚生労働省は実態調査に乗り出し、今年4月に、出産育児一時金の請求時の提出書類に、海外現地の医療機関への照会に同意する文書を加えるよう自治体などに通知しています。
また、不正を見抜くため、民間の専門の会社に不正チェックを委託している自治体もあるようです。
~ 詐欺罪 ~
詐欺罪は刑法246条に規定されています。
刑法246条
1 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
本件では偽の出産証明書などを提出したり、出産育児一時金請求書の書類に虚偽事項を記載することが「人(窓口係員)を欺く行為」に当たるでしょう。
そして、それによってそのまま出産育児一時金の支払権者によって出産育児一時金が支払われれば詐欺罪が成立します。
なお、出産育児一時金請求書の書類に虚偽事項を記載したにもかかわらず、職員などによってそれが見破られたため出産育児一時金を受け取ることができなかった場合は、詐欺未遂罪が成立するにとどまります。
~ 詐欺罪で逮捕されたら弁護士に相談 ~
最近は、出産育児一時金のみならず、生活保護費、年金などの不正受給事案が続発しているようです。
これらの不正受給によって、単に市役所に対して損害を発生させたことにとどまらず、制度の存続をも危うくしてしまうおそれがあり、仮に発覚すれば、厳しい刑事処分、刑事罰を与えられる可能性もあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。
詐欺の受け子の疑いで現行犯逮捕
詐欺の受け子の疑いで現行犯逮捕
大阪府阪南市に住むAさんは、知人に「高収入のアルバイトがある」と言われ、応じることにしました。
「高収入のアルバイト」とは、ある人物がターゲットに対し、あらかじめ電話でお金を騙し取るための話をするから、その後に指定された家に行き、応対した家の人から現金を預かり、知人の紹介した人物に届けるという内容のものでした。
Aさんは、先行する電話の後、知人の指示を受けて、大阪府阪南市にある指定された家に行きました。
応対した家の人からバッグを預かると、大阪府泉南警察署の警察官が家の中から現れ、詐欺未遂罪の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。
(フィクションです)
~特殊詐欺について~
特殊詐欺とは、被害者に電話をかけるなどして対面することなく欺もうし、指定した預貯金口座へ振り込ませるなどの方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(手段が恐喝による場合も含まれます)です。
(出典:平成30年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/3)
特殊詐欺は8種類あり、①オレオレ詐欺、②架空請求詐欺、③融資保証金詐欺、④還付金等詐欺、⑤金融商品等取引名目の詐欺、⑥ギャンブル必勝法情報提供名目の詐欺、⑦異性との交際あっせん名目の詐欺、⑧その他に分類されています。
ケースのAさんは、詐欺行為に加担してしまった嫌疑で現行犯逮捕されてしまったものと考えられます。
特殊詐欺においては、詐欺を行うグループが存在し、その構成員が①被害者に電話をかけて欺罔する役、②実際にお金を被害者宅に受取りに行ったり、あるいは振り込まれた口座から現金を引き下ろす役などに分かれて犯罪を行われることが多いです。
このうち、②が「受け子」「出し子」といった役割であり、事例のAさんは受け子の役割を果たしてしまったということになるでしょう。
具体的な特殊詐欺の手口としては、例えば被害者の息子を名乗り、「会社の金300万円を横領してしまった。すぐに300万円を補てんするなら、警察には届け出ないと言われているから、何とか300万円を用意できないか」などと欺罔し、被害者がこれに応じそうであれば、「(被害者の)家の近くに同僚がいるから、同僚に受取りに行ってもらう。300万円は同僚に渡してほしい」などと申し向け、あらかじめ用意した人物を受け取りに行かせる、といった手口になります。
~特殊詐欺で被害者宅に警察官…なぜ?~
近年、警察は「だまされたフリ作戦」によって、上記の特殊詐欺の捜査を行うことがあります。
「だまされたフリ作戦」とは、詐欺に気付いた被害者が警察に連絡し、警察官の協力を受けながら、犯人の連絡先、受け子の訪問時間などを聞き出し、犯人の検挙に繋げる、といった捜査手法です。
だまされたフリ作戦では、犯人に「お金の用意ができた」と伝え、受け取りに来た犯人に空の封筒やバッグなどを引渡し、そこで待機していた警察官が逮捕する、という流れになります。
ケースの場合は、Aさんが被害者宅に行く前に行われた電話による欺罔行為に被害者が気付き、あらかじめ警察に相談していたものと思われます。
そして、受け子のAさんがバッグ(実際には空のバッグでしょう)を受け取った瞬間に、待機していた警察官が検挙・逮捕したものと考えられます。
~今後Aさんはどうなるか?~
警察署に引致された後、取調べを受けることになります。
留置の必要があると認められると、逮捕時から48時間以内にAさんの身柄が検察に送致されます。
検察官は、身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内にAさんの勾留を請求するか、あるいはAさんを釈放するかを決めます。
勾留決定がでると、10日間勾留され、やむを得ない事由があると認められると、さらに最長10日間勾留が延長されます。
ケースのような特殊詐欺事件においては、背後の詐欺グループの実態解明に時間を要することから、身体拘束が長引くことが考えられます。
したがって、勾留、勾留延長される可能性が高く、保釈の実現も比較的難易度が高いということになります。
弁護士の助言を受けながら、なるべく早く釈放されるように、または保釈を実現することができるように行動する必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所であり、詐欺の受け子になってしまった事件についてもご相談いただけます。
ご家族が詐欺の受け子になり、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
詐欺で逮捕~特殊詐欺の故意
詐欺で逮捕~特殊詐欺の故意
特殊詐欺のいわゆる「架け子」であるXは,Aと共謀の上,埼玉県三郷市に住むVに対し,立替金の返金のために送金が必要であると騙し,居住実態のないYアパート宛に,Vに現金100万円を送付させ,「受け子」であるAにこれを受取らせた。
Vの被害届を受けて捜査していた埼玉県吉川警察署の警察官は,Aを詐欺罪の疑いで逮捕した。
逮捕の知らせを受けたAの家族は,詐欺事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)
~詐欺罪と客観面~
刑法246条は,詐欺罪について定め,その1項で「財物」についての詐欺行為を処罰しています。
本件も,現金という「財物」を騙し取る詐欺のため,刑法246条1項の成否が問題となります。
同条項の「人を欺いて財物を交付させた者」を詐欺とするという条文からは,必ずしも明らかではありませんが,一般に詐欺罪(1項)が成立するためには,①「欺罔行為」(改正前の条文ではこの文言が使われていたことから現在もこの語を使う文献等も少なくありません),②「錯誤」,③「交付行為(処分行為)」,④「財物の移転」が必要であるとされています。
また,上記①~④の間には一連の因果関係が必要となります。
本件では,架け子と受け子Aの共謀によって,この客観面の要件が満たされることには特に争いはないでしょう。
~詐欺罪と故意(主観面)~
そして,詐欺罪も当然故意犯であることから,主観的要件としての「罪を犯す意思」(刑法38条1項本文)すなわち「故意」が必要となります。
この点に関して,本件のような特殊詐欺に関して判示したのが最高裁平成30年12月11日判決です(同14日にも同種の争点に関する最高裁判決が出されています)。
前審(第2審)は,本件のような宅配便で現金を送付させてだまし取る特殊詐欺が,報道等により社会的にどの程度周知されていたか等が故意の有無に関わってくるとし,本件行為当時の報道状況等からすれば,被告人が本件詐欺を認識できたとはいえないとし,詐欺の故意を否定し,被告人に無罪を言い渡していました。
しかし,最高裁は,第1審の判断を全面的に採用し,本件特殊詐欺の故意を肯定し,本件特殊詐欺の手口が報道等により広く社会に周知されている状況の有無は,故意の認定にあたって決定的なものではないとしました。
もっとも,本件判例の事件は,2015年の事件であり,宅配便で現金を送付させてだまし取る特殊詐欺の態様が,いまだ周知されていたとはいいがたい状況であったのも確かです。
しかし,2019年現在では,この手の特殊詐欺は,もはや特殊詐欺の態様として一般化しているといえ,同事案における詐欺罪の故意はより認められやすい状況になっていると考えられます。
なお,詐欺罪の主観面においても,窃盗罪等と同様に,主観的要件として不法領得の意思が必要となる点にも注意が必要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,昨今氾濫する特殊詐欺を含む詐欺事件等の刑事事件を専門とする法律事務所です。
特殊詐欺の「受け子」「出し子」といった役割は,若年層のお小遣い稼ぎとして特殊詐欺グループ等から利用されていることもあり,近年大きな社会問題となっています。
弊所では年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)にて,詐欺事件によって逮捕されてしまったご家族によるお問い合わせも承っております。
刑事事件は時間との闘いであり,弁護士による対応の遅速が時には明暗を分けることもあり得ることから,お早目のお問い合わせをおすすめいたします。
キャッシュカード譲渡事件で警察取調べ対応
キャッシュカード譲渡事件で警察取調べ対応
横浜市旭区在住のAさん(40代女性)は、「何かお金が入用な際に使っていいよ」と伝えて、知人男性にAさん名義のキャッシュカードを預けていたところ、別件で、その知人男性に振込詐欺事件に関与した疑いがかけられ、知人男性は逮捕された。
知人男性の所持品捜査の中で、「Aさんのキャッシュカード」が振込詐欺に利用されたのではないかとの疑いがかかり、Aさん自身も神奈川県旭警察署での取調べの呼出しを受けた。
Aさんは、「知人男性が振込詐欺事件に加担していることを知らなかった事情」もあり、今後の警察署での取調べに対して、どのように話していくべきかを、刑事事件に強い弁護士に法律相談することにした。
(事実を基にしたフィクションです)
~キャッシュカード譲渡で犯罪収益移転防止法違反~
キャッシュカードを他人に譲渡した場合には、「犯罪収益移転防止法」(犯罪による収益の移転防止に関する法律)に違反するとして刑事処罰を受ける場合と、「刑法の詐欺罪」に当たるとして刑事処罰を受ける場合があります。
「犯罪収益移転防止法」では、「他人になりすまして預貯金契約に係る役務の提供を受ける目的」で通帳等の譲受をした場合や、正当な理由がないのに「有償で」通帳等の譲受をした場合に、刑事処罰を科す規定があります。
「犯罪収益移転防止法」によるキャッシュカード譲受の刑事処罰の法定刑は、「1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科」とされています。
・犯罪収益移転防止法 28条1項
「他人になりすまして特定事業者(略)との間における預貯金契約(略)に係る役務の提供を受けること又はこれを第三者にさせることを目的として、当該預貯金契約に係る預貯金通帳、預貯金の引出用のカード、預貯金の引出し又は振込みに必要な情報その他特定事業者との間における預貯金契約に係る役務の提供を受けるために必要なものとして政令で定めるもの(略)を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。」
キャッシュカード譲渡をした側は、譲受側の「他人になりすまして預貯金契約に係る役務の提供を受ける目的」を知っていた場合や、正当な理由がないのに「有償で」通帳等の譲渡をした場合に、同様の刑事処罰を受けます。
・犯罪収益移転防止法 28条2項
「相手方に前項前段の目的があることの情を知って、その者に預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同項と同様とする。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同様とする。」
また、キャッシュカード譲渡・譲受行為をするように、「人を勧誘し、又は広告その他これに類似する方法により人を誘引した者」も、同様の刑事処罰を受けます。
「業として、キャッシュカード譲渡・譲受をした者」は、さらに刑事処罰が重くなり、法定刑は「3年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科」となります。
~キャッシュカード譲渡による詐欺罪とは~
他人に「自分名義のキャッシュカード」を譲渡する前の段階で、キャッシュカード譲渡の目的で、銀行等で自分名義のキャッシュカードを作成した際には、銀行等に対する詐欺罪が成立する可能性があります。
銀行側は、契約者自身で使うものとしてキャッシュカードを交付しており、他人へのキャッシュカード譲渡目的で銀行と預貯金契約することは、銀行に対する詐欺行為に当たるからです。
刑法の詐欺罪の法定刑は、「10年以下の懲役」とされています。
・刑法 246条1項(詐欺)
「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。」
キャッシュカード譲渡事件では、まずは事件早期の段階で弁護士に法律相談することで、警察署の取調べにおいて、どのように被疑者本人が供述していくかを、弁護士と綿密に打合せすることが重要となります。
横浜市旭区のキャッシュカード譲渡事件でお困りの方は、刑事事件を専門に扱っている、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の評判のいい弁護士にご相談ください。
特殊詐欺の現行犯(受け子)で逮捕
特殊詐欺の現行犯(受け子)で逮捕
特殊詐欺の受け子のバイトをしていたAは、八王子駅(八王子市旭町)付近でVから現金500万円を受け取ろうとしたところ、張り込んでいた警視庁八王子警察署の警察官に詐欺未遂罪の現行犯で逮捕された。
そしてその後、Aは警視庁八王子警察署へと連行された。
後日、Aの自宅に今回の事件の証拠品の押収のため、警察官が捜索・差押えに入った。
警察官の捜索中に宅配便が届いたので警察官がその荷物を開披したところ、中からいわゆる「飛ばし携帯」が発見されたので、警察官はこちらも押収した。
(事例はフィクションです。)
特殊詐欺
今回のAは特殊詐欺の受け子をして逮捕されています。
この「特殊詐欺」は警察庁が命名したもので、面識のない不特定の者に対し、電話その他の通信手段を用いて、預貯金口座への振込みその他の方法により、現金等をだまし取る詐欺をいい、振り込め詐欺及び振り込め詐欺以外の特殊詐欺を総称したものを言います。
振込め詐欺ではオレオレ詐欺、架空請求詐欺、還付金詐欺など、振込め詐欺以外の詐欺では金融商品等取引名目の詐欺、ギャンブル必勝情報提供名目の詐欺などが挙げられます。
特殊詐欺は詐欺グループを形成し、組織立って詐欺行為を行なうことが多くあります。
詐欺グループの背景に暴力団関係者がいる場合もあります。
一方、金銭を騙し取る相手(以下、「被害者」と言います。)と直接接触する役割を持つ「受け子」や「出し子」については、「割の良いバイト」と称して、ネットなどで募集をしていることも多いです。
「受け子」等の報酬は1回の受け取りにつき1万円程度の場合もあれば、騙し取った金銭の3~4%(本件の場合、150,000~200,000円)の場合もあります。
特殊詐欺で登場する役割としては、以下のようなものが挙げられます。
〇掛け子
特殊詐欺グループにおいて、被害者に対して、電話で現金やキャッシュカードを後述の受け子に渡したり、直接指定の口座に振り込ませるよう指示する役割の人物です。
〇受け子
掛け子による指示に従った被害者と直接顔を合わせるのがこの受け子です。
被害者から現金やキャッシュカードを受け取ります。
〇出し子
キャッシュカードを騙し取った場合、ATMで現金を引き出す必要があります。
その引き出し役を出し子と言います。
今回のAは受け子をしています。
掛け子や受け子が逮捕された場合は詐欺罪(刑法236条1項)に問われることが考えられます。
この場合、10年以下の懲役に処されることになります。
一方、出し子に関与した場合、窃盗罪(刑法234条)にも当たります(詐欺罪について処罰されるかどうかは出し子をした人物の関与の度合い等によります)。
銀行ATMから現金を引き出す行為が、「他人の財物」(本件の場合、銀行ATMが占有する現金)を「窃取」したと評価されるからです。
この場合、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。
受け子や出し子に関しては、被害者に特徴を覚えられたり、現金を引き出す際に銀行ATMの監視カメラに映るリスクがあります。
逮捕のリスクが高いことから、特殊詐欺ではこうした役割にアルバイトを利用しているのが多く見受けられます。
捜索・差押え
本件では、警察官が捜索中に偶然届いた宅配物についても捜索・差押えを行っています。
今回は、「飛ばし携帯」、つまり、他人や存在しない人物の名義で契約した携帯電話で、匿名で電話を掛けることができるため、犯罪の痕跡の残さないといった用途で使われるものが押収されています。
これについては問題ないのでしょうか。
そもそも、捜査機関の請求に対し、裁判官が証拠が存在する可能性が高いと判断した場合、捜索差押令状を発布します(刑事訴訟法218条、219条など)。
そして、捜査機関は令状の執行をする際、被処分者(いない場合は、同居人や大家)に対して令状を提示します。
もっとも、この令状呈示は捜索差押が公正な手続きに則っていることを示し、被処分者に反論の機会を与えるためのものです。
また、裁判官の判断するのは、令状の有効期間(発付日から7日間)内にその場所に証拠が存在する可能性の高さですので、期間内であればいつ持ち込まれるのかは問題としていません。
そのため、捜索中に偶然届けられた荷物に対しての捜索は基本的に問題ないと考えられます。
終わりに
特殊詐欺の受け子等については、現金などを「受け取るだけ」「引き出すだけ」と軽い気持ちで詐欺に加担してしまうかもしれません。
けれども、組織的犯行の場合、受け子や出し子であっても厳罰化の傾向にあります。
そのような中、不起訴処分や執行猶予付き判決を得るには、示談締結や再犯防止のための活動など非常に多くの活動が求められます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、特殊詐欺事件の経験豊富な弁護士による、身柄の早期解放も含めた最善のアドバイスを受けることができます。
被疑者が逮捕された事件の場合、最短当日に、弁護士が直接本人のところへ接見に行く「初回接見サービス」もご提供していますので、まずはお気軽にお問い合わせください。