自動車保険金詐欺で詐欺未遂罪と傷害罪

自動車保険金詐欺で詐欺未遂罪と傷害罪

東京都調布市に住むAさんは、お金に困っていたことから自己名義の自動車にかけていた任意保険会社から保険金をだまし取ろうと考えました。
そこで、Aさんは、同じくお金に困っていた知人Bさんに、「保険金詐欺しないか?」「具体的には、オレが車を運転するからお前は家の前の道路に立っていてくれ。」「そして、オレが車を運転して家の駐車場から出たところで、オレの家を訪ねてきたお前とぶつかってしまった、とうい風に見せかけるのだ。」といい、Bさんから承諾を得ました。
そして、Aさんは車を運転し、家の駐車場から車を右折させて道路に出たところ、右端に立っていたBさんに車を衝突させ、Bさんに加療約1か月の骨折の怪我を負わせてしまいました。
その後、Aさんは任意保険会社に保険金を請求しました。
ところが、保険会社の事故調査から本件事故が保険金を目的とした偽造事故ではないかとの疑いがもたれ、結局、保険金が支払われることはありませんでした。
そして、Aさんは詐欺未遂罪の共犯、Bさんに対する傷害罪警視庁調布警察署に逮捕されてしまいました(Bさんも詐欺未遂罪の共犯で逮捕)。
(フィクションです。)

~ 保険金詐欺 ~

保険金詐欺(ほけんきんさぎ)とは、被保険者(保険の対象になる人)が病気・ケガ・死亡したと見せかけ保険会社から保険金を不正に請求する行為をいいます。
保険金詐欺の種類としては、

・被保険者が死亡していないのに死亡したかのように装う、あるいは、被保険者を殺害し自殺に見せかけ生命保険金を騙し取る生命保険金詐欺
・非保険建物を放火させ焼損させたのに、あたかも偶然の火災であったかのように装って火災保険金を騙し取る火災保険金詐欺
・相手方と通謀して偶然の交通事故のように装い任意保険金を騙し取る自動車保険金詐欺

などがあり、本件は最後の自動車保険金詐欺に当たります。
Aさんは詐欺未遂罪傷害罪の疑いがかけられています。

~ 詐欺罪 ~

詐欺罪は刑法246条に規定されています。

刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

詐欺罪が成立するためには、①人を欺く行為(=欺罔行為)、②人の錯誤(簡単にいえば勘違い)を引き起こし、③処分権限ある人に財物を移転させ、④その相手方に財産的損害を与えたこと、が必要となります。

保険金詐欺でいう「人」とは、実際に保険金支払いを担当した任意保険会社の担当者ということになるでしょう。
「欺罔行為」は要するに、偶然の交通事故だ、と装う行為ということになるでしょう。
保険金請求関係の書類にその旨記載する行為が一番に考えられます。交通事故である旨の記載をされた書類を受け取った保険会社の担当者とすれば、それが故意ではなく偶然(過失)による交通事故と考えるのが通常でしょう。
つまり、「錯誤」が認められることになります。

なお、詐欺未遂罪が成立するには①の欺罔行為(詐欺の実行行為)が必要とされています。
ただし、②までは必要ありません。
つまり、相手方が錯誤に陥ったかどうかは関係なく、欺罔行為があれば詐欺未遂罪が成立してしまう可能性があります。

~ 傷害罪 ~

傷害罪は刑法204条に規定されています。

刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

本罪は、相手に怪我をさせようと思って暴行を加えた場合のほか怪我させるつもりはなく暴行を加えた場合でも成立しうる罪ですが、本件の場合は前者の場合に該当します。
また、暴行時に相手方が怪我をするかどうか、どんな怪我をどの程度するかの認識は不要とされています。
暴行と結果(怪我=傷害)との間に因果関係が認められれば足ります。
本件の暴行とは、もちろん、Aさんが車を運転してBさんに車を衝突させる行為です。

なお、BさんがAさんの暴行につき承諾をしており、Aさんの行為の違法性が阻却される(違法ではない)かどうかが問題となりえますが、判例(昭和55年11月13日)は、「被害者が身体の承諾をした場合に傷害罪が成立するかどうかは、単に承諾が存在するという事実だけではなく、承諾を得た動機、目的、身体傷害の手段、方法、損傷の部位、程度などの諸般の事情を照らし合わせて決すべきである」として、「Aさんの行為の違法性は阻却されない(つまり違法である)」としました。

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