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(事例紹介)誤振込された給付金を使って電子計算機使用詐欺罪

2022-05-20

(事例紹介)誤振込された給付金を使って電子計算機使用詐欺罪

~事例~

山口県阿武町が新型コロナウイルス対策の臨時特別給付金4630万円を誤って住民に振り込み返還を求めている問題で、県警は18日、誤給付金と知りながら別口座に移し替えて不法に利益を得たとして電子計算機使用詐欺の疑いで、住民(中略)を逮捕した。
(※2022年5月18日22:44京都新聞配信記事より引用)

~誤振込されたお金を使ってしまうと犯罪に~

現在、世間で大きな話題となっている今回の事例ですが、問題となっているのは、「自分の口座に誤振込された給付金だ」と認識しながらその給付金を使ってしまったという行為です。
自分の預金口座に何らかの手違いで誤振込されたお金を、誤振込された経緯を知っていながら使うことは、その態様によって様々な犯罪に当たる可能性のある行為です。

例えば、よく誤振込に関連する刑事事件で問題となるのは、詐欺罪の成立についてです。

刑法第246条
第1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

誤振込されたお金を誤振込されたものだと知っている人が、その事情を言わずに銀行の窓口で預金の払い戻しを受けたという事例では、誤振込があったということを受取人(誤振込されたお金を受け取った人)が銀行に告知する義務があると判断されました。
そして、誤振込があったことを銀行に告知せずにそのお金を払い戻しさせる行為は、詐欺罪の「人を欺」く行為に当たり、その結果銀行から払い戻いを受ける=「財物を交付させ」ることから、詐欺罪が成立するとされたのです(以上、最決平成15.3.12参照)。

この詐欺罪のケースから今回の事例を見てみましょう。
今回話題になっている電子計算機使用詐欺罪とは、刑法第246条の2に定められている犯罪です。

刑法第246条の2
前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。

簡単に言えば、先ほど紹介した詐欺罪が「人を」欺いて財物を交付させる犯罪であるのに対し、電子計算機使用詐欺罪は「電子計算機」=コンピューターを欺いて不法の利益を得る犯罪であるといえます。
ですから、ネットバンキングなどを使用してオンライン上で誤振込決済したり引き出したりしたような場合には、電子計算機使用詐欺罪となり得るということなのです。

今回取り上げた給付金が誤振込された事例では、オンラインカジノにオンライン上でお金を移動させたということから、電子計算機使用詐欺罪にあたると判断されたのでしょう。

このほか、誤振込のお金を使う態様によっては窃盗罪(刑法第235条)にあたると判断される場合もあります。

今回の事例のように、誤振込されたお金をそうと知りながら使ってしまうと刑事事件に発展してしまうことが予想されます。
どういった態様でお金を使ってしまったのかによっても成立する犯罪が異なりますし、成立する犯罪が異なれば処分の見通しも変わってきます。
こういった専門的な部分は専門家のサポートを受けながら理解していくことが大切です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、詐欺事件を含む刑事事件のご相談・ご依頼を受け付けています。
詐欺事件などの刑事事件にお困りの際は、一度弊所の弁護士までご相談ください。

【解決事例】特殊詐欺事件の接見禁止一部解除・勾留期間短縮

2022-05-13

【解決事例】特殊詐欺事件の接見禁止一部解除・勾留期間短縮

~事例~

仙台市青葉区に住んでいる大学生(20代)のAさんは、お金をXさんから受け取り、Yさんへ渡すという仕事を頼まれ、頼まれた通りにXさんからお金を受け取ってYさんへ渡しました。
Aさんは、当初は怪しいとは思っていなかったものの、途中で「このお金は怪しいお金なのかもしれない」という認識が出てきました。
しかし、Aさんは頼まれた仕事を行い、交通費を受け取りました。
Aさんはこうした行為を複数回行いましたが、実はAさんが受渡しをしていたお金は特殊詐欺の被害金であり、Xさん・Yさんは特殊詐欺グループの一員でした。
こうしたことから、Aさんは特殊詐欺に関わったとして、宮城県仙台北警察署に盗品等運搬罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんのご家族は、取調べ対応が適切にできるのかどうか、Aさんの今後はどうなるのかと心配し、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで相談に来られました。
(※守秘義務の関係で一部事実と異なる表記をしています。)

~弁護活動と結果~

Aさんの関わってしまった特殊詐欺事件では、特殊詐欺グループが詐欺行為を主導していたため、事件関係者が複数存在していました。
こうしたことから、口裏合わせのおそれが高いと考えられ、Aさんには接見禁止処分が付されていました。
接見禁止処分が付されると、通常ご家族などの一般の方が面会できる期間となったとしても、弁護士以外の者との面会や手紙などの受け渡しができなくなってしまいます。
Aさんは、逮捕・勾留されることが初めてであり、かつ積極的に詐欺事件に関わったわけではなかったという事情もあったことから、ご家族との面会も一切できないまま身体拘束が続けば、Aさんの精神的負担が非常に大きくなってしまうことが心配されました。

そこで、弁護士はまずAさんのご家族について、接見禁止の対象から除外してほしいと申し立てる、接見禁止一部解除の申立てを行いました。
弁護士から、Aさんのご家族が特殊詐欺事件に関わりのないことを主張するとともに、Aさんやご家族に面会の際の注意点などを伝えて守ってもらうことも提示し、Aさんのご家族について接見禁止を解除することができました。
これにより、Aさんはご家族と面会することが可能となりました。
Aさんの場合、余罪での捜査も予定されていたため、再逮捕によって身体拘束期間が長引く可能性も高く、ご家族と面会できるということは、Aさんとご家族の精神的な支えになりました。

また、弁護士は、Aさんが余罪の捜査で再逮捕された際、勾留期間の短縮も求めました。
特に余罪のある刑事事件では、余罪の容疑で逮捕・勾留が複数回行われる可能性があります。
再逮捕が繰り返されると、身体拘束期間も長期に渡り、被疑者本人だけでなく周りの人たちの負担も大きくなってしまいます。
勾留期間短縮のためには、事件の状況を随時把握し、適切なタイミングで釈放を求めていくことが必要です。
弁護士はAさんとの接見やAさんのご家族への連絡を重ね、勾留期間の短縮を実現することができました。

結果として、Aさんは起訴され刑事裁判を受けることとなりましたが、Aさん自身が反省していることやご家族の協力のもと再犯防止に努められる環境があること等が主張された結果、執行猶予を獲得することができました。

特殊詐欺に関わる刑事事件では、逮捕・勾留によって身体拘束が行われることも少なくありませんし、余罪の有無によってはその身体拘束期間が長引くことも考えられます。
慣れない環境に1人で身を置くことになるため、被疑者・被告人の精神的・身体的負担を軽減するためにも、ご家族など近親者の接見禁止一部解除や勾留期間の短縮を求めていくことが大切です。
特殊詐欺事件接見禁止一部解除などにお悩みの際は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談下さい。

(事例紹介)高級車を水没させた保険金詐取事件

2022-05-06

(事例紹介)高級車を水没させた保険金詐取事件

今回は、高級車を水没させ、保険金をだまし取り、逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

福岡県警早良警察署は4月10日、高級車を水没させ保険金をだまし取ったとして、自動車売買会社役員ら男女4人を、詐欺の疑いで逮捕しました。
前記4名は共謀して、2020年7月6日、BMW製の車を水没させ、保険会社から保険金約235万円を会社口座に振り込ませた疑いがもたれており、余罪についても追及されている状況です(2022年4月11日 毎日新聞 「高級車を水没させ保険金詐取の疑い 男女4人逮捕 福岡県警」より引用)

~保険金詐欺事件について~

不慮の事故や火事などを装い、保険会社から保険金をだまし取る手口が保険金詐欺の典型例です。
装った事故・火事の態様によっては、傷害罪、殺人未遂罪、放火の罪など、別の罪に問われる可能性もあります。

~いつから詐欺罪に問われる?~

このようなケースでは、どの時点から詐欺罪に問われる状態になるのかが法律上問題になります。
実際に保険金が支払われなかった場合であっても、詐欺罪については未遂犯処罰規定が存在するため(刑法第246条、250条)、詐欺「未遂」罪に問われる場合もありえます。

詐欺未遂犯が成立するためには、詐欺罪の「実行の着手」が認められることが必要です。
古い判例ですが、昭和7年6月15日の大審院判決によれば、保険金詐取の目的で家屋に放火した時点では詐欺罪の実行の着手は認められないとし、失火を装って保険会社に保険金の支払いを請求した時点において、はじめて実行の着手が認められるとされています。

詐欺未遂犯の成立を争い得る場合には、無罪や不起訴といった処分を獲得できる可能性もあります。
まずは刑事事件に詳しい弁護士と相談し、今後の弁護活動に関するアドバイスを受けましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を中心に取り扱う法律事務所です。
ご家族が保険金詐欺の疑いで逮捕されてしまった場合には、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

【解決事例】クレジットカード詐欺事件で不送致に

2022-04-29

【解決事例】クレジットカード詐欺事件で不送致に

~事例~

北海道札幌市西区に住んでいたAさんは、自身の勤務していたお店で、客が利用したクレジットカード情報やセキュリティコードをメモして、その情報を基に自身の買い物に他人のクレジットカードを利用する、いわゆるクレジットカード詐欺行為をしていました。
その後、Aさんが自身の行いをAさんのご両親に相談されたことをきっかけに、Aさんは札幌方面西警察署に自首しました。
警察の捜査を待つ間、Aさんは自宅で待機することになったのですが、Aさんが精神的に不安定になっていることもあり、Aさんの両親は今後の手続に不安を抱いておられました。
そこでAさんの親御様が、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へ相談に来られました。
(※守秘義務の関係で一部事実と異なる表記をしています。)

~弁護活動と結果~

Aさんは、元々患っていた摂食障害が悪化してしまったこともあり、精神的に不安定な状態でした。
Aさんが今後同じようなことを繰り返さないようにするためにも、摂食障害などの治療を本格的に行うことが必要でした。
そこで、弁護士とご家族で協力し、Aさんの摂食障害の治療に適した病院を探し、Aさんはそこで入院治療を含んだ治療を受けることになりました。

Aさんは、クレジットカード詐欺の捜査の過程で逮捕される可能性もありましたが、前述のように継続的な治療を受けたことでAさんの摂食障害等の症状が落ち着いてきたことや、こういった病気の治療には継続的な治療が必要なことなどから、逮捕を避けられるよう活動を行いました。

加えて、クレジットカード詐欺の被害を受けた店舗への謝罪・弁償も行っていきました。
Aさん本人も大変反省しており、ご家族も謝罪と弁償の意思をお持ちであったことから、複数の被害店舗に弁護士よりコンタクトをとり、被害弁償を行えるよう交渉していきました。
結果として、複数の店舗から被害弁償を受けてもよいという回答をいただくことができ、弁償することができました。

こうした活動の結果、Aさんの捜査は最後まで在宅捜査(逮捕等身体拘束を伴わない捜査)で行われ、検察官へ事件を送致することなく事件を終了する、不送致という処分になりました。

詐欺事件を含む刑事事件では、刑事事件を起こしてしまった方が抱えている問題を解決することが再犯防止につながるという場合もあります。
再犯防止のための活動を行うことで、起訴・不起訴の判断や、刑事裁判になった際の刑罰の重さなど、様々な局面の判断にも関わってきますし、もちろんご本人の将来のためにもなります。
どういったことをすべきなのかなど、なかなか分かりづらいこともありますから、まずは弁護士に相談してみることがおすすめです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、詐欺事件を含む刑事事件を数多く取り扱う弁護士事務所です。
北海道詐欺事件にお悩みの際は、まずはお気軽に弊所弁護士までご相談ください。

【解決事例】保険金詐欺事件で不起訴処分を獲得

2022-04-22

【解決事例】保険金詐欺事件で不起訴処分を獲得

~事例~

Aさんは、交通事故時に負った怪我の治療のために、東京都立川市にある整骨院に通っていました。
Aさんが整骨院に通った回数は実際には60回程度だったのですが、整骨院から「通院回数を100回としてほしい」と言われ、保険会社には通院回数を100回として申請しました。
その後、Aさんの虚偽申告が発覚し、保険会社からAさんへ連絡が入りました。
警視庁立川警察署の捜査を受ける予定となり、自分のしてしまった行為は詐欺罪となるのかと不安になったAさんは、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に相談にいらっしゃいました。
(※守秘義務の関係で一部事実と異なる表記をしています。)

~弁護活動と結果~

Aさんは、保険会社への対応を真摯に行うことを希望されていました。
そこで、保険会社の聞き取り調査や申述書の作成などに弁護士が立会い、Aさんの主張が誤って伝わることのないよう、サポートを行いました。
そして、保険会社とのやり取りについても、弁護士が行うことで、Aさんの負担を軽減することができました。

また、弁護士からは、この保険金詐欺事件においてAさんの処分を軽減するように検察官に求めていきました。
最終的に、Aさんが保険金詐欺行為に加担してしまった経緯や、Aさん自身の反省・謝罪のあること、保険会社への真摯な対応などが考慮され、Aさんは不起訴処分となりました。

不起訴処分となったAさんは、刑事裁判を受けることもなく、前科が付くこともなく済みました。

詐欺罪で定められている刑罰は「10年以下の懲役」(刑法第246条)ですから、詐欺罪で起訴されるということは刑事裁判となるということと直結します。
刑事裁判となってしまえば、公開の法廷に立つことになりますし、負担も大きくなっていきます。
不起訴処分となればそうした心配もなくなりますから、まずは自分の詐欺事件がどういった見通しなのか、弁護士に相談してみることがおすすめです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、在宅捜査を受けている方向けの初回無料法律相談を行っています。
詐欺事件にお悩みの際は、お気軽にご相談ください。

リクルーターと詐欺罪の共謀共同正犯

2022-04-15

リクルーターと詐欺罪の共謀共同正犯

リクルーター詐欺罪共謀共同正犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

東京都千代田区に住んでいるAさんは、友人らと一緒に特殊詐欺グループを結成し、特殊詐欺を行っていました。
Aさんは、いわゆる「受け子」や「出し子」と呼ばれる役割を担う人を募る、リクルーターの役割をしていました。
東京都千代田区特殊詐欺の被害が多発したことから、警視庁丸の内警察署が捜査を開始し、Aさんは詐欺罪の容疑で逮捕されました。
Aさんは、「自分は直接詐欺行為をしたわけでもないのに詐欺罪で逮捕されるのか」と考え、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・リクルーターと詐欺罪の共謀共同正犯

前回の記事では、特殊詐欺リクルーターについて取り上げた後、刑法の「共謀共同正犯」という考え方が適用されるということ、「共謀共同正犯」という考え方があることを紹介しました。
今回の記事では、「共謀共同正犯」であるといえるための条件はどういったものなのかということを確認していきます。

共謀共同正犯」にいう「共謀」とは、2人以上の物が特定の犯罪を行うため相互に他人の行為を利用・補充し合い、各自の範囲を実行に移すことを内容とする相談ないし協議を行い、合意に達することをいうとされています(最大判昭和33.5.28)。
この「共謀」の事実の有無が、自分の犯罪として行う認識でいたかどうか、各自間で意思の連絡があるかどうかといった事情の有無から判断されます。
そして、参加していた謀議で各自が一定程度重要な役割を果たしているかどうか、共同実行の意思(相互に他人の行為を利用・補充し合うことで犯罪を実行する意思)があるかどうか、共謀した複数人のうち1人以上がその犯罪を共謀に基づいて実行しているかどうかといったことにより、「共謀共同正犯」に当たるかどうかが判断されるのです。

今回の事例のAさんについて検討してみましょう。
今回のAさんは、あくまで「受け子」や「出し子」の勧誘を行うリクルーターであり、直接特殊詐欺の被害者を騙していたわけではなく、たしかに詐欺行為自体には関わっていないといえるかもしれません。
しかし、Aさんは、特殊詐欺グループの一員として、そのグループで特殊詐欺をすることを認識しながら、「受け子」や「出し子」という人員確保のためのリクルーターという役割を果たしています。

このことから、Aさんは特殊詐欺詐欺罪にあたる犯罪行為を行うために他の特殊詐欺グループのメンバーと特殊詐欺の計画を立てていた=「共謀」していたと考えられます。
加えて、Aさんはリクルーターという「受け子」「出し子」を勧誘する立場であったことから、ある程度特殊詐欺グループの中でも実情を把握していた立ち位置であると予想され、謀議の中でも一定程度の役割があるものと考えられます。

また、Aさんは特殊詐欺をするということを認識しながらその実行のための「受け子」「出し子」を募っていたのですから、特殊詐欺という犯罪行為を他の特殊詐欺グループのメンバーと補充し合いながら実行する意思もあったと思われます。
こうしたことから、リクルーターをしていたAさんも、詐欺罪の「共同共謀正犯」として判断されたのだと考えられるのです。

特殊詐欺事件などで事件関係者が複数人いる場合、その関係性や果たした役割などによって、刑事事件の見通しや行うべき弁護活動も大きく変わってきます。
刑事事件の知識がない状態でそれらを判断することは困難ですし、リスクも伴うことですから、まずは法律の専門家である弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、特殊詐欺事件を含む詐欺事件についてのご相談・ご依頼も承っています。
ご相談者様の状況に合わせたサービスをご案内していますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

特殊詐欺事件のリクルーターとは?

2022-04-08

特殊詐欺事件のリクルーターとは?

特殊詐欺事件リクルーターとはどういったことなのかということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

東京都千代田区に住んでいるAさんは、友人らと一緒に特殊詐欺グループを結成し、特殊詐欺を行っていました。
Aさんは、いわゆる「受け子」や「出し子」と呼ばれる役割を担う人を募る、リクルーターの役割をしていました。
東京都千代田区特殊詐欺の被害が多発したことから、警視庁丸の内警察署が捜査を開始し、Aさんは詐欺罪の容疑で逮捕されました。
Aさんは、「自分は直接詐欺行為をしたわけでもないのに詐欺罪で逮捕されるのか」と考え、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・特殊詐欺のリクルーター

特殊詐欺は、今回の事例のAさんのように、複数人がグループとなって犯行をすることも多いです。
特殊詐欺グループでは、それぞれが役割を担っていることが多いです。
例えば、「受け子」と呼ばれる役割は被害者などからキャッシュカードや金銭を受け取る役割ですし、「出し子」と呼ばれる役割は被害者からだまし取ったキャッシュカードなどを用いてATMから金銭を引き出す役割を指します。
他にも、被害者に対して電話をかけて嘘の話をして騙す「かけ子」なども存在します。
これらのうち、特に、被害者に直接対面する「受け子」や、ATMなど防犯カメラに映る可能性の高い「出し子」は、自らの手がかりになる痕跡を残しやすいため、逮捕されやすい傾向にあります。
そのせいか、「受け子」や「出し子」はいわゆる「とかげのしっぽ」的に扱われることが多く、特殊詐欺グループの中心にいるメンバーが担うというよりも、アルバイトとして雇うといった手法で特殊詐欺グループに深くかかわっていない人が担うということが多いです。

こうした「受け子」「出し子」を勧誘する役割が、今回Aさんが担っていたリクルーターです。
リクルーターは、特殊詐欺をすることを分かっていながら「受け子」や「出し子」を勧誘してその役割を与えているケースが多いため、特殊詐欺グループの中心に近いと判断されやすい役割といえるでしょう。

・詐欺罪と「共犯」

特殊詐欺は、文字通り詐欺を行っているわけですから、刑法の詐欺罪が成立する犯罪行為です。

刑法第246条第1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

今回の事例のAさんは、特殊詐欺グループのリクルーターをしていますが、上述の通り、リクルーター特殊詐欺の「受け子」や「出し子」といった役割をする人を募る役割です。
リクルーターをしているだけであれば、実際にAさんが直接「人を欺いて財物を交付させ」る行為をしていない=詐欺罪に当たらないのではないかと疑問に思うかもしれません。

しかし、Aさんは、特殊詐欺グループに所属し、他のメンバーと特殊詐欺をすることを認識しながら、特殊詐欺の「受け子」や「出し子」を勧誘しています。
こうした場合、刑法では「共同共謀正犯」という共犯の考え方が用いられることがあります。

まず、刑法には「共同正犯」という考え方があります。
一般に「共犯」という呼ばれ方でイメージされる「共犯」は、この考え方に当てはまるものでしょう。

刑法第60条
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

「正犯」とは、簡単にいうと「その犯罪をした人」ということです。
例えば、XさんとYさんが一緒に窃盗罪に当たる行為を実行した場合、XさんとYさんは共同正犯となり、どちら対しても窃盗罪が成立し、有罪となった場合には窃盗罪の法定刑である「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」の範囲で罰せられるということになるのです。

この条文だけ見ると、今回の事例のAさんのように、「直接詐欺行為に関わっていないのだから共同正犯ではないのでは?」と疑問が残るかもしれません。
ですが、共同正犯の考え方の中には、先ほど挙げた「共同共謀正犯」という考え方が含まれると考えられています。

共同共謀正犯」とは、複数人で犯罪の実行を共謀した場合、共謀に基づいてそのうち1人以上が犯罪を実行したのであれば、犯罪を共謀だけした者(犯罪の実行はしなかった者)を含めて正犯として扱うという考え方です。
「犯罪の実行を共同した者だけを共同正犯とする」としてしまうと、例えば犯罪を計画・指示した首謀者が正犯として扱われない構造となってしまうため、こうした考え方が取られていると思われます。
なお、犯罪をする意思を持っていなかった人をそそのかして犯罪実行の意思をもたせ実行させるといった場合には、刑法第61条の「教唆犯」という考え方によって処罰されますが、この場合下される刑の重さの範囲は正犯と同じです。
ただし、教唆犯の扱いはあくまで狭義の「共犯」であり、実際に自分に犯罪を企てている「共同共謀正犯」に当てはまるようなケースを自分で犯罪をした「正犯」扱いではなく単なる「共犯」とするには疑問が残るということなのでしょう。

では、その「共同共謀正犯」に当てはまる条件はどういったものなのでしょうか。
次回の記事で詳しく取り上げます。

特殊詐欺事件では、リクルーターなど、様々な役割の人が登場することも多く、事件の整理をするだけでも大変なことがあります。
事件の構造や見通し、必要な活動などを整理した上で把握しておくことは、今後の刑事手続に対応するためにも大切なことですから、疑問や不安は専門家である弁護士に相談・依頼することで解消しておきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、詐欺事件を含む幅広い範囲の刑事事件を取り扱っています。
特殊詐欺事件リクルーターなどで逮捕されお悩みの場合は、まずはお気軽にご相談ください。

児童扶養手当と詐欺罪

2022-04-01

児童扶養手当と詐欺罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。 

埼玉県川越市に住むAさんは3年前に離婚し、子供を一人で育てているシングルマザーで、児童扶養手当を受給しています。
1年前にAさんには内縁の夫Bさんができ、子供も一緒に3人で同居して生活しています。
ある日Aさんはインターネットで、「内縁の夫がいるにもかかわらず、児童扶養手当をもらうのは詐欺罪になります!」という記事を読みました。
Aさんは、近々市役所に児童扶養手当受給を解消する手続きに行く予定でしたが、その際に詐欺罪で埼玉県川越警察署に逮捕されることになったらどうしようと不安な日々を送っています。
(フィクションです)

~児童扶養手当について~

児童扶養手当とは父親または母親がいない家庭、つまりひとり親家庭に支給される手当です。
そのため受給者が事実婚状態であったり、交際相手と同居をしていたりすると、不正受給とみなされるケースがあります。
ではその不正受給とは詐欺罪にあたるのかも見ていきましょう。

詐欺罪(刑法第246条)
1 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させた者も同項と同様とする。

となっており、詐欺罪が成立するには①欺く②錯誤に陥る③財産的処分行為④財物の交付など
の一連の因果関係が必要です。
これを当てはめると
①同居する内縁の夫がいることを申告せず②母子家庭だと役所は錯誤に陥り③児童扶養手当を振込み④振り込まれた児童扶養手当を受け取る
という行為のため、詐欺罪に当てはまる可能性はないわけではありません。
ただうっかり内縁の夫と同居を始めたという申請を忘れていたということもあります。
また児童扶養手当の返還請求を受けますが、詐欺罪で逮捕されたり事件になることがないパターンもあります。
ただご自分で詐欺罪になる、ならない、事件になる、ならないを判断するのは非常に危険です。
刑事事件に強い弁護士に一度事情をお話しください。

~詐欺罪で逮捕されないか不安~

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、詐欺罪が事件化された場合の活動とは別に、「顧問活動」を提供させていただいております。
「顧問活動」とは、逮捕されないか不安な日々を過ごしておられる方に対して、
①「随時の法律相談」(法的アドバイスをおこないます)
②「早急に初回接見を行う」(逮捕された場合のリスクを最小限に抑えます)
を行っていく活動です。
「顧問活動」の詳しい内容の説明や、その他どのようなサポートを受けられるかを刑事事件に強い弁護士がまず事情を聴かせていただいた後、説明いたします。
ぜひ一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、年間多数の詐欺罪への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族やご自身が詐欺罪で話を聞かれることになった、詐欺罪で逮捕されないか不安という方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

霊感商法と前科にならない処分

2022-03-21

霊感商法と前科にならない処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。 

Aさんは神戸市垂水区の路上でVさんに対し「今私が祈祷しなければ悪霊によってあなたの家族は死にますよ。」等と言って祈祷料をVさんからだまし取ろうとしました。
Vさんは「お金を払って家族が助かるなら安いものだ。お金を払って祈祷を受けよう。」と思いAさんにお金を渡しました。
後日Aさんは詐欺罪の容疑で兵庫県垂水警察署で話を聞かれることになるのですが、Aさんは「これからは真面目に働くから、就職活動に響かないように前科にならないようにして欲しい。」と考えて、刑事事件に強い弁護士に相談をしようと考えています。
(フィクションです。)

~霊感商法と詐欺罪~

Aさんの行為は、詐欺罪に該当するのか見ていきましょう。
詐欺罪は刑法第246条に規定されています。
1 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺罪が成立するには
①人を欺く行為があること(「欺罔行為」)
②欺く行為により錯誤に陥ったこと
③錯誤に基づく財産的処分行為があったこと
④その結果、財物の交付を得たこと
の間に因果関係が必要と言われています。

Aさんは、Vさんを「祈祷しなければ家族は死ぬ」と欺き、Vさんはその言葉により「祈祷を受ければ家族は助かる」という錯誤に陥り、お金を渡してAさんはそのお金を受け取りました。
Aさんには詐欺罪が成立する可能性が高いと思われます。

なお霊感商法のすべてが詐欺罪に該当するわけではなく、個別具体的に①の「欺罔行為」があるかどうかが重要とされています。

例をあげると、
①先祖の因縁や悪霊の祟りなど、不幸の原因として消費者にはどうにもできないことを告げて不安を煽る。
②支払金額が常識的範囲を大きく超えた額である。
③返金を求めると、「お金を返すと不幸が更に大きくなる」などと不安を煽る。
などの行為があるか等の事情をみて、詐欺罪として立件するかどうかが総合的に判断されるといわれています。

~前科にならないようにしたい~

まず前科とは、一般に過去に言い渡された刑罰のことをいいます。
有罪判決を受けた人には前科が付きますが、有罪判決には懲役刑や禁錮刑以外にも罰金刑や科料がありますし、執行猶予付きの判決も含まれます。

前科がつくと、一部の資格や免許の取得などにに影響が出ますし、職場を解雇されたり学校を退学になったりする可能性も有ります。
これから就職活動を控えている方にとっても前科がつけば、一部の資格や免許の取得ができないなど悪影響が出る可能性があるでしょう。

前科がつかないようにするには「不起訴処分」を目指していくのが一般的です。
不起訴処分とは、公訴を提起しない旨の検察官による処分のことをいい、裁判になることなく事件が終了する処分のことです。

では、不起訴処分はどうやって目指していくのかみていきましょう。

罪を認めている場合で不起訴を目指す場合は、「起訴猶予」を目指してゆくのが一般的です。

「起訴猶予」とは、被疑事実が明白な場合に、訴追を必要としないときにする処分のことをいいます。
(訴追を必要としないとは、あえて起訴する必要はないということで、裁判に進むことなく事件は終了します。)

その判断は、被疑者の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状や犯罪後の状況をみて行われることが多いとされているようです。
被害者の方との示談が成立しているかどうか、示談の過程はどのようなものか、なども大きな判断基準の一つとされています。
弁護士以外の方が、被害者の方と示談を行うのはとても難しいことです。

不起訴処分をめざすなら、ぜひ刑事事件に強い弁護士に示談をご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、年間多数の詐欺罪への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族やご自身が霊感商法や詐欺罪で話を聞かれることになった、前科にならないようにしたいとお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

無銭飲食と釈放

2022-03-10

無銭飲食と釈放について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。 

Aさんは10年前に実家を飛び出し一人で暮らしていましたが、1か月前に職を失い現在は住居不定で無職の状態です。
ある日Aさんは所持金が10円しかないのに千葉県松戸市にある飲食店に入り、500円の定食を注文しました。
食べ終わった後、Aさんは所持金が無くて無銭飲食であることを店員に話し、駆け付けた千葉県松戸警察署の警察官にAさんは詐欺罪の疑いで逮捕されました。
その後Aさんの実家に千葉県松戸警察署からAさんを詐欺罪で逮捕した旨の連絡が入り、Aさんの両親はなんとかAさんを釈放してあげたいと考えています。
(フィクションです)

~無銭飲食について~

Aさんが行った行動は、いわゆる無銭飲食と呼ばれるもので、これは詐欺罪にあたります。
詐欺罪については刑法246条に規定されており、
第1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
第2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
とされています。

代金を支払う意思がないのに、はじめから支払う意思がないことを黙っていることも人を欺く行為になると考えられています。
黙っていても、支払う意思がないのに料理を注文する行為自体が積極的な詐欺行為になると考えられており、料理という財物を交付させたとして上記の第1項詐欺罪が成立します。

~釈放に向けて~

Aさんは現在逮捕されており、これから48時間以内に身柄を検察庁に送られて勾留されるか否かの判断を検察庁と裁判所で受けることになります。
ここで勾留が決定すれば、最長20日間は警察署の留置場で生活することになります。
勾留をするか否かの判断で重要な項目は「勾留の理由」です。
刑事訴訟法第60条1項には、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合」で
1 住居不定 
2 犯罪の証拠を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある 
3 逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある 
の3つのうちどれか一つにでも該当する場合に勾留することが出来るとしています。
Aさんは今回、住居不定であるため、勾留の必要があると判断される確率が高いでしょう。

しかし、Aさんの両親が、自宅にAさんを住まわせ、Aさんが証拠を隠滅したり逃亡をすることがないようにAさんを監督することができれば、「勾留の理由」が成立する確率は低くなり、Aさんを勾留する必要はないと判断される可能性が高まります。
Aさんの両親がしっかりAさんを監督するので「勾留の理由」が成立しない旨を、刑事事件に強い弁護士が検察庁や裁判所に伝えることにより、Aさんが勾留されず釈放される確率は上がります。
もしAさんに勾留が決定された場合でも、適切な身柄解放活動を随時行っていきます。
ぜひ、刑事事件に強い弁護士に早急にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、年間多数の詐欺罪への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族やご自身が詐欺罪で話を聞かれることになった、無銭飲食で逮捕されたので釈放して欲しいという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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