(事例紹介)粉飾決算による融資詐欺事件で実刑判決が求刑された事例

(事例紹介)粉飾決算による融資詐欺事件で実刑判決が求刑された事例

~事例~

発電事業の開発費用と偽って金融機関から融資金約7億5800万円をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた太陽光発電関連会社「テクノシステム」元専務(中略)の公判が13日、東京地裁(向井香津子裁判長)で開かれた。
検察側は「融資交渉の担当者として詐欺の実行行為を担った」として懲役5年を求刑、弁護側は執行猶予付き判決を求め、結審した。
(中略)
検察側は論告で、被告が経理部門を統括する専務に就任した平成29年7月以降、テクノ社の入出金状況を把握していたと指摘。同社が協力会社との実体のない循環取引で数十億円単位の粉飾決算を行い、実際は債務超過に陥っていたことを認識していたと述べた。
その上で、被告が令和元年11月に約2700万円の役員報酬を受け取っており、「会社を存続させて報酬を得る利欲目的で犯行に及んだ」と断じた。
弁護側は、粉飾決算は被告が関わる以前から行われており、だまし取った融資金の流用にも関与していないと主張した。
(※2022年9月13日19:35産経新聞配信記事より引用)

~粉飾決算~

粉飾決算とは、本来の決算よりもよりよい決算内容に見せかけて計上する行為です。
例えば、本当は赤字決算なのにも関わらず、黒字決算として会計処理を行うといった行為はこの粉飾決算にあたります。

今回取り上げた事例では、粉飾決算を行なった上で融資詐欺を行ったとして詐欺罪に問われた刑事裁判が報道されていますが、そもそもこうした粉飾決算自体も犯罪になることにも注意が必要です。
粉飾決算の態様にもよりますが、融資詐欺同様に詐欺罪に問われる可能性もありますし、特別背任罪などの会社法上の犯罪が成立するケースもあります。
特に会社法などに規定されている犯罪はなかなか聞き馴染みのない犯罪であることが多く、見通しや対応も分かりづらいことから、粉飾決算だけで刑事事件になった場合でも、後述の通り弁護士に早い段階から相談してアドバイスを受けることが望ましいと考えられます。

~融資詐欺~

融資詐欺とは、実態とは異なる決算報告書などや存在しない会社の決算報告書などを提出することにより、銀行などから融資を受け、融資金をだまし取る詐欺の手口を指します。
融資を受けようとする人に対して、「融資を受けるための信用のために保証金を振り込め」などといってお金をだまし取る詐欺の手口を融資保証金詐欺と呼びますが、こちらを指して融資詐欺という場合もあるようです。

今回取り上げた事例は、このうち前者のケースの融資詐欺の容疑がかけられ刑事裁判に至っています。
詐欺罪は、「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。」と定められている犯罪です(刑法第246条第1項)。
融資の際、銀行などは当然決算報告書などの内容が真実であるという前提のもとに融資をするかどうか=融資金を引き渡すかどうかを決定します。
融資詐欺では、融資の決定を左右する決算報告書などを偽ることで銀行などをだまし、融資金という財物を引き渡させるわけですから、詐欺罪が成立するのです。

今回の事例では、被告人は粉飾決算融資詐欺には関わっていないと容疑を否認しています。
容疑を否認し無罪を主張していく場合、取り上げた事例のように刑事裁判の場で有罪・無罪を争っていくことになりますが、そのためには、捜査段階から取調べに適切に対応することや、公判で無罪を主張するための証拠集め、迅速な証拠検討などが必要となっていきます。
特に否認事件の場合には検討すべきことも多いですから、刑事事件化してすぐの段階から弁護士と綿密に打合せを重ねた上で刑事裁判に臨むことが望ましいといえるでしょう。

報道によると、今回取り上げた事例では、検察側から実刑求刑されているとのことです。
実刑求刑されるかどうかは、その詐欺事件の被害金額の大きさや弁償のできている割合であったり、詐欺行為をした回数や期間の多さ・長さであったりという事情が考慮されて判断されます。
融資詐欺事件などは被害金額が高額になりやすいため、比較的実刑判決のリスクも大きい詐欺事件であると考えられます。
取り上げた事例のように無罪を争いたいという場合だけでなく、執行猶予判決を狙いたい、刑罰を減軽したいという場合でも弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、融資詐欺事件を含む詐欺事件についてのご相談・ご依頼も受け付けています。
詐欺事件の被疑者・被告人となってしまってお困りの際は、一度お問い合わせください。

 

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー