【事例紹介】放火による保険金詐欺事件

【事例紹介】放火による保険金詐欺事件

京都府久御山町で起きた放火による保険金詐欺事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

共済金を目当てに実家に火を付け全焼させたとして、現住建造物等放火と詐欺の罪に問われた無職の被告の女(49)=京都府宇治市=の裁判員裁判の判決公判が18日、京都地裁であった。
安永武央裁判長は「共済金を手に入れるための強固な犯意に基づく犯行」として、懲役7年(求刑懲役8年)を言い渡した。
判決によると、被告は2018年3月26日夜、京都府久御山町の実家の1階居間にある押し入れの中に火を付け、全焼させた。同年4月、京都やましろ農業協同組合に火災共済金の支払いを請求し、家の所有者だった父親の口座に約3320万円を入金させてだまし取った。
(後略)
(8月18日 京都新聞 「多額の共済金目当てに自宅に火 被告の女に懲役7年」より引用)

現住建造物放火罪

放火罪は現住建造物等放火罪非現住建造物等放火罪建造物等以外放火罪の3つにわけることができます。
それぞれを簡単に説明すると、人が住んでいたり現在人が中にいたりする建物に放火した場合は現住建造物等放火罪、それ以外の建物に放火した場合は非現住建造物等放火罪、建造物以外のものが放火された場合は建造物等以外放火罪が適用されます。

今回ご紹介した事例では、現住建造物等放火罪が適用されています。
放火された対象は「実家」と報道されていることから、人の住んでいる建造物に放火されたと判断されたと判断され、現住建造物等放火罪が適用されたのだと考えられます。

現住建造物等放火罪で有罪になってしまうと、死刑または無期懲役もしくは5年以上の懲役が科されます(刑法第108条)。
人が住んでいたり現に人が中にいる建造物に放火するということは、それだけ人の命に対して危険性が大きいということもあり、現住建造物等放火罪は、非現住建造物等放火罪建造物等以外放火罪に比べて非常に重い法定刑となっています。

保険金詐欺

次に事例の女性がなぜ詐欺罪に問われたのかを解説します。

事例の女性が加入していた火災共済では、火災共済金を受け取るために故意に放火した場合は、火災共済金が支払われないことになっています。
しかし、事例の女性は火災共済金を請求し、これを受け取っています。
今回の事例では、女性が火災共済金を得るために放火したことを隠して共済金を請求し、協同組合の職員が故意による放火だと知らずに共済金を振り込んだことによって受け取ることができたのでしょう。
人を騙すことによって信じさせ金品を受け取る行為は詐欺罪に当たりますので、この火災共済金をだまし取った行為がいわゆる保険金詐欺として詐欺罪にあたったと考えられます。

また詐欺罪は刑法第246条に規定されており、有罪となった場合は10年以下の懲役が科されます。

保険金目当ての放火事件の裁判例

今回取り上げたような、保険金目当ての放火事件は過去にも起こっています。
過去に起こった保険金目当ての放火事件の裁判例をご紹介します。

この裁判の被告人は、火災保険金を得る目的で、Aさん含む10人が住んでいる家に灯油をまき、火を放ちました。(放火当時、10人の住人のうち3人が家の中にいました。)
この放火により、建物の1部が焼損してしまいました。
被告人は、火災保険契約を締結していたB会社から保険金をだまし取ろうと考え、放火の事実を隠し、正当な保険金請求だと誤信させるような形でB会社に保険金の請求を行いました。
しかし、B会社が出火原因に不審を抱いたことにより、保険金は支払われませんでした。

裁判では、被告人が放火をしたか、被告人が放火行為を認識して保険金を請求しだまし取ろうとしたか、放火行為時の被告人の責任能力の程度が争点となりました。
被告人の家の複数個所から灯油が検出されていることや、火災報知器が鳴動する頃まで被告人が家にいたと認められること、何者かが侵入した形跡が見当たらないことから、裁判官は被告人による放火を認めました。
また、事件当時、被告人は携帯電話の支払いに困っており、事件当日には火災保険に関するサイトの閲覧や不動産業者と転居先の物件に関するやり取りをしていました。

加えて、被告人は、火災発生後にウォーキングに出かけ、警察から安否確認の連絡が来る前に火災保険の証券番号をメモし、警察官や保険の担当者には火災発生時に家にいなかったように装っていました。
これらのことにより、裁判官は被告人が保険金をだまし取る目的で放火行為を行ったと判断しました。

被告人の刑事責任に関して、弁護士は放火行為時に被告人の精神障害が影響していたと主張しましたが、C医師の意見により、放火の動機形成に影響を及ぼした可能性はなく、放火行為が悪いかどうかを判断する能力や行動をコントロールする能力に悪影響はなかったと裁判官は判断しました。
裁判官は、被告人が重い責任を負うべきだとし、前科関係や事件への受け止め方を考慮したうえで、現住建造物等放火罪詐欺未遂罪により懲役8年を言い渡しました。
(札幌地方裁判所 令和3年12月6日)

ご紹介した裁判例では、保険金詐欺に係る部分は詐欺未遂罪となっていましたが、今回取り上げた事例と同様に懲役刑が科されています。
現住建造物等放火罪は人の生命や財産を奪う可能性が非常に高いため、死刑や無期懲役などの重い刑罰が科されていることが大きいでしょう。
また、詐欺罪についても罰金刑の規定はなく、有罪となってしまった場合、懲役刑になってしまう可能性があります。
放火による保険金詐欺事件では、こうした重い刑罰が予想されることもあり、早急に弁護士のサポートを受けるべきであると言えるでしょう。

放火による保険金詐欺事件などの刑事事件で逮捕されてしまった際には、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所初回接見サービスをご利用ください。
初回接見サービスは0120―631―881でご予約いただけます。

 

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