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特殊詐欺とオレオレ詐欺
特殊詐欺とオレオレ詐欺
福岡県行橋市に住むAさんは、同じく福岡県行橋市に住む高齢の女性Vさん(80歳)宅に「ばあちゃん、オレだよ。」「風邪をこじらせてしまって声が変わっているかもしれない。」「実は、会社から預かっていた100万円を電車に置き忘れてみつからないんだ。」「このことが会社にばれたら会社をクビになってしまう。」「今すぐオレの口座に100万円振り込んでくれないかな。」などと電話をかけ、Vさんに現金100万円を振り込ませました。
その後、Vさんが親族に相談したところ詐欺であることが発覚。
被害届を受けた福岡県行橋警察署の捜査により、Aさんは詐欺罪で逮捕されました。
(フィクションです)
~ 特殊詐欺とは ~
特殊詐欺という犯罪名はありません。
特殊詐欺とは、不特定の方に対して、対面することなく、電話、はがき、FAX、メール等を使って行う詐欺のことで、「振り込め詐欺」と「振り込め類似詐欺」に分けられます。
「振り込め詐欺」は、
・オレオレ詐欺
・還付金詐欺
・架空請求詐欺
・融資保証金詐欺
に分類されます。
「振り込め類似詐欺」は
・金融商品等取引名目の詐欺
・ギャンブル必勝法情報提供名目の詐欺
・異性との交際あっせん名目の詐欺
・その他の特殊詐欺
に分類されます。
* 呼称の変遷 *
2000年前半は「オレオレ詐欺」と呼ばれていましたが、その後詐欺の手口が多様化し、実態と合わなくなったことから2004年12月に警視庁により、オレオレ詐欺を含めた上記4つの詐欺を総称して「振り込め詐欺」と名付けられました。
さらに、2011年4月には「振り込め詐欺」と「振り込め類似詐欺」とを総称して「特殊詐欺」と名付けられ、その後、2013年5月には「振り込め詐欺」に変わる呼称として「母ちゃん助けて詐欺」が発表されました。
しかし、現在のところ「母ちゃん助けて詐欺」は広く定着していないようで、以前として、「オレオレ詐欺」や「振り込め詐欺」などの呼称が使われています。
~ オレオレ詐欺と件数 ~
オレオレ詐欺とは、「電話を利用して親族、会社の上司、警察官、弁護士等を装い、会社での横領、トラブルや交通事故の示談金名目で、現金を預金口座等に振り込ませたり、宅急便や郵送などで送金させるなどの方法によりだまし取る詐欺」のことをいい、次の3つに分類されると言われています。
① 振込み型
ATMから指定した口座に現金を振り込ませる方法
② キャッシュカード受領型
被害者から直接キャッシュカードを受領する方法。警察官役の者が「キャッシュカードが犯罪に使われていた」「口座凍結したいのでキャッシュカードを渡して暗証 番号を教えて欲しい」などと電話をかけ、被害者方に向かわせた者にキャッシュカードを渡し、暗証番号を教えさせる方法
③ 現金受取型
被害者から直接現金を受け取る方法です。受け取る役は「受け子」と呼ばれています。
~ オレオレ詐欺は増加傾向 ~
特殊詐欺の方法が多様化し、オレオレ詐欺の存在が薄れてきたかのように思われがちですが、実は警察におけるオレオレ詐欺の認知件数は近年増加傾向にあります。
警察庁の発表によれば、特殊詐欺の認知件数は平成22年以降平成29年まで増加傾向にあったものの、平成30年は減少に転じています(平成29年の認知件数は1万8212件、平成30年は1万6490件)。
また、被害額も平成29年は394.7億円だったのに対し、平成30年は356.8億円と減少しています。
しかし、オレオレ詐欺の認知件数は、平成29年は8496件だったのに対し平成30年は9134件と増加しており、近年と比べても極めて高い数字で、年々増加傾向にあるといえます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺罪などの刑事事件・少年事件を専門の法律事務所です。
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(福岡県行橋警察署までの初回接見費用:44,040円)
詐欺の受け子に関する判例②
詐欺の受け子に関する判例②
Aさんは,特殊詐欺グループの一員でした。
Aさんは,詐欺グループの指示役から電話で「おばあちゃんからお金を受け取ってこい。刑事役って設定で金を取りに行ってくれ。」などと言われ,電車及びタクシーを乗り継いで京都府福知山市にある被害者方に向かいました。
しかし,Aさんは,被害者方に着く前に,付近で警戒していた京都府福知山警察署の警察官に,詐欺未遂罪(の共犯)で逮捕されてしまいました。
(平成30年3月22日付最高裁判例の事例をベースに作成したフィクションです)
~ 基となった事件の概要 ~
被害者は69歳の女性でした。
被害者は,本件の前日,おいと名乗る氏名不詳者から電話を受け,仕事の関係で現金を至急必要としているとうそを言われて騙され,おいの系列会社の社員と名乗る男に現金100万円を渡しました。
さらに,被害者はその翌日,警察官をの名乗る氏名不詳者から電話を受け,「昨日,駅の前のところで不審な男を捕まえたんですが,その男があなたの名前を言っています。」「昨日,詐欺の被害に遭っていないですか?口座にはまだいくら残っているのですか?銀行に今すぐ行って全部下ろしたほうがいいですよ。」「前日の100万円を取り返すので協力して欲しい。」「僕,向かいますから。2時間前には到着できるように僕の方で態勢整えますので。」などと言われました。
被害者は金融機関に行って預金口座から現金を払い戻しましたが,自分が騙されているのではないかと気づき,警察署に電話を入れ相談したところ,被害者は警察官から説諭され,自分が騙されていることにはじめて気づいたのです。
~ 前回のおさらい ~
前回は,詐欺既遂罪が①欺罔行為→②相手方の錯誤(騙された)→③錯誤に基づく処分行為(財物の交付)→④財物の移転(受領)という流れ,詐欺未遂罪は①の欺罔行為までにとどまる場合に成立することなどをご説明いたしました。
そして,高裁では,氏名不詳者が被害者に言った文言(①欺罔行為)は,詐欺被害の現実的・具体的危険を発生させる行為とは認めず詐欺未遂罪は成立しないとし,被告人(Aさん)を無罪としたこともご説明しました。
~ 最高裁の結論 ~
最高裁は詐欺未遂罪の成立を認め,被告人(Aさん)を有罪としました。
そして,裁判官の補足意見では次のように述べられています。
まず,補足引意見では,「犯罪の実行行為自体ではなくとも,実行行為に「密接」であって,被害を生じさせる客観的な危険性が認められる行為に着手することによっても未遂罪は成立しうる。」としています。
つまり,詐欺罪の欺罔行為としての「自己に現金を交付するよう要求する行為」(実行行為)がなくても詐欺未遂罪が成立することを認めているのです。
この点,本件では,被害者宅を訪問した被告人(Aさん)が現金を交付させることが計画され,その時点で「人を欺く行為(欺罔行為)」が予定されており,警察官の訪問を予告する2回目の電話(「前日の100万円を取り返すので協力して欲しい。」「僕,向かいますから。2時間前には到着できるように僕の方で態勢整えますので。」と言った電話)はその行為に「密接」なものとしています。
そして,1回目の電話(「昨日,駅の前のところで不審な男を捕まえたんですが,その男があなたの名前を言っています。」「昨日,詐欺の被害に遭っていないですか?口座にはまだいくら残っているのですか?銀行に今すぐ行って全部下ろしたほうがいいですよ。」と言った電話)と一連のものとして行われた2回目の電話の時点で,被害者が一連の嘘により欺かれて現金を交付する危険性が著しく高まったといえるから,2回目の電話によって,詐欺未遂罪の成立が肯定できる,としています。
つまり,2回目の電話を詐欺罪の①欺罔行為(実行行為)として認めているのです。
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詐欺の受け子に関する判例①
詐欺の受け子に関する判例①
Aさんは,特殊詐欺グループの一員でした。
Aさんは,詐欺グループの指示役から電話で「京都府福知山市に住んでいるおばあちゃんからお金を受け取ってこい。刑事役って設定で金を取りに行ってくれ。」などと言われ,電車及びタクシーを乗り継いで京都府福知山市にある被害者方に向かいました。
しかし,Aさんは,被害者方に着く前に,付近で警戒していた京都府福知山警察署の警察官に,詐欺未遂罪(の共犯)で逮捕されてしまいました。
(平成30年3月22日付最高裁判例の事例をベースに作成したフィクションです)
~ 基となった事件の概要 ~
被害者は69歳の女性でした。
被害者は,本件の前日,おいと名乗る氏名不詳者から電話を受け,仕事の関係で現金を至急必要としているとうそを言われて騙され,おいの系列会社の社員と名乗る男に現金100万円を渡しました。
さらに,被害者はその翌日,警察官をの名乗る氏名不詳者から電話を受け,「昨日,駅の前のところで不審な男を捕まえたんですが,その男があなたの名前を言っています。」「昨日,詐欺の被害に遭っていないですか?口座にはまだいくら残っているのですか?銀行に今すぐ行って全部下ろしたほうがいいですよ。」「前日の100万円を取り返すので協力して欲しい。」「僕,向かいますから。2時間前には到着できるように僕の方で態勢整えますので。」などと言われました。
被害者は金融機関に行って預金口座から現金を払い戻しましたが,自分が騙されているのではないかと気づき,警察署に電話を入れ相談したところ,被害者は警察官から説諭され,自分が騙されていることにはじめて気づいたのです。
~ 事件の問題点 ~
詐欺既遂罪は,①欺罔行為→②相手方の錯誤(騙された)→③錯誤に基づく処分行為(財物の交付)→④財物の移転(受領)という一連の流れがあってはじめて成立する犯罪です。
また,詐欺未遂罪は,①欺罔行為が行われたものの(なお,相手方が騙されたかどうかは関係ない),何らかの事情によって③相手方が処分行為を行わなかった場合に成立する犯罪です。
本件では,この①欺罔行為の有無(実行の着手の有無)が問題となった事案でした。
本来,欺罔行為とは,行為者(犯人)が財物の交付に向けて人を錯誤に陥らせる行為と言われ,詐欺被害の結果を発生させる現実的・具体的な危険を孕んでいるものでなければなりません。
例えば,夫が海外出張中である妻に,「昨日,夫が日本国内で事故を起こしたから示談金として何円振り込んでください。」と言っても,それは欺罔行為には当たらないわけです。
本件でも,警察官を名乗る氏名不詳者は「前日の100万円を取り返すので協力して欲しい。」とだけしか言っておらず,自己に現金を交付するよう要求しているわけではありません。
したがって,本件では,詐欺罪の①欺罔行為の有無が問題となるわけです。
仮に,詐欺罪の①欺罔行為がないと判断されれば,特殊詐欺に協力したAさんも無罪となります。
~ 高裁が出した結論 ~
基となった事件の第一審では有罪判決が出されました。
そして,弁護人が量刑不当で控訴したところ,高裁(第二審:平成29年2月2日)は,「被害者に対し警察官を装って預金を現金化するよう説得する行為(「昨日,詐欺の被害に遭っていないですか?口座にはまだいくら残っているのですか?銀行に今すぐ行って全部下ろしたほうがいいですよ。」「前日の100万円を取り返すので協力して欲しい。」と言う行為)は,氏名不詳者にとっては財物の交付へ向けた準備行為を促す行為であるものの,それにとどまるのであって,詐欺被害の現実的・具体的危険を発生させる行為とは認められない」などと判示し,被告人を無罪としました。
これに対し,検察側が上告しました。
最高裁がどのような結論を出したかについては次回ご説明いたします。
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(京都府福知山警察署までの初回接見費用:上記フリーダイヤルにてご案内いたします)
神戸市兵庫区の新紙幣詐欺事件
神戸市兵庫区の新紙幣詐欺事件
神戸市兵庫区在住の公務員Aさんは数年後に新紙幣が発行されることに目を付け,高齢者を対象に「新紙幣詐欺」を考え付いた。
手口は一人暮らしの高齢者に電話をかけ,市役所地域課の職員であると言い,「新紙幣が発行されると現在の紙幣は使えなくなる。ご家庭でタンス預金などで保管してる現金はないですか。」と呼びかけ,高齢者の代わりに銀行口座に預けるという名目で現金を騙し取るものであった。
高齢で一人暮らしであり,体が不自由な神戸市兵庫区在住のVさんはAさんから電話を受け,Aさんを信用し,自宅のタンスに保管してあった現金200万円とキャッシュカードをAさんに手渡した。
Aさんはそのまま現金200万円およびキャッシュカードを持ち去った。
Aさんが同様の手口で電話をかけていたところ,電話を受けたV2さんが不審に思い兵庫県兵庫警察署に通報し,現金を受け取りに来たAさんは待機していた兵庫県兵庫警察署の警察官によって詐欺未遂罪の疑いで逮捕された。
(フィクションです)
~新紙幣~
今年の4月9日に2024年上半期を目途に紙幣を刷新することが発表され,肖像は1万円札が渋沢栄一,5千円札が津田梅子,1千円札が北里柴三郎となりました。
2千円札については流通が少ないため刷新が見送られました。
政府および日本銀行は偽造防止の観点から約20年ごとに紙幣を刷新しており,前回の刷新は2004年でした。
なお,通貨偽造および偽造通貨行使の罪は刑法148条に規定されており,法定刑は3年以上または無期懲役と非常に重いものとなっています。
また,偽造通貨を利用した取引は詐欺罪を構成しますが,不可罰的事後行為として偽造通貨行使罪に吸収されます(大判明治45年6月30日)。
ただし,偽造通貨ではなく,偽造された有価証券の場合には通常の詐欺罪が成立します。
~新紙幣詐欺~
政府は今後,今回のケースのような古い紙幣が使えなくなるといった新紙幣詐欺のような手口の詐欺に注意するように呼び掛けています。
これまで日本銀行は53種類の紙幣を発行していますが,関東大震災の際の焼失兌換券の整理,終戦直後のインフレ阻止のための新券切替え,額面1円の少額の整理といった特別な措置によって通用力を失った31種類を除き,一度発行された紙幣は通用力を失いません。
そのため,現在は22種類の紙幣が有効となっており,新紙幣詐欺で用いられる文言のように現在通用している紙幣や硬貨が使えなくなる,ということは基本的にはないと思われます。
~弁護活動~
詐欺罪は10年以下の懲役刑のみが規定されており,起訴されてしまった場合には刑事裁判を受けることになります。
また,詐欺罪で逮捕されてしまった場合には多くの場合,検察官によって勾留請求がなされ,最長で20日間身柄を拘束されてしまいます。
その後,起訴されてしまった場合には被疑者としての勾留に引続き,被告人として勾留されてしまうことになります。
そうなれば被告人は,被疑者段階から合わせてさらに長期の身体拘束を受けることになるのです。
そのため,弁護士は被疑者・被告人の身柄解放に向けた活動をします。
具体的には,検察官に勾留請求をしないように意見書を提出したり勾留決定に対する準抗告を提出します。
起訴されてしまい,被告人として勾留されてしまった場合には保釈請求をします。
これらの請求が認められれば,身柄解放されることになります。
また,弁護士は多くの場合,被害者の方と被害弁償を含めた示談交渉を行います。
被害者の方の中には加害者の処罰はもちろんですが,ご自身の被害弁償を求める場合もあります。
弁護士は弁護活動の一環として被害者の方への被害弁償を行うことにより,被害者の方の救済という役割も担っています。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
新紙幣詐欺等の詐欺事件を起こしてしまいお困り・お悩みの方は0120-631-881までお気軽にご相談ください。
初回接見サービス・無料法律相談のご予約を24時間受付けています。
(兵庫県兵庫警察署での初回接見費用:35,100円)
大阪府貝塚市の詐欺罪で釈放・保釈
大阪府貝塚市の詐欺罪で釈放・保釈
大阪府貝塚市内に住むAさんは、最近ニュースで有名人が保釈されたという話をよく耳にしていました。
「よくわからないし、自分には関係のない話だ。」とAさんはそう考えていました。
ところがある日、大阪府貝塚警察署からAさんに「息子さんを詐欺罪で逮捕しました。」という電話が入りました。
突然の連絡に気が動転したAさんですが、息子には仕事や家庭もあるし、出来るだけ早く釈放されてほしいと考え、弁護士に相談しました。
(フィクションです。)
~逮捕~
警察が犯罪を捜査した結果、犯人と疑われている者(被疑者)を逮捕する必要があると判断した場合、裁判官の許可(逮捕状)を得て被疑者を逮捕することになります。
(ただし、現行犯逮捕の場合は逮捕状なしに逮捕することになります。)
逮捕されたとはいえ、裁判所が有罪であるという最終判断をしたわけではなく冤罪(えんざい)の可能性もあるので、できる限り一般人と同じように扱うべきという考え方があります(無罪推定の原則)。
そこで刑事訴訟法では、被疑者を身体拘束できる期間を制限しています。
警察は逮捕から48時間以内に、取調べ等を行った上で検察官に被疑者及び関係書類や証拠物を送ります(送検・203条1項)。
検察官は送検を受けた時から24時間以内に、①被疑者を裁判にかけるか(起訴するか)、②釈放するか、③裁判官に勾留請求をする必要があります(205条1項・3項・4項)。
③について詳しくは次の項目で説明します。
~起訴前勾留(被疑者勾留)~
③の勾留請求とは、①起訴か②釈放の判断をするために引き続き身体拘束を継続して取調べ等をする必要がある場合になされます。
この勾留は、①の起訴がされる前の勾留なので「起訴前勾留」、あるいは犯人と疑われている起訴前の人を「被疑者」というので「被疑者勾留」と呼ばれています。
③の勾留請求がなされ、裁判官が勾留が必要だと判断すると、10日間の勾留許可状が出されて引き続き身体拘束されます(208条1項)。
さらに勾留が必要な場合には、追加で最大10日間、勾留が継続されます(208条2項)。
そしていよいよ検察官は、①起訴と②釈放の選択をすることになります。
~起訴後勾留(被告人勾留)~
①の起訴をされると裁判所の判断によりさらに2か月間勾留がなされ、その後も裁判が続いている間は1か月ずつ勾留が延長される可能性があります(60条2項)。
起訴がされた後の勾留なので「起訴後勾留」、あるいは犯人と疑われている起訴後の人を「被告人」というので「被告人勾留」と呼ばれています。
~釈放してもらうためには~
逮捕されてしまった場合に釈放を目指す方法としては、
(ア)勾留請求・勾留決定・起訴を避ける
(イ)保釈請求をする
といった方法が考えられます。
(ア)勾留請求・勾留決定・起訴を避ける について
勾留請求をする検察官や、勾留を許可する裁判官・裁判所、起訴権限を持つ検察官に対し、勾留請求・勾留決定・起訴しないように働きかけることが考えられます。
たとえば、犯罪に至った動機に同情できる点があること、犯行の計画性がなく悪質でないこと、反省の態度を示していること、身体拘束が続くと会社を解雇されたり家族が生活に困るなど影響が大きすぎること、被害者との示談が済んでいることなどを主張して釈放を求めていくことになるのです。
他にも、被疑者が容疑を否認しているような場合には、そもそも冤罪だから勾留・起訴の必要はないという主張をする場合もあり得ます。
それでも勾留決定されてしまった場合には、準抗告という不服申し立て手段を用いることもあります(429条1項2号)。
(イ)保釈請求をする について
「保釈」とは、起訴されて勾留が続いている場合に、被告人を仮に釈放することをいいます(88条以下)。
無罪推定の原則があり、長期間の身体拘束は望ましくないとの考えから、保釈決定後に保釈金を納めれば釈放される可能性があります。
保釈を認めるかどうかの判断は、犯罪の軽重、前科の有無、逃亡の恐れの有無・程度、証拠隠滅のおそれの有無・程度、身体拘束が続くことによる健康上・経済上、社会生活上・裁判準備上の悪影響の有無・程度などを考慮して裁判所が行います。
また、保釈の際には保釈金を支払う必要があります。
保釈金は裁判が終われば返してもらえますが、逃亡や証拠隠滅、裁判への不出頭や被害者への脅迫等を行ったときには、保釈が取り消されて再び勾留されると共に保釈金が没収されるおそれがあります。
保釈金の金額は被告人の財産を考慮し、上記の逃亡等を防ぐために必要な金額が定められます。
なお、保釈金を立替えてくれる業者もあります。
~弁護士に相談を~
詐欺罪で逮捕された場合に勾留を避けたり保釈を認めさせるためには、被害者と示談をしたり、釈放しても問題が生じないことを裁判官・検察官に的確に主張していく必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を専門としている経験豊富な弁護士がサポートさせていただきます。
法律相談は初回無料ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
(大阪府貝塚警察署までの初回接見費用:37,200円)
さいたま市の詐欺事件で逮捕・勾留の阻止
さいたま市の詐欺事件で逮捕・勾留の阻止
Aは、代金を支払う意思もないのに、さいたま市大宮区にあるホテルに宿泊し、食事等のサービスも受けた。
翌日、Aはホテルの従業員に対し、知人を見送るといってホテルの外に出て、そのまま逃走した。
ホテル側が埼玉県大宮西警察署まで通報し、埼玉県大宮西警察署の警察官は、Aを詐欺罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は、詐欺事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)
~1項詐欺と2項詐欺について~
一般に刑法上の詐欺罪というと、嘘をついて人からお金や財物(財産的価値のある物など)をだまし取るという行為が典型的な詐欺行為として想定されるのが通常かと思います(昨今では、この特殊類型として特殊詐欺事件なども報道されることが多くなっています)。
このような通常の詐欺罪として想定される行為は、刑法246条1項によって処罰が規定されていることから、1項詐欺などと呼ばれます。
これに対して、さらに刑法は246条2項において、「前項の方法により(注:人を欺いて)、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする」と、上記のような詐欺に加えて利益詐欺(利得詐欺)も処罰することを定めています(こちらは246条1項と対比して2項詐欺などとも呼ばれます)。
例えば、同じ財産犯罪でも窃盗罪(刑法235条)においては、利益窃盗は不可罰とされており(235条には上記246条2項のような規定は存在しません)、暴行又は脅迫を用いた強盗罪や人を欺く手段を用いた詐欺罪等の場合にのみ処罰の対象とされていることに特色があります。
本件では、宿泊費などのサービス料という「利益」を免れ逃走したことが、いわゆる2項詐欺罪にあたるかが問題となります。
詐欺罪が成立するには、246条の1項2項いずれにしても、被害者の意思に基づいて財物や利益が移転する必要があります。
この点、判例(最決昭和30年7月7日)は、いわゆる2項詐欺の成否に関して、詐欺罪で得た「財産上不法の利益」が、債務の支払を免れたことであるとするには、相手方を欺いて債務免除の意思表示をさせることを要し、単に逃走して事実上支払をしなかっただけで足りるものではないとしています。
したがって、本件では被害者の意思に基づく上記の利益に対する処分行為(意思表示)までは認められず、いわゆる2項詐欺は成立しない可能性が出てきます。
もっとも、本件でAは宿泊する際にすでに宿泊費を含むサービス料等を支払うつもりはなかったことから、飲食物や宿泊費という「財物」に対する1項詐欺罪が成立し、刑事責任を負う可能性があることに注意が必要です。
~勾留の阻止のための弁護活動~
被疑者が逮捕されてしまうと、逮捕から72時間以内に、検察官が10日間の身体拘束を伴う勾留を請求するかどうかを決めなければなりません。
これを受けた裁判官が、被疑者に対する勾留質問を経た上で、勾留をするかどうかを判断します(刑訴法207条1項本文・60条1項)。
さらに実務上、この10日間の身体拘束の請求は、期間を短縮して請求することが許されておらず、最大3日+10日間(さらに勾留は延長される可能性もあります)という重大な不利益を被る可能性があることになるのです。
したがって、弁護士としては、これを阻止し一刻も早く被疑者の身体拘束からの解放を目指すことになります。
勾留要件を定める60条1項は、2号において「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」を定めており、これが中心的な争点になることが考えられます。
よって、上記「罪証隠滅のおそれ」につき、その可能性が現実的といえるほどに高いのかどうか(最決平成26年11月17日参照)、具体的な検討を求めること等が検討されることになります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺事件を含む刑事事件を専門に扱っている法律事務所です。
詐欺事件で逮捕された方のご家族は、365日24時間対応のフリーダイヤル(0120-631-881)までまずはお問い合わせください。
【神奈川県藤沢市】他人のために口座を開設し取調べ
【神奈川県藤沢市】他人のために口座を開設し取調べ
~ケース~
神奈川県藤沢市に住むAさんは、「口座を譲ってもらえれば融資する」旨の記載されたビラを見て、ビラの連絡先に電話をしました。
業者によると、銀行で口座を開設し、通帳とキャッシュカードを預けてもらえれば50万円を融資する、とのことなので、近くの銀行で口座開設の手続を行いました。
業者に通帳、キャッシュカードを渡し、後日50万円を振り込む、と言われましたが、一向にお金が振り込まれる気配がありません。
それどころか、神奈川県藤沢北警察署から電話があり、「口座の譲渡の件について話を聞かせてほしい」と言われ、困惑しています。
(フィクションです)
~Aさんに成立しうる犯罪~
今回のAさんについては、銀行から通帳等を得た点につき詐欺罪、業者に通帳等を譲渡した点につき犯罪収益移転防止法違反の罪が成立する可能性があります。
(銀行に対する詐欺罪)
詐欺罪は、人を欺いて財物を交付させたり、財産上不法の利益を得る犯罪です(刑法第246条)。
ケースにおいては、預金通帳やキャッシュカードを他人に譲渡する意図を隠し、自己名義の預金口座を開設することが詐欺罪を構成するか、ということがポイントになります。
過去の判例は、上記のような行為は詐欺罪を構成すると判示しており、口座の利用目的、誰が銀行口座を実際に利用するのか、ということが銀行取引上重要な事実であると指摘しています。
Aさんのケースの銀行も、Aさんに通帳等を他人に譲渡する意図があることがわかれば、犯罪に利用されることを防ぐため、Aさんに通帳等を交付しなかったものと考えられます。
このような場合には、Aさんが銀行から通帳等を騙し取ったものとして扱われる可能性が高いと思われます。
詐欺罪につき有罪が確定すれば、10年以下の懲役に処せられます。
(犯罪収益移転防止法違反)
相手方に、他人になりすまして預貯金契約に係る役務の提供を受け、又はこれを第三者にさせる目的があることを知って、預貯金通帳等を譲渡、交付、提供する行為につき、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はその両方が法定刑として定められています。
他人の手に渡った銀行口座が振り込め詐欺などの犯罪に利用されるのを防止するため、口座の譲渡が禁止されているのです。
(振り込め詐欺の共犯)
事情によっては、振り込め詐欺事件の共犯として嫌疑をかけられることも考えられます。
近年、口座を担保にお金を融資する、などの名目で口座を募るケースが多くなっています。
このような誘いに乗った結果、自身が開設した口座が振り込め詐欺に使われるなどして、その犯罪の被疑者になってしまうおそれもあります。
絶対に関与すべきではないといえるでしょう。
~Aさんは今後どうなるか?~
詐欺罪の嫌疑がかけられている場合も、犯罪収益移転防止法違反の嫌疑がかけられている場合も、逮捕される可能性はゼロではありません。
ケースのAさんは任意で警察から呼び出しを受けている段階ですが、取調べの結果によっては、そのまま逮捕されてしまうこともあり得ないことではありません。
一つの罪につき、逮捕されてしまうと、捜査段階で最長23日間も身体拘束を受けることになります。
23日間もの間、無断欠勤や無断欠席を続けると、勤務先を解雇されたり、進級・進学に関し深刻な悪影響を及ぼすことが予想されます。
しかし、Aさんは現在逮捕されていないのですから、自由に行動できる状況を最大限生かして今後の対策を検討していかなければなりません。
警察の取調べに臨む前に、弁護士と相談し、取調べではどう回答すればよいか、逮捕を回避するためにはどうしたらよいか、という点について助言を受けることをおすすめします。
逮捕されている場合、在宅で事件が進行する場合を問わず、Aさんとしてはまずは不起訴処分の獲得を目指すことが考えられます。
不起訴処分を獲得できれば、裁判にかけられることがないので、前科がつかずにすみます。
起訴、または不起訴かは、検察官がAさんの性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況を考慮した上で判断します。
つまり、裁判で有罪の立証が可能な場合であっても、上記の事情が考慮されることにより、裁判にかけられないで済む可能性がある、ということです。
どのようにすれば検察官に有利な事情を考慮してもらえるか、という点につき、弁護士の助言を受け、今後の方針を固めることをおすすめいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、刑事事件に熟練した弁護士が多数在籍しており、初回の法律相談は無料です。
他人に通帳等を譲渡する意図を隠し口座を開設してしまった方、他人に口座を譲渡してしまい、お困りの方は是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
(初回無料相談予約は0120-631-881まで)
貸金業法違反事件で無登録営業貸金詐欺
貸金業法違反事件で無登録営業貸金詐欺
東京都目黒区在住のAさん(40代男性)は、実際は貸金業者としての登録をしていないにも関わらず、「正式な登録を済ませた貸金業者である」と嘘を言った上で、被害者ら数人に現金を貸し付ける業務を行っていたとして、貸金業法違反(無登録営業)と詐欺罪の疑いで、警視庁目黒警察署の取調べを受けた。
後日にも、2回目、3回目の警察取調べの呼び出しを受けたAさんは、今後の警察取調べ対応や、被害者らとの示談交渉による事件解決を検討するために、刑事事件に強い弁護士に法律相談することにした。
(事実を基にしたフィクションです)
~貸金業法違反の無登録営業とは~
貸金業法には、貸金業者が貸金業務を行うためには、都道府県知事または財務支局長の登録を得なければならない、とする規定があります。
貸金業法における「貸金業」とは、「銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介で業として行うものをいう」と規定されています。
すなわち、反復継続して貸金業務を行う意思があり、社会通念上、事業の遂行とみることができる程度の事業規模がある場合には、「業として」の要件に当てはまるとして、貸金業者としての登録が必要ということになります。
もし無登録のままに、業としての貸金業を行った場合には、貸金業法違反の無登録営業に当たるとして、「10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金、又は併科」という重い刑事処罰を受けることになります。
・貸金業法 11条1項(無登録営業等の禁止)
「第3条第1項の登録を受けない者は、貸金業を営んではならない。」
また、今回の事例とは別に、正式な登録を受けた貸金業務に関しても、貸金業法はさまざまな規制を定めています。
例えば、「総量規制」として、貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超える場合には、新たな貸付をすることはできなくなります。
・貸金業法 13条の2第2項(過剰貸付け等の禁止)
「前項に規定する「個人過剰貸付契約」とは、個人顧客を相手方とする貸付けに係る契約(略)で、当該貸付けに係る契約を締結することにより、当該個人顧客に係る個人顧客合算額(略)が当該個人顧客に係る基準額(その年間の給与及びこれに類する定期的な収入の金額として内閣府令で定めるものを合算した額に3分の1を乗じて得た額をいう。次条第5項において同じ。)を超えることとなるもの(略)をいう。」
他の貸金規制の例としては、貸金業法と利息制限法により、貸付の金利上限は「15~20%」とされており、この金利を超える貸付は、超過分の利息が民事上無効となり、行政処罰の対象となります。
この規定と並んで、出資法では、貸金業者による金銭貸付につき、金利上限となる「20%」を超える貸付は、「5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれを併科」という刑事処罰の対象とされています。
(平成22年6月施行の出資法改正により、金利上限が「29.2%」から「20%」に引き下げられました)
ちなみに、出資法では、個人間での金銭貸付につき、金利「109.5%」を超える個人間貸付をしたときには、「5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれを併科」という刑事処罰を科しています。
ただし、利息制限法の適用により、個人間貸付においても、上限金利「15~20%」を超える部分の利息については、民事上無効となる可能性があるため、注意が必要となります。
そして、今回のAさんは、こういった貸金業法違反だけでなく、詐欺罪の容疑もかけられています。
それは、貸金業法に違反する形態での営業であったにもかかわらず、そうではないと偽り、相手を騙して貸し付けを行い、相手から利子などの利益を得ていたからでしょう。
貸金業法違反事件や詐欺事件で刑事弁護の依頼を受けた弁護士の活動としては、まずは被疑者が貸金業法違反や出資法違反のどのような罪名の容疑にかけられているかを詳しく検討し、今後の警察取調べ対応のアドバイスを行うことが考えられます。
そして、裁判での刑罰軽減に向けた主張等を弁護士の側より積極的に行うことで、貸金業法違反事件や詐欺事件に関する弁護活動に尽力することになるでしょう。
東京都目黒区の貸金業法違反事件・詐欺事件でお困りの方は、刑事事件を専門に扱っている、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の評判のいい弁護士にご相談ください。
(警視庁目黒警察署の初回接見費用:36,500円)
福岡県筑紫野市の代引き詐欺事件
福岡県筑紫野市の代引き詐欺事件
~ケース~
Aさんは,福岡県筑紫野市の高齢者が住んでいる住所を対象に代金引換で頼まれてもいない物を送付するいわゆる「代引き詐欺」を行っていた。
被害が多発しているのを受けて,福岡県筑紫野警察署は送付元となっていたコンビニエンスストア数件に捜査協力を依頼した。
Aさんは捜査が及んでいることを知らず,市内のコンビニエンスストアにて5件に向けて代金引換で発送を依頼した。
送り主の住所氏名が一致せず,不審に思った店員のXが福岡県筑紫野警察署に通報し,駆け付けた警察官によってAは詐欺罪の疑いで逮捕された。
Aさんの家族は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に初回接見サービスを依頼した。
(フィクションです)
~ネガティブ・オプション~
ネガティブ・オプションとは,注文がないにもかかわらず事業者が消費者に商品を勝手に送付した上で,売買契約の申込みを行ったり,事業者の言う条件の下で売買契約の成立を主張して代金を請求することをいいます。
このような販売方法は特定商取引法59条によって送付があった日から14日以内に購入の意思を示さなかった場合に,送り主が引き取らない場合には送られた人の物になります。
有名なものでは一方的に蟹を送りつけて購入代金を請求する「カニカニ詐欺」と呼ばれるものがあります。
注意が必要なのは,蟹を食べてしまったり,送られてきた商品を使用してしまった場合には購入意思があったとみなされ,代金を支払わなければならない場合があることです。
なお,「詐欺」と呼ばれていますが,厳密には詐欺罪とはならない場合が多く,特定商取引法で14日で送られた人の物になると規定されているのみで罰則はありません。
~代引き詐欺~
詐欺罪は,刑法246条に「人を欺いて財物を交付させた者は,10年以下の懲役に処する。」と規定されています。
詐欺罪の詳細な構成要件は,
1.一般社会通念上,相手方を錯誤に陥らせて財物ないし財産上の利益の処分させるような行為をすること(欺罔行為)
2.欺罔行為によって相手方が錯誤に陥ること(錯誤)
3.錯誤に陥った相手方が,その意思に基づいて財物ないし財産上の利益の処分をすること(処分行為)
4.財物の占有又は財産上の利益が行為者ないし第三者に移転すること(占有移転,利益の移転)
5.1~4の間に因果関係が認められ,また,行為者に行為時においてその故意及び不法領得の意思があったと認められること
となっています。
ネガティブ・オプションの場合,商品そのものは送付されており,売買契約の締結方法が問題となるだけですので,詐欺罪に当たらない場合が多く,契約書なども業者が詐欺ではないと主張できる内容となっている場合も多いようです。
商品を先に送るだけであり,購入代金の支払いはあくまでも購入意思に基づくものであると考えられるからでしょう。
一方で,代引き詐欺の場合,商品の購入意思の発生前,すなわち受取時に代金を支払う必要がある点がネガティブ・オプションと異なります。
構成要件該当性を考えてみますと,代金引換で荷物が届いた場合,金額にもよりますが,自身に心当たりがなくても,家族が注文したものだと思ってしまったり,自分が何か注文したのかもしれないと思ったりして代金を払ってしまう方が多いようです(錯誤に陥っているといえるでしょう)。
すなわち,代金引換で荷物を送るという欺罔行為によって,受取人が錯誤に陥り代金を支払い(処分行為),送り主に代金が移転しますので詐欺罪の要件を満たすことになります。
また,ネガティブ・オプションの場合は「商品」を先に送る形になりますが,代引き詐欺の場合は価値のないものであったり,中身があるように思わせるために石を入れただけといった場合もあるようです。
こうした代引き詐欺の場合,送られた人が代金を支払わなくても,代金引換で荷物を送付した時点で詐欺罪の実行の着手があったとみなされ,詐欺未遂罪となる可能性が高いでしょう。
~弁護活動~
詐欺罪の罰則規定は10年以下の懲役のみですので,起訴された場合には刑事裁判を受けることになります。
また,今回のケースのような代引き詐欺事件の場合,被害者の数も多く,悪質な事件であるとみなされ起訴されてしまう可能性が非常に高いでしょう。
こういった詐欺事件の場合,初犯であっても実刑判決が下されてしまうことも多いようです。
しかし,被害者の方と可能な限り示談交渉をし,被害弁償を行うことによって執行猶予や刑の一部執行猶予が付される可能性もあります。
刑事事件には弁護活動の内容によって最終的な判決が変わるケースが多くあります。
刑事事件を起こしてしまった場合には,まずは刑事事件に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
代引き詐欺事件によってご家族が逮捕されてしまいお悩み方は0120-631-881までお気軽にご相談ください。
初回接見サービス・無料法律相談のご予約を24時間受け付けています。
(兵庫県筑紫野警察署までの初回接見費用:36,700円)
詐欺罪と窃盗罪で逮捕・即決裁判手続
詐欺罪と窃盗罪で逮捕・即決裁判手続
京都市北区に住むAは、Aではなく他人名義を冒用し、消費者金融にて係員Vをだましてローンカードを作成した。
そしてAは、上記係員に説明を受けながら、同所のATMから現金を引き出した。
その後、Aに名義を利用された人物が、利用した覚えのない消費者金融の通知を見て警察署に相談した。
捜査の結果、京都府北警察署の警察官は、Aを詐欺罪と窃盗罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は、詐欺事件を含む刑事事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)
~詐欺罪と窃盗罪~
Aは、詐欺罪および窃盗罪によって逮捕されています。
まず、Aが消費者金融において他人名義でカードを作った行為について検討してみましょう。
刑法246条1項は、「人を欺いて財物を交付させた者」を財物に対する詐欺罪(いわゆる1項詐欺)として処罰する旨を定めています。
そして、判例・実務は、平成22年7月29日の最高裁決定を契機として、詐欺罪における「人を欺」く行為とは、欺く行為の対象が交付の基礎となる重要な事項か否かという基準によって、詐欺罪(厳密には「人を欺」く行為の該当性)の成否を判断するという立場を確立したといわれています。
本件では、ローンカードが本人名義であるかどうかは、消費者金融のカードの審査・交付にあたって重要な事項であるといえ、1項詐欺罪が成立するものと考えられます。
次に、ATMを使って現金を引き出した行為について見てみましょう。
本件では上記詐欺行為によって詐取(騙取)したカードによって、現金を引き出すために係員の説明・補助を受けながら、現金を引き出しています。
しかし、仮に説明や補助を受けていたとしても、あくまでA本人が、店に設置されたATMから消費者金融(同支店長)が占有する現金を、消費者金融の意思に反して「窃取」していることに変わりはありません。
したがって、本件のように仮に補助・説明を受けながらATMから現金を引き出したとしても詐欺罪は成立せず、窃盗罪が成立するものと考えられます(最判平成14年2月8日等参照)。
そして、これらの罪は併合罪として、刑法45条前段・47条により重く処罰されます。
なお、他人名義のカードを作る際に書類等を偽造した行為について有印私文書偽造罪、同行使罪の刑事責任も負う可能性があることに注意が必要です。
~即決裁判手続等の利用による刑事手続からの早期解放~
こうした詐欺・窃盗事件では、弁護士としてまずは、被疑者にとって最も不利益の少ない不起訴処分を目指す弁護活動を行うことが考えられます。
しかし、これが功を奏さないと判断した場合、通常の公判手続(通常の刑事裁判)ではなく、簡易迅速な手続を利用することによって、被疑者の利益を図るという選択もあり得るところです。
例えば、刑事訴訟法350条の16以下が規定する即決裁判手続の利用などです(今般の刑訴法改正により従来の条文番号がずれている点に注意してください。)。
同手続によれば、「裁判所は……できる限り、即日判決の言渡しをしなければならない」(刑訴法350条の28)とされ、さらに「即決裁判手続において懲役又は禁錮の言渡しをする場合には、その刑の全部の執行猶予の言渡しをしなければならない」(同法350条の29)とされています。
仮に、逮捕後に勾留による身体拘束を受けていたとしても、刑の全部の執行猶予の告知を受ければ直ちに身体拘束から解放されることが可能になります(同法345条参照)。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺事件を含む財産犯の弁護活動に長けた刑事事件専門の法律事務所です。
日々、刑事事件・刑事手続に携わっているプロフェッショナルである弁護士が、依頼者様の利益の最大化を目指した弁護活動を行ってまいります。
詐欺・窃盗事件で逮捕された方のご家族は、まずは年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)までお電話ください。