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身分を偽り金を借りて詐欺罪・私文書偽造罪
身分を偽り金を借りて詐欺罪・私文書偽造罪
福岡県糸島市に住むAさんは、2か月前にB社を退職して就職活動をしていましたが、次の就職先がなかなか決まりません。
貯金も少なくなってきたAさんは、銀行から借り入れすることを考えました。
身分や収入がしっかりしていれば借り入れが出来る可能性が上がり、金利も低くなることから、B社に在職中であることにして、借り入れすることにしました。
前年の所得証明書の他、所持し続けていたB社の社員証のコピーを提出し、申込書類にもB社に在職中である旨を記入して銀行に提出、銀行から借り入れを受けてしまいました。
その後、返済が滞ったことから銀行がB社に問い合わせるなどして、現在AさんがB社に在籍していないこと事実が発覚。
銀行から返済を迫られるとともに、福岡県糸島警察署に刑事告訴も検討中である旨を言われて不安になったAさんは、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
~Aさんに成立しうる犯罪~
Aさんが身分を偽って借り入れした行為には、詐欺罪や私文書偽造・同行使罪が成立する可能性があります。
刑法第246条1項(詐欺)
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
刑法第159条3項(私文書偽造等)
前2項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
刑法第161条1項(偽造私文書等行使)
前2条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。
Aさんは、B社に在職中であると「人を欺いて」、借入金という「財物を交付させた」ので、詐欺罪が成立するでしょう。
また、借り入れの申込書類は、金銭消費貸借契約という「権利、義務…に関する文書」、あるいは職業に関する「事実証明に関する文書」にあたり、これに虚偽の記載をしたことは「偽造」にあたるとして、私文書偽造罪が成立する可能性があります。
この文書を用いて融資を受けたので、偽造私文書行使罪も成立するでしょう。
~今後の刑事手続きの流れと弁護活動~
仮に刑事告訴された場合、逮捕されない場合とされる場合が考えられます。
逮捕されない場合は、自宅から警察署や検察庁に行って取調べを受けたり、自宅から裁判所に行って刑事裁判を受けることになります。
一方、逮捕された場合、まずは最大3日間の身体拘束がなされます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして、検察官が勾留(こうりゅう)を請求し、裁判官が許可すれば、さらに最大20日間の身体拘束がされます。
その後、検察官が被疑者を刑事裁判にかけると判断すれば(起訴)、刑事裁判がスタートし、保釈が認められない限り、身体拘束が続きます。
そして裁判で無罪や執行猶予とならない限り、刑罰を受けることになります。
これらの手続に関し、弁護士は以下のような弁護活動を行います。
まず、逮捕後、検察官が勾留請求しなければ、あるいは裁判官が勾留を許可しなければ、最初の3日間で釈放されます。
そこで検察官や裁判官に対し、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことや、身体拘束が続くことによる本人や家族などの不利益を具体的事情に基づいて主張し、勾留を防ぎます。
それでも勾留されてしまった場合には、準抗告という不服申し立て続きを行って、釈放を目指すこともあります。
また、検察官が起訴しないという判断(不起訴処分)をすれば、刑事手続はそこで終わり、釈放される上に前科も付きません。
そこで、銀行と示談が成立していること、本人が反省していること、会社を解雇され社会的制裁を受けていることや前科がないことなど、有利な事情があれば出来る限り主張して、不起訴処分にするよう検察官と交渉していきます。
起訴されてしまった場合には、身体拘束が続いていれば釈放を目指して保釈申請を行います。
そして裁判においても、本人に有利な事情を主張し、執行猶予などの軽い判決で済むよう弁護していきます。
~ぜひ弁護士に相談を~
犯罪をして逮捕された場合、あるいは在宅で捜査を受けた場合、どのような罪が成立するのか、今後の刑事手続きはどうなるのか、取調べにはどのように受け答えしたらよいのかなど、不安点が多いと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする弁護士事務所です。
事務所での法律相談を初回無料で行っております。
また、逮捕されている場合には、ご家族などからご依頼いただければ、拘束されている警察署等にすみやかに接見に伺います(初回接見サービス)。
接見や法律相談では、上記の不安点などに対してお答えいたします。
詐欺罪や私文書偽造・同行使罪などで逮捕された、捜査を受けているといった場合には、ぜひご相談ください。
京都市西京区のプレゼント詐欺
京都市西京区のプレゼント詐欺
~ケース~
Aさんはtwitterにおいて投資家を名乗り,「利益を上げたので100人に100万円プレゼントします」といった内容をツイートした。
それを見た京都市西京区に住むVさんはさっそく,Aさんのプレゼント企画に参加した。
参加締切りが過ぎてから数日後,Vさんの元にAさんからプレゼント企画に当選した旨のメッセージが届いた。
内容としては「当選者の身元がはっきりしている人かを確認したいので指定口座に1度,3万円振り込んで欲しい」というものであった。
Vさんはこれは詐欺だと思ったが,Aさんのツイッター上に「最初は詐欺だと思っていましたが,ちゃんと100万円振り込まれました」というリプライが多数あるのを見て信用し,Aさんの指定する口座に3万円を振り込んだ。
その後,Aさんから振込がなかったことからVさんは詐欺に遭ったと気づき,京都府西京警察署に相談した。
Aさんは同様の手口で数件被害届が出されており,京都府西京警察署によって事情を聞かれることになった。
なお,振込があったというリプライもAさんによる自演であった。
(フィクションです)
~プレゼント企画~
昨今,twitterで投資家を名乗る人などが「フォロー&RTした人の中から●人に●●円プレゼント」といった内容を投稿しているのを目にすることが多いと思います。
最近では,大手通販会社の社長が100人に100万円のお年玉企画で話題なりました。
そうした企業の社長やユーチューバーなどの場合には,宣伝効果が見込まれるため単純なプレゼント企画というわけではないといえるでしょう。
一方,投資家などは自己の利益のために資産運用をしているのですから,いくら儲かったとしても,見ず知らずに他人にお金を配る理由はないので何らかの意図があると考えられます。
今回のケースのように何らかの方法で詐欺行為を働く,個人情報や口座情報などを業者に売却する,フォロワーが増えたアカウントを売却するといったことも考えられるため,注意が必要です。
~詐欺罪~
詐欺罪は刑法246条に「人を欺いて財物を交付させた者は,10年以下の懲役に処する。」と規定されています。
今回のケースのような手口は保証金詐欺と呼ばれる手口で,具体的なケースとしては,闇金などが融資の条件などとして一度振り込ませるという場合などがあります。
細かい構成要件該当性は省略しますが,Aさんの行った行為は詐欺罪に該当するでしょう。
詐欺罪は上述のように10年以下の懲役のみが法定刑として定められています。
罰金刑が定められていませんので,検察官によって起訴された場合には刑事裁判が開かれることになります。
詐欺罪は手口が単純で被害金額が少額であり,示談が成立している場合には不起訴となることもありますが,今回のようなケースの詐欺事件の場合は起訴されてしまう可能性も高いでしょう。
詐欺罪で起訴されて刑事裁判になった場合に執行猶予付きの判決となるかどうかは被害者の方への被害弁償及び示談を成立させているかが大きく影響します。
弁護士であれば,起訴されている事件について,被害者の方と示談交渉を行い宥恕条項を示談書に盛り込んで頂くことも可能な場合もあります。
被害弁償をしたからといって確実に執行猶予が付くとは限りませんので,可能であれば示談交渉もすることが重要です。
今回の手口では複数の被害者がいるようですから,可能な限り示談交渉をしていくことが重要となることが考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
これまで数多くの刑事事件において執行猶予付き判決となった実績があります。
詐欺事件を起こしてしまいお困りの方は0120-631-881までご相談ください。
初回接見サービス・無料法律相談のご予約を24時間受け付けています。
息子の留置場所はどこ?
息子の留置場所はどこ?
Aさんは、自宅で掃除、洗濯などの家事をしていた際、突然、兵庫県加西警察署の警察官から電話を受けました。
Aさんは電話に出ると、「もしもし、Bさんのお母さんですか?」「私は兵庫県加西警察署捜査二課のKと申します。」「先ほど、あなたの息子さんを兵庫県加西市で詐欺事件の被疑者として逮捕しました。」「息子さんは兵庫県加西警察署にいますから、どうぞご心配なさらないで。」と言われ、一方的に電話を切られました。
Aさんは、「詐欺」「逮捕」という単語を言われたことは記憶していますが、その他のことはあまりにも突然のことで忘れてしまいました。Aさんは、今後どうすればいいのか、息子はどこにいるのかなどを知りたくて、弁護士にBさんとの接見を依頼し、相談することにしました。
(フィクションです。)
~ はじめに ~
今回、Aさんは、息子さんの居場所(留置場)を聞き漏らしてしまったようです。
しかし、Aさんからすれば、突然のことで、冷静に話を聞けという方が無理があるでしょう。
そこで、今回は、ご家族様などが刑事事件で逮捕された場合の居場所(留置場など)について解説していきたいと思います。
~ 基本は捜査を担当する警察署の留置施設 ~
警察により逮捕された場合の留置先(収容先、留置場)は、「捜査を担当する警察署の留置施設」が基本となります。
そして、各都道府県に置かれる各警察署には「管轄」というものが決まっており、基本的に、各警察署に所属する警察官はその「管轄」内で発生した犯罪について捜査します。
例えば、東京都の警視庁新宿警察署の管轄は、
・新宿区の内
・新宿3丁目15番、17番の各一部、18~29番、31番の一部、33~38番、新宿5丁目12~14番の各一部、18番の一部、新宿6丁目、新宿7丁目、歌舞伎町(1丁目1番の一部を除く)、西新宿、北新宿、余丁町8番の一部、大久保、百人町1~3丁目
と決められており、新宿警察署の警察官は、この管轄内で発生した犯罪について逮捕、捜索などの捜査を行うのです。
警察が何をもって捜査を始めるのかは様々ですが、詐欺の場合は「被害届」によることが多いでしょう。
詐欺の被害に遭われた方が上記の管轄内にお住まいなのであれば、その被害届が提出された警視庁新宿警察署が捜査を担当することになりますし、福岡県久留米市というところにお住まいであれば福岡県久留米警察署が捜査を担当することになります。
したがって、例えば、逮捕された方のお住まいが東京都新宿区内にあるからといって、必ずしも、留置場が新宿警察署となるは限らないことに注意が必要です。
逮捕された方が被害者から直接現金を受け取る受け子の役で逮捕されたという場合でも、被害者が福岡県久留米市にお住まいであれば、福岡県久留米警察署の警察官に逮捕され、同署の留置場に収容される可能性が高いと思われます。
* 留置場が聴き取れなかった場合は再度電話を *
Aさんのように、留置場が聴き取れなかった場合は再度、電話をかけなおしてもいいでしょう。
もっとも、履歴に電話番号が表示されていると思いますから、その電話番号を調べれば、どこの警察署から電話がかかってきたか分かりますし、そこから留置場の場所を推測することはできます。
しかし、はっきりと居場所を確定させるためにも、再度、電話をして確認してみてもよいでしょう。
~ 勾留後、起訴後はどこにいくの? ~
詐欺事件などの刑事事件で逮捕され、勾留された場合には、勾留後も「逮捕直後に収容された留置場」にそのまま収容されることが多いと思われます。
逮捕された方が「勾留質問」という手続きのときに「勾留通知をご家族に指定」した場合は、勾留決定後に裁判所から、勾留された旨と「どこの警察署に勾留されているか」の連絡が来ます。
起訴後は、捜査が全て終了したという場合は、拘置所など警察以外の機関が管轄する施設へ移送されます。
移送された際は、弁護人としてついている弁護士へ通知が行くようになっていますから、気になる方は弁護人としてついている弁護士へ尋ねてみるとよいでしょう。
捜査が継続している間は、留置場に拘束されたままになります。
また、再逮捕などで、担当の警察署が変わった場合は、その警察署の留置場へ移送されます。
その後の、流れははじめて逮捕された後の流れと同様です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺罪をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
詐欺事件の逮捕にお困りの際には、0120-631-881までお気軽にお電話ください。
弁護士足立が振り込め詐欺事件で執行猶予付き判決を獲得
弁護士足立が振り込め詐欺事件で執行猶予付き判決を獲得
・事件の概要
ご依頼者様は、ご子息が詐欺事件で逮捕されたと知り、まず弊所の初回接見サービスへお申し込みされました。
ご依頼者様は遠方にお住まいであったため、ご子息様が容疑をかけられている詐欺事件について何も知らず、さらに警察からも詐欺事件の詳細を聞くことができず、逮捕されたというご子息様のことを非常に心配されていました。
初回接見サービスのご依頼を受けた弁護士が警察署でご子息様を接見をしたところ、ご子息様は振り込め詐欺の受け子をしたという容疑で逮捕されていたことが判明しました。
振り込め詐欺事件では、余罪が多数に及ぶことが多く、そうした場合、身体拘束が長期化する可能性、被害額によっては実刑判決を受ける可能性が高くなることが考えられます。
本件でもそれらのリスクがあり、捜査の初期段階から慎重な弁護活動を行う必要がありました。
初回接見サービス後の報告の際、ご依頼者様へは事件の概要や今後の手続きの見通し、行うべき弁護活動等について弁護士よりお話いたしました。
その後、正式に弁護活動のご依頼をいただき、弁護活動を開始することとなりました。
・捜査段階の弁護活動
~取調べへの対応~
逮捕後からご子息様に対しては複数回の取調べが行われていたため、捜査機関の取調べにどのように対応すべきかを決めなければなりませんでした。
特に、振り込め詐欺事件では、捜査機関も余罪の有無を徹底的に捜査するため、ともすれば、本当は関わっていない事件について関与を疑われるおそれがあります。
そこで、複数回の接見の上、ご子息様から自分の関与した事件とそうでない事件を聞き取り、取調べの前に弁護士と打ち合わせを行いました。
取調べ前の打合せでは、警察からの取調べに対してどのように答えるべきなのか、一つ一つ弁護士と確認をして実際の取調べに臨み、取調べの後には再び弁護士と接見し、どのようなことを聞かれたのか聴取し、次回の取調べに対する打合せの課題としました。
その結果、ご子息様が関わったとされる事件についてのみ起訴がなされ、手続きの間延びによる身体拘束の無用な延長や、被害額の拡大を避けることが出来ました。
~示談交渉~
振り込め詐欺事件は被害者のいる犯罪です。
本件では、裁判が始まる前から被害者の方と連絡を取り始め、示談交渉に着手することができました。
ご子息様の反省の状況を踏まえて、弁護士が誠意をもって対応し、謝罪と被害の弁償を行いました。
被害者の方々からは「社会の中で更生してほしい」とのありがたいお言葉と、加害者であるご子息様を許すとの一筆を頂けました。
被害者の方の中には、ご子息様の反省状況や置かれた状況等を考慮して、被害額の約3分の2程度の弁償額で許していただけた方もいました。
これらの示談交渉の経緯は、裁判の場でも証拠を提出して主張、立証を行いました。
・起訴後の弁護活動(公判弁護活動)
~裁判までの打合せ~
ご子息様の振り込め詐欺事件が起訴された後も、引き続き公判弁護活動を行っていきました。
裁判の場では、ご子息様が今回の事件について関わってしまった経緯や今後の社会内での生活を行う環境について、同情すべき点があった点を明らかにすることを弁護側の目標としました。
そこで、本件に関与し始めたときの状況を、裁判官にしっかりとアピールできるよう、弁護士とご子息様とで打合せを行いました。
また、裁判の場では検察官から反対尋問がなされますが、そこで動揺してしまうことのないように対策を重ねました。
~裁判当日~
裁判当日には、ご依頼者様とご子息様に法廷に立ってお話しいただきました。
当日は、お二人とも緊張のためか、お話しに詰まる部分もありましたが、事前に打ち合わせに基づいて弁護士からも助け船を出すことで、ご自身の主張を過不足なく裁判所に対して伝えることが出来ました。
~判決~
本件については被害額267万5千円の詐欺、窃盗事件として有罪の判決が言い渡されましたが、懲役3年執行猶予5年という判決を得られました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、こうした振り込め詐欺事件のご相談も受け付けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
なお、本件につきましては弊所東京支部のホームページにも詳細を記載しております。
転売目的でのチケット購入と電子計算機使用詐欺罪
転売目的でのチケット購入と電子計算機使用詐欺罪
大阪市淀川区に住むAさんは,転売目的で,チケット販売サイト(チケットエージェンシー)からラグビーの観戦チケットを入手したとして,大阪府東淀川警察署に電子計算機使用詐欺罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの母親は,Aさん逮捕の知らせを聞いて,弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです。)
~ 転売目的でのチケット入手 ~
人気のコンサートや舞台,スポーツイベントなどのチケットを,業者や個人が買い占め,オークションやチケット転売サイトなどで定価を大幅に上回る価格で販売する「高額転売」が社会問題となっています。
このような不当な転売により,チケットを本当に求めている人にとって入手しづらい状況が続いています。
しかし,転売目的でのチケット入手は犯罪です。
どのような罪に問われるのか解説いたします。
~ 電子計算機使用詐欺罪 ~
電子計算機使用詐欺罪は刑法246条の2に規定されています。
詐欺罪(刑法246条)は,本来,「人を欺いた場合」に適用される犯罪ですが,事例のように欺く対象が「人以外(コンピューターなどの電子機器など)」の場合は詐欺罪を適用することができません。
そこで,そのようなこの不都合を解消するために作られたのが電子計算機使用詐欺罪です。
つまり,電子計算機使用詐欺罪は詐欺罪の補充規定ということになります。
罰則は,通常の詐欺罪と同様「10年以下の懲役」です。
* 事例紹介 *
平成29年9月22日,神戸地方裁判所で,人気アーティストのライブの電子チケットを転売目的で取得し電子計算機使用詐欺罪に問われた被告人に対し,「懲役2年6月 執行猶予4年」の有罪判決が言渡されています。
~ どんな行為をしたら処罰されるの? ~
電子計算機使用詐欺罪は,「電子計算機を欺く行為(規定には「電子計算機に虚偽の情報若しくは不正の指令を与えて」などと書かれています)」を処罰する罪です。
つまり,転売目的でチケットを購入しようとする者が,その目的を隠してチケットエージェンシーに対してチケットの購入を申込み,その結果,転売目的の購入ではないとチケットエージェンシーを誤信させ,チケットエージェンシーにチケットを送付させたという行為が電子計算機使用詐欺罪に当たるのであって,転売行為そのものを処罰するものではありません。
* 転売行為も禁止 *
しかし,6月14日から施行されるチケット転売防止法(正式名称,特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)では,「チケットの不正転売」を禁止しており,違反者に対し,「1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金,又は併科」を科す旨定めています。
転売目的でチケットを購入し,さらにそのチケットを転売した場合には,電子計算機使用詐欺罪のほか,チケット転売防止法違反にも問われることになります。
~ 買った側の処罰は? ~
これまでご紹介してきたのは,「チケットを転売目的で購入し,それを売った側」の罪でしたが,それを「買った側(譲り受けた側)」は処罰されるのでしょうか?
この点,先ほどご紹介したチケット転売防止法では,「転売目的での譲り受け」を禁止しており,違反者に「1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金,又は併科」を科す旨定めています。
また,転売目的で入手したチケットであることを知りつつチケットを購入した場合は,たとえ転売目的がなくても「盗品等有償譲受罪(刑法256条2項,「10年以下の懲役及び50万円以下の罰金」)」に問われる可能性もあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
チケット転売に関する詐欺事件のご相談も,刑事事件専門だからこそ安心してお任せいただけます。
刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。
無料法律相談,初回接見サービスをのご予約を24時間受け付けております。
埼玉県所沢市のプリペイド改ざん詐欺事件
埼玉県所沢市のプリペイド改ざん詐欺事件
~ケース~
埼玉県所沢市在住のAさんはインターネットで「これを使えばプリペイドカードが使い放題!」と銘打たれた機器を購入した。
説明書によると,磁気情報によるプリペイドカードの磁気情報を書き換えることによって使用されていない状態にできるというものであった。
Aさんは半信半疑で埼玉県所沢市内のスーパーVで使用可能なチャージ式ではないプリペイドカードで試してみたところ,磁気情報を未使用の磁気情報に書き換えることができた。
AさんはVで書き換えたプリペイドカードを使用してみたところ,新品同様の使用が可能であった。
ところで,Aさんが使用したプリぺイドカードは表面の模様が剥がれており,スーパーVのレジ担当であるXは何となくその事に気づいていた。
そして,XはAさんが常に同じプリペイドカードを使用しているにも関わらず残高が戻っていることに気づき店長Yに報告した。
その後,Yが埼玉県所沢警察署に相談したことで,Aは事情を聞かれることになり,家宅捜索の結果,上記機器が発見され,Aさんは電子計算機使用詐欺罪の疑いで逮捕された。
(フィクションです)
~電子計算機使用詐欺罪~
刑法246条の定める詐欺罪は「人を欺いて財物を交付させたものは,10年以下の懲役に処する。」と規定されています。
詐欺罪で欺かれる対象は「人」となっていますので機械を誤作動させた場合には詐欺罪が成立しないことになるでしょう。
そのため,刑法246条の2は「前条に規定するもののほか,人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて…(略)…財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた者は,10年以下の懲役に処する。」と規定しています(電子計算機使用詐欺罪)。
今回のケースで,Aさんは磁気情報を書き換えたプリペイドカードを使用して,レジ等の電子計算機(法律ではコンピューターはこのように呼ばれます)に虚偽の情報を与えたといえるでしょう。
そしてそれによって代金を支払うことなく買い物ができたのですから財産法上不法の利益を得たともいえるでしょう。
したがって,Aさんには電子計算機使用詐欺罪が成立すると考えられるのです。
~手続の流れ~
詐欺事件で起訴されると,詐欺罪には罰金刑が定められていないので刑事裁判を受けることになります。
詐欺事件の場合,詐欺の手口,被害者の数,被害金額,被害弁償の有無などによって検察官は起訴するかどうかを判断します。
法務省の犯罪白書によると,詐欺事件は6割弱が起訴されています。
刑事事件では,逮捕されると48時間以内に検察官に事件が送致され,検察官は24時間以内に被疑者を勾留するか釈放するかもしくは起訴するかを決定します。
勾留請求が認められると原則として10日間身柄を拘束されます。
事件によってはさらに被疑者の身柄拘束が必要であると判断された場合,最長で10日間の延長がされる場合もあります。
したがって,逮捕されてしまった場合には最長で23日間身柄を拘束されることになります。
また,検察官は勾留が認められた場合には,原則として勾留満期までに被疑者を起訴するかどうかを決定しなければなりません。
そのため,身柄拘束の必要がない場合や逮捕を含めた最大23日間で起訴する証拠を収集するのが困難である場合などにはあえて勾留しない場合もあります。
逮捕されなかった場合や,逮捕されても勾留されず釈放された場合は在宅での捜査となります。
この場合は起訴するまでの期間の制限はありませんので,捜査が比較的ゆっくり進むことが多いでしょう。
~弁護活動~
詐欺罪などの財産犯では,被害弁償をしているかが検察官が起訴するかどうかの判断や裁判官の量刑の判断に大きく影響します。
また,示談の際に「加害者を許す,処罰は求めない」という宥恕条項があれば事件の内容にもよりますが,起訴猶予となる可能性もあります。
しかし,詐欺事件の被害者の方にとって,加害者を許すという内容を示談の内容に盛り込むことは簡単なことではありませんから,この宥恕条項については盛り込まない,という示談も多いです。
それでも,被害弁償をしているという点で起訴猶予となる場合や,執行猶予付きの判決となる場合もあります。
逆に,被害弁償などを一切していない場合にはよほど軽微な事件でなければ起訴され,場合によっては実刑判決となってしまう可能性もあります。
そのため,詐欺事件などの財産犯では被害者の方に被害弁償をすることは非常に重要になります。
効果的な示談交渉をしたいとお考えの方は,まずは刑事事件に強い弁護士ご相談されることをお勧めいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
詐欺事件をはじめとする財産犯事件も数多く取り扱っています。
フリーダイアル0120-631-881にて初回接見サービス・無料法律相談のご予約を24時間受け付けております。
横浜市緑区の出資法違反・詐欺事件
横浜市緑区の出資法違反・詐欺事件
~ケース~
横浜市緑区在住のAはクレジットカードを利用した副業ビジネスと称するスキームを経営していた。
Aのスキームとしては以下のとおりであった。
①利用者がクレジットカード等で商品を購入する
②商品がAの下に届く
③Aが商品を海外に輸出し,購入代金以上の金額を得る
④購入代金に一定のマージンを上乗せした金額を利用者の口座に振り込む
また,ビジネスの参加者からは保証金の名目で参加費を徴収していた。
実際には商品はAの下に届くものではなく,クレジットカードの購入金額のみがAの手元に入るスキームとなっていた。
Aは保証金や購入代金④を振り込んでいたたが,途中から④の振込をしなくなった。
利用者の1人であるVが神奈川県緑警察署に相談したところ,Aは出資法違反および詐欺罪の疑いで家宅捜索を受けた。
(実際にあった事件を基にしたフィクションです)
~出資法~
今回のケースは,いわゆる「西山ファーム事件」と呼ばれる事件を基にケースを設定しています。
西山ファーム事件では実際に海外に商品の輸出していたかどうかは定かではありませんが,今回のケースでは海外への輸出などはなかったとしました。
なお,西山ファーム事件では出資法違反の疑いで家宅捜索をされています。
出資法は正式名称を「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」といい,西山ファーム事件では保証金が預り金であるとして出資法違反であるとされたと考えられます。
出資法第2条は業として預り金を受け入れることを禁止しており,預り金とは「不特定かつ多数の者からの金銭の受け入れであって」「預金,貯金又は定期積金の受け入れ」およびそれと同様の経済的性質を有するもので,「社債,借入金その他いかなる名義をもってするかを問わない」とされています。
また,金融庁のガイドラインでは預り金とは以下の4要件に該当するものとされています。
①不特定かつ多数の者が相手であること。
②金銭の受け入れであること。
③元本の返還が約されていること。
④主として預け主の便宜のために金銭の価額を保管することを目的とするものであること。
投資スキームなどでの保証金は元本の返還が保証されている場合には預り金として出資法違反となるでしょう。
~ポンジ・スキーム~
今回のケースのようなスキームはポンジ・スキームと呼ばれるもので「出資金詐欺」とも呼ばれます。
このスキームでは出資された金銭を運用しているようにみせかけ配当を分配しますが実際には運用しておらず,負債が増え続ける仕組みになっています。
しかしながら,早期の出資者には配当が分配される場合が多く,それによって信用を得て,出資者の増加や配当を得た出資者からのさらなる出資が見込まれます。
そのため,出資された金銭の総額は膨らんでいくことになります。
しかし,出資された金銭は別の用途に費消されてしまうなどで目減りし,配当を分配する以上,必ずいつか破たんする仕組みになっています。
早期に出資した方は利益を得られる場合もありますが,後半で出資した方は配当を受けるどころか,出資金がまるまる消えてしまうということもあります。
~逮捕されたら~
詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役となっています(刑法246条)。
詐欺罪は事案によっては執行猶予判決が付く場合もありますが,今回のケースは手口が悪質であり,被害人数が多く,被害額も高額となりますので実刑判決となってしまう可能性が高いでしょう。
しかし,被害者に可能な限り被害弁償,示談をすることによって裁判で有利な情状となり量刑に影響する場合もあります。
ただし,詐欺事件の場合,被害者と直接示談交渉をする,出資金を返すというのはあまり現実的ではありません。
というのも,一度詐欺の被害に遭っているのですから示談交渉などを装った詐欺ではないかと疑われる可能性があったり,被害感情が大きく直接連絡をしたくないという場合があったりするからです。
弁護士が相手であれば,被害に遭われた方にも安心して示談交渉に応じて頂ける可能性があります。
また,効果的な示談書の作成なども専門家である弁護士であれば可能ですのでまずは弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
詐欺事件を起こしてしまった場合には0120-631-881までお気軽にご相談ください。
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特殊詐欺とだまされたふり作戦
特殊詐欺とだまされたふり作戦
東京都多摩市に住むAさんは、SNSで知り合った氏名・職業不詳のBさんから、東京都多摩市内の指定する場所に現金を受け取りにいって欲しいと頼まれました。
Aさんは、おそらく詐欺の受け子の仕事だろうとは思いながらも、Bさんから「成功すれば、1回、1万円」と言われたことから、「おいしい話だ」と思い、仕事を引受けました。
ところが、指定された場所で、Vさんから封筒(中身は模造紙幣)を受け取ったAさんは、現場で待機していた警視庁多摩中央警察署の警察官に詐欺未遂罪(共犯)で逮捕されてしまいました。
実は、この事件、Aさんが指定された場所に行く前、Bさんから電話を受けたVさんが特殊詐欺であることを見抜き、警視庁多摩中央警察署に相談したところ、「だまされたふり作戦」を実行することとされていたのです。
(フィクションです。)
~ そもそも詐欺罪とはどんな罪? ~
詐欺罪は刑法246条1項、2項に規定されていますが、今回は、2項は関係がないので説明を省略いたします。
詐欺罪の規定をみてみると、
刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
たったこれだけの規定です。
殺人罪(刑法199条)の「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する」の規定と同じくらい短い規定です。
しかし、この規定の中には、詐欺罪が成立するための様々な要素が含まれています。
つまり、詐欺罪は、
客観的には、①欺罔行為(騙す行為)→②錯誤(被害者が騙されること=被害者の認識が客観的事実と一致しない状態)→③処分行為による財物の移転(被害者が現金を手渡すことなど)→④財産上の損害、の一連の流れがあり、主観的には,犯人の①~④までの故意(認識)
があってはじめて成立する犯罪です。
①~④の要素がそろえば詐欺既遂罪、①に留まった場合(つまり、本件のように被害者が相手の嘘を見抜いて「錯誤」に陥らなかった場合)などは詐欺未遂罪に問われることになります。
~ なぜ、Aさん(受け子)が詐欺未遂罪? ~
今回、Aさんが担った役割は、上の①から④でいえば③の財物の移転、つまり、被害者から封筒を受け取る行為のみであり、①欺罔行為、つまり騙す行為は行っていません。
つまり、詐欺罪の成立要素を満たしていないのだから、Aさんに詐欺未遂罪を問うことはできないのではないかとの疑問も生じるところです。
しかし、刑事実務では、「共犯者が作出した状態(騙した状態)を利用して犯行を実現した」といえる場合は、罪に問えるとしています。
これを講学上は、承継的共同正犯とか共謀共同正犯とかいいますが、名称はどうでもいいことで、つまりは情状の差こそされ、AさんもBさんと同様の罪に問われるということになります。
~ だまされたふり作戦とは? ~
だまされたふり作戦とは、オレオレ詐欺などの特殊詐欺のケースで、被害者が詐欺にあっていることに気づいた後も、警察の指示によって、だまされたふりをして、犯人をおびき出し逮捕につなげる作戦です。
だまされたふり作戦のよくあるパターンとしては、被害者がかけ子の指示に従って、模造紙幣が入った紙袋を受け子に手渡し、その直後に警察が受け子を取り囲んで逮捕するというものです。
警察としては、受け子の逮捕をきっかけに突き上げ捜査を行って、特殊詐欺組織の撲滅を図る狙いです。
~ 受け子がだまされたふり作戦に気づいていない場合 ~
Aさんのように、受け子がだまされたふり作戦に気づいていない場合、詐欺未遂罪に問うことはできるのでしょうか?
なぜ、このような疑問点、問題点が生じるのかというと、
だまされたふり作戦の場合、上記②で詐欺被害の危険は寸断されているのだから、それ以降の犯行に加担したとしても詐欺の犯罪実現は不可能で、犯罪は成立しない
という考え方があるからです。
過去には、この点を重視して無罪判決を出した裁判例(平成28年9月 福岡高裁)もありましたが、その後、最高裁判所により、
被害者を騙す行為と被害者から現金などを受けとる行為が一体のものであると考え、そのような一体性を有する行為の一部に関与した受け子は、関与前のかけ子の騙し行為についても責任を負う
とし、詐欺未遂罪の成立を認めています。
この判決以降、同様の詐欺事件において、無罪主張をすることが難しくなっています。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
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(警視庁多摩中央警察署までの初回接見費用:37,200円)
訪問販売と詐欺罪
訪問販売と詐欺罪
布団の訪問販売員であるAさんは、東京都北区に住む高齢のVさんが特殊詐欺の被害にあったとの情報を入手し、Vさん宅を訪問することに決めました。
AさんはVさん宅を訪ね、玄関ベルを鳴らしました。
Aさんは、玄関先まで出てきたVさんに「布団の販売で訪ねさせていただきました。布団を見せてくれませんか。」と言いました。
すると、Aさんは、Vさんから「うちには腐るほど布団があるから結構です。」と断られましたが、強引にVさん宅へ上がり、「うちのより、品が悪いですね。」「汚れているし取り替えた方がいいですよ。」「本来なら40万のところ、特別に10万で売ります(本来は10万円の価値しかない)。」と言いました。
そうしたところ、Vさんは「そんなに安くなるんだったら買います。」と言ってAさんに10万円を渡しました。
ところが、後日、Vさんはある情報番組を見て、Aさんの話が嘘だったことに気づき、警視庁赤羽警察署に詐欺罪の被害届を提出しました。
そして、Aさんは、警視庁赤羽警察署に住居侵入罪・詐欺罪で逮捕されてしまいました。
(実際にあった事例を基に作成したフィクションです)
~ 訪問販売 ~
訪問販売とは、特定商取引法という法律の2条で「販売業者または役務提供事業者(※)が、営業所等以外の場所(例えば、被害者の自宅)で契約して行う商品、特定権利の販売または役務の提供等のことをいう」とされています。
最も一般的な訪問販売は、消費者の住居をセールスマンが訪問して契約を行うなどの販売方法です。
そのほか、喫茶店や路上での販売、またホテルや公民館を一時的に借りるなどして行われる展示販売のうち、期間、施設等からみて、店舗に類似するものとは認められないものも「訪問販売」に該当するとされています。
~ 様々な法規制 ~
訪問犯罪をするにあたっては様々な法規制がありますが、刑事事件としては次の罪に当たり得ることから注意が必要です。
= 詐欺罪(刑法246条) =
詐欺罪は人を欺いて、人から財物の交付を受けた場合い成立する犯罪です。
法定刑は「10年以下の懲役」です。
本件の場合、10万円の価値のある布団を10万円で売っているので、Aさんの行為が「欺く行為」に当たるか否かが問題となります。
この点、「欺く行為」とは人を錯誤(誤った判断、間違った判断)に陥れる行為をいうとされており、「被害者が本当のことを知っていたならば、財物を交付しなかったであろう」という場合に被害者を錯誤に陥れる行為、つまり、「欺く行為」と認めることができるとされています。
本件のVさんは「40万円の価値のある布団を10万円で買える」、「お得だ!」と思ったからこそ、Aさんに10万円を手渡したわけです。
つまり、10万円の価値しかないと知っていたならば、Aさんに10万円を手渡さなかったであろうという関係が認められますから、Aさんの行為は「欺く行為」に当たる可能性が高いでしょう。
= 不実の告知の罪(特定商取引法6条1項2号) =
特定商取引法6条1項2号では、訪問販売の売買締結等の勧誘をする際、訪問販売の売買締結等の申込みの撤回又は解除を妨げるため、「商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価につき、不実のことを告げる行為」をしてはならないとしています。
これに違反した場合は「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(又はこれを併科)」に処せられる可能性があります。
「不実のことを告げる行為」とは、虚偽の説明を行うこと、すなわち事実と異なることを告げる行為のことをいいます。
商品の販売価格について不実のことを告げる行為とは、まさに本件のように、実際には40万円もしない商品をあたかも40万円であるかのようなことを告げる行為をいいます。
= 住居侵入罪(刑法130条前段) =
訪問販売であるからとって、勝手に他人の敷地内や家の中へ上がりこんではいけません。
合理的な理由があって、家人の了解があったと誤信していた場合は別として、そうでない場合、勝手に他人の敷地内へ入ったり、家の中へ上がりこんだ場合は住居侵入罪に問われることもあります。
本罪の法定刑は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。
= 不退去罪(130条後段) =
仮に、敷地内や家の中へ入ることを許されたとしても、相手方から「うちは結構です。」「早く帰ってください。」と立ち退きを求められた場合はすぐに退去しましょう。
そのままそこに居座り続けると、不退去罪に問われる可能性があるからです。
不退去罪の成立要件は「要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった」場合とされています。
確かに、要求を受け、一定時間で退去しないと本罪が成立してしまいますから注意が必要です。
~ おわりに ~
訪問販売をするにあたっては、様々な取り決めがあることかと思います。
そうした取り決めと守るとともに、もし、違反した場合には上記の罪に問われ得ることをしっかりと頭に刻み込んでおきましょう。
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特殊詐欺とオレオレ詐欺
特殊詐欺とオレオレ詐欺
福岡県行橋市に住むAさんは、同じく福岡県行橋市に住む高齢の女性Vさん(80歳)宅に「ばあちゃん、オレだよ。」「風邪をこじらせてしまって声が変わっているかもしれない。」「実は、会社から預かっていた100万円を電車に置き忘れてみつからないんだ。」「このことが会社にばれたら会社をクビになってしまう。」「今すぐオレの口座に100万円振り込んでくれないかな。」などと電話をかけ、Vさんに現金100万円を振り込ませました。
その後、Vさんが親族に相談したところ詐欺であることが発覚。
被害届を受けた福岡県行橋警察署の捜査により、Aさんは詐欺罪で逮捕されました。
(フィクションです)
~ 特殊詐欺とは ~
特殊詐欺という犯罪名はありません。
特殊詐欺とは、不特定の方に対して、対面することなく、電話、はがき、FAX、メール等を使って行う詐欺のことで、「振り込め詐欺」と「振り込め類似詐欺」に分けられます。
「振り込め詐欺」は、
・オレオレ詐欺
・還付金詐欺
・架空請求詐欺
・融資保証金詐欺
に分類されます。
「振り込め類似詐欺」は
・金融商品等取引名目の詐欺
・ギャンブル必勝法情報提供名目の詐欺
・異性との交際あっせん名目の詐欺
・その他の特殊詐欺
に分類されます。
* 呼称の変遷 *
2000年前半は「オレオレ詐欺」と呼ばれていましたが、その後詐欺の手口が多様化し、実態と合わなくなったことから2004年12月に警視庁により、オレオレ詐欺を含めた上記4つの詐欺を総称して「振り込め詐欺」と名付けられました。
さらに、2011年4月には「振り込め詐欺」と「振り込め類似詐欺」とを総称して「特殊詐欺」と名付けられ、その後、2013年5月には「振り込め詐欺」に変わる呼称として「母ちゃん助けて詐欺」が発表されました。
しかし、現在のところ「母ちゃん助けて詐欺」は広く定着していないようで、以前として、「オレオレ詐欺」や「振り込め詐欺」などの呼称が使われています。
~ オレオレ詐欺と件数 ~
オレオレ詐欺とは、「電話を利用して親族、会社の上司、警察官、弁護士等を装い、会社での横領、トラブルや交通事故の示談金名目で、現金を預金口座等に振り込ませたり、宅急便や郵送などで送金させるなどの方法によりだまし取る詐欺」のことをいい、次の3つに分類されると言われています。
① 振込み型
ATMから指定した口座に現金を振り込ませる方法
② キャッシュカード受領型
被害者から直接キャッシュカードを受領する方法。警察官役の者が「キャッシュカードが犯罪に使われていた」「口座凍結したいのでキャッシュカードを渡して暗証 番号を教えて欲しい」などと電話をかけ、被害者方に向かわせた者にキャッシュカードを渡し、暗証番号を教えさせる方法
③ 現金受取型
被害者から直接現金を受け取る方法です。受け取る役は「受け子」と呼ばれています。
~ オレオレ詐欺は増加傾向 ~
特殊詐欺の方法が多様化し、オレオレ詐欺の存在が薄れてきたかのように思われがちですが、実は警察におけるオレオレ詐欺の認知件数は近年増加傾向にあります。
警察庁の発表によれば、特殊詐欺の認知件数は平成22年以降平成29年まで増加傾向にあったものの、平成30年は減少に転じています(平成29年の認知件数は1万8212件、平成30年は1万6490件)。
また、被害額も平成29年は394.7億円だったのに対し、平成30年は356.8億円と減少しています。
しかし、オレオレ詐欺の認知件数は、平成29年は8496件だったのに対し平成30年は9134件と増加しており、近年と比べても極めて高い数字で、年々増加傾向にあるといえます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺罪などの刑事事件・少年事件を専門の法律事務所です。
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(福岡県行橋警察署までの初回接見費用:44,040円)