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譲渡目的の口座開設の詐欺罪により逮捕

2019-11-03

譲渡目的の口座開設の詐欺罪により逮捕

譲渡目的の口座開設に対する詐欺罪の成否について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

事例
Aは,京都市上京区にある銀行窓口において,第三者に譲渡する目的を秘し,A名義(自己名義)の預金口座を開設し,同口座の預金通帳を取得した。
その後,Aが口座を譲渡した相手が詐欺事件を起こし,京都府上京警察署に逮捕されたが,捜査の過程で,Aが口座譲渡の目的で口座を開設し,譲渡していたことが判明した。
その結果,京都府上京警察署の警察官は,Aを詐欺罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は,詐欺事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実をもとにしたフィクションです。)

~口座開設による預金通帳の詐取~

本件Aは,詐欺罪の容疑で逮捕(刑事訴訟法199条1項本文)されてしまっています。
刑法は,246条で詐欺罪について定めており,その1項において「人を欺いて財物を交付させた者」を,詐欺罪として処罰する旨を規定しています(「財物」を対象とする詐欺罪は,1項詐欺などと呼ばれます)。

まず本件では,そもそも本件で取得したような通帳それ自体には何ら価値がないとも考えられることから,上記1項詐欺罪の対象となる「財物」といえるのかが問題になります。
この点,通説的には,通帳も預金等の預け入れや引き出しなどの銀行によるサービスを受けられるという点で,財産的価値を有することから,1項詐欺罪の客体としての「財物」に該当すると考えられています。

そして,「人を欺」く行為といえるためには,判例上,交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ることが必要となります。
現在では,口座の不正利用や犯罪に利用されることを防ぐ目的から,銀行の窓口レベルで本人確認が徹底されており,本人自身が口座を開設したとしても真の目的である第三者への譲渡を秘したことは,この本人確認を無にする行為であり,重要事項を偽ったものといえると考えられます。
したがって,このような「人を欺」く行為によって,窓口係を錯誤に陥れ,口座を開設した上で預金通用の交付を受けたことは,1項詐欺罪の要件を満たし得るものといえます。

なお,預金通帳の譲渡等は「犯罪収益移転防止法」で処罰すれば足りるとの見解もありますが,実務上はあくまで譲渡前の通帳の詐取行為に詐欺罪が成立するとしています。
したがって,譲渡行為まで行っていると詐欺罪に加え,「犯罪収益移転防止法」(俗に犯収法)違反に問われうることにも注意が必要です。
また,私文書偽造および同行使罪(刑法159条1項,161条1項)も成立する可能性があります。

~詐欺罪における弁護士による弁護活動~

まず,起訴前の弁護活動として,詐欺罪も財産犯であることから,被害者への被害弁償・示談による被害の回復が考慮に値することになります。
しかし,本件のように被害者が単なる一個人というよりは実質的には銀行である場合,公益的な観点からも相手方が示談に応じることは難しいとも考えられます。
したがって,被疑者には起訴されるリスクも伝えた上で,起訴後の弁護活動の方針を十分に協議していく必要があります。
こういった起訴後の弁護活動を十全なものとするためにも,逮捕後の勾留(刑事訴訟法207条1項本文・60条1項)を争ったり,あるいは起訴されてしまった場合にも早期に保釈(刑事訴訟法89条等)の請求していくことが考えられます。
そのため,このような被疑者・被告人の身柄解放活動が,弁護士に対し求められる弁護活動として大きな比重を有するといえるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,詐欺事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
弊所では詐欺罪を含め刑事事件のみを扱う弁護士が,依頼者様の不利益を最小限にすべく日々の弁護活動を行っております。
詐欺事件でご家族等が逮捕されてしまった方は,年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)まで,まずはご相談ください。

他人のクレジットカードを使用し逮捕

2019-10-30

他人のクレジットカードを使用し逮捕

他人のクレジットカード使用逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~
Aさんは、兵庫県加古川市内の道端に遺失されていた財布を、忘れ物だからもっていってもいいだろうと思って拾い、中を見たところ、現金2000円とクレジットカードが1枚入っていました。
Aさんは現金とクレジットカードを抜き取り、さらに、クレジットカードを使って、コンビニで買い物をしてしまいました。
後日、Aさんの自宅に逮捕状を携えた兵庫県加古川警察署の警察官が現れ、Aさんは詐欺罪及び占有離脱物横領罪の疑いで逮捕されてしまいました。
Aさんは兵庫県加古川警察署に引致され、取調べを受ける予定です。
(フィクションです)

~落とし物の財布の中身を使用したら何罪?~

今回のAさんの逮捕容疑となっているのは詐欺罪と占有離脱物横領罪です。

(詐欺罪)
詐欺罪とは、人を欺いて財物を交付させる犯罪です(刑法第246条1項)。
他人を欺いて財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させる場合も同様に詐欺罪となります(刑法第246条2項)。
裁判で詐欺罪の有罪が確定すると、10年以下の懲役に処せられます(刑法第246条)。

今回のケースの場合は、他人のクレジットカードを使ってコンビニで買い物をしたことが、詐欺罪を構成する行為と考えられます。
判例によれば、使用許諾のない場合には、他人のクレジットカードを使用すること自体が欺罔行為(騙す行為)であるとされています。
したがって、他人から盗んだカードや、ケースのように落ちていた財布から抜き取ったカードを用い、名義人であるかのように装って使用する場合は、加盟店(ケースの場合はコンビニがこれにあたります)に対する詐欺罪が成立する、ということになります。

詐欺罪は、法定刑に有期懲役しか予定されておらず、有罪判決を受ける場合に執行猶予がつかないと、実刑判決となってしまいます。
詐欺罪で起訴されてしまった場合は、執行猶予付き判決の獲得を目指すことが重要です。

(占有離脱物横領罪)
占有離脱物横領罪とは、遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領する犯罪です(刑法第254条)。
横領とは、不法領得の意思を以て占有離脱物を自己の事実上の支配内に置くことです。
法定刑は1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料となっております。
ケースの場合は、道端に遺失されていた財布やその中身の現金、クレジットカードを自分の物にしようと思って拾ったので、この行為が、占有離脱物横領罪を構成すると思われます。

~逮捕後の刑事手続き~

兵庫県加古川警察署に引致され、犯罪事実の要旨、弁護人選任権があることを伝えられ、弁解を録取された後、取調べを受けることになります。

留置の必要があると認められると、逮捕時から48時間以内に身柄が検察へ送致されます。
送致を受けた検察官は、身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内にAさんの勾留を請求するか、Aさんを釈放するかを決めます。

勾留の請求を受けた裁判官が勾留決定を出すと、10日間勾留されることになり、さらにやむを得ない事由があると認められるときは、最長10日間、勾留が延長されます。
Aさんが勾留されている場合は、勾留の満期日までに、検察官がAさんを起訴するか、あるいは不起訴にするか、釈放するかを決定します。

~早期の身柄解放を実現する~

上記の通り、捜査段階で最長23日間もの間身体拘束を受けると、Aさんの社会生活(職場や学校)に多大な悪影響を与えます。
したがって、より早く釈放してもらい、元の生活に戻ることが重要です。
身柄解放活動として、
①勾留を阻止する活動
②勾留された場合には、勾留の取消等を目指す
③起訴された場合は、保釈の実現
などがあります。
いずれも、弁護士が留置場や拘置所の外で積極的に活動することが重要です。

また、被害者と示談することも重要です。
もし、ケースの事件について被害者が明らかになれば、示談交渉をすることができます。
早期に示談が成立すれば、当事者間で事件が解決したものと判断され、釈放される可能性が高まります。
さらに、終局処分を考えるうえで有利な事情として考慮されることになるでしょう。

まずは、接見にやってきた弁護士から、①今後の見通し、②身柄解放活動、③示談交渉についてアドバイスを受け、事件解決を目指していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所であり、ケースの事件についてもご相談いただけます。
ご家族が詐欺事件や占有離脱物横領事件といった刑事事件を起こし、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

タクシーで無賃乗車をし逮捕

2019-10-26

タクシーで無賃乗車をし逮捕

今回は、タクシーで無賃乗車をした場合に成立する罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~
Aさんは、現金やカード、預金もないのに、タクシーに乗りました。
遠距離の乗車区間だったので、Aさんは運転手に対し、「到着後コンビニで金を降ろそうと思う」と告げました。
そしてAさんは、大阪市生野区の目的地付近で降車する際に、運賃として3万5千円を請求されました。
Aさんが「金はない」というと、運転手は「じゃあそこのコンビニでおろしてくださいよ」と言いましたが、Aさんは「預金はないし、そもそもカードもないよ」と言いました。
運転手から「預金もカードも無いのなら、警察を呼ぶしかない」と告げられたので、「好きにしろ」と言いました。
運転手の通報を受け駆け付けた大阪府生野警察署の警察官は、Aさんを詐欺罪の疑いで現行犯逮捕しました。(フィクションです)

~タクシーで無賃乗車をするとどのような罪が成立するか?~

今回のAさんのようなタクシーの無賃乗車では、いわゆる2項詐欺罪(刑法246条2項で定められている詐欺罪)が成立する可能性が高いと思われます。
刑法第246条1項は、「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」としており、さらに同条2項は、「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする」としています。
したがって、人を欺いて財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた場合に、2項詐欺罪が成立することになります。
法定刑も1項に定められている詐欺罪と同じく、10年以下の懲役です。

「財産上不法の利益」とは、財物以外の財産上の利益を意味し、典型例として、「債権」や「労務の提供」、「債務の免除」があります。

「人を欺いて財産上の利益を得、又は他人にこれを得させた」というためには、欺く行為(欺罔行為)→錯誤→財産上の処分行為→その取得という因果経過をたどる必要があります。
そのため、人を騙したが、その相手方は騙されなかったし、財産上の処分行為もしなかった、という場合や、相手方が欺罔行為を見破ったが、欺罔行為者に対する同情から財産上の処分行為を行った、という場合には、上記の因果経過をたどったと評価することができないため、2項詐欺罪は未遂に留まります。

~Aさんの無賃乗車の場合はどうか?~

(欺罔行為)
Aさんはタクシーに乗って、運転手に対し、「到着後金を降ろす」と告げました。
この行為は、目的地到着後料金を支払える当てがないのに、あるように装ったものと評価できると考えられるので、「欺罔行為」に当たるものと思われます。

(錯誤)
タクシーの場合、通常、目的地到着後直ちに料金の支払いを行いますが、上記Aさんの欺罔行為により、タクシーの運転手に、目的地到着後直ちに又はコンビニでおろして料金を支払ってもらえるものと誤信させたと考えられるので、錯誤があったものと評価できるでしょう。

(財産上の処分行為及びその取得)
上記錯誤によりタクシー運転手はAさんを運送し、よってAさんは運賃3万5千円相当の財産上不法の利益を受けたと考えられます。

以上より、Aさんに2項詐欺罪が成立する可能性は高いと思われます。

~逮捕後、Aさんはどうなるか?~

逮捕後に行われる取調べでは、Aさんは、タクシー下車時点におけるAさんの支払能力について詳しく尋ねられると思います。
Aさんは現金を持っておらず、また、カード、預金もないので、支払能力がないものと判断される可能性が高いでしょう。
このような状態で「支払うつもりはあったので、詐欺罪の故意がなかった」と主張しても、おそらく通用しないと思われます。

この場合はどうすればよいのでしょうか。

~被害者と示談をする~

今回のケースの弁護活動としては、接見にやってきた弁護士と相談した上で、罪を認め、被害者と示談をすることが考えられます。
逮捕されている場合には、示談交渉を弁護士に任せることになります。
Aさんが乗ったタクシーが会社所属の場合は、当該会社に対して、個人タクシーの場合は運転手に対し、運賃に加え、いくばくかの金銭を支払うことにより、示談を成立させることを目指すことになるでしょう。

示談が成立すれば、当事者間で事件が解決したものとして、釈放される場合もあります。
また、捜査段階の最終局面において、検察官がAさんを不起訴処分(起訴猶予)とする可能性も高まります。
不起訴処分を獲得できれば、裁判にかけられず、また、前科がつくこともありません。
さらに、起訴されてしまったとしても、示談締結の事実は刑罰を判断する際に有利に考慮されますから、示談締結を目指すことはより有利な結果を求めるために効果的であるといえるでしょう。
接見にやってきた弁護士と相談し、より有利な事件解決を目指していきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族がタクシーの無賃乗車事件を起こし、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

特殊詐欺における共犯関係を相談

2019-10-22

特殊詐欺における共犯関係を相談

特殊詐欺における共犯関係について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~
埼玉県入間市の大学生であるAさんらは,OBの紹介により特殊詐欺グループの手伝いをすることになった。
Aさんらの主な役割は,電話をかける「かけ子」,実際に現金を受け取る「受け子」,待ち合わせ場所などに受け子を送迎・見張りをする係,またそれらの人員を雇うリクルーターであった。
Aさんはその中で,かけ子および送迎・見張りを行い報酬を受け取っていた。
ある日,AさんがBさんをVさんとの待ち合わせ現場に送迎し,BさんがVさんから現金を受け取ったところ,張り込んでいた埼玉県狭山警察署の警察官らにBさんは逮捕された。
その後,Aさんも詐欺罪の共同正犯の疑いで逮捕された。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士に初回接見を依頼した。
(フィクションです)

~特殊詐欺と共犯関係~

オレオレ詐欺振り込め詐欺などのいわゆる「特殊詐欺」は組織的詐欺であり,それぞれ役割分担されていることが多いようです。
典型的なものはケースでも紹介した電話をかける「かけ子」,現金を受け取る「受け子」,銀行口座などから現金を引き出す「出し子」などがあります。
電話をかけ,被害者方へ行き,現金やキャッシュカードなどを受取るという一連の行為が詐欺罪を構成し,これらに関わっている全員が詐欺罪の共犯となると考えられます。

刑法における共犯は,「幇助犯」および「共同正犯」の2類型が規定されています。
幇助は刑法62条に規定されており,正犯の実行を容易にする行為をいいます。
従犯の場合には刑の減軽が定められています。
共同正犯は刑法60条に定められており,「二人以上共同して犯罪を実行した者」がすべて正犯となります。

~詐欺罪の幇助となる場合~

特殊詐欺において,受け子の送迎・見張りなどの役割は,人を騙して金銭を交付させるという行為そのものに関与しているわけではありません。
あくまでも受け子が金銭を受け取る行為等の手助けをしているに過ぎず,また,報酬などもあまり高くないことなどにより,詐欺行為への寄与度が低いと判断され,共同正犯ではなく幇助犯にとどまる場合も多いです。
しかし,組織の幹部などの主犯格との関わりが深い場合や,報酬などが高い場合などは詐欺行為への寄与度の大きさなどから共同正犯であると判断される場合も少なくありません。

~詐欺罪の共同正犯となる場合~

詐欺罪は欺罔行為(騙す行為)により,相手を錯誤に陥らせ,相手方の意思に基づいて財物ないし財産上の利益を処分し,占有などが移転し,これら一連の流れに因果関係が認められた場合に成立します。

「かけ子」の場合,まさに相手を騙す行為をしているのですから犯罪の一部を実行しているといえるでしょう。
そして「受け子」および「出し子」も特殊詐欺において最も重要なお金の取得という役割を担うことになります。
そしてこれらの役割は基本的に詐欺行為の一部であると認識して行われる行為ですので共同正犯となってしまう可能性が非常に高いでしょう。
ただし,受け子の場合には,報酬が少ない場合や,何も知らされておらず,詐欺の一環であるとの認識が全くないような場合については故意が阻却されたり,先ほどのような詐欺罪の幇助にとどまる場合なども有り得ます。

~特殊詐欺事件の弁護活動~

今回のケースでAさんは「かけ子」の役割を担っているため,詐欺罪の共同正犯となる可能性が高いでしょう。
詐欺罪は罰金刑がないため起訴された場合には刑事裁判となります。
事案や件数・被害額などにもよりますが組織的な特殊詐欺に関与した場合,初犯であっても執行猶予が付かない場合も考えられます。

ただし,特殊詐欺事件であっても可能な限り被害弁償をすることで有利な情状となりえます。
被害弁償していることによって懲役の期間が短くなる場合や,事案によっては執行猶予が付く可能性も考えられます。
逆に,被害弁償などを一切していない場合には実刑判決となる可能性が非常に高いでしょう。
被害弁償などの適切な弁護活動の有無によって刑事裁判の結果は大きく変わる可能性もございます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
特殊詐欺に関わってしまいご家族が逮捕されてしまった場合には0120-631-881までご相談ください。
無料法律相談や初回接見サービスのご依頼を365日24時間受け付けています。

預金通帳を闇金に譲渡し取調べ

2019-10-18

預金通帳を闇金に譲渡し取調べ

預金通帳の闇金への譲渡と取調べについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~
Aさんは、貸金業法上の登録を受けていない神奈川県伊勢原市にある金融業者(闇金)から、高い利率で元金30万円ほどの貸し付けを受けていました。
Aさんは、30万円ほどならすぐに返済できるだろうと考えていましたが、利息が重なり、返済が難しくなってきました。
Aさんが業者に相談すると、「じゃあ銀行で預金口座を10個ほど作ってきて、通帳、カード、暗証番号を渡してほしい。それで借金は免除する」と言われたので、言われるがままにAさんは神奈川県伊勢原市にある銀行で口座を開設し、通帳等を業者に引き渡しました。
後日、神奈川県伊勢原警察署からAさんに連絡があり、「あなたの銀行口座が犯罪に使われている。話を聞きたい」と言われ、Aさんは神奈川県伊勢原警察署に出頭することになってしまいました。
(フィクションです)

~第三者に引き渡す目的で預貯金口座を作り譲渡すると…~

第三者に引き渡す目的で預貯金口座を作って譲渡すると、詐欺罪(刑法第246条)、犯罪による収益の移転防止に関する法律違反の罪が成立する可能性があります。

(詐欺罪の成否)
詐欺罪は、人を欺いて財物を交付させる犯罪です。
詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役となっております。

今回のケースの場合は、金融業者に通帳やカードを譲渡する意図を隠して、銀行からこれらの交付を受けることが詐欺罪を構成するか否かが問題となります。

判例(最高裁平成19年7月17日決定)は、
銀行支店の行員に対し預金口座の開設等を申し込むこと自体,申し込んだ本人がこれを自分自身で利用する意思であることを表しているというべきであるから,預金通帳及びキャッシュカードを第三者に譲渡する意図であるのにこれを秘して上記申込みを行う行為は,詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならず,これにより預金通帳及びキャッシュカードの交付を受けた行為が刑法246条1項の詐欺罪を構成することは明らかである
と判示しており、詐欺罪の成立を認めています。

ケースのAさんが銀行の係員にどのように申し向けたかは明らかではありませんが、銀行係員が、銀行口座が不正に使用されたり第三者に渡ることを知った上で、口座開設に応じることは通常考えられません。
もしAさんが金融業者に口座を譲渡する意図について黙ったまま、預金口座の開設を申し込んでいたとすれば、この行為自体が「欺く行為」に該当することになるでしょう。
これにより通帳やキャッシュカードの交付を受けたとすれば、Aさんの行為が詐欺罪を構成する可能性は高いと思われます。

詐欺罪の法定刑には、懲役刑以外の刑種が予定されておらず、詐欺罪につき有罪が確定すると、罰金を納付するなどして事件を終了させることができません。
したがって、懲役刑につき、執行猶予がつかないと、刑務所に行かなくてはならなくなります。
詐欺罪で起訴されてしまった場合は、執行猶予付き判決を目指すことが極めて重要です。

(犯罪による収益の移転防止に関する法律違反の罪)
犯罪による収益の移転防止に関する法律第28条2項によれば、他人に対し、正当な理由がないのに、有償で、通帳やカードを譲渡する行為も犯罪となりえます。
正当な理由とは、通常の商取引や金融取引のように取引上首肯できるような理由があることをいいます。
有償とは、この行為の対価を得ることで、債務の免除も含まれます。
この点につき有罪が確定すると、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又はこれらの両方が科せられます。

(その他)
違法な金融業者がケースのような手法で収集した口座は、多くの場合、振り込め詐欺などの犯罪行為に用いられます。
自分の口座を使って振り込め詐欺を行うと、簡単に犯人がわかってしまうので、他人から口座の譲渡を受け、犯罪を行うのです。
Aさんの行動によっては、上記の犯罪の共犯者として疑いをかけられることもあります。
この場合、逮捕されたり、非常に重い刑に服さなければならなくなることも考えられます。
もし取調べでそのような嫌疑をかけられていることがわかったら、しっかりと否定することも必要です。

まずは弁護士と相談し、今後の対策を立てていきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所であり、今回のケースのような事件についても、初回無料刑事事件専門の弁護士のアドバイスを受けることができます。
預金口座の不正開設、口座譲渡事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

組織的詐欺罪で逮捕

2019-10-14

組織的詐欺罪で逮捕

組織的詐欺罪逮捕について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

Aらは,無料で日用品がもらえるなどとの謳い文句を掲げ,東京都清瀬市に住む高齢者Vらを店舗に集め,嘘を教えて高額な商品を売りつけるという行為を行っていた。
Aも,この行為を行ったグループの一員として,詐欺行為に関与していたことが疑われている。
被害に気づいたVらから相談を受けた警視庁東村山警察署の警察官は,Aらを組織的詐欺罪の容疑で逮捕した。
Aの家族は,詐欺事件に強い刑事事件専門の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)

~刑法上の詐欺罪以外の組織的詐欺罪?~

まず,Aらの行為は,「人を欺いて財物を交付させた」といえることから,刑法上の詐欺罪(刑法246条1項・60条)として共犯関係が認められることは比較的明らかといえます。
そして,刑法上の詐欺罪の法定刑(個々の法律に定められている刑罰のことです。)は「10年以下の懲役」と,刑法246条において規定されています。
10年以下の懲役」と聞くと重い罪と感じるかもしれませんが,この法定刑を法的に解きほぐすと「1月以上10年以下の懲役」(刑法12条1項参照)とかなり幅のある法定刑が導き出され,理論的にはかなり短い刑を科すことも可能なのです(さらにこれに減刑事由なども考慮される可能性がありますが,ここでは省略いたします。)。

もっとも,組織的な犯罪に関して適用される特別法として「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(以下,「組織的犯罪処罰法」と略します。)という法律が存在することに注意が必要です。
この組織的犯罪処罰法の3条1項では,

・「次の各号に掲げる罪に当たる行為が,団体の活動(団体の意思決定に基づく行為であって,その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう。以下同じ。)として,当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときは,その罪を犯した者は,当該各号に定める刑に処する」(1項柱書)

・「刑法第246条(詐欺)の罪」→「1年以上の有期懲役」(同項13号)

との規定があり,組織的な詐欺行為について,通常の刑法上の詐欺罪に比べて重い法定刑を科しています。
ここにいう「1年以上の有期懲役」とは,「1年以上20年以下の懲役」を指し,上述した刑法上の詐欺罪と比べても,法定刑が明らかに重くなっていることが分かるでしょう。

~組織的犯罪における弁護士の活動~

組織的詐欺罪というくらいですから,通常の詐欺の共犯事件に比べても関与者が多いことが予想され,事件としては通常の詐欺罪の共犯事件よりもさらに複雑なものとなる可能性があります。
したがって,組織的詐欺に関与し,逮捕等されてしまった場合には,専門性を有した弁護士によるサポートが必要不可欠なものとなるといえます。

また,組織的詐欺罪は故意犯であることから,組織的に行われた詐欺行為組織的犯罪処罰法によって刑法犯より重く処罰するためには,当該詐欺行為が組織・団体によって行われていることの認識が必要になってきます。
末端の構成員ほど,こういった認識は薄くなると考えられることから,逮捕されてしまった当該被疑者が,どのような態様の関与を行っていたか等を詳しく本人などから聞き取る必要があります。
そのために,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,初回接見サービスなど逮捕された直後から弁護士によるサポートを得ることのできるサービスも提供しています。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,組織的な詐欺を含む詐欺事件を多数扱う刑事事件専門の法律事務所です。
通常の法律事務所では民事事件を中心に扱うことが多いですが,弊所は刑事事件のみを担当するプロフェッショナルである弁護士を集めた法律事務所です。
組織的詐欺事件逮捕された方のご家族・お知り合い等は,年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)まで,早急にお問い合わせください。

2項詐欺罪・他人名義のクレジットカード詐欺

2019-10-10

2項詐欺罪・他人名義のクレジットカード詐欺

2項詐欺・他人名義のクレジットカード詐欺について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
Aは,宿泊施設において,東京都豊島区在住のVという他人名義のクレジットカードを使って,当該施設に宿泊した。
Vが利用した覚えのない宿泊施設の利用料をクレジットカード会社から請求されたのに気づいたことをきっかけに警視庁巣鴨警察署に相談。
後日,捜査を行った警視庁巣鴨警察署の警察官は,Aを詐欺罪の疑いで任意で取調べ・事情聴取を行った。
そこでAは,詐欺事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実をもとにしたフィクションです。)

~他人名義のクレジットカードの使用と詐欺罪~

本件では, Aは他人名義のクレジットカードを使って宿泊施設を利用しています。
このような場合,具体的にはどのような犯罪が成立するのでしょうか。
クレジットカードの入手方法によっては,窃盗罪や占有離脱物横領罪の成否も問題になりますが,本稿ではまずは宿泊行為を中心に解説することとします。

まず,刑法は246条において詐欺罪についての規定を置いています。
同条1項は,「人を欺いて財物を交付させた者」を詐欺罪にする旨定めています(いわゆる1項詐欺)。
さらに同条2項により,「人を欺いて」「財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者」も詐欺罪に問われることになります(いわゆる2項詐欺)。
本件においてAが,「人を欺いて」詐取したといえるのは,具体的な金銭等の「財物」ではなく,宿泊サービスという「財産上…の利益」であり,本件では2項詐欺の成否が問題となります(もっとも,1項詐欺2項詐欺で法定刑などに違いはありません。)。
そして,一般にクレジットカード加盟店は,クレジットカードの使用の際に本人確認義務を負うこととされており,この本人確認に対して本人と偽りクレジットカードを使用する行為は,「人を欺いて」「財産上…の利益を得」たものとして2項詐欺が成立する可能性があるのです。

なお,Aが宿泊する際に,伝票等に名義を偽り署名した場合(Aがクレジットカード名義人を装って署名した場合など)は,私文書偽造及び同行使罪(刑法159条1項・161条1項)が成立しうることにも注意が必要です。

~2項詐欺罪における弁護活動~

この点,弁護士としては,まずは当該クレジットカードの入手経路を確認する必要があります。
判例(最高裁平成16年2月9日決定)は,他人名義のクレジットカードを使用していたとしても,これが近親者等の同意に基づくものであった場合には,詐欺罪が成立しない余地を認めているとも考えられるためです。
したがって,そのようなケースと認められる場合には,Aに詐欺罪等は成立しない旨を主張していく可能性が考えられます。

もっとも,このようなケースが刑事事件として捜査の対象になるのは稀であると考えられ,別の可能性にも十分に留意する必要があります。
たとえば,仮にクレジットカードを窃盗罪等の犯罪行為によって取得していた場合には,この前提行為も捜査対象となりうることから,弁護士との十分な話し合いが重要となってきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,詐欺事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
詐欺罪(刑法246条)は,「10年以下の懲役に処する」と懲役刑のみを定めており,他の犯罪との関係や前科・前歴等から最悪の場合には懲役刑の実刑判決を受けてしまう可能性があります(すでに執行猶予付判決を受けているか否かも極めて重要です。)。
また,場合によっては,警察が逮捕に踏み切る可能性も否定できません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には,詐欺罪などの財産犯の弁護活動を多く経験した弁護士が多数所属しております。
詐欺事件で取調べ・事情聴取等を受けた方は,365日年中無休の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)まで,お早めのお電話をおすすめいたします。
刑事事件専門の弁護士による初回無料相談サービス等をご用意しておりますので,まずは上記フリーダイヤルまでお問合せください。

特殊詐欺(現金等送付型)における受け子の罪②

2019-10-06

特殊詐欺(現金等送付型)における受け子の罪②

福岡県朝倉市の大学に通うA君(21歳)は、あるバンドグループに所属していました。
バンドグループにはAさんの他に、大学のOBであるB(30歳)、同じくOBのC(25歳)と同級生のD、Eが所属していました。
A君は学業やアルバイト、就職活動などでしばらくバンド活動に参加していませんでしたが、アルバイトの休みが取れたので久しぶりにバンド活動を再開することにしました。
すると、Aさんは年長のBさんから「久しぶり!元気だったかい?」「実は、A君がいない間、俺たち4人で新しい活動を始めることにしてさ。」「活動で得た金はバンド活動の費用に充てようと思っているんだけど参加してみない?」などと言われました。
A君は、バンド活動のためならと思いこれを承諾したところ、Bさんから「では、福岡県朝倉市の部屋に荷物が送られてくるので受け取ってくれ。」と言われ、部屋の鍵を渡されました。
A君は、鍵を開け荷物が届くのを待っていると部屋のベルが鳴りました。
A君は玄関ドアを開けるやいなや、対面した男性から「福岡県朝倉警察署だ。詐欺未遂罪で逮捕する。手を前に出して。」などと言われました。
そしてA君は何が何だか分からないまま福岡県朝倉警察署に連行されてしまいました(この後、バンドグループはある詐欺組織から委託を受けて詐欺活動(Bさん、Cさんはかけ子、Dさん、Eさんは受け子)をしていたことが判明し、全員が逮捕されました。)。
(フィクションです。)

~特殊詐欺と承継的共同正犯~

前回の「特殊詐欺(現金等送付型)における受け子①」では、特殊詐欺の「現金等送付型」において、「受け子」が詐欺罪の一部しか加担していない(つまり、現金等の受領行為しか担当していない)のに、なぜ、(かけ子らと同様に)詐欺未遂罪に問われるのか?という問題提起に対し、「承継的共同正犯」という理論を用いて解説しました。
今回は、この点に関する参考となる最高裁判所の決定(平成29年12月11日)がありますから以下でご紹介します。

事例の概要は以下のとおりです。

平成27年2月下旬頃、特殊詐欺グループのBが会社員のふりをして被害者Vに電話をかけ、必ず当たるロト6に当選したこと、特別抽選にはX銀行の審査が必要であることを告げました。
また、同じグループのCがX銀行の審査員のふりをしてVに電話をかけ、住宅ローンや定期預金の有無を尋ねた上、後日、審査に通った旨をVに告げました。
その上で、3月下旬頃、Vから電話を受けたBは、Vに特別抽選に参加するにはX銀行にお金を払わなければならない旨を言い、Vに指定した先に現金合計150万円を送付させました。

そして、Bは、3月16日、再びVに電話し、150万円のうち100万円は銀行への振り込みが間に合わなかったこと、その100万円はBが立て替えたこと、今回は特別抽選には参加できず、今度の特別抽選に参加するためひとまず150万円が必要なこと、を言いました(本件欺罔行為)。
これを聞いたVは息子に相談したところ、「詐欺の被害に遭っている。」と言われ警察にも相談したところ、3月23日、Bらの話が嘘だったことが判
明しだまされたことに気づきました。Vは、警察から「だまされたふり作戦」に協力してほしいなどと言われました。

3月24日午前10時3分頃、BはVに電話しました。その際、VはだまされたふりをしてBに現金を準備した旨を言いました。
同日午前10時35分頃、BはVに電話で現金の送付先や宛名を伝え、現金を入れた荷物を配達時間を指定して宅配便で送るよう指示しました。
これを受けてVは、同日午後0時40分頃、コンビニから不要な本を詰めた荷物を指定された場所宛に送りました。

その一方で、A(本件被告人)は、3月24日、知人からの紹介で本件荷物の受け取り依頼があったのでこれを承諾し引き受けました。
実は、Aは、これまでにも氏名不詳者から指示のあった場所・時間に他人の名前を使って荷物を受け取り、受け取った荷物を知人に渡すことで1回、5000円から1万円の報酬を受け取る仕事を数回引き受けていました。
Aは、3月25日、指定された場所で待機し、他人の名前を使って荷物を受け取ると、配達員を装った警察官に詐欺未遂罪の現行犯で逮捕されました。

~最高裁は「承継的共同正犯」を採用したか?~

最高裁は職権で次のように判示しています。

A本件詐欺につき、共犯者による本件詐欺行為がされた後、だまされたふり作戦が開始されたことを認識せずに、共犯者らと共謀の上、本件詐欺を完遂する上で本件詐欺行為と一体のものとして予定されていた本件受領行為に関与している。
そうすると、だまされたふり作戦の開始いかんにかからわず、Aは、その加行前の本件詐欺行為の点も含めた本件詐欺につき、詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当である。

したがって、「本件につき、Aが共犯者らと共謀の上被害者から現金をだまし取ろうとしたとして、共犯者による欺罔行為の点も含めて詐欺未遂罪の共同正犯の成立を認めた原判決(高裁判決)は、正当」である、としました。

以上からすると、最高裁が承継的共同正犯の理論を採用したのかどうかはっきりとは分かりませんが、「本件詐欺につき、共犯者による本件詐欺行為がされた後、だまされたふり作戦が開始されたことを認識せずに、共犯者らと共謀の上、本件詐欺を完遂する上で本件詐欺行為と一体のものとして予定されていた本件受領行為に関与している。そうすると、だまされたふり作戦の開始いかんにかからわず、Aは、その加行前の本件詐欺行為の点も含めた本件詐欺につき、詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負う」と判示していることからすると、詐欺罪の承継的共同正犯の成立自体は認めているものと思われます。
なお、この決定の後、被告人に対する有罪判決(懲役3年、執行猶予5年)が確定しています(地裁では無罪、高裁で有罪)。

こういった法律の専門知識を基に刑事事件の見通しや手続きを考えることは、一般の方のみでは難しいことも多いです。
遠慮なく弁護士の相談を利用して、今後の活動にいかしましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,特殊詐欺事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。
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特殊詐欺(現金等送付型)における受け子の罪①

2019-10-02

特殊詐欺(現金等送付型)における受け子の罪①

福岡県朝倉市の大学に通うA君(21歳)は、あるバンドグループに所属していました。
バンドグループにはAさんの他に、大学のOBであるB(30歳)、同じくOBのC(25歳)と同級生のD、Eが所属していました。
A君は学業やアルバイト、就職活動などでしばらくバンド活動に参加していませんでしたが、アルバイトの休みが取れたので久しぶりにバンド活動を再開することにしました。
すると、Aさんは年長のBさんから「久しぶり!元気だったかい?」「実は、A君がいない間、俺たち4人で新しい活動を始めることにしてさ。」「活動で得た金はバンド活動の費用に充てようと思っているんだけど参加してみない?」などと言われました。
A君は、バンド活動のためならと思いこれを承諾したところ、Bさんから「では、福岡県朝倉市の部屋に荷物が送られてくるので受け取ってくれ。」と言われ、部屋の鍵を渡されました。
A君は、鍵を開け荷物が届くのを待っていると部屋のベルが鳴りました。
A君は玄関ドアを開けるやいなや、対面した男性から「福岡県朝倉警察署だ。詐欺未遂罪で逮捕する。手を前に出して。」などと言われました。
そしてA君は何が何だか分からないまま福岡県朝倉警察署に連行されてしまいました(この後、バンドグループはある詐欺組織から委託を受けて詐欺活動(Bさん、Cさんはかけ子、Dさん、Eさんは受け子)をしていたことが判明し、全員が逮捕されました。)。
(フィクションです。)

~現金等送付型の特殊詐欺と受け子~

オレオレ詐欺をはじめとする特殊詐欺では、巧妙な事件ほど主犯格のメンバーは表に出てきません。
したがって、逮捕される者の多くは、犯行の矢面に立たされた「受け子(特殊詐欺などで現金などを受け取る役割の者)」です。
しかし、その「受け子」はときに、詳細を聞かされないまま犯行に加担させられることがあります。

特殊詐欺においては、かつては現金を銀行口座に振り込ませる「振込型」が一般的でした。
しかし、最近では、金融機関による防止策が講じられたことなどもあり、

・被害者から直接現金等を受け取る「現金等手交型」
・被害者に宅配便やレターパックなどを利用して現金等を送付させる「現金等送付型」

の手口が多いと言われており、「受け子」の多くもこの手口に加担させられています。
本件のA君は、このうち「現金等送付型」に加担し逮捕されたようです。

~詐欺罪の成立要件~

ところで、特殊詐欺で適用される詐欺罪は刑法246条に規定されています。

刑法246条
1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人に得させた者も、同項と同様とする。

特殊詐欺で適用されるのは専ら「1項」です。

1項を分かりやすくすると、詐欺罪は、客観的には、①欺罔行為(騙す行為)→②錯誤(被害者が騙されること=被害者の認識が客観的事実と一致しない状態)→③処分行為による財物の移転(交付行為=被害者が現金等を郵送するなど)→④財産上の損害という一連の流れが認められ、主観的には、①~④までの「故意(認識)」が存在してはじめて成立する罪です。

~現金等手交型、現金等送付型の受け子と詐欺罪~

このうち、現金等手交型の受け子については被害者と直接対面していることから、比較的容易に①の欺罔行為を認定されてしまいます。
他方で、現金等送付型の場合、受け子は宅配便等の受領行為に関与しているのみで、それだけでは①の欺罔行為を認定することが困難です。

そこで、なぜ、受領行為しか行っていないAさんが詐欺(未遂罪)で逮捕されたのかという疑問が生じます(なお、受領行為を①の欺罔行為の一部、とする考え方もありますが、この考え方に基づいてもやはり同様の疑問が生じます)。

~承継的共同正犯という理論~

承継的共同正犯は「共同正犯(刑法60条)」の仲間です。
たとえば、AさんがVさんをナイフで脅し財布を奪い取った(強盗罪(刑法236条1項))とします。
そして、それを見ていたBさんがAさんから財布を受け取ったという場合、Bさんは強盗罪の「暴行」は行っていませんが、Aさんと同様、強盗罪に問われます。
このように、先行者(Aさん)が実行行為(強盗罪における「暴行」)に着手し、いまだその行為の全部が終了しない段階で、後行者(Bさん)が先行者との間で意思を通じ、それ以後は共同して犯罪を実現する場合を「承継的共同正犯」といいます。
確かに、本件のA君も、詐欺の一部にしか加担していませんが、この「承継的共同正犯」の理論によって詐欺未遂罪の被疑者として逮捕されているのです。

特殊詐欺事件では、こういった複雑な法的理論を含めて検討しなければいけない場面も登場することが考えられます。
弁護士であれば、こういった専門的な理論や知識を熟知していますから、まずは相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,特殊詐欺事件をはじめとする刑事事件少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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すり替え詐欺事件における詐欺罪と窃盗罪

2019-09-28

すり替え詐欺事件における詐欺罪と窃盗罪

架け子であるXらは、警察官になりすまし,不正使用の疑いがあるためキャッシュカードを確認する必要があるなどと,虚偽の電話をかけ、京都府舞鶴市にあるV宅を訪問する旨の約束を取りつけた。
Xらと共謀した受け子であるAは,予定どおり警察官になりすまし,Vに封筒にキャッシュカードを入れさせた。
Vは玄関先に封筒を置き,その場を一旦離れたが,Aはそのままキャッシュカードの入った封筒を持ち去った。
Vから通報を受けた京都府舞鶴警察署の警察官は,Aを詐欺罪の容疑で逮捕した。
Aの家族は,詐欺事件に強いと評判の弁護士に逮捕されたAとの接見を依頼し,Aは接見に来た弁護士に,Aの事件では詐欺罪ではなく窃盗罪が成立する可能性があるという話を聞いた。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)

~詐欺罪と窃盗罪の交錯~

本件では,Aはいわゆるすり替え詐欺行為を行ったことにより,詐欺罪の容疑で逮捕されています。
もっとも,本件の事例のような場合,Aに接見した弁護士が話しているように,事実認定によっては詐欺罪ではなく窃盗罪が成立し得るケースであると考えられます。
詐欺罪には罰金刑が存在しませんが,窃盗罪には罰金が存在し,弁護活動の方針にも一定の影響を与えることになると思われます。
したがって以下,詐欺罪窃盗罪がどのように区別されるかについて解説します。

刑法246条1項は「人を欺いて財物を交付させた者」を詐欺罪とし,金銭のような「財物」をだまし取った場合に成立する犯罪として規定されています。
つまり詐欺罪の成立にはだますことが必要であり,あくまで被害者の意思に基づいて財物が交付されたことを必要とする犯罪なのです。

これに対し,窃盗罪は被害者の意思に反して財物を奪う犯罪であり,万引きや自転車窃盗等の典型的な窃盗行為を想定すれば,このことはすぐに理解することができると思います。
刑法235条は,「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪」にするとし,条文上も被害者の意思による交付などを想定していないことは明らかです。

したがって,本件のような事例では,Vが玄関先に置いた封筒をAが自由に支配し受領できる状況に置くという意思があったかどうかが問題となり,Vにそのような意思がなくAが隙を見て持ち去ったというような場合は詐欺罪ではなく窃盗罪が成立すると考えられます。

~弁護士との相談の重要性~

仮に詐欺罪の容疑で逮捕されたとしても,検察官には起訴裁量があることから,窃盗罪によって起訴されることもありえます。
どの財産犯が成立するかについては,検察官のような訴追権を独占する権限を持つ立場の人間にとっても必ずしも自明とはいえません。
したがって,事前にあらゆる可能性を検討し,様々な犯罪の成否について検討することが重要になってきます。
例えば,上述したように詐欺罪には罰金刑が存在しませんが,窃盗罪には罰金刑が存在します。
こういった法定刑一つとっても,成立しうる犯罪によって異なることから,専門性を持った弁護士に相談することが重要になってくるのです。

刑事事件専門の弁護士に相談することによって,事前にどのような弁護活動を行うことが可能であり,どのように事件が展開していくかについての見通しを持つことができます。
これは逮捕等されてしまった本人のみならず,そのご家族にとっても大きなメリットとなります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,詐欺事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
特殊詐欺においては,受け子として受動的な立場で犯罪に関与してしまうというケースも少なくありません。
詐欺罪あるいは窃盗罪の容疑で逮捕された方のご家族は,年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)までお電話ください。
刑事事件専門の弁護士による「初回無料法律相談サービス」や,弁護士が警察署等に直接出向く「初回接見サービス」など各種サービスをニーズに合わせてご案内差し上げます。

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