詐欺未遂罪に問われる受け子

詐欺未遂罪に問われる受け子

詐欺未遂罪に問われる受け子のケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

神戸市垂水区に住むAさん(20歳)は、知人Bさんから、「報酬として10万円をやるから、俺の代わりにVさんから荷物を受け取ってくれ。」と頼まれました。
Aさんは、「自分で受け取ればいいのに、何か怪しい仕事だな」とは思いつつも、「10万円もらえるなら引き受けよう」と思い、Bさんの頼みを承諾しました。
そして、Aさんは指定された当日、神戸市垂水区にあるVさん方へ向かい、Vさんから荷物を受け取ろうとした瞬間、だまされた振り作戦でVさん方に待機していた兵庫県垂水警察署の警察官により詐欺未遂罪の現行犯で逮捕されてしまいました。
Bさんから電話を受けたVさんがBさんの話が嘘であることを見破り、予め兵庫県垂水警察署に相談していたようです。
逮捕の連絡を受けたAさんの母親は、弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです。)

~ 詐欺未遂罪ってどんな罪? ~

詐欺罪は刑法246条に規定されています。

刑法246条
1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人に得させた者も、同項と同様とする。

特殊詐欺で適用されるのは専ら「1項」です。

1項を分かりやすくすると、詐欺罪は、客観的には、①欺罔行為(騙す行為)→②錯誤(被害者が騙されること=被害者の認識が客観的事実と一致しない状態)→③処分行為による財物の移転(交付行為=被害者が現金等を郵送するなど)→④財産上の損害、の一連の流れがあり、主観的には、犯人の①~④までの「故意(認識)」が必要ということになります。
①から④までたどってはじめて詐欺罪が成立します。

他方、詐欺未遂罪は、犯罪の「実行に着手」してから成立します。
では、詐欺罪における「実行の着手」はどの時点で認められるのかというと①の「欺罔行為」が行われた時点です。
本件では、予めBさんがVさんに電話をするなどしてこの①欺罔行為が行われたことが推測されます。
そして、VさんはBさんの嘘を見破り②錯誤に陥っていないため、詐欺罪ではなく、詐欺未遂罪に問われるというわけです。

~ 詐欺行為の実行に着手しなくても罪に問われる受け子 ~

もっとも、通常、受け子は、詐欺罪の実行の着手、つまり欺罔行為は行いません。
しかし、この欺罔行為をBさんとAさん(受け子)とで「共同して実行した」といえる場合には、欺罔行為を行わなかったAさんもBさんと同様の罪に問われます。

刑法60条
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

また、受け子であるAさんは、VさんがBさんの話を嘘と見破った後に犯行に加担しているとも考えられます。
そうした場合、Aさんに詐欺未遂罪を問えるのかも問題となります。
この点、従来は、ある犯罪行為が実行された後に共犯者が加担したという場合、共犯者は加担する以前に行われた行為については責任を負わないとするのが一般的でした。
しかし、判例(最決平成29年12月11日事件)は、「被告人は、本件詐欺につき、共犯者による本件欺罔行為がされた後、…共犯者らと共謀の上、本件詐欺を完遂する上で本件欺罔行為と一体のものとして予定されていた本件受領行為に関与している。そうすると、…被告人は、その加功前の本件欺罔行為の点も含めた本件詐欺につき、詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当である」として、いわゆる受け子であった被告人に詐欺未遂罪の成立を認めています。

受け子として詐欺事件に関わってしまった場合、過去の裁判所の判断等を踏まえて見通しや今後の対応を考える必要があります。
それを一般の方だけで行うには困難が伴いますので、まずは弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺事件をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
ご家族、ご友人が詐欺事件で逮捕されお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までご連絡ください。
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