リクルーターと詐欺罪の共謀共同正犯
リクルーターと詐欺罪の共謀共同正犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
東京都千代田区に住んでいるAさんは、友人らと一緒に特殊詐欺グループを結成し、特殊詐欺を行っていました。
Aさんは、いわゆる「受け子」や「出し子」と呼ばれる役割を担う人を募る、リクルーターの役割をしていました。
東京都千代田区で特殊詐欺の被害が多発したことから、警視庁丸の内警察署が捜査を開始し、Aさんは詐欺罪の容疑で逮捕されました。
Aさんは、「自分は直接詐欺行為をしたわけでもないのに詐欺罪で逮捕されるのか」と考え、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・リクルーターと詐欺罪の共謀共同正犯
前回の記事では、特殊詐欺のリクルーターについて取り上げた後、刑法の「共謀共同正犯」という考え方が適用されるということ、「共謀共同正犯」という考え方があることを紹介しました。
今回の記事では、「共謀共同正犯」であるといえるための条件はどういったものなのかということを確認していきます。
「共謀共同正犯」にいう「共謀」とは、2人以上の物が特定の犯罪を行うため相互に他人の行為を利用・補充し合い、各自の範囲を実行に移すことを内容とする相談ないし協議を行い、合意に達することをいうとされています(最大判昭和33.5.28)。
この「共謀」の事実の有無が、自分の犯罪として行う認識でいたかどうか、各自間で意思の連絡があるかどうかといった事情の有無から判断されます。
そして、参加していた謀議で各自が一定程度重要な役割を果たしているかどうか、共同実行の意思(相互に他人の行為を利用・補充し合うことで犯罪を実行する意思)があるかどうか、共謀した複数人のうち1人以上がその犯罪を共謀に基づいて実行しているかどうかといったことにより、「共謀共同正犯」に当たるかどうかが判断されるのです。
今回の事例のAさんについて検討してみましょう。
今回のAさんは、あくまで「受け子」や「出し子」の勧誘を行うリクルーターであり、直接特殊詐欺の被害者を騙していたわけではなく、たしかに詐欺行為自体には関わっていないといえるかもしれません。
しかし、Aさんは、特殊詐欺グループの一員として、そのグループで特殊詐欺をすることを認識しながら、「受け子」や「出し子」という人員確保のためのリクルーターという役割を果たしています。
このことから、Aさんは特殊詐欺=詐欺罪にあたる犯罪行為を行うために他の特殊詐欺グループのメンバーと特殊詐欺の計画を立てていた=「共謀」していたと考えられます。
加えて、Aさんはリクルーターという「受け子」「出し子」を勧誘する立場であったことから、ある程度特殊詐欺グループの中でも実情を把握していた立ち位置であると予想され、謀議の中でも一定程度の役割があるものと考えられます。
また、Aさんは特殊詐欺をするということを認識しながらその実行のための「受け子」「出し子」を募っていたのですから、特殊詐欺という犯罪行為を他の特殊詐欺グループのメンバーと補充し合いながら実行する意思もあったと思われます。
こうしたことから、リクルーターをしていたAさんも、詐欺罪の「共同共謀正犯」として判断されたのだと考えられるのです。
特殊詐欺事件などで事件関係者が複数人いる場合、その関係性や果たした役割などによって、刑事事件の見通しや行うべき弁護活動も大きく変わってきます。
刑事事件の知識がない状態でそれらを判断することは困難ですし、リスクも伴うことですから、まずは法律の専門家である弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、特殊詐欺事件を含む詐欺事件についてのご相談・ご依頼も承っています。
ご相談者様の状況に合わせたサービスをご案内していますので、まずはお気軽にお問い合わせください。