特殊詐欺事件のリクルーターとは?

特殊詐欺事件のリクルーターとは?

特殊詐欺事件リクルーターとはどういったことなのかということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

東京都千代田区に住んでいるAさんは、友人らと一緒に特殊詐欺グループを結成し、特殊詐欺を行っていました。
Aさんは、いわゆる「受け子」や「出し子」と呼ばれる役割を担う人を募る、リクルーターの役割をしていました。
東京都千代田区特殊詐欺の被害が多発したことから、警視庁丸の内警察署が捜査を開始し、Aさんは詐欺罪の容疑で逮捕されました。
Aさんは、「自分は直接詐欺行為をしたわけでもないのに詐欺罪で逮捕されるのか」と考え、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・特殊詐欺のリクルーター

特殊詐欺は、今回の事例のAさんのように、複数人がグループとなって犯行をすることも多いです。
特殊詐欺グループでは、それぞれが役割を担っていることが多いです。
例えば、「受け子」と呼ばれる役割は被害者などからキャッシュカードや金銭を受け取る役割ですし、「出し子」と呼ばれる役割は被害者からだまし取ったキャッシュカードなどを用いてATMから金銭を引き出す役割を指します。
他にも、被害者に対して電話をかけて嘘の話をして騙す「かけ子」なども存在します。
これらのうち、特に、被害者に直接対面する「受け子」や、ATMなど防犯カメラに映る可能性の高い「出し子」は、自らの手がかりになる痕跡を残しやすいため、逮捕されやすい傾向にあります。
そのせいか、「受け子」や「出し子」はいわゆる「とかげのしっぽ」的に扱われることが多く、特殊詐欺グループの中心にいるメンバーが担うというよりも、アルバイトとして雇うといった手法で特殊詐欺グループに深くかかわっていない人が担うということが多いです。

こうした「受け子」「出し子」を勧誘する役割が、今回Aさんが担っていたリクルーターです。
リクルーターは、特殊詐欺をすることを分かっていながら「受け子」や「出し子」を勧誘してその役割を与えているケースが多いため、特殊詐欺グループの中心に近いと判断されやすい役割といえるでしょう。

・詐欺罪と「共犯」

特殊詐欺は、文字通り詐欺を行っているわけですから、刑法の詐欺罪が成立する犯罪行為です。

刑法第246条第1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

今回の事例のAさんは、特殊詐欺グループのリクルーターをしていますが、上述の通り、リクルーター特殊詐欺の「受け子」や「出し子」といった役割をする人を募る役割です。
リクルーターをしているだけであれば、実際にAさんが直接「人を欺いて財物を交付させ」る行為をしていない=詐欺罪に当たらないのではないかと疑問に思うかもしれません。

しかし、Aさんは、特殊詐欺グループに所属し、他のメンバーと特殊詐欺をすることを認識しながら、特殊詐欺の「受け子」や「出し子」を勧誘しています。
こうした場合、刑法では「共同共謀正犯」という共犯の考え方が用いられることがあります。

まず、刑法には「共同正犯」という考え方があります。
一般に「共犯」という呼ばれ方でイメージされる「共犯」は、この考え方に当てはまるものでしょう。

刑法第60条
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

「正犯」とは、簡単にいうと「その犯罪をした人」ということです。
例えば、XさんとYさんが一緒に窃盗罪に当たる行為を実行した場合、XさんとYさんは共同正犯となり、どちら対しても窃盗罪が成立し、有罪となった場合には窃盗罪の法定刑である「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」の範囲で罰せられるということになるのです。

この条文だけ見ると、今回の事例のAさんのように、「直接詐欺行為に関わっていないのだから共同正犯ではないのでは?」と疑問が残るかもしれません。
ですが、共同正犯の考え方の中には、先ほど挙げた「共同共謀正犯」という考え方が含まれると考えられています。

共同共謀正犯」とは、複数人で犯罪の実行を共謀した場合、共謀に基づいてそのうち1人以上が犯罪を実行したのであれば、犯罪を共謀だけした者(犯罪の実行はしなかった者)を含めて正犯として扱うという考え方です。
「犯罪の実行を共同した者だけを共同正犯とする」としてしまうと、例えば犯罪を計画・指示した首謀者が正犯として扱われない構造となってしまうため、こうした考え方が取られていると思われます。
なお、犯罪をする意思を持っていなかった人をそそのかして犯罪実行の意思をもたせ実行させるといった場合には、刑法第61条の「教唆犯」という考え方によって処罰されますが、この場合下される刑の重さの範囲は正犯と同じです。
ただし、教唆犯の扱いはあくまで狭義の「共犯」であり、実際に自分に犯罪を企てている「共同共謀正犯」に当てはまるようなケースを自分で犯罪をした「正犯」扱いではなく単なる「共犯」とするには疑問が残るということなのでしょう。

では、その「共同共謀正犯」に当てはまる条件はどういったものなのでしょうか。
次回の記事で詳しく取り上げます。

特殊詐欺事件では、リクルーターなど、様々な役割の人が登場することも多く、事件の整理をするだけでも大変なことがあります。
事件の構造や見通し、必要な活動などを整理した上で把握しておくことは、今後の刑事手続に対応するためにも大切なことですから、疑問や不安は専門家である弁護士に相談・依頼することで解消しておきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、詐欺事件を含む幅広い範囲の刑事事件を取り扱っています。
特殊詐欺事件リクルーターなどで逮捕されお悩みの場合は、まずはお気軽にご相談ください。

 

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー