譲渡する目的で銀行口座を作る詐欺事件
東京都立川市に住むAさんは、高校時代の不良仲間Bさんから、振り込め詐欺を一緒にやらないかと誘われました。
最近は真面目に生活していたAさんは断りました。
しかし、なおもBさんから、「銀行口座を作るだけでいいから手伝ってくれないか。お礼もするから」と言われました。
Aさんは、「それくらいならいいか」と思い、自己名義で銀行口座を作った上で通帳とキャッシュカードをBさんに渡しました。
後日、Bさんが逮捕されたことをきっかけとして、Aさんも警視庁立川警察署で取調べを受けることになりました。
今後Aさんはどうなるのでしょうか。
(フィクションです)
~譲渡目的での口座開設には詐欺罪が成立~
Aさんは銀行口座を作ってBさんに譲り渡しただけで、銀行に損害が生じたわけではないとも思えますが、Aさんの個の行為には詐欺罪が成立する可能性があります。
刑法第246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
銀行口座が犯罪に利用されないよう、金融機関は口座開設時に本人確認することが義務付けられており、名義人本人が口座を利用することが前提とされています。
したがって、他人に譲渡することを隠して口座を開設すること自体が、名義人本人が利用するかのように「人を欺いて」、通帳やキャッシュカードといった「財物を交付させた」として、詐欺罪が成立する可能性があるわけです。
なお、こうした口座開設の場合、刑法上の詐欺罪だけでなく、いわゆる「犯罪収益移転防止法」にも違反する可能性が出てくることにも注意が必要です。
さらに、警察から捜査を受ける際には、口座開設を手伝っただけではなく、振り込め詐欺自体に直接かかわっていないか疑われることもありうるので、そちらに対しても注意が必要です。
~今後の刑事手続きの流れと弁護活動~
取調べのために呼び出されたAさんですが、このまま逮捕されないで捜査を受けることになる場合、何度か警察署や検察庁に呼び出されて取調べを受けることになると思われます。
その後、検察官がAさんを刑事裁判にかけると判断すれば(起訴)、刑事裁判がスタートし、自宅から裁判所に行って裁判を受けるという流れになるでしょう。
一方、悪質な事案と判断されると、逮捕されることも否定できません。
その場合、まずは最大3日間の身体拘束がなされます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして、検察官が勾留(こうりゅう)を請求し、裁判官が許可すれば、さらに最大20日間の身体拘束がされる可能性があります。
その後、検察官が起訴すれば、刑事裁判がスタートし、保釈が認められない限り、身体拘束が続く可能性があります。
そして裁判で無罪や執行猶予とならない限り、刑罰を受けることになります。
これらの手続に関し、弁護士は以下のような弁護活動を行うことが考えられます。
まず、逮捕されても、検察官が勾留請求しなければ、あるいは裁判官が勾留を許可しなければ、最初の3日間で釈放されます。
そこで検察官や裁判官に対し、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことなどを具体的事情に基づいて主張し、勾留を防ぎます。
また、逮捕されているかいないかにかかわらず、検察官が起訴しないという判断(不起訴処分)をすれば、刑事手続はそこで終わり、前科も付きません。
そこで、ご家族の監督が見込めることや本人が反省していること、前科がないこと、主犯格とまではいえないこと等々、有利な事情があれば出来る限り主張して、不起訴処分にするよう検察官に要請していきます。
そして起訴された場合も、本人に有利な事情を主張し、執行猶予などの軽い判決で済むよう弁護していくことになるでしょう。
~弁護士に相談を~
犯罪をしたとして捜査を受けると、本当に犯罪が成立するのか、刑事手続はどのように進んでいくのか等々、不安点が多いと思います。
また、取調べにはどう受け答えしたらいいのか、という点も不安かもしれません。
本当にやったことについては正直に述べて反省することが必要ですが、かかわっていない部分がある場合には、はっきりと否定することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする弁護士事務所です。
事務所での法律相談は初回無料で行っております。
また、逮捕されている場合は、ご家族などからご依頼いただければ、拘束されている警察署等にすみやかに接見に伺います。
法律相談や接見では、上記の不安点などにお答えいたします。
詐欺などで捜査を受けた、逮捕されたといった場合には、ぜひ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。