(事例紹介)他人の通帳・口座から現金をだまし取って詐欺事件に
~事例~
別の教諭が管理していた通帳などを使って現金を引き出しだまし取ったとして、詐欺などの罪に問われた元小学校教諭の男に対し、佐賀地裁は懲役2年6カ月、執行猶予4年の有罪判決を言い渡しました。
起訴状などによりますと、(中略)被告44歳は、小学校に勤めていた2021年12月から2022年1月にかけて、別の教諭が管理していた複数の通帳などを使い、他人名義の口座から現金合わせて215万円をだまし取ったなどとして、詐欺などの罪に問われていました。
7日、佐賀地裁で開かれた判決公判で、瀧田佳代裁判官は「1カ月足らずの間に犯行を繰り返し、手口は大胆かつ悪質。ギャンブルにのめり込み多額の借金を負った末、ギャンブルに勝ち借金の返済などに充てたいという身勝手かつ浅はかな理由で犯行に至った」などと指摘しました。
一方で、「被害額215万円全額を弁償し、事実を認め反省の態度を示している」などとして、懲役2年6カ月、執行猶予4年を言い渡しました。
(※2022年9月7日11:55FNNプライムオンライン配信記事より引用)
~他人の通帳・口座を利用した詐欺事件~
今回取り上げた事例では、他人の通帳などを利用して現金を引き出しだまし取ったという詐欺事件などで、被告人に懲役2年6ヶ月、執行猶予4年の判決が言い渡されています。
今回の被告人がどのようにして現金を引出しだまし取ったのかということは、報道の中では具体的に触れられていませんが、少なくとも詐欺罪が成立し、有罪判決となったようです。
詐欺罪は、刑法第246条に定められている犯罪で、「人を欺いて」「財物を交付させ」ることで成立する犯罪です。
刑法第246条第1項(詐欺罪)
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
このうち、「人を欺いて」という部分は、嘘をつけばよいということではなく、その「財物を交付させ」るにあたって重要な事実を偽り相手をだますことであると解されています。
すなわち、その事実が嘘であれば、相手が「財物を交付」しないであろうことについて嘘をつき、相手をだますということが求められます。
例えば、今回取り上げた事例で、被告人が他人の通帳や口座を自分の物であるかのようにふるまって銀行の窓口で預金を引き出したとします。
銀行窓口の職員としては、通帳や口座を持っている本人であると信じたからこそ、預金を引き出し渡すという「財物を交付」する行為をしますが、通帳や口座を持っている本人であるということが嘘であれば、預金を引き渡すことはしないでしょう。
こうした場合には、詐欺罪の「人を欺いて」という行為にあたる欺罔行為をして、かつそれによって預金という「財物」を交付させていることになるため、詐欺罪が成立することとなります。
報道の内容だけでは定かではありませんが、このように、「人を欺いて財物を交付させた」という事実が認められる行為があったために、今回の事例の被告人は詐欺罪で有罪となっていると考えられます。
今回の事例の報道では、被告人の起訴罪名について、「詐欺など」という表記がされています。
詐欺罪以外にも犯罪が成立していると考えられますが、例えば、現金を引き出すのに利用した通帳を他人から盗んでいるのであれば窃盗罪が成立しますし、他人のキャッシュカードを利用してATMで預金を引き出していれば、その行為にも窃盗罪が成立し得ることになります。
ネットバンキングなどを経由して他人の預金を勝手に移動させていた場合には、電子計算機使用詐欺罪などの成立も考えられます。
単に「他人の通帳や口座を利用して現金を引き出した」というだけでも、細かな事情によって成立する犯罪は異なりますし、複数の犯罪が成立することもあります。
どういった犯罪が成立するのかということも含めて、弁護士に相談して早い段階から見通しを把握しておくことをおすすめします。
また、今回の事例では、被告人は執行猶予付きの判決を言い渡されていますが、その理由として、被害額を全額弁償しているという事実が挙げられています。
詐欺事件などの財産犯では、被害額をきちんと賠償できているのかという事実も非常に重要です。
特に、執行猶予を目指す場合などはこうした被害者対応が重要となってきますから、こちらも早期から弁護士に相談しておくことが大切でしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、詐欺事件についてご相談・ご依頼を受け付けています。
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