(事例紹介)給付金詐欺事件で実刑判決
~事例~
新型コロナウイルスの影響を受けた事業者に支給される国の持続化給付金を、うその申請でだまし取ったとして詐欺の罪に問われた被告に対し、高知地方裁判所は「犯行は組織化された詐欺グループによる周到な犯行計画に基づく巧妙かつ、こうかつなものだ」などとして、懲役4年の実刑判決を言い渡しました。
(中略)
…被告(32)はおととし、ほかの男らと共謀し、新型コロナウイルスの影響で売上が減ったとするうその書類を作って申請し、国の持続化給付金合わせて2300万円をだまし取ったとして詐欺の罪に問われていました。
(中略)
そのうえで「被告は共犯者に指示したりするなど、一連の犯行を繰り返し行わせたまさに首謀者の1人と目されるべき立場だ」と述べて、懲役4年の実刑判決を言い渡しました。
(※2022年5月17日13:07NHKNEWSWEB配信記事より引用)
~給付金詐欺事件と刑罰~
昨今、特殊詐欺事件などに代表される詐欺事件の報道は途絶えることがありません。
最近では、コロナ禍に際して設置された給付金制度を悪用した、いわゆる給付金詐欺事件も多く報道されているところです。
給付金詐欺には、被害者に給付金を貰えると嘘をついて逆にお金を騙し取る手口のものと、給付金を貰う資格がないにもかかわらず資格があるように偽って給付金を貰う手口のものが見られます。
今回取り上げた事例は、後者の手口による給付金詐欺です。
給付金を貰う資格がないにもかかわらず、貰う資格があるように見せかけて給付金を貰うという給付金詐欺では、詐欺行為の被害者は国や地方自治体となります。
被害者が国や地方自治体である場合、たとえ返金による被害弁償ができたとしても、個人相手の刑事事件とは異なり、示談を締結したり、お許しの言葉をいただいたりということは非常に困難です。
また、国や地方自治体を相手とした給付金詐欺事件では、1回で給付される給付金の額がある程度まとまった額となっていたり、継続的に給付される給付金になっていたりと被害金額が高額になりがちです。
こうした事情もあり、給付金詐欺事件、特に首謀者の立場にいる者には、実刑判決など厳しい判決が下る可能性があるのです。
今回取り上げた事例も、嘘の申請によって給付金を2,300万円受給したという給付金詐欺事件であり、被告人が給付金詐欺事件の中心にいたという判断が下された結果、懲役4年の実刑判決が出たということでした。
今回取り上げた事例以外にも、
・大津地裁で、新型コロナウイルス対策の持続化給付金2,000万円を組織的にだまし取ったとして、男性が懲役4年6月の実刑判決を言い渡された事例(2022年3月18日18:36京都新聞配信記事より)
・松江地裁で、個人事業主を装って虚偽の事業収入などの申告を行い、給付金1,100万円をだまし取ったとして、男性が懲役3年の実刑判決を言い渡された事例(2022年3月30日20:26山陰中央新報デジタル配信記事より)
・東京高裁で、虚偽の申請により新型コロナウイルス対策の家賃支援給付金など1,550万円をだまし取ったとして、男性が懲役2年6月の実刑判決を受けた1審の判決が指示され、控訴が棄却された事例(2022年5月24日JIJI.COM配信記事より)
といった報道が見られます。
いずれも被害金額が1,000万円を超える高額であり、報道によれば、それぞれの被告は給付金詐欺事件の中心的存在であった者であるとされていますが、実刑判決という厳しい処分が下っています。
給付金詐欺事件は、コロナ禍であるという事情も重なり、世間の注目度も高い刑事事件であり、こうした厳しい判断が下されることも充分考えられる事件なのです。
こうした高額の詐欺事件にあたっては、被害弁償をどれだけできるのか、そうした事情を踏まえて予想される刑罰はどれほどのものになるのか、実刑判決を回避したり少しでも短い期間の刑罰にしたりするにはどういったことが必要かといった検討が必要です。
加えて、そういった検討・話し合いには事件の当事者である本人だけでなく、ご家族との話し合いが必要な場合も多いと考えられますが、給付金詐欺事件が発覚してから逮捕され、ご家族とも事件についての話し合いができていない場合も多々存在します。
もちろん、在宅で捜査されている場合でも、当事者だけでは見通しなどの判断が付きづらいでしょう。
逮捕の有無にかかわらず、まずは刑事事件の専門知識をもつ弁護士に相談されてみることが大切です。
刑事事件・少年事件を多数取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、給付金詐欺事件についてのご相談・ご依頼も承っています。
お困りの際は、お気軽にご相談ください。