(事例紹介)誤振込された給付金を使って電子計算機使用詐欺罪

(事例紹介)誤振込された給付金を使って電子計算機使用詐欺罪

~事例~

山口県阿武町が新型コロナウイルス対策の臨時特別給付金4630万円を誤って住民に振り込み返還を求めている問題で、県警は18日、誤給付金と知りながら別口座に移し替えて不法に利益を得たとして電子計算機使用詐欺の疑いで、住民(中略)を逮捕した。
(※2022年5月18日22:44京都新聞配信記事より引用)

~誤振込されたお金を使ってしまうと犯罪に~

現在、世間で大きな話題となっている今回の事例ですが、問題となっているのは、「自分の口座に誤振込された給付金だ」と認識しながらその給付金を使ってしまったという行為です。
自分の預金口座に何らかの手違いで誤振込されたお金を、誤振込された経緯を知っていながら使うことは、その態様によって様々な犯罪に当たる可能性のある行為です。

例えば、よく誤振込に関連する刑事事件で問題となるのは、詐欺罪の成立についてです。

刑法第246条
第1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

誤振込されたお金を誤振込されたものだと知っている人が、その事情を言わずに銀行の窓口で預金の払い戻しを受けたという事例では、誤振込があったということを受取人(誤振込されたお金を受け取った人)が銀行に告知する義務があると判断されました。
そして、誤振込があったことを銀行に告知せずにそのお金を払い戻しさせる行為は、詐欺罪の「人を欺」く行為に当たり、その結果銀行から払い戻いを受ける=「財物を交付させ」ることから、詐欺罪が成立するとされたのです(以上、最決平成15.3.12参照)。

この詐欺罪のケースから今回の事例を見てみましょう。
今回話題になっている電子計算機使用詐欺罪とは、刑法第246条の2に定められている犯罪です。

刑法第246条の2
前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。

簡単に言えば、先ほど紹介した詐欺罪が「人を」欺いて財物を交付させる犯罪であるのに対し、電子計算機使用詐欺罪は「電子計算機」=コンピューターを欺いて不法の利益を得る犯罪であるといえます。
ですから、ネットバンキングなどを使用してオンライン上で誤振込決済したり引き出したりしたような場合には、電子計算機使用詐欺罪となり得るということなのです。

今回取り上げた給付金が誤振込された事例では、オンラインカジノにオンライン上でお金を移動させたということから、電子計算機使用詐欺罪にあたると判断されたのでしょう。

このほか、誤振込のお金を使う態様によっては窃盗罪(刑法第235条)にあたると判断される場合もあります。

今回の事例のように、誤振込されたお金をそうと知りながら使ってしまうと刑事事件に発展してしまうことが予想されます。
どういった態様でお金を使ってしまったのかによっても成立する犯罪が異なりますし、成立する犯罪が異なれば処分の見通しも変わってきます。
こういった専門的な部分は専門家のサポートを受けながら理解していくことが大切です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、詐欺事件を含む刑事事件のご相談・ご依頼を受け付けています。
詐欺事件などの刑事事件にお困りの際は、一度弊所の弁護士までご相談ください。

 

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー