(事例紹介)キセル乗車で電子計算機使用詐欺罪に
~事例~
キセル乗車をしたとして、京都府警中京署は3日、電子計算機使用詐欺の疑いで、宇治郵便局(京都府宇治市)に勤務する課長の男(51)=京都市右京区、別の同罪で起訴=を再逮捕した。
府警は、男が通勤時にキセル乗車を繰り返していたとみている。
再逮捕容疑は1月11、12日、計2回キセル乗車し、正規運賃との差額計780円を支払わなかった疑い。
(中略)
同署の説明では、男は通勤に京都市営地下鉄などを利用し、自宅や勤務先近くの駅の間で、改札口を出入りする際に2種類の回数券を使い分けるなどして乗車区間をごまかしていたという。
(※2022年2月3日21:38京都新聞配信記事より引用)
・キセル乗車と詐欺事件
キセル乗車とは、2枚の切符や定期券・回数券などを利用して、定められた運賃を支払わずに不正に安い運賃で電車を利用することを指します。
たばこを吸う際の「煙管(キセル)」が名前の由来となっており、キセルの構造が、両端だけ金属でその間の部分が違う素材となっていることから、出発地と目的地の両端の駅の分の運賃しか払わずに間の駅の運賃を支払わないという手口の不正乗車のことをそのキセルに例えてキセル乗車というようになったということなのです。
このキセル乗車については、詐欺罪や今回取り上げた事例の報道にもある電子計算機使用詐欺罪となることがあります。
刑法第246条(詐欺罪)
第1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
第2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
刑法第246条の2(電子計算機使用詐欺罪)
前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。
キセル乗車の場合、本来支払うべき運賃を、複数枚の切符や定期券・回数券を利用することでごまかしているということになります。
例えば、駅の改札で駅員に切符等を見せて通過する場合には、駅員という人を騙してそれによって本来支払うべき運賃を支払わなくてよいという状態にしている=「人を欺いて」「財産上不法の利益を得」ていることになりますから、詐欺罪となり得ます。
また、今回取り上げた事例のように、自動改札機を通ったキセル乗車のケースでは、騙す相手は人ではなく機械ということになりますが、その場合には報道にもあるように電子計算機使用詐欺罪が成立し得るということになります。
今回取り上げた事例では、報道によると逮捕された男性はすでに別の件の電子計算機使用詐欺罪の容疑で起訴されているとのことですが、繰り返しキセル乗車をしていたのであれば、それぞれについて電子計算機使用詐欺罪が成立することになります。
キセル乗車をしていた期間や回数が長くなる・多くなるというケースでは、取り上げた事例のように再逮捕・再勾留による身体拘束が長引くことも考えられますし、被害金額も多額になることも予想されます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、キセル乗車に関連した詐欺事件についての相談・依頼も受け付けています。
詐欺事件に関してお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。