兵庫県加東市の保険金詐欺事件
~ケース~
兵庫県加東市在住のAさんは古くなった自宅の建て替えを検討していた。
しかし,自宅の建て替えには現存の住居の取壊し費用がかかってしまい,思っていたよりも高額になることが判明した。
そこでAさんは自宅が火災保険に入っていることを思い出し,放火の被害にあった風に装い,保険会社から保険金を受け取り,保険金によって自宅の立て直しをしようと考えた。
Aさんは家財道具などを運び出し,平穏に自宅の建て替えをするように装っていた。
ある日の深夜,Aさんは自宅に放火し,Aさんの自宅は全焼し,Aさんは保険会社に保険金の請求をした。
しかしその後,保険会社による調査の結果,放火はAさんの自演であったことが判明し,Aさんは兵庫県加東警察署に詐欺罪の疑いで逮捕された。
(フィクションです)
~保険金詐欺~
詐欺罪は刑法246条に「人を欺いて財物を交付させた者は,10年以下の懲役に処する。」と規定されています。
詐欺罪の詳細な構成要件は,
1.一般社会通念上,相手方を錯誤に陥らせて財物ないし財産上の利益の処分させるような行為をすること(欺罔行為)
2.欺罔行為によって相手方が錯誤に陥ること(錯誤)
3.錯誤に陥った相手方が,その意思に基づいて財物ないし財産上の利益の処分をすること(処分行為)
4.財物の占有又は財産上の利益が行為者ないし第三者に移転すること(占有移転,利益の移転)
5.1~4の間に因果関係が認められ,また,行為者に行為時においてその故意及び不法領得の意思があったと認められること
となっています。
単に他人を騙すのみでは詐欺罪には該当せず,騙したことによって損害が生じた場合も詐欺罪とはなりません(不法行為責任に問われる場合はあります)。
刑法の規定する詐欺罪の成立には,欺罔行為により相手方を錯誤に陥らせ,財物などを詐取する必要があります。
この詐欺罪に該当する詐欺の手口の一つである保険金詐欺とは,一般的に,自演による損害などで保険会社に保険金の請求をする詐欺です。
保険金詐欺事件の場合,詐欺行為の着手がどの時点となるかが問題となりますが,上記の構成要件から考えますと,相手方を錯誤に陥らせる行為が着手の時期となるでしょう。
その為,損害を装って保険会社に保険の請求をした時点で詐欺罪の着手があったといえるでしょう。
しかし,今回のケースでは保険会社の調査によって放火が自演であったことが判明しており,Aさんは実際には保険金を受け取ってはいません。
詐欺罪は未遂の場合でも処罰規定がありますので(250条),Aさんは詐欺未遂罪となるでしょう。
~放火行為~
また,Aさんは自宅に放火をしていますが放火罪には問われないのでしょうか。
建造物に対する放火は,現住か非現住か,非現住の場合は自己所有であるかどうかによって罪責が異なります。
今回のケースではAさんは自宅に人がいないことを認識して放火したといえますから自己所有の非現住建造物放火罪(109条2項)となるように思われます。
しかし刑法115条は「保険に付したものである場合において,これを焼損したときは,他人の物を焼損した者の例による」と規定されています。
Aさんの自宅には火災保険がつけられていましたので上記規定により他人の非現住建造物放火罪(109条1項)となり,法定刑は2年以上の有期懲役となっています。
~弁護活動~
Aさんは非現住建造物放火罪と詐欺未遂罪の併合罪となりますので,理論上は最高で30年の懲役刑となります。
非現住建造物のみならず放火罪は態様によっては重大な結果が生じる場合もあれば,それほど重大な結果が生じる危険性のない軽微な場合もあります。
そのため,上限が規定されていない罰則となっています(なお,有期懲役の上限は20年)。
今回のケースでAさんは自宅に放火したものです。
非現住建造物放火罪は,近隣の(人が住んでいる)住居等にに延焼する危険性がなかったか等具体的な状況を判断して量刑が決定されます。
今回のようなケースの場合,具体的状況によっては執行猶予付きの判決となる可能性もあります。
まずは刑事事件に詳しい弁護士に相談されることをおすすめいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
詐欺罪や放火罪はもちろん様々な刑事事件の弁護経験の豊富な弁護士が多数所属しています。
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