覚せい剤事件と詐欺事件(埼玉県川越市)

覚せい剤事件と詐欺事件(埼玉県川越市)

埼玉県川越市に住むAは、覚せい剤の密売人であるVから覚せい剤を購入するように見せかけ、覚せい剤をタダで騙し取ろうと考えました。
ある日、AはVに対し「350万円で覚せい剤1キロを売ってくれ。代金は10日後に支払う」と伝えました。
VはAに覚せい剤を渡しましたが、10日経ってもAが350万円を支払わないことから、Aに支払いを催促しました。
Aは金を支払えとしつこいVに対し腹を立て、要求を封ずるためにAを殺害しました。
後日、Aは埼玉県川越警察署にて、強盗殺人罪の容疑で取調べを受けました。
(フィクションです。)

Aに成立が考えられる罪名

今回、AはVから覚せい剤をだまし取った挙句、その代金の支払いを要求したVを殺害しています。
上の事例でAに成立が考えられる犯罪として、覚せい剤取締法違反詐欺罪(刑法246条1項)、強盗殺人罪(刑法240条後段)が挙げられます。

覚せい剤取締法違反について

AはVから覚せい剤を350万円で購入する旨伝え、これをAから受け取っています。
これは、覚せい剤の譲り受けに当たり、覚せい剤取締法41条の2第1項に当たると考えられます。
同条同項に違反した場合には10年以下の懲役とされています。

詐欺罪について~禁制品の財物性~

AはVに対し、代金を10日後に支払うと嘘を言い、覚せい剤をVから受け取っています。
この行為について、AはVに対する詐欺罪(刑法246条1項)の成立が考えられます。
刑法246条1項は「人を欺罔し、財物を交付させた者」について詐欺罪とすることを規定しています。
Aは、当初からVから覚せい剤を騙し取ろうと考えてVに覚せい剤購入を持ち掛けており、VはAが代金を支払って覚せい剤を購入する意思があると思い込んでAに覚せい剤という財物を交付しています。
そのため、Aには詐欺罪が成立すると言えます。

しかし、AがVからだまし取った財物は覚せい剤であり、このような禁制品を騙し取ったような場合もVに対する詐欺罪が成立するのでしょうか。
具体的には、覚せい剤のような禁制品も「財物」と言えるか、つまり法律上の保護に値するかが問題となります。

そもそも詐欺罪のような財産犯の目的は財産秩序の維持にあるといえます。
そうだとすれば、財産秩序の維持のためには現実の所持自体を刑法上保護しなければならず、法律上所持が禁じられているような禁制品についてもその所持は法律上の保護に値すると考えられます。
つまり、上の事例についても覚せい剤は法律上、その所持が禁じられていますがその所持は法律上の保護に値すると考えられるため、AにはⅤに対する詐欺罪が成立すると考えられます。

Vを殺した行為~不法原因給付物と財産上の損害

AはVから覚せい剤の代金を要求されたことに腹を立て、Vを殺し覚せい剤の代金の支払いを免れるという利益を得ています。
この行為につき、Aに強盗殺人罪(刑法240条後段)の成立が考えられます。

まず、刑法240条後段は「強盗が、人を…死亡させたときは」と規定していることから、強盗殺人罪が成立するためにはAが「強盗」と言えることが必要です。
「強盗」といえるためには、条文上、①「暴行または脅迫を用いて」②「財産上不法の利益を得た」といえることが必要です。
まず、AはVを殺しているため、暴行を用いているといえます(①)。
AはVの物を奪おうとしたのではなく、覚せい剤の代金支払いの請求を免れるためにVを殺害したので、「財産上不法の利益を得た」ように思えます。
しかし、覚せい剤は不法原因給付物と言い、法律上所持が禁止されているにも関わらず譲渡したものであるためにVに返還請求権がなく、またVに代金の支払い請求権も認められません。
そこで、保護すべき「財産上の利益」がなく、「財産上不法の利益」が認められないとも思えます。

しかし、先述のように、強盗罪も詐欺罪同様、財産罪といえ、その目的は財産秩序の維持にあります。
また、返還請求権の有無や代金支払い請求権の可否は民法上の概念であり、強盗罪は刑法上の財産秩序の維持を考慮するため、民法と刑法を同様に考える必要はありません。
そのため、覚せい剤の返還請求権や代金支払い請求権も財産秩序維持を図るためには刑法上の保護に値すると考えられ、「財産上不法の利益」が認められます(②)。

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