訪問販売と詐欺罪

訪問販売と詐欺罪

布団の訪問販売員であるAさんは、東京都北区に住む高齢のVさんが特殊詐欺の被害にあったとの情報を入手し、Vさん宅を訪問することに決めました。
AさんはVさん宅を訪ね、玄関ベルを鳴らしました。
Aさんは、玄関先まで出てきたVさんに「布団の販売で訪ねさせていただきました。布団を見せてくれませんか。」と言いました。
すると、Aさんは、Vさんから「うちには腐るほど布団があるから結構です。」と断られましたが、強引にVさん宅へ上がり、「うちのより、品が悪いですね。」「汚れているし取り替えた方がいいですよ。」「本来なら40万のところ、特別に10万で売ります(本来は10万円の価値しかない)。」と言いました。
そうしたところ、Vさんは「そんなに安くなるんだったら買います。」と言ってAさんに10万円を渡しました。
ところが、後日、Vさんはある情報番組を見て、Aさんの話が嘘だったことに気づき、警視庁赤羽警察署詐欺罪の被害届を提出しました。
そして、Aさんは、警視庁赤羽警察署に住居侵入罪・詐欺罪で逮捕されてしまいました。
(実際にあった事例を基に作成したフィクションです)

~ 訪問販売 ~

訪問販売とは、特定商取引法という法律の2条で「販売業者または役務提供事業者(※)が、営業所等以外の場所(例えば、被害者の自宅)で契約して行う商品、特定権利の販売または役務の提供等のことをいう」とされています。
最も一般的な訪問販売は、消費者の住居をセールスマンが訪問して契約を行うなどの販売方法です。
そのほか、喫茶店や路上での販売、またホテルや公民館を一時的に借りるなどして行われる展示販売のうち、期間、施設等からみて、店舗に類似するものとは認められないものも「訪問販売」に該当するとされています。

~ 様々な法規制 ~

訪問犯罪をするにあたっては様々な法規制がありますが、刑事事件としては次の罪に当たり得ることから注意が必要です。

= 詐欺罪(刑法246条) =

詐欺罪は人を欺いて、人から財物の交付を受けた場合い成立する犯罪です。
法定刑は「10年以下の懲役」です。
本件の場合、10万円の価値のある布団を10万円で売っているので、Aさんの行為が「欺く行為」に当たるか否かが問題となります。
この点、「欺く行為」とは人を錯誤(誤った判断、間違った判断)に陥れる行為をいうとされており、「被害者が本当のことを知っていたならば、財物を交付しなかったであろう」という場合に被害者を錯誤に陥れる行為、つまり、「欺く行為」と認めることができるとされています。
本件のVさんは「40万円の価値のある布団を10万円で買える」、「お得だ!」と思ったからこそ、Aさんに10万円を手渡したわけです。
つまり、10万円の価値しかないと知っていたならば、Aさんに10万円を手渡さなかったであろうという関係が認められますから、Aさんの行為は「欺く行為」に当たる可能性が高いでしょう。

= 不実の告知の罪(特定商取引法6条1項2号) =

特定商取引法6条1項2号では、訪問販売の売買締結等の勧誘をする際、訪問販売の売買締結等の申込みの撤回又は解除を妨げるため、「商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価につき、不実のことを告げる行為」をしてはならないとしています。
これに違反した場合は「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(又はこれを併科)」に処せられる可能性があります。
「不実のことを告げる行為」とは、虚偽の説明を行うこと、すなわち事実と異なることを告げる行為のことをいいます。
商品の販売価格について不実のことを告げる行為とは、まさに本件のように、実際には40万円もしない商品をあたかも40万円であるかのようなことを告げる行為をいいます。

= 住居侵入罪(刑法130条前段) =

訪問販売であるからとって、勝手に他人の敷地内や家の中へ上がりこんではいけません。
合理的な理由があって、家人の了解があったと誤信していた場合は別として、そうでない場合、勝手に他人の敷地内へ入ったり、家の中へ上がりこんだ場合は住居侵入罪に問われることもあります。
本罪の法定刑は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。

= 不退去罪(130条後段) =

仮に、敷地内や家の中へ入ることを許されたとしても、相手方から「うちは結構です。」「早く帰ってください。」と立ち退きを求められた場合はすぐに退去しましょう。
そのままそこに居座り続けると、不退去罪に問われる可能性があるからです。
不退去罪の成立要件は「要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった」場合とされています。
確かに、要求を受け、一定時間で退去しないと本罪が成立してしまいますから注意が必要です。

~ おわりに ~

訪問販売をするにあたっては、様々な取り決めがあることかと思います。
そうした取り決めと守るとともに、もし、違反した場合には上記の罪に問われ得ることをしっかりと頭に刻み込んでおきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所です。
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