すり替え詐欺事件における詐欺罪と窃盗罪
架け子であるXらは、警察官になりすまし,不正使用の疑いがあるためキャッシュカードを確認する必要があるなどと,虚偽の電話をかけ、京都府舞鶴市にあるV宅を訪問する旨の約束を取りつけた。
Xらと共謀した受け子であるAは,予定どおり警察官になりすまし,Vに封筒にキャッシュカードを入れさせた。
Vは玄関先に封筒を置き,その場を一旦離れたが,Aはそのままキャッシュカードの入った封筒を持ち去った。
Vから通報を受けた京都府舞鶴警察署の警察官は,Aを詐欺罪の容疑で逮捕した。
Aの家族は,詐欺事件に強いと評判の弁護士に逮捕されたAとの接見を依頼し,Aは接見に来た弁護士に,Aの事件では詐欺罪ではなく窃盗罪が成立する可能性があるという話を聞いた。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)
~詐欺罪と窃盗罪の交錯~
本件では,Aはいわゆるすり替え詐欺行為を行ったことにより,詐欺罪の容疑で逮捕されています。
もっとも,本件の事例のような場合,Aに接見した弁護士が話しているように,事実認定によっては詐欺罪ではなく窃盗罪が成立し得るケースであると考えられます。
詐欺罪には罰金刑が存在しませんが,窃盗罪には罰金が存在し,弁護活動の方針にも一定の影響を与えることになると思われます。
したがって以下,詐欺罪と窃盗罪がどのように区別されるかについて解説します。
刑法246条1項は「人を欺いて財物を交付させた者」を詐欺罪とし,金銭のような「財物」をだまし取った場合に成立する犯罪として規定されています。
つまり詐欺罪の成立にはだますことが必要であり,あくまで被害者の意思に基づいて財物が交付されたことを必要とする犯罪なのです。
これに対し,窃盗罪は被害者の意思に反して財物を奪う犯罪であり,万引きや自転車窃盗等の典型的な窃盗行為を想定すれば,このことはすぐに理解することができると思います。
刑法235条は,「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪」にするとし,条文上も被害者の意思による交付などを想定していないことは明らかです。
したがって,本件のような事例では,Vが玄関先に置いた封筒をAが自由に支配し受領できる状況に置くという意思があったかどうかが問題となり,Vにそのような意思がなくAが隙を見て持ち去ったというような場合は詐欺罪ではなく窃盗罪が成立すると考えられます。
~弁護士との相談の重要性~
仮に詐欺罪の容疑で逮捕されたとしても,検察官には起訴裁量があることから,窃盗罪によって起訴されることもありえます。
どの財産犯が成立するかについては,検察官のような訴追権を独占する権限を持つ立場の人間にとっても必ずしも自明とはいえません。
したがって,事前にあらゆる可能性を検討し,様々な犯罪の成否について検討することが重要になってきます。
例えば,上述したように詐欺罪には罰金刑が存在しませんが,窃盗罪には罰金刑が存在します。
こういった法定刑一つとっても,成立しうる犯罪によって異なることから,専門性を持った弁護士に相談することが重要になってくるのです。
刑事事件専門の弁護士に相談することによって,事前にどのような弁護活動を行うことが可能であり,どのように事件が展開していくかについての見通しを持つことができます。
これは逮捕等されてしまった本人のみならず,そのご家族にとっても大きなメリットとなります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,詐欺事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
特殊詐欺においては,受け子として受動的な立場で犯罪に関与してしまうというケースも少なくありません。
詐欺罪あるいは窃盗罪の容疑で逮捕された方のご家族は,年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)までお電話ください。
刑事事件専門の弁護士による「初回無料法律相談サービス」や,弁護士が警察署等に直接出向く「初回接見サービス」など各種サービスをニーズに合わせてご案内差し上げます。