受け子が特殊詐欺で逮捕・特殊詐欺における故意

 

受け子が逮捕された事案を題材に特殊詐欺における故意などについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

XはV(80歳)に対し、親族になりすまし現金がいる旨の嘘の電話をした。
Vは一旦これを信じたものの、不審な点があったことから警察に通報した。
Vは警察の要望で騙されたふりを続け、現金の入っていない荷物をXの指定する住所に送付した。
Xに荷物を受け取るよう指示を受けたAは、空き部屋に送られてきた現金の入っていない荷物を受領した。
住吉警察署の警察官は、Aを詐欺未遂の疑いで逮捕した。
なお、Aはあくまで荷物が届くと聞いて受け取りに来たに過ぎないと犯意を否認している。
Aの家族は、詐欺事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。

~受け子の「罪を犯す意思」(故意)について~

現金等を含めた「財物」に関する詐欺罪は、刑法246条1項に規定があります。
同条項は「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」と簡素な規定を置くのみで、この規定・文言から詐欺罪(いわゆる1項詐欺)の成立要件は必ずしも明らかではありません。
まず、1項詐欺罪が成立するためには、「人を欺」く行為が必要とされます。
そして、この欺く行為によって被害者を錯誤に陥れ、これに基づき(被害者の意思による)「交付」行為が行われ、これにより「財物」を取得することによって詐欺既遂罪が成立することになります。
本件では、架け子であるXによる「人を欺」く行為を前提に、受け子であるAが「財物」を取得するという受領行為を行っているため、「二人以上共同して犯罪を実行した」として両者は共同して詐欺行為を行っているといえます(60条・246条1項)。
もっとも、刑法38条1項本文は「罪を犯す意思がない行為は、罰しない」とし、犯罪の成立には「罪を犯す意思」すなわち故意があることを必要としています。
したがって、本件においては上述した詐欺「罪」(246条1項)に該当する事実を認識している必要があります。
この点に関し、近年の判例は「自己の行為が詐欺に当たるかもしれないと認識」しながら受領行為を行っている以上は、故意に欠けるところはないと判示しています(最判平成30・12・11等参照)。
受け子Aは空き部屋で荷物を受領するという明らかに不審な行為に加担しており、他の事情などからAに上記認識があったと考えられる場合には、「罪を犯す意思」すなわち故意が認められ、さらに不法領得の意思も否定されないと考えられます。
なお、本件ではVは警察の要望により現金の入っていない荷物を送付しています(いわゆる「だまされたふり作戦」)。
したがって、Aは錯誤に基づき「交付」したとはいえないため、A(およびX)には詐欺未遂罪(246条1項・250条)が成立するにとどまることになります。

~特殊詐欺事件における刑事弁護士の役割~

刑事弁護士は、なぜ罪を犯してしまったあるいは犯したと疑われている人物の弁護をするのでしょうか。
それは、全てにおいて白黒がはっきりしている事件は必ずしも多くなく、また捜査機関等によって主張される事実は真実とは限らないからです。
したがって、刑事弁護士は捜査機関等と対峙し、法にもとづき依頼者の利益を擁護する必要があります。
犯罪を疑われいわば社会から白眼視されかねない人々の視点に立ち、彼・彼女ら主張を法と正義により構成するのが刑事弁護士の役割といえます。
したがって、刑事弁護士は被疑者・被告人となってしまった人の主張に耳を傾け、その主張の真意を慎重に吟味することが求められるのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、特殊詐欺を含む詐欺事件を多数取り扱っている刑事事件専門の法律事務所です。
詐欺事件で逮捕された方のご家族は、年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)にまずはお問い合わせください。

 

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