特殊詐欺の現行犯(受け子)で逮捕
特殊詐欺の受け子のバイトをしていたAは、八王子駅(八王子市旭町)付近でVから現金500万円を受け取ろうとしたところ、張り込んでいた警視庁八王子警察署の警察官に詐欺未遂罪の現行犯で逮捕された。
そしてその後、Aは警視庁八王子警察署へと連行された。
後日、Aの自宅に今回の事件の証拠品の押収のため、警察官が捜索・差押えに入った。
警察官の捜索中に宅配便が届いたので警察官がその荷物を開披したところ、中からいわゆる「飛ばし携帯」が発見されたので、警察官はこちらも押収した。
(事例はフィクションです。)
特殊詐欺
今回のAは特殊詐欺の受け子をして逮捕されています。
この「特殊詐欺」は警察庁が命名したもので、面識のない不特定の者に対し、電話その他の通信手段を用いて、預貯金口座への振込みその他の方法により、現金等をだまし取る詐欺をいい、振り込め詐欺及び振り込め詐欺以外の特殊詐欺を総称したものを言います。
振込め詐欺ではオレオレ詐欺、架空請求詐欺、還付金詐欺など、振込め詐欺以外の詐欺では金融商品等取引名目の詐欺、ギャンブル必勝情報提供名目の詐欺などが挙げられます。
特殊詐欺は詐欺グループを形成し、組織立って詐欺行為を行なうことが多くあります。
詐欺グループの背景に暴力団関係者がいる場合もあります。
一方、金銭を騙し取る相手(以下、「被害者」と言います。)と直接接触する役割を持つ「受け子」や「出し子」については、「割の良いバイト」と称して、ネットなどで募集をしていることも多いです。
「受け子」等の報酬は1回の受け取りにつき1万円程度の場合もあれば、騙し取った金銭の3~4%(本件の場合、150,000~200,000円)の場合もあります。
特殊詐欺で登場する役割としては、以下のようなものが挙げられます。
〇掛け子
特殊詐欺グループにおいて、被害者に対して、電話で現金やキャッシュカードを後述の受け子に渡したり、直接指定の口座に振り込ませるよう指示する役割の人物です。
〇受け子
掛け子による指示に従った被害者と直接顔を合わせるのがこの受け子です。
被害者から現金やキャッシュカードを受け取ります。
〇出し子
キャッシュカードを騙し取った場合、ATMで現金を引き出す必要があります。
その引き出し役を出し子と言います。
今回のAは受け子をしています。
掛け子や受け子が逮捕された場合は詐欺罪(刑法236条1項)に問われることが考えられます。
この場合、10年以下の懲役に処されることになります。
一方、出し子に関与した場合、窃盗罪(刑法234条)にも当たります(詐欺罪について処罰されるかどうかは出し子をした人物の関与の度合い等によります)。
銀行ATMから現金を引き出す行為が、「他人の財物」(本件の場合、銀行ATMが占有する現金)を「窃取」したと評価されるからです。
この場合、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。
受け子や出し子に関しては、被害者に特徴を覚えられたり、現金を引き出す際に銀行ATMの監視カメラに映るリスクがあります。
逮捕のリスクが高いことから、特殊詐欺ではこうした役割にアルバイトを利用しているのが多く見受けられます。
捜索・差押え
本件では、警察官が捜索中に偶然届いた宅配物についても捜索・差押えを行っています。
今回は、「飛ばし携帯」、つまり、他人や存在しない人物の名義で契約した携帯電話で、匿名で電話を掛けることができるため、犯罪の痕跡の残さないといった用途で使われるものが押収されています。
これについては問題ないのでしょうか。
そもそも、捜査機関の請求に対し、裁判官が証拠が存在する可能性が高いと判断した場合、捜索差押令状を発布します(刑事訴訟法218条、219条など)。
そして、捜査機関は令状の執行をする際、被処分者(いない場合は、同居人や大家)に対して令状を提示します。
もっとも、この令状呈示は捜索差押が公正な手続きに則っていることを示し、被処分者に反論の機会を与えるためのものです。
また、裁判官の判断するのは、令状の有効期間(発付日から7日間)内にその場所に証拠が存在する可能性の高さですので、期間内であればいつ持ち込まれるのかは問題としていません。
そのため、捜索中に偶然届けられた荷物に対しての捜索は基本的に問題ないと考えられます。
終わりに
特殊詐欺の受け子等については、現金などを「受け取るだけ」「引き出すだけ」と軽い気持ちで詐欺に加担してしまうかもしれません。
けれども、組織的犯行の場合、受け子や出し子であっても厳罰化の傾向にあります。
そのような中、不起訴処分や執行猶予付き判決を得るには、示談締結や再犯防止のための活動など非常に多くの活動が求められます。
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