今回は、借金トラブルが刑事事件に発展するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
Aさんは、友人Vに対し、「3か月後にまとまった収入があるから、100万円を貸してほしい」と頼み込み、返済を受けられる見込みがあると判断したⅤはAさんに100万円を貸し付けました。
「3か月後にまとまった収入がある」というのは出まかせで、お金を借りた後にAさんが収入を得られる見込みはおろか、預金も担保もありません。
3か月後の返済期日に100万円が返済されなかったため、VはAさんに対し、借金を返済するように督促しましたが、「もう少しだけ待ってくれ」と誤魔化すだけで、100万円の一部も返済されませんでした。
後日、AさんのもとにVから内容証明郵便が届き、「100万円を早急に返済するように」、「誠意ある対応がなければ、警察へ被害届を提出する用意がある」と記載されていました。
驚いたAさんは刑事事件に詳しい法律事務所へ駆け込み、弁護士と相談することにしました。(フィクションです)
~借金トラブルが詐欺事件に~
(詐欺罪について解説)
刑法第246条は、
第1項「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する」
第2項「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする」
としています。
詐欺罪が成立するためには、①欺罔行為がなされたこと→②欺罔行為により相手方が錯誤に陥ったこと→③その錯誤に基づいた財産上の処分行為がなされたこと→④これを取得したこと、という因果経過をたどる必要があります。
Aさんは、3か月後にまとまった収入を得られる見込みがないのにも関わらず、「3か月後にまとまった収入がある」などと称し、Vにお金を貸すよう依頼しています。
上記行為は、前述の「欺罔行為」と判断される可能性が高いでしょう。
これを受けたVは、Aさんが得られる収入によって、将来無事に返済が受けられると誤信し(Vの錯誤)、100万円を貸し付けています(財産上の処分行為)。
上記事実関係によれば、Aさんに詐欺罪が成立する可能性は高いでしょう。
(借金トラブルも刑事事件になりうる)
借りたお金を返せないことをきっかけとして、債権者から「被害届を提出する」と告げられるケースはよくあります。
お金を借りた当時、約束通りに返済するつもりであったのであれば、仮に諸事情によって返済することができなかったとしても、詐欺罪が成立することはありません(民事事件に発展する可能性は当然あります)。
また、捜査機関においてもこのような被害申告を厭う傾向があるように思われます。
Aさんについても、Vからお金を借りた当時、返済するつもりがあったのであれば詐欺罪に問われることはありませんが、①3か月後にまとまった収入を得られるという働きかけが全くのウソであったこと、②Aさんに預金も担保もないことを考慮すると、「借りた当時、返済するつもりはあった、騙してお金を借りるつもりはなかった」などと主張するのはかなり困難と考えられます。
~刑事事件化した場合は?~
個人のお金の貸し借りがトラブルに発展した場合、刑事事件に当たるとしても、警察官はまず当事者で解決するよう勧めてきます。
早急にVと示談をし、借りたお金や遅延損害金等を支払うことを強くおすすめします。
金額次第では、借りたお金を全く返済できないまま起訴され、有罪判決を言い渡された場合、初犯であったとしても実刑判決となるおそれがあります。
反対に、Vに対して必要な賠償を行い、示談書に宥恕条項(注1)を盛り込んでもらうことができれば、警察段階で事件が終了したり、検察官により不起訴処分がなされる可能性が高まります。
(注1)
被疑者に対する寛大な処分を求める被害者の意思表示です。
示談交渉にあたっては、弁護士の助力が役立つでしょう。
また、刑事事件化した場合には、民事事件とは全く異なる手続が予定されています。
まずは刑事事件に熟練した弁護士と相談し、事件解決を目指していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
借金トラブルが刑事事件化してしまいお困りの方は、また、借金トラブルの刑事事件化の回避を希望されておられる方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。