買春代金を支払わず逃走・2項詐欺の成否

買春代金を支払わず逃走した場合の詐欺罪の成否ついて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事例~

埼玉県蕨市に住むAは、Vに対して、性行為を行う対価として5万円支払うことを約束した。
ホテルで性行為を行った後、AはVに近くのコンビニのATMでお金を降ろしてくると言い残し、そのまま対価を支払わず逃走した。
埼玉県蕨警察署の警察官は、近くAを詐欺の疑いで事情聴取することにしている。
Aは、詐欺事件に強いと評判の弁護士に相談した(本件は事実をもとにしたフィクションです)。

~2項詐欺罪の成否について~

刑法は、235条以下において財産犯について規定しています。
財産犯が主として保護の対象としているのは「財物」であり、物を盗む行為を処罰する窃盗罪がその典型といえます。
もっとも、刑法は一定の財産犯については、「財物」に加えて「財産上の利益」についても保護の対象としています。
「財産上の利益」に対する犯罪を利益罪と呼びますが、詐欺罪もこのような利益罪を保護の対象としていることが特色の一つといえるでしょう。

刑法246条2項は、「人を欺いて」「財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も」、(財物に関する詐欺罪を規定する)同条1項と同様に、詐欺罪として処罰する旨を定めています。
同項にいう「財産上の……利益」とは、財物以外の財産的利益の全てを指し、これには支払の一時猶予や債務免脱行為も含まれると解されています。
したがって本件でも、AはATMまでお金を降ろしに行ってくるとVを欺いて、買春代金の支払いの猶予を受けていると考えられることから、支払いの一時猶予として「財産上の……利益を得」たといえるようにも思えます。
しかし、買売春のような公序良俗に反する契約は、民法90条により無効と解されていることに注意が必要です。
つまり、このような利益は民法上保護に値しないものと考えられているのです。

では、民法上無効と解される契約によって負った債務を逃れた場合にも、「財産上の……利益を得」たといえるのでしょうか。
この点、通説的な見解は、民法上保護されない利益であっても財産秩序を乱すものである以上は、刑法における詐欺罪の客体として保護されるとして詐欺罪の成立を認めています。
もっとも、このようなケースに関する最高裁判例はなく、下級審の裁判例も判断が分かれています。
したがって、当該事件において詐欺罪が成立するのかどうかも含め、高度な専門知識を有した弁護士に相談することが何よりも先決です。

~事情聴取(取調べ)に対する対応~

上記のような犯罪の成否に関する相談に加えて、取調べに対する対応について相談することも重要です。
本件のような逮捕を伴わない事件(在宅事件)では、捜査は任意の事情聴取(取調べ)等を中心として行われることになります。
警察等による取調べを受けたことがないため、どのような取調べが行われるか等について不安な方も多いと思います。
そこで、取調べにどのように対応するかについて、事前に弁護士に相談することによってこのような不安を解消させることができます。
また、場合によっては、弁護士による取調べへの同行等も検討の余地があるでしょう。
取調べ対応のみならず、今後の見通し等についても弁護士の見解を聞くことで得られることは少なくありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
詐欺事件について、刑事事件専門の弁護士があなたのご相談を承ります。
詐欺事件に関する無料相談等は、年中無休の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)までお問い合わせください。

 

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