今回は、タクシーで無賃乗車をした疑いで逮捕されてしまった場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
Aさんは、東京(←適宜地名は変更してください)から大阪(←同様)まで、1円も持たずにタクシーに乗り、目的地に到着したところでお金を持っていないことを打ち明けました。
タクシーの運転手はすぐに警察を呼び、Aさんは詐欺の疑いで逮捕されてしまいました。
今後はどうなるのでしょうか。(フィクションです)
~Aさんの犯した詐欺罪について~
刑法第246条1項は、「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する」としており、さらに同条2項は、「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする」としています。
したがって、人を欺いて財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた場合に、2項詐欺罪が成立することになります。
「財産上不法の利益」とは、財物以外の財産上の利益を意味し、典型例として、「債権」や「労務の提供」、「債務の免除」があります。
タクシー運転手は有償でAさんを運送し、これによってAさんは運賃相当の財産上不法の利益を受けたものと考えられます。
~今後Aさんはどうなるのか?~
(警察署への引致、取調べ)
逮捕後は、警察署に引致され、取調べを受けます。
Aさんについて、留置の必要が認められると、逮捕時から48時間以内に身柄が検察へ送致されます。
検察は警察とは全く別の捜査機関です。
(検察への送致後)
検察では、検察官が取調べを行います。
検察官は、Aさんの身柄を受けとったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内に、Aさんの勾留を請求するか、Aさんを釈放し、在宅捜査に移行するかを判断します。
Aさんが乗車した区間を考慮すると、運賃はかなり高額であったことが予想されます。
被害額が高額であると判断されれば、勾留請求がなされる可能性が高いと考えられます。
(勾留請求がなされた場合)
勾留請求は、検察官が裁判官に対してします。
裁判官は勾留の可否を審査し、勾留の要件を満たしていると判断すれば、勾留決定を出します。
勾留の要件を満たしていないと判断すれば、釈放され、在宅捜査に移行します。
勾留決定が出されると、10日間の身体拘束を受けることになります。
また、やむを得ない事由があると認められると、さらに最長10日間、勾留が延長されます。
(起訴・不起訴の判断)
勾留された後も捜査が続きます。
身柄事件の場合、検察官は勾留の満期日までに、Aさんを起訴するか、不起訴にするかを判断します。
起訴されれば、裁判を受けることになりますし、不起訴となれば、裁判を受ける必要はなく、前科がつくこともありません。
~詐欺事件の注意点~
前述の通り、詐欺罪の法定刑には懲役刑より軽い刑罰(禁錮、罰金、拘留・科料)が予定されていません。
有罪判決を受けるときは、懲役刑となります。
執行が猶予されれば、刑務所に行かずに済みますが、執行猶予が付かなければ実刑判決となってしまいます。
そのため、不起訴処分を獲得し裁判を回避するか、執行猶予付き判決の獲得を目指すことが非常に重要となります。
~有利な事件解決を目指す方法~
不起訴処分や執行猶予付き判決など、有利な事件解決を実現するためには、被害者と示談することが極めて大切です。
ケースの場合はタクシーの運転手や、運転手が勤務する会社が被害者となるでしょう。
Aさんの行為によって被害者に生じさせた損害を賠償し、示談を成立させることができれば、不起訴処分、執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高まります。
まずは接見にやってきた弁護士からアドバイスを受け、善後策を立てることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族がタクシーの無賃乗車の疑いで逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。