(事例紹介)「闇バイト」で特殊詐欺の受け子 実刑判決に
~事例~
静岡県警が昨年11月に詐欺容疑で逮捕した堺市の無職の男の被告(45)(詐欺罪で公判中)が、全国の特殊詐欺事件で現金の回収役「受け子」を担い、少なくとも六つの事件で計1億7550万円を受け取った疑いがあることがわかった。
(中略)
被告は昨年11月、静岡市駿河区の高齢男性から現金1000万円をだまし取ったとして、市内で緊急逮捕された。
その後、菊川市の高齢女性が現金1000万円の被害に遭った事件で再逮捕され、大分、石川両県警も検挙した。
だまし取った金は、多くが被告に指示を出した詐欺グループに流れたとみられ、捜査が続いている。
(中略)
詐欺グループが「闇バイト」「裏仕事」と称してインターネット上で仲間を募り、困窮した人や若者が特殊詐欺に加担するケースが全国的に後を絶たない。
県警幹部は「簡単にお金を稼げるはずがない。受け子という組織の末端であっても犯罪の責任を追及していくことが被害の抑止にもつながる」と話す。
(※2021年10月16日19:25読売新聞オンライン配信記事より引用)
~特殊詐欺の「受け子」と実刑判決~
最近では、新型コロナウイルスに関連した給付金詐欺事件が取り沙汰されることが多いですが、特殊詐欺事件の被害もなくなっていません。
今回取り上げた事例では、被告人の男性が「闇バイト」などと称してインターネット上で募集されている仕事を行い、特殊詐欺のいわゆる「受け子」の役割を担ったことで実刑判決を受けたということです。
「受け子」とは、特殊詐欺の被害者からお金やキャッシュカードなどを受け取る役割を指しており、特殊詐欺事件では、こうした「受け子」や「出し子」、「かけ子」などの役割に分かれて詐欺行為が実行されることが少なくありません。
特に、被害者と直接顔を合わせる「受け子」や、ATMなどの防犯カメラに映りやすい「出し子」は検挙される確率が高く、いわゆるトカゲのしっぽ切りのような扱いを受けることも多いとされています。
そのため、先ほど触れたように、「闇バイト」などと称して外部の人間を募集し、「受け子」「出し子」として働かせるという特殊詐欺グループも珍しくないのです。
今回取り上げた事例では、被告人の男性は複数の特殊詐欺事件に関わっており、被害金額が合計1億7550万円にのぼる高額であることから、実刑判決という厳しい判決になったと考えられます。
しかし、実は、昨今の特殊詐欺事件ではこうした実刑判決が下されることも少なくなく、厳しい判決が下される傾向が強まっているといえます。
そのことは、法務省の統計「令和3年版犯罪白書」内のデータからも分かります。
法務省による「令和3年版犯罪白書」では、令和2年に裁判となった特殊詐欺事件で、担った役割が判明している被告人について下された刑罰の重さの割合を掲載しています。
「令和3年版犯罪白書」によると、今回の事例の被告人のような「受け子」と「出し子」であったと判明した令和2年に裁判となった特殊詐欺事件の被告人91人のうち、54.9%が実刑判決を受けているとされています。
実刑判決の重さごとに見てみると、91人中1.1%が5年を超え10年以下の懲役、11%が3年を超え4年以下の懲役、37.4%が2年以上3年以下の懲役、5.5%が1年以上2年未満の懲役となっています。
もちろん、かかわった特殊詐欺事件の件数や被害金額の大きさ、弁償の有無などによるところもありますが、特殊詐欺事件の末端であることが多い「受け子」「出し子」であっても、半数以上が実刑判決を受けているという事実から、特殊詐欺事件への厳しい判断が見られるといえるでしょう。
なお、特殊詐欺の中心的役割といえる主犯・指示役となると、19人中84.2%が実刑判決を受けており、かつ19人中21.1%が5年を超え10年以下の懲役という長期の実刑判決を受けていることから、特殊詐欺の中心に近づくほどより厳しい判断が下されるということが分かります。
繰り返しになりますが、昨今、特殊詐欺事件に対しては、たとえ担った役割が末端のものであっても重い刑罰が下される傾向にあります。
「闇バイト」などと称されるものに手を出さないということはもちろん大切ですが、もしも自分が関わってしまったら、早い段階から裁判に向けて弁護士に相談し、活動してもらうことが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、「闇バイト」などから特殊詐欺事件に関わってしまったというご相談や、家族が「受け子」をして逮捕されてしまったというご相談も受け付けています。
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