(事例紹介)特殊詐欺に関わるキャッシュカード窃盗事件で少年逮捕
~事例~
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神戸市に住む男子高校生(17)と男子中学生(14)は6日、守山市内の女性(当時80)の自宅を訪れ、キャッシュカード2枚とクレジットカード1枚を盗み、京都市や大阪市内のATMで計250万円を引き出した疑いがもたれています。
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2人は、8日にも同様の手口で滋賀県野洲市内の女性からキャッシュカードをだまし取ろうとしましたが、警戒中の警察官が公園でワイシャツに着替えようとしていた高校生に声をかけたところ、「これから詐欺しに行く」などと話したため、詐欺未遂の疑いで逮捕されていました。
2人は警察の調べに対し容疑を認めていて、警察は余罪がないか調べています。
(※2022年10月28日19:13YAHOO!JAPANニュース配信記事より引用)
~特殊詐欺事件と窃盗罪~
今回取り上げた事例では、10代の少年らが、キャッシュカードなどを盗み、ATMで現金を引き出した容疑で逮捕されたと報道されています。
この少年らは、元々は別件の詐欺未遂罪の容疑で逮捕されていたという報道内容になっています。
ここで、「キャッシュカードなどを盗んでATMで現金を引き出した」という容疑内容になっていることから少年らには窃盗罪の容疑がかけられていることが予想されます。
事案だけ見ると特殊詐欺事件のようにも思えますが、実はいわゆる特殊詐欺に関連して、窃盗罪が成立するケースも存在します。
最近では、「キャッシュカード詐欺盗」と呼ばれる手口が増えてきています。
キャッシュカード詐欺盗事件では、特殊詐欺事件のように、犯人が銀行員や警察官などになりすました上でキャッシュカードなどを被害者に準備させ、被害者の隙を見てキャッシュカードを偽物にすり替えたり盗んだりして持ち去ってしまう手口が用いられます。
こういった手口のキャッシュカード詐欺盗事件で成立する犯罪としては、窃盗罪が考えられます。
犯人が銀行員や警察官などになりすましているところが特殊詐欺事件と類似しており、詐欺罪が思い浮かびやすいところですが、詐欺罪は「人を欺いて財物を交付させ」ることで成立する犯罪(刑法第246条)であるため、キャッシュカードなどを手に入れる手段があくまで「被害者の隙を見てすり替えたり盗んだりする」というキャッシュカード詐欺盗事件では、詐欺罪は成立しないと考えられます。
また、いわゆる特殊詐欺事件であっても、特殊詐欺によってだまし取られたキャッシュカードを利用してATMから現金を引き出す行為(いわゆる「出し子」行為)が窃盗罪となることもあります。
だまし取られたキャッシュカードを利用してATMから被害者の預金を引き出すということは、預金を管理する銀行から、その意思に反してお金を持ち出すことになります。
すなわち、「持ち主の意思に反して物を自分の物にしてしまう」ということであり、窃盗罪に当たると考えられるのです。
こうした特殊詐欺に関わる(類似する)窃盗事件では、窃盗罪という罪名から事態を軽く考えてしまいがちです。
しかし、例えばキャッシュカード詐欺盗事件では、手口としては特殊詐欺事件とほとんど変わらないような手口であることから、悪質性が高いと判断されやすく、有罪となった場合の刑罰の重さに反映されることが予想されます。
いわゆる特殊詐欺事件の出し子行為であっても、特殊詐欺事件の一部を担っているということの重大性を考慮され、厳しく処罰されることもあり得ます。
詐欺罪か窃盗罪かという罪名の違いも重要なことではありますが、内容として悪質性が同様のものであると考えられるケースもありますから、甘く見ることなく早めに対処することが重要です。
特に、今回の事例のような10代の少年少女の起こした少年事件の場合、今後の少年の更生が重要視されますから、「詐欺罪だから」「窃盗罪だから」ということにこだわらず、今後の環境調整のための活動を行っていくことが大切でしょう。
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最近では10代の少年少女がこうした詐欺事件・窃盗事件に関わる例も見られますが、弊所では少年事件の取扱もございますので、安心してお任せいただけます。
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