(事例紹介)循環取引による詐欺事件で逮捕された事例
~事例~
帳簿上で架空の商品売買を繰り返す「循環取引」を使い、大阪市の商社「阪田産業」から現金2億円超をだまし取ったとして、警視庁捜査2課は12日、詐欺容疑で、元同社嘱託社員(中略)、取引先の会社社長(中略)両容疑者を逮捕した。
(中略)
逮捕容疑は昨年8~9月、(中略)容疑者の会社が阪田産業を通じ、同容疑者の知人の会社に太陽光発電設備の部品などを架空発注。阪田産業から知人の会社に代金として約2億4500万円を送金させ、詐取した疑い。
(※2022年10月12日21:02YAHOO!JAPANニュース配信記事より引用)
~循環取引と犯罪~
前回の記事では、循環取引とはどういったものなのかということを取り上げました。
循環取引は架空の取引によって売上や利益を計上するものですが、循環取引は、その全てが犯罪となるわけではありません。
しかし、今回の事例がそうであったように、場合によっては循環取引を行ったことやそれに関連した行為によって犯罪が成立するケースも存在します。
まず、今回取り上げた事例の容疑者の逮捕容疑でもある詐欺罪について確認しましょう。
詐欺罪は、刑法第246条で定められている犯罪です。
刑法第246条第1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
詐欺罪は、「人を欺」くことによって金銭などを引き渡させることで成立する犯罪です。
この「人を欺」くという行為は、単に嘘をつけばよいということではなく、「財産を交付させ」ることに向けた嘘でなければなりません。
つまり、「財産を交付させ」るための嘘であり、相手がその事実が嘘であると分かっていた場合には財産交付がなされないというような嘘でなければ、詐欺罪の「人を欺」く行為であるとはいえません。
今回の事例に当てはめてみましょう。
今回取り上げた事例では、容疑者2名が循環取引によって詐欺罪の容疑がかけられ逮捕されています。
この事例では、循環取引=架空の取引による虚偽の請求書に基づき、会社にその料金を支払わせているとされています。
会社(の担当者)としては、当然請求書が正しいものであるとして料金(「財物」)を支払っていますから、虚偽の請求書であると分かっていれば料金(「財物」)を引き渡すことはなかったでしょう。
このことから、循環取引による架空の請求書という嘘によって会社(の担当者)を騙し=「人を欺いて」、料金=「財物」を交付させたと考えられ、詐欺罪の容疑がかけられていると思われます。
こうしたケース以外にも、循環取引に関連して詐欺罪が成立するケースとしては、循環取引によって売上高や利益を水増しし、企業の成績がよいように見せかけ、偽の決算書などにより、銀行などから融資を受けやすくするといったケースが考えられます。
循環取引に関連して成立しうる犯罪は、詐欺罪以外にも考えられます。
例えば、循環取引によっていわゆる粉飾決算を行い、決算書の内容に循環取引の内容を反映させて公表した場合には、金商法違反となる可能性があります。
さらに、会社の役員が循環取引に関わっていた場合には、会社法の特別背任罪などになる可能性も出てきます。
循環取引によって成立し得る犯罪は詐欺罪に限らず、態様によって異なります。
どういった犯罪が成立し得るのか、本当にその犯罪に当たるのかといったことは、一般の方のみで判断することは難しいですから、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
そして、循環取引による詐欺事件となった場合には、被害金額が高額になることも予想されますから、その分厳しい処分が予想されます。
刑事裁判への準備や被害者対応などを慎重に行う必要もありますから、早い段階で弁護士に相談することが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、詐欺事件についてのご相談・ご依頼も多数受け付けています。
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