保険金詐欺で逮捕された事例を題材に、刑事弁護士による弁護活動等について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
事例:Aらは、保険会社から保険金をだまし取ろうと考え、民間病院の診断証明書等を偽造した上で、請求書とともにこれを保険会社に提出し、保険金をだまし取った。
警察官は、Aらを詐欺等の疑いで逮捕した。
Aの家族は、詐欺事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実を基にしたフィクションです。)。
~保険金詐欺事件(詐欺と文書偽造の関係)~
刑法246条1項は、「人を欺いて財物を交付させた」場合に、詐欺罪(1項詐欺罪)が成立する旨を定めています。
Aらは、保険会社を欺いて保険金を不正にだまし取っていることから、上記詐欺罪が成立するものと考えられます。
もっとも、保険会社も不正や書類の不備等がないかを厳重にチェックした上で、保険金を支払うわけですから、このような詐欺行為が奏功するためには、それ相応の手段が必要になります。
そこで、保険金詐欺事件においては、往々にして保険金詐取のために必要な文書・書類の偽造が行われることになるのです。
では、このような偽造行為はいかなる罪に問われることになるのでしょうか。
まず、刑法が保護する文書には大きく「公文書」と「私文書」があり、公務所又は公務員が作成する文書が「公文書」とされ、これら公文書以外の文書が「私文書」とされています。
本件では、民間病院の診断証明書等が偽造の対象となっていますから、刑法159条の規定する私文書偽造罪が問われうることになります。
また、文書偽造罪は、他人の印章や署名を用いたかどうかによって、有印か無印かに分けられ、後者の罰則が「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金」(同条3項)であるのに対し、前者は「3月以上5年以下の懲役」(1項)と重く処罰されることに注意が必要です。
有印の文書でなければ、保険会社をだますことはできませんから、本件で偽造されているのは前者の有印の私文書です。
そして、(行使の目的をもって)診断証明書が偽造され、これが行使されていることから、Aらには有印私文書偽造罪と同行使罪(161条1項)が成立することになります。
さらに、詐欺行為とこれらの文書偽造行為が法律上どのように関係に立つかについて考えてみましょう。
Aらの行為に成立すると考えられる有印私文書偽造罪と同行使罪、同行使罪と詐欺罪は、それぞれ手段と結果の関係にあると考えられます(刑法54条1項後段)。
したがって、同条項に基づいて、「10年以下の懲役」(246条1項)が「その最も重い罪」となりますが、その短期は3月以上(159条1項、161条1項)となることに注意が必要です。
~詐欺事件における刑事弁護士の弁護活動~
詐欺罪は行政による統計資料等でも知能犯に分類されており、被疑事実が争われる否認事件も多いと言われています。
そして、知能犯罪は事案が複雑なことも少なくないことから、取調官が被疑者の自白を取ろうと積極的に働きかけてくることにも警戒しなければなりません。
したがって、弁護士としては、被疑者が争う部分は明確にして、取調官の誘導等によって自白を取られないようにするなどの弁護活動が求められることになります。
また、本件のような共犯事件においては、弁護活動の前提として、共犯者間の関係など事実関係を精査することも重要となるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、保険金詐欺事件を含む刑事事件を専門に扱っている法律事務所です。
詐欺事件等で逮捕されてしまった方のご家族は、年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)まで、まずはお問い合わせください。