福岡県筑紫野市の代引き詐欺事件
~ケース~
Aさんは,福岡県筑紫野市の高齢者が住んでいる住所を対象に代金引換で頼まれてもいない物を送付するいわゆる「代引き詐欺」を行っていた。
被害が多発しているのを受けて,福岡県筑紫野警察署は送付元となっていたコンビニエンスストア数件に捜査協力を依頼した。
Aさんは捜査が及んでいることを知らず,市内のコンビニエンスストアにて5件に向けて代金引換で発送を依頼した。
送り主の住所氏名が一致せず,不審に思った店員のXが福岡県筑紫野警察署に通報し,駆け付けた警察官によってAは詐欺罪の疑いで逮捕された。
Aさんの家族は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に初回接見サービスを依頼した。
(フィクションです)
~ネガティブ・オプション~
ネガティブ・オプションとは,注文がないにもかかわらず事業者が消費者に商品を勝手に送付した上で,売買契約の申込みを行ったり,事業者の言う条件の下で売買契約の成立を主張して代金を請求することをいいます。
このような販売方法は特定商取引法59条によって送付があった日から14日以内に購入の意思を示さなかった場合に,送り主が引き取らない場合には送られた人の物になります。
有名なものでは一方的に蟹を送りつけて購入代金を請求する「カニカニ詐欺」と呼ばれるものがあります。
注意が必要なのは,蟹を食べてしまったり,送られてきた商品を使用してしまった場合には購入意思があったとみなされ,代金を支払わなければならない場合があることです。
なお,「詐欺」と呼ばれていますが,厳密には詐欺罪とはならない場合が多く,特定商取引法で14日で送られた人の物になると規定されているのみで罰則はありません。
~代引き詐欺~
詐欺罪は,刑法246条に「人を欺いて財物を交付させた者は,10年以下の懲役に処する。」と規定されています。
詐欺罪の詳細な構成要件は,
1.一般社会通念上,相手方を錯誤に陥らせて財物ないし財産上の利益の処分させるような行為をすること(欺罔行為)
2.欺罔行為によって相手方が錯誤に陥ること(錯誤)
3.錯誤に陥った相手方が,その意思に基づいて財物ないし財産上の利益の処分をすること(処分行為)
4.財物の占有又は財産上の利益が行為者ないし第三者に移転すること(占有移転,利益の移転)
5.1~4の間に因果関係が認められ,また,行為者に行為時においてその故意及び不法領得の意思があったと認められること
となっています。
ネガティブ・オプションの場合,商品そのものは送付されており,売買契約の締結方法が問題となるだけですので,詐欺罪に当たらない場合が多く,契約書なども業者が詐欺ではないと主張できる内容となっている場合も多いようです。
商品を先に送るだけであり,購入代金の支払いはあくまでも購入意思に基づくものであると考えられるからでしょう。
一方で,代引き詐欺の場合,商品の購入意思の発生前,すなわち受取時に代金を支払う必要がある点がネガティブ・オプションと異なります。
構成要件該当性を考えてみますと,代金引換で荷物が届いた場合,金額にもよりますが,自身に心当たりがなくても,家族が注文したものだと思ってしまったり,自分が何か注文したのかもしれないと思ったりして代金を払ってしまう方が多いようです(錯誤に陥っているといえるでしょう)。
すなわち,代金引換で荷物を送るという欺罔行為によって,受取人が錯誤に陥り代金を支払い(処分行為),送り主に代金が移転しますので詐欺罪の要件を満たすことになります。
また,ネガティブ・オプションの場合は「商品」を先に送る形になりますが,代引き詐欺の場合は価値のないものであったり,中身があるように思わせるために石を入れただけといった場合もあるようです。
こうした代引き詐欺の場合,送られた人が代金を支払わなくても,代金引換で荷物を送付した時点で詐欺罪の実行の着手があったとみなされ,詐欺未遂罪となる可能性が高いでしょう。
~弁護活動~
詐欺罪の罰則規定は10年以下の懲役のみですので,起訴された場合には刑事裁判を受けることになります。
また,今回のケースのような代引き詐欺事件の場合,被害者の数も多く,悪質な事件であるとみなされ起訴されてしまう可能性が非常に高いでしょう。
こういった詐欺事件の場合,初犯であっても実刑判決が下されてしまうことも多いようです。
しかし,被害者の方と可能な限り示談交渉をし,被害弁償を行うことによって執行猶予や刑の一部執行猶予が付される可能性もあります。
刑事事件には弁護活動の内容によって最終的な判決が変わるケースが多くあります。
刑事事件を起こしてしまった場合には,まずは刑事事件に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
代引き詐欺事件によってご家族が逮捕されてしまいお悩み方は0120-631-881までお気軽にご相談ください。
初回接見サービス・無料法律相談のご予約を24時間受け付けています。
(兵庫県筑紫野警察署までの初回接見費用:36,700円)