東京都三鷹市で受け子が接見禁止
Aは、東京都三鷹市において、家族が事故にあった旨だまされた女性V(70歳)から現金を受け取ろうとした。
しかし、通報を受けていた警視庁三鷹警察署の警察官は、Aを詐欺未遂罪の疑いで逮捕し、のちにAは勾留された。
Aには接見禁止処分が付いており、Aの家族はAに面会することもできず困っていた。
そこでAの家族は、詐欺事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)
~組織犯罪としての特殊詐欺と受け子~
いわゆる特殊詐欺(オレオレ詐欺等の総称)は組織的に行われることも多く、特殊詐欺の末端において犯罪を担うのが「受け子」と呼ばれる者です。
受け子とは、特殊詐欺事案において、別の共犯者に騙された被害者から現金等の財産の受領を担当する者のことをいいます。
詐欺罪は、刑法246条1項で「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」と規定されています(いわゆる1項詐欺)。
本件も含め、特殊詐欺犯罪における末端の役割である受け子は、上記詐欺にいう「人を欺」く行為自体は行っておらず、もっぱら「交付」段階の詐欺行為を担うのが通常です。
このような場合にも、刑法60条は「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と共同正犯を認めており、実行を分担した場合にも「一部実行全部責任」の観点から詐欺罪の罪責を免れることはできません。
本件では、Vから現金を受け取ろうとして失敗していますから、「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者」(43条本文)として、Aには詐欺未遂罪(刑法60条、246条1項、250条)が成立するにとどまると考えられます。
なお、本件でAがVから現金を受け取っていれば、当然に詐欺罪の既遂罪が成立することになります。
~接見禁止解除(家族による面会の可能性)~
刑事訴訟法39条1項は、「身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と立会人なくして接見」できると規定しており、「被告人又は被疑者」は、「弁護人」や「弁護人となろうとする者」つまり弁護士と「立会人なくして接見」できる旨を規定しています。
憲法は、34条前段によって弁護人選任権を人権として保障しており、これを実質化したものが上記の弁護士の接見交通権であるといわれています。
これは、被疑者・被告人の保護を目的としたいわば弁護士の特権ということができます。
他方で、「裁判官」は「逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは」、被疑者と弁護士等以外の者との接見(面会)を禁ずることができる旨を規定しています(刑訴法207条1項、81条本文)。
これを一般に「接見禁止」(接見等禁止処分)といいます。
これは、勾留(60条)だけによってはカバーできない被疑者による罪証隠滅のおそれを防ぐための処分として規定されているものです。
本件のような組織犯罪では、接見禁止が付されることも珍しくありません。
接見禁止が付されると、家族等との接見(面会)も禁止されてしまい、逮捕・勾留されてしまった被疑者、その家族ともに直接に会う機会を奪われてしまいます。
そこで接見禁止が付されてしまった場合には、弁護士としてはこの処分を準抗告(刑訴法429条1項2号)によって争うことが考えられます。
仮にこの準抗告が認められなかったとしても、法律上は規定がないものの、家族など罪証隠滅のおそれがない対象との接見禁止の一部解除を申し立てることも検討すべきでしょう(このような裁判官の職権発動を促す申立ては、最決平成7・3・6によって判例上も認められています)。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
特殊詐欺事件(受け子)で逮捕・勾留されてしまった方のご家族は、刑事事件を専門に扱う弊所フリーダイヤル(0120-631-881)まで、今すぐお問い合わせください。
(警視庁三鷹警察署までの初回接見費用:37,100円)