詐欺未遂

詐欺未遂について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

Aさんは、高齢男性(Vさん)に警察官や銀行員を名乗り、「Vさんの通帳とキャッシュカードはもう使えなくなったため、新しいものを作り直す必要がある」などと電話をかけ、通帳とキャッシュカードを騙し取ろうとしました。しかし、その後、Vさんが不審に思い、110番通報しました。そして、駆け付けた警察官が不審な様子のAさんを発見し、事情を聴いたところ詐欺未遂行為が判明したため、Aさんは詐欺未遂罪の容疑で逮捕されました。
(フィクションです。)

~ 詐欺未遂 ~

詐欺罪は刑法246条に規定されています。

(詐欺)
第二百四十六条 
1人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

また、未遂罪も処罰する旨規定されています。

(未遂罪)
第二百五十条 この章の罪の未遂は、罰する。

詐欺罪は、①詐欺行為者の欺く行為、②被害者の錯誤、③被害者の交付行為、④詐欺行為者の財物の取得という一連の行為により成立します。
そして、詐欺未遂罪は、①欺く行為を行ったものの、結果として財物を取得することができなかった場合に成立します。

①欺く行為とは、相手が真実を知っていれば財物の交付行為を行わないといえるような重要な事実を偽ることをいいます。

AさんはVさんに対し、「Vさんの通帳とキャッシュカードはもう使えなくなったため、新しいものを作り直す必要がある」と伝えていますが、これは全くの偽りの情報です。
Vさんが自身の通帳とキャッシュカードが使用できなくなったということはウソであると知っていれば、VさんがAさんに対して通帳とキャッシュカードを交付することはなかったと考えられます。
よって、Aさんの行為は①欺く行為にあたります。
そして、Aさんは①欺く行為を行ったものの、Vさんから通帳とキャッシュカードを受け取ることができなかったことから、詐欺未遂罪で逮捕されているのです。

~詐欺未遂罪での執行猶予~

過去の統計を見ても検察統計を見てみると、詐欺罪や詐欺未遂罪は他の刑法犯と比較して起訴される確率が高いといえます。
もしAさんが詐欺未遂罪により起訴され、有罪認定を受ければ、10年以下の懲役の範囲で刑を科されます。

ただし、裁判所の量刑判断により、執行猶予付き判決を獲得できる可能性があります。
執行猶予付き判決を獲得するためには、執行猶予付き判決を得るに値する事実を裁判所に主張していく必要があります。
例えば、行為態様。動機が悪質でないこと実害が発生していないことなどが挙げられると考えられます。

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