架空請求詐欺と接見禁止について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
京都市内に住むAさんは、不特定多数の住宅に対し、「消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ」と称する架空請求のはがきを投函しました。はがきには、訴訟を開始したことや強制執行の予告など、一般人であれば容易に騙される内容が書き連ねられていました。この架空請求による被害が多発したため、京都府下鴨警察署は捜査を行ったうえでAさんを詐欺罪の被疑者と認め逮捕しました。Aさんには接見禁止決定がつき、家族とも面会できない状態でした。そこで、Aさんの家族は接見禁止解除をしてもらうべく、弁護士に相談することにしました。
(上記事例はフィクションです)
~公的機関を装う架空請求詐欺~
架空請求詐欺とは、あたかも公共料金やサービス料などを支払う必要があるかのように装い、錯誤に陥った相手方から金銭を騙し取る詐欺の手法です。
架空請求詐欺自体は比較的古くから存在していますが、時を経るごとにその手口はより巧妙になっていると言えます。
最近多い手口の一つは、裁判所などの公的機関を装う架空請求詐欺です。
この架空請求詐欺の手口は、未払いの公共料金などの存在およびそれに関する訴訟の提起を偽り、連絡を取ってきた相手方から金銭を騙し取るというものです。
上記事例におけるAさんもこの手口を用いており、他の詐欺の手口と同様詐欺罪が成立する可能性があります。
~接見禁止解除(家族による面会の可能性)~
刑事訴訟法39条1項は、「身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と立会人なくして接見」できると規定しており、「被告人又は被疑者」は、「弁護人」や「弁護人となろうとする者」つまり弁護士と「立会人なくして接見」できる旨を規定しています。
憲法は、34条前段によって弁護人選任権を人権として保障しており、これを実質化したものが上記の弁護士の接見交通権であるといわれています。
これは、被疑者・被告人の保護を目的としたいわば弁護士の特権ということができます。
他方で、「裁判官」は「逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは」、被疑者と弁護士等以外の者との接見(面会)を禁ずることができる旨を規定しています(刑訴法207条1項、81条本文)。
これを一般に「接見禁止」(接見等禁止処分)といいます。
これは、勾留(60条)だけによってはカバーできない被疑者による罪証隠滅のおそれを防ぐための処分として規定されているものです。
本件のような組織犯罪では、接見禁止が付されることも珍しくありません。
接見禁止が付されると、家族等との接見(面会)も禁止されてしまい、逮捕・勾留されてしまった被疑者、その家族ともに直接に会う機会を奪われてしまいます。
そこで接見禁止が付されてしまった場合には、弁護士としてはこの処分を準抗告(刑訴法429条1項2号)によって争うことが考えられます。
仮にこの準抗告が認められなかったとしても、法律上は規定がないものの、家族など罪証隠滅のおそれがない対象との接見禁止の一部解除を申し立てることも検討すべきでしょう(このような裁判官の職権発動を促す申立ては、最決平成7・3・6によって判例上も認められています)。
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