タクシー乗り逃げ詐欺事件で逮捕

タクシー乗り逃げ詐欺事件で逮捕されてしまった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

大阪市生野区にある会社で働く会社員のAさんは、会社近くにある居酒屋で夜遅くまで酒を飲んでいました。
終電の時間を過ぎてしまったことに気づいたAさんは、タクシーを呼んで同市内にある自宅に帰ることにしましたが、自宅近くになってから、財布にお金がほとんど残っていないことに気づきました。
Aさんは、「わざわざお金をおろしてタクシー代を支払うのは惜しい。乗り逃げをしてしまえ」と考え、タクシー運転手に対して、「手持ちが少ないことに気が付いた。ATMでお金をおろして支払うから、コンビニで待ってくれないか」と自宅近くのコンビニに寄るように頼みました。
運転手は言われたとおりに、コンビニの駐車場にタクシーを停車させ、Aさんを降ろすとその場で待っていました。
しかし、Aさんはコンビニに入るふりをしてそのまま逃走し、タクシー料金を支払うことなく帰宅しました。
その後、いつまで待っても戻ってこないAさんに気づいた運転手が大阪府生野警察署に乗り逃げされたと通報し、同署による捜査が開始されました。
そして捜査の結果、Aさんはタクシー乗り逃げ行為をした詐欺罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです)

・タクシー乗り逃げは詐欺罪に?

詐欺罪は、刑法246条に規定されている犯罪です。
昨今、詐欺罪というと特殊詐欺事件が多く報道されているため、組織的犯罪のようなイメージが強いかもしれませんが、こうしたタクシーの乗り逃げなど日常に近いところでも起こりうる犯罪であることに注意が必要です。

刑法246条
1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

条文を見てわかる通り、詐欺罪には、人をだまして財物を交付させた場合に成立するもの(いわゆる「1項詐欺」)と、財産上不法の利益を得たり人に利益を得させたりした場合に成立するもの(いわゆる「2項詐欺」)があります。
いわゆる「1項詐欺」も「2項詐欺」も、刑罰は10年以下の懲役であることと詐欺罪という罪名には変わりありませんが、人をだまして得るものが異なるということになります。

詐欺罪が成立するためには、①「人を欺いて」、②「財物を交付させ」るか(刑法246条1項)「財産上不法の利益を得」るか(刑法246条2項)する必要があります。
まず、①「人を欺く」とは、簡単に言えば人をだますことを指しています。
この「人を欺く」行為は、相手に処分行為をさせる(②に当てはまる行為をさせる)ためのものでなければならず、さらにその処分行為をするかしないか判断する際に重要な事項を偽ることであるとされています。
つまり、ほんのささいな嘘をつくということでは足らず、相手がその事実が嘘であれば処分行為をしなかっただろうという事実について嘘をついて相手をだますということが詐欺罪のいう「人を欺く」という行為なのです。

そして、相手が①の行為によってだまされたことで、②「財物を交付」するか(刑法246条1項)「財産上不法の利益を得」させるか(刑法246条2項)することで詐欺罪が成立します。
「財物を交付」とは、文字通り財物を引き渡すことを指します。
お金を直接だまし取る詐欺事件ではこの「財物を交付」させる、いわゆる1項詐欺と呼ばれる詐欺罪が成立することが考えられます。
一方、「財産上不法の利益を得」させるというのは、物理的に何か物を渡すのではなく、利益を得させるということを指しています。
例えば、有償のサービスを無償で受ける、支払の猶予を受けるといったことが挙げられます。

では、今回のAさんのタクシー乗り逃げ事件はどうなるでしょうか。
Aさんは、「タクシーの料金を支払わずに乗り逃げしよう」と考え、実際にタクシーの料金を支払わずに逃げてしまいました。
その際、Aさんはタクシー運転手に対してお金をおろして料金を支払うためにコンビニで待ってくれと嘘をつき、タクシーから降りています。
運転手としては、Aさんがお金をおろして戻ってきて料金を支払うというからこそコンビニでAさんを降ろし支払いを待ったのでしょう。
となると、Aさんは運転手を「欺いて」おり、運転手はだまされたのだということになります。
当然、運転手がAさんが乗り逃げするつもりでコンビニで降りたことを知っていればAさんの料金支払いを待つことはなかったでしょうから、Aさんは処分行為をする際に重要な事項について偽り、だましたということになります。
そして、その結果Aさんは、Aさんはタクシー料金の支払いを免れるという「財産上不法の利益を得」ていることになります。
こうしたことから、Aさんは「人を欺いて」「財産上不法の利益を得」たと考えられ、刑法246条2項の詐欺罪にあたると考えられるのです。

詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役と定められています。
つまり、罰金刑の規定がないのです。
ということは、詐欺罪で起訴されて裁判になって有罪になり、執行猶予がつかなければ、すぐに刑務所へ行くことになってしまいます。
タクシーの乗り逃げくらいで、と簡単に考える方もいるかもしれませんが、詐欺罪とはこれだけ重い犯罪なのです。
だからこそ、詐欺罪の容疑で逮捕された場合、早期に弁護士に弁護活動を開始してもらうことが重要なのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、詐欺事件をはじめ、刑事事件に強い弁護士が多数所属しています。
タクシー乗り逃げ事件で詐欺罪に問われてお困りの方、大阪市の詐欺事件で家族が逮捕されてお悩みの方は、遠慮なく弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士までご相談ください。

 

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