特殊詐欺の受け子と故意
特殊詐欺の受け子と故意について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
Aは,知人からの依頼で,さいたま市浦和区にあるマンションの空き部屋で書類を受け取ってほしい旨を頼まれた。
これを了承したAは,実際に指定されたさいたま市浦和区の部屋で書類を受け取ったところ,埼玉県浦和西警察署の警察官が,Aを詐欺罪(受け子)の容疑で現行犯逮捕した。
Aのした行為は特殊詐欺事件の受け子の役割であったことが発覚したが,Aは詐欺罪の故意について否認している。
Aの逮捕を聞いたAの家族は,詐欺事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実をもとにしたフィクションです。)
~特殊詐欺の受け子と故意~
本件でAは特殊詐欺(現金送付)の受け子として詐欺罪によって逮捕されています。
もっとも,Aは,受け子として詐欺に加担した事実を否認しています。
そもそも刑法犯として処罰するためには原則として,犯罪事実に対する故意(条文上は「罪を犯す意思」(刑法38条本文))が必要となります。
刑法は,過失犯として特別に規定しているものの他は,故意がなければ罰しないものとしているのです。
そして,詐欺罪には過失行為を処罰する旨の規定はないため,詐欺罪の成立には故意の存在が必須となります。
つまり,客観的に「人を欺いて財物を交付させ」る行為(刑法246条1項)を行ったり,それに加担したりしたとしても,この行為に対する故意がなければ詐欺罪は成立しないことになるのです。
そして,近年の特殊詐欺事件の増加に伴い,特殊詐欺に関する判断を示す最高裁判例が続々と登場しています。
最判平成30年12月14日(同年12月11日判決も参照)は,本件のような現金送付型の特殊詐欺事件において,受け子の故意に関する判断を下した判例です。
上記最高裁判例は,「被告人が自宅に配達される荷物を依頼を受けて名宛人になりすまして受け取り,直ちに回収役に渡す仕事を複数回繰り返して多額の報酬を受領していること」や「被告人は荷物の中身が詐欺の被害品である可能性を認識しており,現金とは思わなかったなどと述べるのみで詐欺の可能性があるとの認識が排除されたことをうかがわせる事情は見当たらないこと」などから,受け子に詐欺の故意に欠けるところはないと判示しています。
いわゆる事例判断ではありますが,上記のような態様の受領行為を行なった場合には(特殊)詐欺の故意が認められる可能性があるとして重要な判例として位置づけられています。
~特殊詐欺事件(受け子)における弁護活動~
本件のようにAが詐欺行為の認識(故意)を否認している場合には,弁護士としては,上記判例にいう「詐欺の可能性があるとの認識が排除されたことをうかがわせる事情」を主張していく必要があるといえるでしょう。
そのためには,Aと弁護士が接見を繰り返すなどして事実関係を詳細に把握する必要があります。
また,仮に本件と異なり,Aが受け子行為自体を認めている場合には,被害弁償等により被害者の財産を回復させる活動を行うことが重要になってきます。
もっとも,特殊詐欺のような組織的犯罪の場合は,上記の活動にもかかわらず起訴されるリスクも低くありません。
したがって,特殊詐欺事件の受け子の場合,否認事件・自白事件いずれにおいても,起訴され刑事裁判になることを見据えた弁護活動が求められることになると思われます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,特殊詐欺の受け子事件等の詐欺事件を含む刑事事件を専門とする法律事務所です。
詐欺事件で逮捕された方のご家族は,年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)にまずはお問い合わせください。
弁護士による接見サービスなど,担当者が分かりやすくご説明さしあげます。