投資詐欺の逮捕・起訴で公判前整理手続

投資詐欺の逮捕・起訴で公判前整理手続

コンサルティング業者であるAは、すでに逮捕されているBらと共謀の上、兵庫県小野市に住むVに対し「うまい儲け話がある」「これに乗れば多額の配当が得られることは間違いない」等と架空の投資話を持ちかけ、Vに多額の投資をさせたとして、兵庫県小野警察署詐欺罪の容疑で逮捕されてしまった。
AはBらと連絡を取っていたことは認めているものの、投資詐欺に加担した覚えはないと容疑を否認している。
しかし、Aはのちに勾留され、起訴される見込みであることを伝えられた。
Aの家族は、詐欺事件に強いと評判の弁護士に事件の弁護を依頼した。
Aの弁護士は、Aの主張する証拠の確認等を行うために、公判前整理手続を利用することを検討している。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)

~投資詐欺と刑事責任~

刑法246条1項は、「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」と規定し、いわゆる1項詐欺(財物を客体とする詐欺)を定めています。
ここにいう人を「欺」く行為(欺もう行為)とは、交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ることを指すといわれています(最決平成22・7・22参照)。
本件では、Vが提案された投資話が架空であればVは金銭を交付することはあるはずもなく、その意味で金銭を交付する判断の基礎となる重要な事項を偽ったといえます。
そして、この「欺」く行為(欺もう行為)により、錯誤に陥ったVに「財物を交付させた」以上は、Bらは詐欺罪の成否が問われることになります。
こうした組織的詐欺では、実行犯であるかどうかに関わらず、刑法60条により「2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」として処罰される(共謀共同正犯)ことから、意思連絡と正犯意思による共謀が認められる限り、実行犯か否かによって詐欺罪の正犯としての刑事責任が問われることに変わりはありません。

~公判前整理手続の利用~

2005年施行の改正刑事訴訟法により、公判前整理手続が導入されました。
公判前整理手続とは、事件の争点及び証拠を整理するために刑事裁判(公判)の準備として行われる手続をいいます。
裁判員裁判対象事件においては、公判前整理手続は必要的であるとされています(裁判員法49条)。
もっとも、上記対象事件以外の事件については、公判前整理手続に付すかどうかは裁判所の裁量にゆだねられていました。
それが平成28年改正施行された改正刑事訴訟法により、当事者(検察官および被告人側)に公判前整理手続の請求権を規定するに至ったのです。
上記対象事件以外でも「充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため必要があると認めるとき」に「事件を公判前整理手続に付することができる」とされています(刑事訴訟法316条の2第1項)。
特に、本件のように知能犯である詐欺事件であり、かつ複数の共犯者が関与している事件で、被疑者本人が容疑を否認している事件では、公判前整理手続を利用することが考えられます。
本件は裁判員裁判対象事件ではありませんが、弁護士としては上記請求を含め、事件を公判前整理手続に付すことも検討に値するでしょう。 
公判前整理手続に付された事件とそうでない事件の最大の違いは、後者の通常の公判手続では、捜査機関側の証拠に関しては基本的に検察官請求予定証拠の開示等しか認められていません(刑訴法299条1項)。
検察官が取調べ請求する意思のない証拠の開示に関しては、刑訴法には何ら規定が置かれていなかったのです。
これに対し、公判前整理手続では弁護側に類型証拠および主張関連証拠の開示請求が認められており、これにより捜査機関側が有する証拠のより広い開示を認めているのです(316条の15、316条の20)。
国家権力である警察・検察といった捜査機関と、一私人でしかない弁護士・被告人との間にはあまりにも大きな証拠収集における格差があった(今もある)と言われています。
これを一部是正する手続としても、公判前整理手続を利用するメリットは大きいと言うことができます。
したがって、弁護士としては、同手続を最大限に活かし、被告人の防御のための充実した弁護活動を行うことも考えられるのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、共犯が絡む複雑な詐欺事件を含む刑事事件を専門に扱っている法律事務所です。
公判前整理手続など比較的新しい刑事手続制度についても、刑事事件専門の弁護士にお任せください。
詐欺事件逮捕された方のご家族は、まずは弊所フリーダイヤル(0120-631-881)までお問い合わせください。

 

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