特殊詐欺事件で逮捕・受け子の責任の範囲

特殊詐欺事件で受け子として逮捕されてしまった事例を題材に、受け子の刑事責任の範囲等ついて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

事例:架け子Xは、Xが騙したV宅に受け子であるBが訪問し、BとAによって現金を回収する計画(特殊詐欺)を立てた。
しかし、実行段階でBはVから現金を受け取るのに手間取り、BはV宅玄関先に置いたままになっていた現金入りの封筒を無断で持ち去ることによって現金を回収した。
Aは、当初の計画とおり、Bを車に乗せてその場を去った。
警察官は、Aを詐欺(未遂)の疑いで逮捕した。
Aの家族は、特殊詐欺事件を含む詐欺事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。

~特殊詐欺における受け子の責任の範囲~

本件で弁護士に相談をしているのはA(の家族)ですが、Aの刑事責任を検討する前提として共犯者であるBの刑事責任を検討する必要があります。
AおよびB(そして架け子であるX)は、共に計画してVに対する詐欺行為を実行していますから「2人以上共同して犯罪を実行した者」(刑法60条)として、正犯としての第一次的責任を負います。
したがって、A・B・Xに詐欺罪の未遂罪(246条1項・250条)の共同正犯が成立することは比較的明白といえます。

では、BがVを騙した上で、現金の入った封筒を無断で持ち去った行為はどうでしょうか。
まず(1項)詐欺が成立するには、「人(被害者)を欺」いた上で、これにより誤信を生じた被害者が任意に「財物」を「交付」することが必要です。
しかし、本件ではBはVが玄関に置いた封筒を無断で奪い去っており、上記詐欺罪は成立せず、これは窃盗罪(刑法235条)としての責任を負う行為と考えられます。
では、上記詐欺未遂罪に加えてこの窃盗罪の部分も受け子Aに帰責されるのでしょうか。
この点、裁判例(東京高判平成31・4・2等)などを参考にすると、そもそも特殊詐欺における犯行計画(共謀)は、犯行が発覚しないように被害者から現金を入手することであり、必ずしも詐欺行為によって現金を詐取することに限られず、上記のような窃盗行為による現金の入手も当初の犯行計画(共謀)の範囲内であることが通常でしょう。
したがって、(具体的な事案によって結論は変わりうるものの)本件のようなケースにおいては、受け子Aにも窃盗既遂罪(刑法235条)が成立するものと考えられます

~特殊詐欺事件における弁護活動~

いわゆるオレオレ詐欺等の特殊詐欺は、近年の社会問題化を背景にして厳罰化の傾向にあります。
本件のようにたとえ末端の受け子として関与したケースにおいても、その刑事処分の見通しを甘くみることは禁物です。
覆水盆に返らずと言いますが、一旦犯してしまった罪をなかったものとすることはできません。
他方で、罪を犯してしまった後からでも、被害者となってしまった方のためにできることはあります。

そもそも刑法とは、法益(法によって保護される利益)を保護するために存在するものです。
したがって、法益を侵害したことすなわち犯罪行為により毀損された法益を回復することができるのであれば、一定程度その行為責任の低下が認められると考えられます。
特に財産犯においては、被害弁償という形で事後的に法益を回復することが可能な犯罪です。
したがって、特殊詐欺事件においても、他の財産犯と同様に、被害者の財産状態を回復することが受け子の刑事処分を軽くするためにも重要な弁護活動の一つとなります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、特殊詐欺事件を含む詐欺事件などを取り扱っている刑事事件専門の法律事務所です。
特殊詐欺事件で逮捕された方のご家族は、年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)に今すぐお電話ください。

 

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