1.両替詐欺・釣銭詐欺とは
言葉のトリックや、人の思い込みを利用して両替や釣銭を渡すときに騙して多くのお金を取ってしまう詐欺です。
具体的な手口としては、たとえば3万円を、5000円札3枚、1000円札15枚に両替して欲しいとお店に人が来て依頼してきます。店員さんが両替を済ますと、すかさず15枚になった1000円札に、もう1枚5000円札を加えて2万円にして欲しいと言います。そのときに、1000円札を数枚抜いているので、その分だけお金を騙し取るという手口です。場所は銀行などの専門機関ではなくて、一般の販売店などです。犯罪に対してあまり身構えていないところが狙われます。
釣銭詐欺は、店が混雑している時間帯を狙ってくるらしく、その場でレジを閉めて確認することがなかなかできません。
2.釣銭詐欺のケース
釣銭詐欺はケースに応じて成立する犯罪が異なります。
1 「釣銭が多いことにその場で気づきながら、黙って受け取った場合」
信義則上、釣銭が多いことの告知義務があるため、不作為による「欺く行為」があるとして詐欺罪が成立する見解が通説です。つまり、店員から釣り銭が手渡される前に、釣り銭が多いと気付いたにも関わらず、黙ってこれを受領する行為については、釣り銭が多いことを店員に告知する義務に違反することから、不作為による詐欺罪が成立するという理屈です。客が告知義務に違反した結果、店員が騙されて釣銭を交付したということになるのです。
この点、不作為による「欺く行為」を認めるのは、相手方の財産を守る義務を認めることにつながるため、通常の取引関係については認めるべきではないとして、この場合に詐欺罪の成立を否定する見解もあります。
2 「釣銭を受け取ってからしばらくして多いことに気づいたがそのまま持ち去った場合」
占有離脱物横領罪になります。
刑法246条1項の詐欺罪が成立するには、店員が騙されて釣銭を交付する、という関係が必要ですが、客が釣銭を手渡された後に、自宅で多いことに気づいた場合には、この関係がありません。法律的には欺罔による処分行為がないということになります。したがって、刑法246条1項の詐欺罪は成立しません。なお、同条2項による詐欺罪も、店員による債務免除などの処分行為がありませんので、成立しません。したがって、客が釣銭を手渡された後に自宅で気づいた場合には、詐欺罪は成立しません。
もっとも、「その他他人の物を横領した者」として占有離脱物横領罪が成立します。
3 「釣銭が多いことは後から気づき、後日釣銭を返すよう言われ、それに対し釣銭は多くなかった旨を申し立てた場合」
②の場合に成立した遺失物等横領罪で評価しつくされているため、別途犯罪は成立せず、占有離脱物横領罪が成立するにすぎません。
【刑法254条 遺失物等横領罪】 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。 |
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