架空発注詐欺事件で逮捕されたら

架空発注詐欺事件で逮捕されたら

架空発注詐欺事件逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、大阪市中央区にある会社Vに勤務する会社員です。
ある日Aさんは、実際には存在しない会社に業務を発注をしたように見せかけ、架空の会社に支払う費用として300万円を会社Vから受け取りました。
しかし後日、会社Vの調査によってAさんが申告していた発注が偽物であり存在しなかったことや、その発注費用としてAさんが会社Vから受け取った300万円はAさんが遊興費として使用していたことが発覚。
会社Vは大阪府東警察署に被害申告し、Aさんは大阪府東警察署詐欺事件の被疑者として逮捕されてしまいました。
Aさんから逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、ひとまず事情を把握したいと考え、弁護士にAさんの下へ接見に行ってもらうことにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・架空発注詐欺事件

今回のAさんの事例では、Aさんが架空の発注に見せかけて会社から発注費用としてお金を騙し取っています。
こうした手口でお金を騙し取ることは、刑法の詐欺罪にあたると考えられます。

刑法第246条第1項(詐欺罪)
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

詐欺罪は、「人を欺いて財物を交付させ」ることが成立の条件とされています。
この「人を欺」くという行為は欺罔行為と呼ばれ、簡単に言えば人を騙す行為を指します。
ただし、ただ嘘をついて相手を騙せば詐欺罪の欺罔行為に当たるわけではありません。
詐欺罪の欺罔行為は、相手が財物を交付するかどうかを判断する際に重要な事項を偽るものであり、かつ財物を交付させるためのものである必要があります。
大まかにいえば、「この事実が嘘であったなら財物の交付はしなかっただろう」という事実について嘘をついて相手を騙すことと、その嘘が相手に財物を引き渡させるための嘘でなければ詐欺罪の欺罔行為とは言えないということです。

そして、「財物を交付させ」るとは、文字通り、財物を引き渡させるということです。
欺罔行為によって相手を騙し、相手が騙されたことによる勘違い等によってお金や物といった財物を引き渡すことで詐欺罪が成立するのです。

今回のAさんの事例のような架空発注詐欺事件についてあてはめてみましょう。
Aさんは、実際にはない架空の発注の費用として会社Vにお金を請求し、お金をもらっています。
このとき、Aさんは会社Vに対して「発注をしたから費用が必要だ」という嘘をついていることになります。
会社Vからしてみれば、正式な発注費用でないのであれば会社のお金を渡す理由はないわけですから、この嘘は会社VがAさんにお金を渡すかどうか判断するための重要な事実を偽る嘘であると考えられます。
さらに、Aさんの架空発注の嘘は会社Vからお金をもらうための嘘ですから、財物の交付に向けられた嘘であるとも考えられます。
こうしたことから、Aさんは詐欺罪の欺罔行為にあたる行為をし、それによって会社Vを騙し、会社Vからお金をもらった=財物の交付を受けたと考えられ、Aさんには詐欺罪が成立すると考えられるのです。

・会社のお金をとったのに詐欺事件?

ここで、「会社のお金を自分の懐に入れたのだから業務上横領罪になるのではないか?」という疑問を持たれる方がいらっしゃるかもしれません。

刑法第253条(業務上横領罪)
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。

簡単に説明すると、業務上横領罪は「業務上」=業務として委託を受けて他人の物を管理する上で、その預かっていた他人の物を「横領」=委託されていた権限を越えて自分の物にする等したことで成立する犯罪です。
つまり、業務上横領罪となるには、他人の物を管理する権限を委託されていなければならず、さらにその他人の物を自分の物にする等の行為が必要となります。

例えば、会社で経理を任されていた人が会社のお金を自分の物にしてしまったような場合、その人は会社のお金を経理という立場で管理する権限を会社から与えられていますが、それはあくまで仕事として会社のお金を管理するという内容のものであり、会社のお金を好き勝手してよいということではないでしょう。
そうした権限を越えて会社のお金(他人のお金)を自分の物にしてしまうことになりますから、業務上横領罪が成立すると考えられるわけです。

今回の架空発注詐欺事件のような手口である場合、Aさんには会社のお金を管理する権限は与えられていません。
あくまでAさんは会社Vを騙すことを手段としてお金を手に入れたのであって、自分の管理していた会社Vのお金をとったということではないため、業務上横領罪の構成要件には当てはまらないということになるのです。

架空発注詐欺事件では、架空発注に見せかけるために実際にある会社名義で勝手に偽の発注書を作成するなど詐欺罪の他に文書偽造罪といった犯罪が成立する複雑なケースもあります。
どういった犯罪が成立しうるのか、どのような対応が必要になってくるのかは、それぞれの刑事事件の細かな事情によって変わってきますから、まずは弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門弁護士がご相談から弁護活動まで一貫してサポートいたします。
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