(事例紹介)クラウドファンディングに関わる詐欺未遂事件
~事例~
インターネットで資金を募るクラウドファンディング(CF)を利用し、既に死んだ飼い犬の治療費名目で現金をだまし取ろうとしたとして詐欺未遂罪に問われた無職、(中略)被告(26)の判決公判が14日、奈良地裁葛城支部で開かれた。
佐茂剛裁判官は懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)を言い渡した。
(中略)資金は(中略)被告に渡されず、支援者に返金されていることなどから執行猶予を付けた。
判決によると、(中略)被告は生活費などに使う目的で、令和3年10月、CFサイトで既に死んだ飼い犬の治療費名目のプロジェクトを公開。支援金から手数料を引いた約154万円をだまし取ろうとした。
(※2022年4月14日20:09産経新聞配信記事より引用)
~クラウドファンディングと詐欺事件~
今回取り上げた事例では、クラウドファンディングに関わる詐欺未遂事件の刑事裁判について報道されています。
クラウドファンディングとは、起案者が特定の目的のために、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を調達するシステムを指します。
クラウドファンディングは、「クラファン」「CF」などと略して呼ばれることもあり、現在では出資者を募っているクラウドファンディングを掲載・紹介するサイトやアプリなどもあることから、一般に広く普及しているものといえます。
このクラウドファンディングは、特定の目的のために出資金を集めるシステムであり、出資者はその目的のためのお金であるからこそ、出資をするということになります。
ですから、今回の事例のように、クラウドファンディングで嘘の目的を掲げて資金調達をした場合、詐欺罪に問われうるということになります。
刑法第246条第1項(詐欺罪)
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
「人を欺いて」とは、相手が財物の交付をするかどうか判断する際に重要な事実を偽ることであるとされています。
簡単に言えば、相手が「これが嘘であればお金を渡さなかった」という嘘をついて相手を騙し、お金などをだまし取るということが詐欺罪にあたるということになります。
クラウドファンディングで出資を募る際には、特定の目的達成のために出資を募るという形になり、出資者はそれを信じてお金を出すことになります。
ですから、クラウドファンディングの目的が嘘なのであれば、詐欺罪もしくは詐欺未遂罪が成立し得るということになるのです。
今回の事例では、クラウドファンディングの目的を犬の治療費としていたところ、実際はその犬はすでに死んでしまっており、嘘の目的でお金を出資させようとした=「財物を交付させ」ようとしたということで、詐欺未遂罪で有罪判決が下っています。
お金が被告に渡る前に支援者に返金された、すなわち、お金が引き渡される前であったことから、詐欺未遂罪となったと考えられます。
クラウドファンディングでは、集めた金額が多額になることもあり、それに関する詐欺事件では被害額が大きくなってしまう可能性もあります。
被害金額が高くなれば、有罪となった際に科される刑罰も厳しくなっていくことが予想されますから、被害弁償などの対応も含めて、早めに弁護士に相談してみることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、詐欺事件を含めた刑事事件全般に対応しています。
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