偽計業務妨害罪で逮捕
今回は詐欺罪ではなく、人をだまして損害を与えるという意味で共通する偽計業務妨害事件を起こしてしまった場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
大阪府堺市に住むAさんは、自宅近所の宅配ピザ店に恨みをもっています。
最近Aさんは、ピザを注文する気がないのに電話で注文を行い、商品が自宅に届いたところで「そんなもの頼んでない」、「誰かのイタズラだろう」などと告げて持って帰らせたり、他人の家に勝手にピザを届けさるといういたずらを始めました。
ここ1ヵ月で20回ほど、上記のいたずらを行っています。
宅配ピザ店はさすがに我慢しきれなくなり、大阪府西堺警察署に被害届を提出しました。
Aさんは後日、偽計業務妨害罪の疑いで逮捕されてしまいました。
(フィクションです)
~偽計業務妨害罪について解説~
ケースのような事件は、ときおりニュースで見かけます。
動機は憂さ晴らし、いたずら目的など様々でしょうが、ケースのように悪質な場合、自宅に逮捕状を持った警察官が現れ、逮捕されてしまうこともあります。
こうなると、単なるいたずらでは済まなくなってしまいます。
Aさんが疑われている偽計業務妨害罪とは、どのような犯罪なのでしょうか。
・偽計業務妨害罪について
この犯罪は、虚偽の風説を流布し、又は、偽計を用いて、人の業務を妨害する犯罪です(刑法第233条)。
今回は虚偽の風説を流布した(ウソの噂を流した)という事件ではありませんので、Aさんが偽計を用いて宅配ピザ店の業務を妨害したかどうかがポイントとなります。
・「偽計」とは?
人をだまし、あるいは、人の錯誤・不知を利用したり、人を誘惑したりするほか、計略や策略を講じるなどの不正な手段を用いることをいいます。
ピザを注文する気がないのに、これを注文すると偽った電話を宅配ピザ店に架け、配達員がピザを持参したところで注文していないふりをすることは、「偽計」に該当する可能性が極めて高いと思われます。
・「業務」とは?
職業その他社会生活上の地位に基づいて継続して行う事務又は事業をいいます。
宅配ピザ店の営業は明らかに「業務」に該当するでしょう。
・「業務を妨害」とは?
判例によれば、実際に業務遂行に支障が生じる必要ではなく、支障が生じるおそれがあれば足りると解されています。
今回のようなウソの注文の事例では、注文する気がないのに注文する電話をかけている時点で、無駄なピザ作りや配達をさせられるといった業務への支障が生じるおそれがあると認定される可能性があります。
また、今回は実際に宅配ピザ店の配達員が無益な配達業務に従事する事態が生じているので、現実に業務に支障が生じているといえます。
以上の事実関係によれば、Aさんは「業務を妨害」したものということができるでしょう。
したがって偽計業務妨害罪が成立する可能性が高いと言えます。
~示談により不起訴処分の獲得を目指す~
Aさんが初犯であれば、宅配ピザ店の店長などと示談をすることにより、不起訴処分を獲得できる可能性が十分見込めます。
刑事訴訟法第248条によると、検察官は、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、不起訴処分を行うことができます。
要するに、検察官が被疑者の有罪を立証できる場合であっても、裁判にかけられずに済む、ということになります。
被害者と示談を成立させれば、Aさんにとって有利な「犯罪後の情況」として考慮されることが期待できます。
不起訴処分を獲得できれば、前科がつきませんし、原則としてこれにより事件は終了します(示談金を支払っていない、謝罪を翻意したため被害者が怒っている、などといった事情があれば、「再起」という制度により、刑事手続が再開されることもあります)。
しかし何と言って示談交渉をしたらよいか、示談金はいくらにしたらよいか、示談書の文言はどうしたらよいかなど、わからないことが多いと思います。
ぜひ弁護士と相談しながら、有利な事件解決を目指していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご自身やご家族が偽計業務妨害事件を起こしてしまいお困りの方は、ぜひご相談ください。