フィッシング詐欺事件で逮捕されたら

フィッシング詐欺事件で逮捕されたら

フィッシング詐欺事件逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

京都市山科区に住むVさんは、自身も利用しているショッピングサイトの名前の入ったメールを受け取りました。
そこには、「アカウント更新のための手続きについて」との記載があり、メールに記載されているURLからサイトに移動し、アカウント更新のためにショッピングサイトのIDやパスワード、連絡先を入力するよう書いてありました。
Vさんはそれに従い、URLをクリックして個人情報を入力しました。
するとその後、Vさんの利用した覚えのないクレジットカードの引き落としがあったことから、Vさんは京都府山科警察署に被害を相談。
フィッシング詐欺事件・カードの不正利用事件として捜査を開始した京都府山科警察署は、捜査の結果、事件の被疑者としてAさんを逮捕しました。
Aさんの家族は、Aさんが逮捕されたという連絡を受け、急いで弁護士に相談しました。
(※この事例はフィクションです。)

・フィッシング詐欺は何罪になる?

一般にフィッシング詐欺と言われている行為は、企業を装ったメールやショッピングサイトなどを通じ、その人の使用しているIDやパスワードなどのアカウント情報、クレジットカード情報や住所・連絡先などの個人情報を抜き取る行為を指しています。
今回のAさんの事例のように、企業を装ったメールに偽のURLを載せ、そこから偽物のホームページに誘導し、個人情報等を抜き取るという手口から、SNSなどでURLを拡散してそこから偽物のホームページに誘導し、個人情報等を抜き取る手口も存在します。

このフィッシング詐欺は「詐欺」とは呼ばれているものの、実はフィッシング詐欺行為をしただけでは詐欺罪は成立しません。
刑法では、詐欺罪について以下のように定められています。

刑法第246条(詐欺罪)
第1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
第2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

刑法第246条の2(電子計算機使用詐欺罪)
前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。

刑法第246条にある詐欺罪が成立するには、「人を欺いて」「財物を交付させ」るか、「財産上不法の利益を得」る必要があります。
簡単に言えば、相手を騙して、相手が騙されたことによって財物を渡す、もしくは財産上不法の利益を得るという流れをたどることで詐欺罪が成立するのです。
しかし、フィッシング詐欺行為の場合、たしかに相手を騙してはいるものの、「財物を交付させ」ているわけでも「財産上不法の利益を得」ているわけでもありません。
個人情報は有形物ではないため「財物」には当たりませんし、個人情報を受け取っただけでは「利益を得」たことにもならないからです。

そして、刑法第246条の2にある電子計算機使用詐欺罪は、簡単に言えば、人ではなく電子計算機、すなわちパソコンなどを騙すことによって成立する詐欺罪です。
こちらも「財産上不法の利益を得」る必要があるため、詐欺罪同様、フィッシング詐欺行為をして個人情報を抜き取っただけでは電子計算機使用詐欺罪にも当たらないと考えられます。

では、フィッシング詐欺行為で個人情報を抜き取っただけでは何の犯罪も成立しないのかというと、そうではありません。
フィッシング詐欺行為は、「不正アクセス禁止法(正式名称:不正アクセス行為の禁止等に関する法律)」に違反する犯罪行為です。

不正アクセス禁止法では、フィッシング行為について以下のように定めています。

不正アクセス禁止法第4条
何人も、不正アクセス行為(第2条第4項第1号に該当するものに限る。第6条及び第12条第2号において同じ。)の用に供する目的で、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を取得してはならない。

不正アクセス禁止法第12条
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第1号 第4条の規定に違反した者

不正アクセス行為は、簡単に言えば他人のアカウントやパソコンに勝手にアクセスする行為を指しています。
不正アクセス禁止法では、こうした不正アクセス行為自体に限らず、不正アクセス行為をするためにアカウント情報等を取得することも禁止しているのです。
フィッシング行為は他人のアカウント情報等を利用するために抜き出す行為ですから、この不正アクセス禁止法の条文に違反することになるのです。
さらに、フィッシング詐欺行為をした後、その抜き取った個人情報等を利用してクレジットカードの不正利用等をすれば、合わせて詐欺罪電子計算機使用詐欺罪が成立することも考えられることに注意が必要です。

フィッシング詐欺と呼ばれながらも、実はフィッシング行為のみでは詐欺罪は成立しないなど、刑事事件ではなかなか分かりづらいことも多くあります。
だからこそ、もしも刑事事件の当事者となってしまったら、ご家族が逮捕されてしまったら、早急に弁護士に相談し、逮捕容疑の内容や見通し、その先の手続きのことについて詳しく聞いてみることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、フィッシング詐欺事件を含む刑事事件全般に対応しています。
フィッシング詐欺事件逮捕されてお困りの際には、お気軽に弊所弁護士までご相談ください。

 

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