ハコ屋をして詐欺罪に
ハコ屋をして詐欺罪になってしまった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
東京都千代田区に住んでいるAさんは、複数の特殊詐欺グループに対し、自身が所有している東京都千代田区内のマンションを貸し、報酬をもらっていました。
するとある日、マンションを貸していた特殊詐欺グループが警視庁麹町警察署によって摘発され、それに伴ってAさんも警視庁麹町警察署に詐欺罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは、「自分は詐欺行為に加担して被害者を騙していたわけでもないのに、なぜ詐欺罪で逮捕されたのか」と疑問に思い、家族の依頼を受けて接見に訪れた弁護士に詳しく相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・ハコ屋とは?
特殊詐欺グループの拠点、いわゆるアジトを提供する役割は、「ハコ屋」と呼ばれます。
「ハコ」という言葉には建物を指す意味もあるため、特殊詐欺グループに活動場所を提供する役割のことを「ハコ屋」と呼ぶようです。
今回のAさんは、特殊詐欺グループに部屋を貸して報酬をもらっていたようですから、この「ハコ屋」に当たる役割を果たしていたのでしょう。
「ハコ屋」の役割だけでは、確かにAさんが考えているように、直接被害者を騙す詐欺行為をしているわけではありません。
それでも、特殊詐欺グループの手助けになることを分かりながら「ハコ屋」行為をすることによって犯罪に問われる可能性はあります。
では、Aさんのような「ハコ屋」がどのような罪に問われる可能性があるのでしょうか。
複数人が1つの犯罪に関わったケースで思い浮かびやすいのは「共犯」という言葉です。
共犯とは、簡単に言えば複数人が特定の犯罪に該当することを協力して行うことを言います。
報道等ではこの「共犯」という言葉が多く使用されますが、刑法では「共犯」について、共同正犯(刑法第60条)、教唆犯(刑法第61条)、幇助犯(刑法第62条)という3種類に分けられています。
Aさんのような「ハコ屋」については、このうち、詐欺罪の共同正犯か幇助犯に該当する可能性が高いと考えられます。
・共同正犯と幇助犯
では、そもそも「共同正犯」と「幇助犯」とはどういったものなのでしょうか。
共同正犯と幇助犯とは、刑法が定める共犯の種類のことです。
刑法第60条(共同正犯)
2人以上共同して汎愛を実行した者は、全て正犯とする。
刑法第62条第1項(幇助犯)
正犯を幇助した者は、従犯とする。
「正犯」とは、犯罪の実行者として刑事上の責任を負う者のことを言い、簡単に言えば「主犯」と同じような意味です。
対して、「従犯」とは、正犯のことを手助けする犯罪やその者のことを言います。
従犯となった場合には、正犯の刑罰よりも軽い刑罰を受けることになります(刑法第63条)。
これは、該当の刑事事件の正犯が受けた刑罰よりも軽い刑罰になるということではなく、正犯が受ける可能性のある刑罰の範囲よりも受ける可能性のある刑罰の範囲が軽くなるということです。
例えば詐欺罪は「10年以下の懲役」という刑罰が定められており(刑法第246条)、正犯はこの刑罰の範囲内で処罰されることになりますが、従犯の場合は詐欺罪の定める「10年以下の懲役」よりも軽い範囲で刑罰が決められることになるのです。
そのため、共同正犯(正犯)とされるのか幇助犯(従犯)とされるのかは非常に重要な事情の1つとなります。
それでは、どのようにして共同正犯か幇助犯かを判断するのでしょうか。
一般に、共同正犯か幇助犯かを区別する際に考慮する要素としては、他の共犯者との関係性や動機、報酬の有無、果たした役割の内容やその役割が犯罪において占める重要度等が挙げられます。
例えば、Aさんの場合、「ハコ屋」として行った場所の提供がその特殊詐欺事件において必要不可欠な重要な役割であったと判断されれば、共同正犯と認められる可能性が出てきますし、逆に「ハコ屋」行為が特殊詐欺事件においてその実行を手助けした程度にすぎないと判断されれば、幇助犯であると認められる可能性も出てくるということになります。
共同正犯となるのか幇助犯となるのかは、実際の事件の細かく詳しい事情を総合的に考慮しなければならないのです。
しかし、前述した通り、共同正犯と幇助犯では下される刑罰の重さが異なってきます。
幇助犯に過ぎないのに共同正犯として処罰されてしまうようなことになれば、不当に重い処罰を受けることになりかねません。
逮捕されてしまえば他の人に相談することもままならないため、早期から刑事事件の専門家である弁護士からサポートを受けることが重要といえるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、逮捕された方向けの初回接見サービスを365日いつでも受け付けております。
まずはフリーダイヤル0120-631-881までお問い合わせください。