譲渡目的の口座開設の詐欺罪により逮捕

譲渡目的の口座開設の詐欺罪により逮捕

譲渡目的の口座開設に対する詐欺罪の成否について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

事例
Aは,京都市上京区にある銀行窓口において,第三者に譲渡する目的を秘し,A名義(自己名義)の預金口座を開設し,同口座の預金通帳を取得した。
その後,Aが口座を譲渡した相手が詐欺事件を起こし,京都府上京警察署に逮捕されたが,捜査の過程で,Aが口座譲渡の目的で口座を開設し,譲渡していたことが判明した。
その結果,京都府上京警察署の警察官は,Aを詐欺罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は,詐欺事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実をもとにしたフィクションです。)

~口座開設による預金通帳の詐取~

本件Aは,詐欺罪の容疑で逮捕(刑事訴訟法199条1項本文)されてしまっています。
刑法は,246条で詐欺罪について定めており,その1項において「人を欺いて財物を交付させた者」を,詐欺罪として処罰する旨を規定しています(「財物」を対象とする詐欺罪は,1項詐欺などと呼ばれます)。

まず本件では,そもそも本件で取得したような通帳それ自体には何ら価値がないとも考えられることから,上記1項詐欺罪の対象となる「財物」といえるのかが問題になります。
この点,通説的には,通帳も預金等の預け入れや引き出しなどの銀行によるサービスを受けられるという点で,財産的価値を有することから,1項詐欺罪の客体としての「財物」に該当すると考えられています。

そして,「人を欺」く行為といえるためには,判例上,交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ることが必要となります。
現在では,口座の不正利用や犯罪に利用されることを防ぐ目的から,銀行の窓口レベルで本人確認が徹底されており,本人自身が口座を開設したとしても真の目的である第三者への譲渡を秘したことは,この本人確認を無にする行為であり,重要事項を偽ったものといえると考えられます。
したがって,このような「人を欺」く行為によって,窓口係を錯誤に陥れ,口座を開設した上で預金通用の交付を受けたことは,1項詐欺罪の要件を満たし得るものといえます。

なお,預金通帳の譲渡等は「犯罪収益移転防止法」で処罰すれば足りるとの見解もありますが,実務上はあくまで譲渡前の通帳の詐取行為に詐欺罪が成立するとしています。
したがって,譲渡行為まで行っていると詐欺罪に加え,「犯罪収益移転防止法」(俗に犯収法)違反に問われうることにも注意が必要です。
また,私文書偽造および同行使罪(刑法159条1項,161条1項)も成立する可能性があります。

~詐欺罪における弁護士による弁護活動~

まず,起訴前の弁護活動として,詐欺罪も財産犯であることから,被害者への被害弁償・示談による被害の回復が考慮に値することになります。
しかし,本件のように被害者が単なる一個人というよりは実質的には銀行である場合,公益的な観点からも相手方が示談に応じることは難しいとも考えられます。
したがって,被疑者には起訴されるリスクも伝えた上で,起訴後の弁護活動の方針を十分に協議していく必要があります。
こういった起訴後の弁護活動を十全なものとするためにも,逮捕後の勾留(刑事訴訟法207条1項本文・60条1項)を争ったり,あるいは起訴されてしまった場合にも早期に保釈(刑事訴訟法89条等)の請求していくことが考えられます。
そのため,このような被疑者・被告人の身柄解放活動が,弁護士に対し求められる弁護活動として大きな比重を有するといえるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,詐欺事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
弊所では詐欺罪を含め刑事事件のみを扱う弁護士が,依頼者様の不利益を最小限にすべく日々の弁護活動を行っております。
詐欺事件でご家族等が逮捕されてしまった方は,年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)まで,まずはご相談ください。

 

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