【報道解説】詐欺で用いる電話回線を提供したことによる詐欺罪の幇助

 詐欺に利用されることを知りながら電話回線を提供したとして、詐欺罪の幇助の疑いで警察に逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

報道紹介

 特殊詐欺の犯行に使われた電話回線を提供したとして、山口県警岩国署は15日、福岡市博多区、自称会社員の男(24)を詐欺ほう助の疑いで逮捕した。
 逮捕容疑は、何者かが2022年10月に岩国市の70代女性に、介護施設関係者などを名乗って電話。
 入居権に関するトラブル解決金として220万円をだまし取ったとされる事件で、犯行に使用されると知りながら、電話回線を提供した疑い。

(2023年8月15日に中国新聞デジタルで配信された報道https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/347216より引用)

実際に詐欺行為を行っていなくても罪に問われることがある

 逮捕された男性は、詐欺に利用されることを知りながら電話回線を提供したとして、「詐欺ほう助」の疑いで警察に逮捕されています。
 実際に詐欺行為を行った実行犯のことを詐欺罪正犯(せいはん)と言いますが、詐欺行為以外の方法で手助けをして、詐欺罪正犯詐欺行為を行いやすくさせると、詐欺罪幇助犯(ほうじょはん)として罪に問われる可能性があります(刑法62条1項、刑法246条)。

 電話を用いて現金をだまし取る詐欺行為の場合に電話回線を提供する行為は、そのような詐欺行為を行いやすくさせる行為といえますので、詐欺行為に用いられるということを知りながら電話回線を提供した場合は、詐欺罪幇助犯として処罰の対象になる可能性が高いです。

 詐欺罪正犯の法定刑は、刑法246条1項により10年以下の懲役刑となっています。
 これに対して、詐欺罪幇助犯の場合の法定刑は、刑法63条によって、詐欺罪正犯の場合の法定刑を減軽したものになります。
 具体的には、刑法68条3号によって5年以下の有期懲役刑となります。

現金を受け取る行為を手助けすると?

 詐欺罪は、被害者の方を騙すことで錯誤に陥らせて、錯誤に基づいて被害者の方から交付された現金を受け取ることによって成立する犯罪ですので、騙す行為を手助けした場合のみならず、現金を受け取る行為を手助けした場合にも、罪に問われる可能性があります。
 具体的にどのような手助けをしたのかということで、問われる罪の重さが変わってきますが、現金を受け取る行為を代わりに行ってあげたという形で手助けをした場合は、現金を受け取る行為は詐欺罪の実行行為ですので、単に詐欺行為を行いやすくさせるように手伝ったということではなく、詐欺行為そのものの一部を担ったとして、詐欺罪幇助犯ではなく、詐欺罪共同正犯として10年以下の懲役刑が科される可能性があります(刑法60条、刑法246条)。

詐欺罪の幇助の疑いで警察から捜査を受けられている方は

 詐欺行為を手助けしたとして、警察の捜査を受けられている方は、具体的な手助けした行為や、手助けに至る経緯、詐欺に関わっている認識がどの程度あったのかなどの具体的な事情によって問われる罪の重さが異なってきますので、弁護士に相談して、今後についてアドバイスを受けられることをお勧めします。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所詐欺事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
 詐欺罪幇助の疑いで警察から捜査を受けてお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

 

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