デジタル地域通貨を悪用してポイントを不正に獲得した電子計算機使用詐欺事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例紹介
Aさんが住む地域では「〇〇ペイ」というその地域限定で使えるキャッシュレス決済サービスがあります。
この「〇〇ペイ」はスマートフォンにアプリをインストールすることで利用することができ、「〇〇ペイ」を使って加盟店で買い物をすると購入代金の30%分のポイントが付与される仕組みになっています。
そして、このポイントは加盟店での決済の際に現金の代わりに利用することができます。
Aさんは、友人のBさんが「〇〇ペイ」を利用可能な加盟店である雑貨屋さんを営んでいることに目をつけて、Bさんと協力して、Bさんのお店で雑貨を買っていないにもかかわらず、雑貨を購入したという架空の取引について「〇〇ペイ」で決済するということを複数回行い、多額のポイントを不正に得ました。
ある日、「〇〇ペイ」を管理・運営する会社から、Aさんに対して不正な取引があったため「〇〇ペイ」の利用を停止したという旨の通知がなされました。
Aさんは、警察に逮捕されてしまうのではないかと不安になり、今後について刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(この事例はフィクションです)
デジタル地域通貨とは?
東京都世田谷区で利用できる「せたがやPay」や、同じく東京都の八王子市で利用できる「桑都ペイ」のように、特定の地域内において地域内の加盟店で利用できるデジタル化された地域通貨を導入する自治体が増えています。
このようなデジタル地域通貨は、地域経済を活性化するために導入されていますので、たくさんの人に利用してもらおうと、デジタル地域通貨を用いて決済した場合やデジタル地域通貨を利用できるアプリに現金をチャージ場合に、決済代金やチャージ金額の何割かをポイントとして還元していることが多いです。
デジタル地域通貨を悪用してポイントを不正に獲得すると?
事例のAさんも、Aさんの地元で利用できる「〇〇ペイ」というデジタル地域通貨を利用していますが、Aさんは友人のBさんと一緒に架空の取引をでっち上げて「〇〇ペイ」上で利用できるポイントを不正に獲得しています。
このようにしてポイントを不正に獲得すると刑法246条の2で規定されている電子計算機使用詐欺罪に問われる可能性があります。
電子計算機使用詐欺罪とは
刑法246条の2では、
「前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。」
という形で電子計算機使用詐欺罪を規定しています。
刑法246条の2の冒頭では「前条に規定するもののほか」と書いていますが、この「前条」とは刑法246条の詐欺罪のことです。
刑法246条の詐欺罪が成立するためには、人である被害者の方を騙して、被害者の方を勘違いに陥らせて、被害者の方が勘違いに陥ったまま財産上の利益を交付してもらうということが必要になります。
ところが、取引の過程で人が登場せずにコンピューターによる自動的な処理のみによって完了する取引においては、嘘の情報をコンピューター上に入力して財産上の利益を獲得した場合には人を騙していないため詐欺罪で処罰することができません。
そこで、このような機械を騙して財産上の利益を不正に得たといえるような場合に対処するために創設された犯罪が刑法246条の2に規定される電子計算機使用詐欺罪になります。
事例のような場合では、Aさんのスマートフォンにインストールされた「〇〇ペイ」のシステムという「人の事務処理に使用する電子計算機」に対して、実際にはなされてない架空の雑貨の売買取引を「〇〇ペイ」で決済したという「虚偽の情報」を与えています。
そして、真実は雑貨の売買取引がなされていないのに雑貨の売買取引がなされたとして「〇〇ペイ」上にポイントが加算されたという「財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作」ったことによって、加盟店で決済するときに現金の代わりに利用できるポイントを獲得したことで「財産上不法の利益を得」たと言えるので、Aさんには電子計算機使用詐欺罪が成立すると考えられます。
電子計算機使用詐欺罪の法定刑は、詐欺罪の法定刑と同じで10年以下の懲役となっており、罰金刑が定められていません。
電子計算機使用詐欺罪の疑いで警察に逮捕されるかご不安な方は
電子計算機使用詐欺罪は刑法246条の2の規定を読んだだけでは、一体どのような行為が電子計算機使用詐欺罪に当たるかが分かりづらい犯罪になります。
そのため、ちょっとしたお小遣い稼ぎのつもりでやった行為が電子計算機使用詐欺罪に問われるという可能性も考えられますので、自身の行為が電子計算機使用詐欺罪に当たるか不安だという方や、あるいは既に電子計算機使用詐欺罪の疑いで被害届が提出された、刑事告訴がなされたという方は、まずは弁護士に相談して、自身が行った行為が電子計算機使用詐欺罪に当たるのか、今後、警察に電子計算機使用罪の疑いで逮捕されるのかといったことについて相談して、今後の見通しについてアドバイスを貰われることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺事件をはじめとする刑事事件・少年事件に強い法律事務所です。
電子計算機使用詐欺罪の疑いで警察に逮捕されるかご不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。