1.刑罰の種類について
刑罰は、はく奪する法益の種類によって、生命刑、身体刑、自由刑、名誉刑、財産刑などに分類できます。
生命刑とは、人の生命を奪う刑罰で、死刑のことをいいます。
身体刑とは、人の身体に侵害を加える刑罰のことで、例えば杖刑、刺青刑等のことをいいます。
自由刑とは、身体の自由をはく奪する刑で、懲役刑と禁錮刑が存します。
名誉刑とは、人の名誉をはく奪する刑罰で、公民権停止などがこれにあたります。
財産刑とは、財産を奪う刑罰で罰金、科料、没収がこれにあたります。
現在、日本では身体刑は使用されていません。刑罰の中心は自由刑と財産刑になっています。
なお、詐欺罪は、自由刑のみが設けられており、財産刑(罰金など)は設けられていません。そのため、詐欺罪は略式罰金(罰金を支払うことによって手続きから解放されるもの)はなく、起訴されると正式裁判となります。
1 死刑(しけい)
犯罪者の生命を奪う生命刑であり、殺人罪や強盗殺人罪などの重大犯罪についてのみ法定されています。
現代でも、多くの国で認められていますが、廃止した国もあります。また、死刑を存置している国でも死刑廃止論が強く主張されています。
2 懲役(ちょうえき)・禁錮(きんこ)・拘留(こうりゅう)
懲役とは、自由刑のうち刑務作業に服するもので、刑務作業に服さない禁錮と区別されます(ただし、禁錮も希望により刑務作業に服することができます)。
懲役・禁錮には、無期及び有期があり、有期は1月以上20年以下とされています。ただ、刑を加重するときは30年、減刑するときは1か月以下にすることができます。
一方、拘留とは1日以上30日未満の範囲で、身柄を拘束する自由刑であり、刑務作業は要求されません。比較的軽微な犯罪(例えば侮辱罪)に規定されています。
3 罰金・科料(ばっきん・かりょう)
一定金額を国庫に納付させるのが財産刑です。刑法典では、1万円以上の財産刑を罰金とし、1000円以上1万円未満のものを科料としています。
なお、科料は行政上の制裁である過料と区別する意味で「とがりょう」と呼ばれることがあります。なお、過料は「あやまちりょう」という呼び方をされることがあります。
4 没収(ぼっしゅう)
没収は、犯罪に関連する一定の有体物の所有権を奪う裁判所の裁量的処分のことです。
下記のものが挙げられます。
- 犯罪行為を組成した組成物件(EX.「わいせつ物頒布罪におけるわいせつ物」)
- 犯罪行為に供し又は供せんとした供用物件(EX.犯罪に使用された兇器)
- 犯罪行為から生じた産出物件(EX.文書偽造罪を犯した結果生じた「偽造文書」)もしくはこれにより得た取得物件(EX.「恐喝によって得た誓約書」)、又は犯罪行為の報酬として得た報酬物件(EX.殺人の報酬金)
- ③の物の対価として得た対価物件「窃盗罪などにおける盗品の売却利益」
2.詐欺罪の法定刑
刑法第246条に「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。」とあります。詐欺で得た財物は没収もしくは追徴されます。また、詐欺罪の刑罰は重く、有罪になると懲役刑しかありません(つまり、罰金刑はありませんので「略式処分」(※)にはなりません)。
詐欺罪において重い判決となるかどうかは、前科の有無、被害額、被害弁償の有無、示談の有無・経緯、余罪の数、組織犯罪かどうか、事件への関与度などが判断基準になります。
(※)略式処分
前科はつきますが、罰金を支払うことにより手続きから早期に解放される制度のことです。詐欺罪の場合、罰金刑が規定されていないため(懲役刑しかない)略式処分はないということとなります。
3.詐欺事件と執行猶予(自白事件)
詐欺罪では、前述のように罰金刑がありません。ですから、認めている事件(自白事件)で検察官が起訴の判断をした場合には、執行猶予に向けて活動を行うことが重要になります。例えば懲役刑の執行猶予であれば、刑の執行が猶予され、執行猶予中に再度事件を起こさない限り、今回の事件で刑務所に入ることはありません。
裁判官が、被告人の情状により執行猶予を付すことができるためには、一定の要件を満たす必要があります。その要件とは、初度の執行猶予であれば、
①今回の事件で実際に言い渡される判決が、3年以下の懲役または禁錮もしくは50万円以下の罰金であること、かつ、
②以前に禁錮以上の刑を受けたことがないか、あるいは禁錮以上の刑を受けたことがあっても刑の終了から5年以内に禁錮以上の刑に処せられていないこと、
となります。
したがって、弁護士による詐欺罪の弁護活動において、判決で言い渡される量刑を懲役3年以下に減じさせること、かつ、執行猶予付き判決を獲得することが、裁判後に被告人が身柄拘束を受けるか釈放されるかを決定する重要なポイントとなります。
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